PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<濃々淡々>色は匂えど、ちょこれヱと

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●あなただけのちょこれゐと
 香りよく色美しく咲き誇っている花も、やがては散ってしまう。
 色鮮やかな命の花でさえ、散る速度は様々であろうとも、やがて崩れてしまうのは明白だ。
 だとしたら、このちっぽけな人生で何が出来るだろう?

「私なら、未来のために沢山の物語を残そうと思う」
 女は笑った。喩え今は名がなくとも、後世まで語り継がれる物語を生みたいのだと。

「おれは、沢山の人を支える家を作りたい」
 男は語った。この先も未来を紡ぐひとのために、壊れない家を作りたいのだと。

 ひとは夢をみる。
 その生命のはて。何が残るかはわからないとしても。
 そうだとしても、この人生が何かを残せうるとしたら。諦めてしまうなんて、もったいないような気がするのである。

 さて、本題に入ろう。
 この世界に生まれ落ち、そして育った絢。境界案内人たる彼は、頭を悩ませていた。
「ちょ、ちょこれヱと……」
「なんだァ絢、てめえちょこのひとつも渡す相手がいないのか」
「ま、まあ……うん。お世話になっているひとならいようとも、ね。だからおれはちょこれヱとは買いに行けないなあ」
「ったくよぉ、お前からひとつも浮ついた話が聞けねェから俺ァ心底暇してるってぇのによ」
「まぁでも、ちょこって自分でも楽しめるんだろう? なら自分宛てに買ってもいいじゃあないか」
 とぼやく絢。絢の友達である傘屋はやれやれと肩を竦めて。
「ほら、あのちょこ屋なんかいいんじゃないかい?」
「…………おい、あれは」

 昨日まではなかったぞ。

 傘屋の呟きに。絢は思わず、顔を青くした。


「とまぁ、そんなことがあったんだ」
 とぽりぽり頬をかいた絢は。その店の写真をとったのだと、レトロな紙をこちらに示して。
「ほら。ちょこを売っているでしょう? それから……どことなく洋風だ」
 確かに。
 アンティーク調なのだろう、白磁の外壁にしましまのメルヘンな屋根は思わずおおと唸らざるを得ない。
「どうやらここでは、自分のためだけにちょこれヱとが用意してもらえるらしいんだ」
 丹念にかき集めたらしい情報をまとめた小さな手帳を取り出して、探偵を気取りながらも呟いた。
「なんでも、桜の花びらとか、蝶の鱗粉とか、そんなどう使うのかわからないものを用いるらしいんだ。……怪しくないかな?」
 怪しいよ、絶対。と頷き。それから絢は向き合った。
「ってことで、おれと一緒に、ちょこれヱとを買いに行ってくれないかい?」
 甘ったるい誘い。くすくすと笑った絢は、その手をこちらに差し出した。

NMコメント

●依頼内容
 チョコレートショプにいく。

 オーダーメイドチョコショップであるらしいそのお店に絢と向かいましょう。

●ロケーション
 濃々淡々の街はずれ。

 人通りのある商店街ではなくそのはずれ。空き地であったはずの場所に一夜にして築かれたチョコレートショップ。
 洋風の外観が特徴です。
 中には一風変わったチョコレートが飾ってあり、目を引くことでしょう。

●ここだけのはなし
 実はそのお店では、好きなものや想い出に残っているものを持ち込んだり告げると、貴方だけのチョコレートを頂けるというのです。
 たとえば、お花見をしたときの桜。夏の花火。秋の紅葉狩り。などなど。想い出のものがあるといいかもしれませんね。
 職人に見せずとも、思い浮かべたりするだけでもいいらしいですよ。

●世界観
 和風世界『濃々淡々』。

 色彩やかで、四季折々の自然や街並みの美しい世界。
 また、ヒトと妖の住まう和の世界でもあります。
 軍隊がこの世界の統制を行っており、悪しきものは退治したり、困りごとを解決するのもその軍隊のようです。
 中心にそびえる大きな桜の木がシンボルであり神様的存在です。
(大まかには、明治時代の日本を想定した世界となっています)

●絢(けん)
 華奢な男。飴屋の主人であり、濃々淡々生まれの境界案内人です。
 手押しの屋台を引いて飴を売り、日銭を稼いでいます。
 屋台には飴細工やら瓶詰めの丸い飴やらがあります。
 彼の正体は化け猫。温厚で聞き上手です。

 持ち込むのはやはり飴。というか持ち歩いています。

●サンプルプレイング(絢)
 うわあ、チョコレヱトかあ。
 これ、おれの飴にもいかせないかな。だめかな。

 ※今回はリプレイ中にイメージチョコレートをお届けさせていただきます。
 絢のプレイングから生まれたチョコレートはこのようなものになります。

 貰ったチョコレート:融解
 生チョコの上に砕いた飴をトッピングしたもの。まんまるな見た目に二つの食感。

 以上となります。
 皆様のご参加をお待ちしております。

  • <濃々淡々>色は匂えど、ちょこれヱと完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年02月25日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女

リプレイ

●さいかい
「絢くんは、お久しゅう。お元気そうで何よりやわ」
「ふふ、此方こそ。なんだかのんびりしてしまったや、お待たせ」
 にゃあん。と、気まぐれに猫が鳴いたような気がした。黒い猫の二人――絢と、『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)が白い吐息を解かしながら笑った。
「今日は、ちょこれヱと屋さんへ一緒に来れるんを楽しみにしとりました。よろしゅうね」
「此方こそ。やっぱり洋風のものがあると、わくわくしてしまうんだ」
 談笑を含みつつからころざっざとそれぞれの靴音が響く。暖簾が揺れて、桜が踊って。そんな世界の景色は相変わらず変わっていることはなさそうで。
「ここでは自分だけのチョコレートを作って貰えるのね! 素敵! それにしても、一日でお店が出来るなんてこの世界って凄いわ!」
 天真爛漫に笑った『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)に言葉を濁す絢。もしかして、と絢の服の裾を引いた『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)は、絢に問いかけた。
「……絢様。店の位置がコロコロ変わるのは、ここでは…というか、絢様や傘屋様たちの中では、普通なのかと思っていたのですけれど…違うのです、ね?」
「ああ、ネーヴェ。あれはまぁ……少なくともヒトにはできないけど、そう繁盛に起こるようなものでもないかな。おれだってほら、手押しだろう?」
「そういえば、確かに。お店がコッロコロ動いても、危なくは…ないのです、よね? ちょっと、ドキドキ、してしまいます」
「……ネーヴェは、ここで待っているかい?」
 不安げに問いかけた絢に、ネーヴェは不満げに首を横に振った。
「大切な友人の誘いですもの、行かないわけには、いかないでしょう?」
「はは、そうか。それなら一緒に行こう」
「何度でも言えることだが……一夜で建った店なんて怪しさ満点だな。そんなことはまあ今更ではあるが」
 やれやれ俺は別に興味なんて無いですけどねちらっちらっ甘いものがあるなんて知らないですけどねちらっちらっまぁ仕事ですからねちらっちらっ。
 ため息の奥にだいぶダダ漏れの本音を隠した『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は、オリジナルのチョコレートとやらに興味津々の様子。
(やはり自分専用のチョコレートを貰えるとなれば期待せずにはいられない。果たして俺が満足できるのか……見定めさせてもらおう)
 微笑ましい女性陣よりも一人気合が違う世界なのであった。まる。

●ようこそ
「外れにあるとは言え、ここの街並みを見た後の、この店は…なかなか、浮きます、ね」
「そやねぇ……」
 だからこそ怪しさもひとしお。そんなことを気にせず、絢は勢いよく扉を開けた。
 その背中を追いかけるようにして、四人も彼の背中を追いかけて。
「……」
「ああ……ええと。ちょこれヱとを買いに来たんですが」
「……」
「はい、わかりました。では」
 妖にしか伝わらないなにかがあるのだろう。覆面で身振り手振りだけを添える受付に頷き、四人を手招きした。
「大丈夫だって。見学していいらしいよ」
 絢がうなずく。そういうことならきっと大丈夫だろうが、それはそれとして神秘的な店内には思わず背筋がぴんと伸びた。
「ねぇ、これなんのチョコレートかしら?」
「それは……蝶を使っているらしいな」
「蝶々さんのチョコレート!? 凄く味が気になるわ……!」
 きらきらと淡く輝いたチョコレートに歓声をあげたキルシェに世界はキルシェを抱き上げてよく見えるようにしてやった。キルシェがつんとつつけば、チョコレートの蝶はふわふわと飛んで、羽ばたいていく。
「ルシェは……好きなのはリチェをはじめとするモルモットとかもふもふだけど、可愛いもふもふ姿のチョコレートは凄く食べにくいわ……!」
 ぷいぷいと泣いて抗議するリチェルカーレを撫でて抱きしめたキルシェ。
「リチェもそんな目で見ないで! リチェの形のチョコレートとか食べないから!」
「ぷいー!」
「ふふ、仲良しさんやね」
 仲睦まじくすすむ五人。そんな五人を出迎えたのは。

「――カーテン?」
「胡散臭いな……」
「……」
「此処からは一人ずつらしい。じゃあ先に、おれから行くね」
「け、絢様……?」
「大丈夫だよ。多分。はは、じゃあ皆、また後で!」

●What is your chocolate?
 絢に続いて招かれたのは蜻蛉だった。
「さて、思い出を話せばええんやっけ……?」
 実は。何を話すかは最初から決めていた。

「初めて会った時は、飴をもろたんです」
 潮風の匂いがした、藍へと変わる桜の飴を作ってくれた事。
「彼も、笑ってるだけやなくて。桜のように優しくて……脆いヒトやって、知りました」
 絢の想い人との逢瀬を見届けた日の事。
「それ以上に、楽しいことが好きなんやって。何回も会う度に気付いていったんよ」
 煌めく飴の森へ行ったり、桜の精へと会ったり。
「想い出作りにも、手を貸してもろたんです。うちの我儘聞いてもらったことも、ぎょうさん」
 五人で見上げた夏の花火、秋から冬への準備に子守を手伝った話、雪の山へ探しに行った話。
「たまに無茶しぃなんは、困るけど、」
 春夏秋冬、巡る四季の彩りに想いを馳せながら――嗚呼。
 巡り、廻る四季と。変わらぬ桜吹雪の中で、結ばれた異世界の友。
「もしも、この世界に出逢ってなかったら、こんなに沢山のものを見て聞いて……味わう事もあらへんかったし、ネーヴェちゃんとも、こないに仲良おなる事も出来ませんでした」
 後ろに控えている彼女は何を思っているだろうか。きっと同じだと、嬉しいけれど。
「やから、作って貰うなら……その感謝の気持ちを込めたものを、お願い出来たら嬉しいです」
 いつだって。縁は、容易く途切れてしまうから。
 後悔したって、手繰り寄せることはできない。二度とはない瞬間を。
 かたどって、ほしいのだ。

「わたくしの、大切なもの。想い出の、品」
 ネーヴェもしっかりと用意していた。毎日髪をさらさらに、梳るくし――はなちるさと。
「この世界で出会った、くしですね」
 あの日はたしか不思議なお店でものを買える依頼だった。なんでも付喪神が現れるとか。
「ここに眠る神様は、いつか…わたくしの前に、ひょっこり、現れてくれるのでしょうか?
 そんなことを、楽しみに。毎日、心を込めて、使っています」
 白くてさらさら、ふんわりとした髪を何度も何度も通ってきたくしは、少しずつ色味を変えていた。きっといつか目覚めるときには、あなたは何色に変わっているのだろう。
「この子や、この世界との想い出が、形になるとうれしいです」
 自分だけのチョコレート。はたしてどんな姿になっているだろうか。ときめく心に急かされるように足取りは早く、扉を開けて進んだ。

(たしか好きなものや想い出を告げるといいんだったな)
 ふむ、と頷き。世界は思案するのだが。
「しかし、残念ながら美味い味になりそうな想い出なんて俺の中には微塵も存在してなさそうでな……。普通に好きなものでいいか」
 どこかの女王におもちゃにされたり。
 どこぞの騎士と漫才をしたり。なんて世界だ。
「となるとやはり砂糖……。しかしそれだと単に甘過ぎるだけのチョコレートにならないか?
 いや俺はいいんだけど、この後分け合う予定もあるし自分本位過ぎる物は色々と良くない……よな」
 特に女性陣は体重やカロリーも気にするだろう。たぶん。きっと。これを指摘すると鉄拳が飛んでくる場合もあるので注意!
「って訳で砂糖はやめてパフェにしよう。パフェはいいぞ! スイーツの王様と言っても過言ではない。
 そもそも語源が完璧を意味するparfaitから来てるからな。きっとこれから出てくるチョコレートも完璧な出来に違いない」
 全力で圧をかける世界に妖はゆっくりと頷いた。パフェが通じるかという不安はどこへやら、まぁきっとうまくいくだろうという安心を元に世界も黒い幕をくぐった。

「ルシェ、桜が良いわ」
 最後まで待ち続けていたキルシェは呼ばれると迷いなく即答。もうそれでいいのかと身振り手振りを加えて伝える妖にキルシェは花のような笑みを浮かべて。
「ルシェの名前の由来だし、リチェと会ったの桜が咲く時だったから」
「ぷい!」
「リチェとはね、ルシェの体が元気になってきて、少しならお外出られるようになった時に出会ったのよ!」
 ね、と微笑みかければそれに頷くリチェルカーレ。
「お散歩中に鳴き声聞こえてきて、何だろうって見に行ったら桜の花びらの中でリチェが鳴いてたの。だから桜はルシェとリチェの思い出のお花なの!」
 桜が舞い踊る世界で笑うKirsche――桜の名を持つ少女。彼女の紡いだチョコレートや、如何に。


 蜻蛉へのチョコ:願紡(ねがいつむぎ)
 丸いトリュフが詰まった小さな箱。それぞれに砕かれた飴が入っており、甘かったりビターだったりする様子。様々な想い出を刻んだ貴方へ。

 ネーヴェへのチョコ:はなまうから
 瓶入り、スティック状のカラフルなチョコレート。フルーツの味が楽しめる。何れ花舞う空(そら)へと往こう。その道の先でも、花舞うから。

 世界へのチョコ:クイーン・オブ・パーフェクト
 クッキー生地が練り込まれたザクザク食感のチョコレート。色々なフレーバーの甘いソースをディップして楽しむ、貴方の完璧なチョコレートが生み出せる。

 キルシェへのチョコ:天心爛漫
 桜の花びらのように削って作られた口溶け重視のチョコレート。甘い桜の味が特徴。動物が食べても大丈夫な、誰でも幸せになれる美味しさのチョコ。

「これが蜻蛉ママので、こっちがネーヴェお姉さん、それから世界お兄さんのチョコね! どれも美味しそう!」
「……ところで俺は己の欲に従ったが、他の皆はなんかこう、いい感じだな」
「これは皆ので、これは絢くんへ。うちらの世界やとグラオクローネ言うんよ、いつもおおきに」
「また来てみたい、ですね」

成否

成功

状態異常

なし

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