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シナリオ詳細

<異世界プリンの恨み>スゴーイ伯爵の受難

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●独白
 僕はクリーミィ・スゴーイ。幻想の片端にお屋敷と、伯爵の称号を頂いて暮らしているものだ。
 そのおかげで暮らしには困ったことがない。少しくらいの贅沢も許されているし、一緒に贅沢をしようといってくれる友人――向こうは体のいい金づるだと思ってたとしても――がいる。幸せな事だ。
 そんな僕なのだが、先日、イワーク男爵の屋敷で舞踏会が行われた。イワーク男爵は僕でも知っているほどの美食家。きっとまた素敵な食材を手に入れたんだろうと思っていたが、不思議な事に主催はアラモード伯爵だったんだ。
 そこで出されたのはすごく……そう! すごく美味しい「幻のプリン」! なんでも不在証明を……ええと……とにかく、すごくおいしかったんだよ! あんな味にはきっともう出会えないって確信できるくらい美味しかったんだ。
 でも……僕は後から聞いて知ったんだ。
 そのプリンは一人一つしか食べられないんだって。人数分しか用意されてなかったんだって……


「そんなつもりじゃなかったんだ……」
 あれっ、伯爵どこ行った? ああ、椅子に座ってるわ。
 儚げにも程があるぞと文句を言いたくなるような薄さで、スゴーイ伯爵は呻いた。薄い。すごーい薄い。儚げどころじゃない、存在感が限りなくゼロに近い。ちょっと目を離したら見失ってしまいそうだ。
「プリンを食べて、勢いで食べてしまって……どんなプリンか見るのを忘れてしまって……見に行ったら、もう一つくれたから……」
 この時点でイレギュラーズ達は確信する。
 それ、君の存在感が薄いからやで。
「もう一回出来るのかな……? 何度でも食べられるのかな……? と思ってもう一度行ってみたら、また貰って……だから、知らなかったんだよ! 一人一つって決まりがあるなんて!」
 かのセバスチャン・ゼロとロッテン・マイアをすりぬけるスゴーイ伯爵の薄さは尋常ではない。向き合っているはずなのに一人でいるようなすごい存在感の薄さ。
 見逃さないようにイレギュラーズがじっと見ているのを責められていると感じたのか、スゴーイ伯爵は頭を抱えた。注釈しておくと、頭はそんなに薄くない。
「君たちを呼んだのはほかでもない、脅迫状が届いたんだ……内容はメイドから聞いて欲しい……とても恐ろしい内容だった。彼らは今日の夜に僕を襲いに来るって言ってた。そうやって民はいつも僕をいじめるんだ……近所の子どもはウスーイ伯爵って僕の事呼ぶし……」
 まあね、仕方ないね。子どもは正直だから。
「お願いだ、この一晩を平穏無事に過ごさせてほしい! きっと彼らは僕の言い訳なんて聞いてくれないから! 頼む!」

GMコメント

 プリンだろうが何だろうが、食べ物の恨みは恐ろしい。
 こんにちは、奇古譚です。

●目的
 スゴーイ伯爵を護衛せよ

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●脅迫状
 「xx日夜、てめーの屋敷を襲う。奥歯から胃袋をガタガタいわせてプリンを食えない体にしてやる」という旨の脅迫状が届いているとメイドは証言しています。
 しかしその筆跡は非常に流麗で、丁寧に封がしてあったそうです。
 差出人は不明。

●敵
 9人の盗賊が出ます。雇われ盗賊です。
 短刀持ちが5人(最大レンジ1、単体攻撃のみ)
 鉄棒持ちが4人(最大レンジ2、範囲攻撃あり)です。

●立地
 スゴーイ伯爵の屋敷は表と裏に門があり、更に側面に食堂の窓があります。
 どの門を破りに来るか、或いは窓を破るのか、いずれも不明です。
 伯爵の家はそんなに大きくないので、戦闘音はどこを警護していても聴く事が出来ます。
 スゴーイ伯爵の寝室は3階にありますので、万が一室内に侵入されてもまだ余裕はあります。


 アドリブが多くなる傾向にあります。
 NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写します。
 では、いってらっしゃい。

  • <異世界プリンの恨み>スゴーイ伯爵の受難完了
  • GM名奇古譚
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年07月28日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シグ・ローデッド(p3p000483)
艦斬り
リュグナート・ヴェクサシオン(p3p001218)
咎狼の牙
九鬼 我那覇(p3p001256)
三面六臂
ロザーナ・ロリータ(p3p002348)
神を名乗った吸血鬼
ヴィクター・ランバート(p3p002402)
殲機
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
ルフト=Y=アルゼンタム(p3p004511)
ヴィマラ(p3p005079)
ラスト・スカベンジャー

リプレイ

●Soop
 プリンの恨みから守って欲しい。
 端的に言えばとても単純で――言ってしまえば陳腐な願いだが、伯爵は切実だ。その願いに応えたイレギュラーズ八人は、早々に布陣を開始した。
「ふむ。やはり此処か」
「え、な、何がかな」
 顎に指をあて思案しているのは『KnowlEdge』シグ・ローデッド(p3p000483)。ちなみに此処は屋敷の二階にある一室、客間にあたる。伯爵とその使用人たちは、作戦説明のためにこの一室に集められていた。
「丁度良い『遊び場』というところだ。伯爵、使用人はそれで全員か」
「あ、ああ。メイド・執事・庭師まで。全員だよ」
 伯爵は矢張り目を離したら消えてしまいそうな儚さで頷く。使用人たちは至って普通の存在感だが、何が起こるか判っていないのか、伯爵よりも不安げに見えた。
「君たちの指示通り、家がある者は帰らせた。此処にいるのは住み込みの者だけ……だけど……」
「……んー、まーね。プリン一つでそこまでするとは思えないけど、やるんだったら徹底的にやるんじゃないかなーって思うから、勘弁してよー」
 間延びした声で言ったのは『スカベンジャー』ヴィマラ(p3p005079)。「勘弁して」と言いながらも、きらりと冷たい視線が使用人に走ったような気がした。……即ち、内通者の疑いだ。外から押し入るより、中から扉を開けた方が何倍も容易い――生き馬の目を抜く貴族社会のいざこざなら尚更だ。
 薄々それを勘づいているのかどこか悲し気な伯爵を、『殲機』ヴィクター・ランバート(p3p002402)はスコープ越しに一瞥。
「そもそも、数の制限があるなら最初に説明があった筈。なくとも二度目に確認をすべきでは?」
「うう……す、すまない……」
「……謝罪は本機には必要ない」
「す、すまない……じゃなかった、ええと……じゃあ、ええと……」
「宜しく頼む、でいいんじゃない? 大丈夫?」
 ランバートの機械的応答におたおたする伯爵。彼に声をかけたのは『ペリドット・グリーンの決意』藤野 蛍(p3p003861)。いわゆる「委員長」という概念が幻想に存在するかというと疑わしいが、その一本通ったような雰囲気と言動は場にある程度の緊張を持たせる助けになっていた。ともすれば「プリンとか下らん…」と誰かが言い出しそうで、でも言い出せない。そんなとても絶妙な緊張である。
「そうであるな。だが監視員にも責任がないとは言えぬである。スゴーイ伯爵だけが恨まれるというのは筋ではないのである」
「道理といえば道理じゃな。故にまあ……このプリンのいざこざは他のところでも起きていそうなアレじゃ。……。てゆーか伯爵とか、なぜ余が護衛をせねばならぬのじゃ。余は国王じゃぞ……」
 『三面六臂』九鬼 我那覇(p3p001256)がフォローするように述べると、『神を名乗った吸血鬼』ロザーナ・ロリータ(p3p002348)が続けて述べる。実際彼女(彼)の推理は当たっているのだが、それはまた別の話になる。
 ロリータがちょっと不満そうにぶちぶち言ってるけど、まあね、元だからね。仕方ないね。愚痴りはするが仕事はきっちりとやる(元)国王である。

 頃合いを見て、我那覇が傍にいた『咎狗の牙』リュグナート・ヴェクサシオン(p3p001218)を見た。応えて、リュグナートは静かに頭を振る。
 可能な限り使用人の数を屋敷から減らし、帰れないものはこの部屋で待機。伯爵護衛を重視して、罠を使い室内で応戦する。……その作戦においてネックとなる内通者の可能性を減らすため、彼はある程度の説明の後を仲間に託し、不審な動きをする者がいないかと直感を研ぎ澄ませていた。が、彼の直感に引っかかるものはいない。――暫定して内通者はゼロ。内心で安堵の息を零すリュグナート。
「では使用人の皆様は此処で待機を。俺たちはそれぞれの持ち場へ。貴重品と伯爵、それから彼は三階の部屋へ移って頂く事になります」
「やあ伯爵。宜しく頼むよ」
 ルフト=Y=アルゼンタム(p3p004511)が片手を上げる。役目は伯爵の護衛。ついでにちょっと顔を覚えてもらえたらなーとか思っている憎いイケメンである。
「よ、宜しく。僕はクリーミィ・スゴーイ……」
「伯爵! 自己紹介は先にさせるものですと何度申し上げたら!」
「あっ、そ、そうだった。ごめん」
 イケメンちからに圧し負けたのか、思わず自己紹介する伯爵。そしてそれを神経質に注意するメイド。

「……あの調子じゃ、内通者を作るのもバカバカしいかもね」
「であるな」
 ほとほと貴族らしくないスゴーイ伯爵に、蛍と我那覇は顔を見合わせ溜息を吐いた。
「じゃ、とりあえずいってみよー!」
 ヴィマラの号令(?)で各々が移動を開始する。使用人はこの部屋で待機。ルフトは部屋の外に出た時点で仲間とノックの合図を決め、伯爵と共に三階へ。
 ランバートは有事に備えて三階。シグ・ロリータ・蛍・ヴィマラは二階、我那覇・リュグナートは一階でそれぞれ決戦の時を待つ。

 蝋燭の灯火が揺れる音すら聞こえそうな中、金属の音が複数回、した。


●Poisson
 ちりりん。ちりりん。りん。
「い、今の音はなにかな」
「相手さんが罠を踏んだ音さ。音が鳴るだけのやつだが、それぞれ違う音が鳴るようにしてある」
 三階、伯爵の寝室から最も離れた部屋。
 不安そうに問う伯爵に、ドアの傍に立つルフトが軽い調子で答える。その口調は敢えて軽い。伯爵を落ち着かせるためだ。
「成る程……じゃあ今のは……」
「……裏だな。だが数が少ない。多分表からも」
 かちゃかちゃ、かちゃん。
「ほら来た。――大丈夫さ。挟み撃ちなんて意味のない陣形を取ってる」
 それより腹は減ってないかと訊きながら、ルフトは小首を傾げてみせた。

「挟み撃ちであるか。一方から来る訳はないと思っていたであるが」
「ええ。まずは俺たちが要です。食い止めましょう……!」
 乱暴に扉を叩き壊す音がする。我那覇とリュグナートは背を合わせ、敵襲に備える。
「スゴーイ伯爵、覚悟しろ! 予告通り奥歯を……うわーっ!?」
「む?」
  やがてどたどたと両側から覆面をした男たちがやってきた。四人と六人、鉄棒持ちは二人ずつに別れている。が、我那覇側の先頭がビックリして素っ頓狂な声を上げた。何が起きたのかと我那覇は不思議そうにするが、すぐに理由に思い当たった。
「ああ。吾輩の面相が珍しいであるか?」
「めめめめずらしいもなにも! なんだおまえ!」
「そんな訊き方する奴には名乗らないのである」
「名前なんか聞いてねえよ! ……よ、よし!よくわかんねえけど、その三つの頭をガタガタ言わせてやらあー!」
「吾輩を敵に回したのが運の尽きである! いざ!」
 階段前にどっしりと構える我那覇のその様は、まさに修羅般若の如し。そんな彼が動植物を愛する草食系ボーイだという事を一体誰が知るだろう。いや、今は誰も知らない。知らなくて良いのだ。此処に立つのは一人の戦士、九鬼 我那覇。その六腕が意志を以て唸りを上げる。こちら側は短剣を持った賊が三人と、鉄棒を持った者が一人。無遠慮に振り下ろされた鉄棒を武装爪で受け流しながら、ちらりと後ろを見た。
「リュグナート! 合わせられるであるか!?」
「はい! やりましょう!」
 同じく我那覇に視線を流したリュグナートと、考える事は同じだったようだ。二人はタイミングを計り、合わせていた背を離し、階段に背を向ける。
「お、おおおお、おお!?」
「うわーっ!?」
 彼らが約90度身をひねったので、敵の先頭同士がぶつかりそうになり、慌てて足を止める。構え直せば挟み撃ちがなんのその、敵はひとかたまりにならざるを得ず。
「ち、ちくしょう!こいつら外にいないと思っゲフ!」
 短刀を危なっかしく構えた賊を、リュグナートのノーギルティが打ち据える。相手を殺す意図はないにせよ、狙いすまされた拳がみぞおちに綺麗に入った。なすすべもなく崩れ落ちる賊。
 そしてその位置取りは、階段上にいる後衛にとっても僥倖だ。
「何処からくるか判らない以上、賭けのような分断はしたくありませんでしたからね」
「さあ、真正面から堂々と勝負である!」
「余たちも忘れるでないぞ? 幾ら持たされたのかは知らぬが、此処を狙った事を後悔するのじゃな」
 ロリータの言葉にたじたじになりながらも、得物を構える賊たち。
 戦いはまだ始まったばかりだ。


●Viande
「僕は、しがない伯爵だ」
 ルフトが用意した冒険食――といっても、伯爵は乾物の方がお好みだったようだが――をちびちびと食べながら、スゴーイ伯爵はぽつりと言葉を零した。
「ただこの家に生まれたからという理由で、少し偉くなっただけで……この環境は良くないんじゃないかなって思っても、変える勇気もない」
「――貴族社会に不満があるのか?」
「不満、というのかな……ただ、周りの皆を苦しめたり、重税を取ったりするのは、良くない……と、思う。この前の蜂起だって、苦しみに耐えかねた人たちが起こしたんだと僕は思ってる。それに比べれば、君たちが羨ましい。すごい旅をしたり、自由に暮らして、……何に縛られる事もない」
「ただ自由、という訳でもないんだけどな」
 品のいい礼服『銀空の騎士』の裾を直しながらルフトは苦笑気味に頷く。彼らイレギュラーズが最優先にすべき命題は「世界滅亡の回避」だ。それは時にどんな義務よりも重く彼らにのしかかる。
「それに、伯爵は伯爵で悩んでいるんだろう。そこは比べるものじゃないと思うぜ」
「そうなのかな……僕にもっと力があれば、……と思う事ばかりだよ。今回だって、結局は僕のミスで起こした事件なのに、使用人たちに迷惑をかけてしまった」
 しょんぼりと干し肉を噛む伯爵に、ルフトはその人物評を改めた。ただ弱気なのではなく、その心中の憂いは幻想がはらむ病巣の芯を突いているように見える。
「さっきの……ランバート君のいう通りだ。僕の確認ミスが、マナーの足りなさが、みんなを不安にさせてしまった……」
「――あんまり自分を責めるなよ。今更時間を戻す事は出来ないんだから、今どうすべきかを考えるべきだ。いま伯爵がすべきはなんだ?」
「……此処で大人しくしている事?」
「そうだ。だがまあ、何もせず大人しくしているのもつまらんだろう。俺で良ければ話し相手になるさ」

一方、一階の主戦場。
「くっ……!」
「よし!こっちからやっちまえ!」
「リュグナート! 大丈夫であるか!」
「はい、これくらいならまだ……!」
 防壁となっている我那覇とリュグナート、賊たちはリュグナートに集中攻撃を仕掛けた。
我那覇が防壁になろうとするも、彼を取り囲むのは鉄棒持ちが三人だ。三方から仕掛けられては容易に動く事もままならない。寧ろ鉄棒持ちがリュグナートを狙ったら……そう考えると、我那覇も巧く動く事が出来ないでいた。
 だが、彼らは二人きりではない。
 リュグナートの身体を狙う刃に、するりと縄が絡みついた。
「つれないな、私たちも混ぜてくれ」
「おっけー、余の一撃を食らうがよい!」
 シグが放ったマジックロープが賊の手を締め付け、ロリータのレールガンが放った弾丸がその体を射抜く。
 同じく我那覇を狙っていた鉄棒持ちの一人も、ヴィマラのマジックロープで動けなくなっていた。
「よーしよし。じゃあ蛍君、回復いっとこー! 死んだら幸福度減っちゃうからね!」
「判ってる! リュグナートさん、いま治すから!」
 蛍による癒しの光が、リュグナートを優しく照らす。軽くなった腕を振るい、リュグナートはゆるく息を吐き、鋭く吸った。
「ありがとうございます! いきます!」
「反省の時間だぜ!ロックンロー!」
 ヴィマラの声援(?)を受け、リュグナートの拳が唸って輝く。――リッターブリッツ。その雷の如き一撃は三人を巻き込み、呑み込んで、大地に伏せさせた。
「ぬおおお!! 何が何でも此処は通さんのである!」
 我那覇の六手が唸る。鉄棒を振り翳した相手の腕を掴み、槌の一撃が脇腹にめり込む。倒れ伏した鉄棒持ちの後ろから、別の男が鉄棒を振り翳し――
「おっと、そうはさせない」
 シグの指先から幻影の縄が伸び、鉄棒を持った男を縛り上げた。
「ヴィマラ」
「了解! 狙い撃っちゃうぜー!」
 ヴィマラが不可視の弓を番える。どこから湧きだしたのか、死者の怨念を束ねて矢として組み上げ、放つ。その一撃はマジックロープで縛り上げられていた鉄棒持ちに突き刺さり、彼を苛んでいた苦しみの分だけ更に苦しみを上乗せし、炸裂する。どさり、死霊に引かれるように倒れ伏す男。いえーい、ハイタッチするヴィマラとシグ。
「残りは四人か」
「棒持ちから減らしておきたいところじゃな。狙えるか?」
「我那覇君次第って感じだけど……任せて。ボクがサポートする」
 緊張した面持ちの蛍だが、その手は迷いなく癒しの術を我那覇へ送り出す。続いてヴィマラがマジックロープを振るい、シグのディスペアー・ブルーが疑惑を囁きかけ、賊の動きをばらばらにした。
 リュグナートの拳が、再び唸る。貫くようなリッターブリッツの一撃がさらに二人を撃ち抜いた。
 残り二人。
「畜生! こんな奴らがいるなんて聞いてねえぞ!」
「え…?」
 その一言が、僅かに蛍の脳裏にひっかかる。
 我那覇は関せず、と二人を四本の腕で捕まえた。
「教えてないから当然である! 今であるぞ!」
「(元)王の一撃、受けるがよいわ!」
「よーし、幸福度減少いっちゃおー!」
 ロリータとヴィマラの一撃が、それぞれを穿つ。力なく重くなった体を確認して、床に寝かせる我那覇。男たちは全員横たわったように見えた――が。
「……よし、今だ!」
「な!?」
 がばっと起き上がった賊の一人が、短刀を持って階段に駆け出した。
 リュグナートと我那覇の間をすり抜け、一段飛ばしで駆け上がる。蛍が思わず両手を広げ、通すまいと身を挺して――

「ターゲット視認」
 無慈悲な一撃が、蛍のすぐ後ろから賊に突き刺さった。男は腹部を押さえ、階段下に吹き飛ばされる。
「…………」
 心臓がうるさく鳴り響いている。ふらついて尻もちをついた蛍が見ると、後衛の更に上――三階へ続く階段に、ランバートが立っていた。構えた銃口からは硝煙が立ち上っている。
「大丈夫か」
「だ、だい、じょうぶ……降りてきたのね、ランバートさん」
「三階は安全だろうと確認できたのでな。タイミングが良かったか」
「ばっちりじゃ。おいしいとこを持っていきおって」
 構えていたレールガンを下ろし、ロリータが一息吐く。一同の様子をぐるりと見て、シグが言う。
「よし。では全員を縛って、伯爵を迎えに行くか」


●Dessert
「……という訳で、これで全員です」
「あ、ありがとう……」
 全員をロープで縛り上げ、合図のノックを受けて伯爵とルフトが三階から降りてきた。縛った九人を示すと、伯爵はルフトの後ろに隠れて弱々しく返答する。
「どうする? 命令があればすぐに殺害も出来るが、尋問して真犯人を吐かせるか」
「だ、だめだめ! 命を奪うのはよくないよ!」
 力なく座り込んでいる賊のこめかみにランバートが銃を突きつける。ひ、と賊は軽く息を呑んだ。慌てて伯爵が止めに入る。
 蛍が呆れたように息を吐き、腰に手を当てる。
「伯爵? こいつらはあなたの命を狙いに来たのよ?」
「わ、判ってる……君たちに頼まなければ、僕はこいつらに殺されていたんだ……でも、……発端はただのプリンだ。それで誰かの命が奪われるような事は、あっては、ならないと、おも、う……んだよね……」
 イレギュラーズの視線を受け、小さくなる伯爵。ふむ、とルフトが己の顎に手を添えた。
「ここで賊を殺さずにおけば、伯爵の評判も少しはあがるかもな。二階にいる使用人も証人になる」
「そうじゃの。伯爵のいう通り、発端はプリンじゃ。予告状も含め……」
「相手は遊んでいたのかも知れんな。震える伯爵を見て笑っていたと」
「…では、相手の名前を吐かせるか?」
 ランバートが伯爵に問う。…伯爵はゆっくりと頭を振り。
「いや、それもいいよ。今さら聞いても仕方ないし……僕には復讐の意思はない」
「あ! だったらー、美味しいモノでも食べに行く? 美味しいモノ食べてどうだ僕は元気だぞーってある意味復讐にならない?」
「美味しいモノ……そうか」
 ヴィマラのお気楽~なテンションに、伯爵は何かを気付いたような顔をした。そうだ、それでここはこうして、とぶつぶつ唸っている。
「どうしたのじゃ、伯爵よ。ぶつぶつと」
「いや、……今度は僕がパーティを開けばいいんじゃないかな、と思って……」
「はあ?」
「え、えっと……さっきルフト君に貰った冒険食が、美味しかったから……そういうものでパーティを開いて、食べ放題とか、どうかなって……」
 沈黙。……少し後、一斉に笑い出す一同。それはいい、これとか美味しい、と冒険食のプレゼンをし始める。こそっとロリータが血液を提案したが、速攻で却下された。
 呆れたように伯爵を見る盗賊と、何故笑っているのか判らないランバートは、顔を見合わせて首を傾げた。

 結局盗賊は全員解放され、後日、スゴーイ伯爵邸で美食パーティ「発見!おいしい冒険食~豪華にしたらどうなるの~」が開催されたとかなんとか。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
皆さんしっかりと戦闘プレイングを書いて下さっていて、少しシリアス風味になってしまいました。
でもいいよね!賊さんは至って真面目だったからね!
かくしてプリンを巡るスゴーイ伯爵襲撃事件は、イレギュラーズの完全勝利で幕を閉じたのでした。
ご参加ありがとうございました!

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