シナリオ詳細
<ディダスカリアの門>聖と共に手を取り
オープニング
●<ディダスカリアの門>聖と共に手を取り
天義(聖教国ネメシス)の首都、フォン・ルーベルグより離れた海沿いに存在する独立都市『アドラスティア』。
この地においては、冠位魔種による『大いなる禍』により、極一般に信仰される神は守ってくれなかったとされる。
しかし依存先が無いと人は不安になるもので、アドラスティアに住まう人々は自然と『新たなる神』を創造してしまう。
そんな無法地帯の一部においては、そのように異を唱える事により、新たなる神の信仰を止めるべく動く者も居る。
そして、そんな彼らが新たに信ずるのは『ファルマコン』と呼ばれし神。
無論、フォン・ルーベルグ……というよりは、天義の国からすれば、それは反乱分子であり、粛清すべき存在。
しかしながら、アドラスティアは内部が見えぬ構造であり、そのような国に疲弊した騎士団を送り込むのは愚の骨頂。
故に騎士団は事前に調査を行い、その実情を掴む事となる。
『おい、こいつがよ、俺達の神さまへの冒涜をしてたんだ!! みんな、こいつは叛逆者だ!!』
『そ、そんな事無いって!! おれは神さま信じてる……!!』
『嘘だね!! なぁファザー、今此処に魔女裁判を開こう! 立会人になってくれよ!!』
『ああ、判った。さぁ皆、この者は叛逆者か否か……? ……うむ、賛成多数。では、この者を叛逆者として扱う。さぁ、断罪の時だ!』
『え……は、話を聞いてくれ……っ、うわぁあああ……!』
叛逆者に仕立て上げられた子供は、周りの子供達によって断罪される。
己らが信ずる『新たなる神』への信仰が疑わしき者の告発を行う『魔女裁判』を開き、その結果として『信仰の証』を得る。
……そんな彼らの信仰の言葉。
『毎日一度、年の中心で鳴り響く鐘の音を聞き、お祈りを捧げます。我らの神によーー今日も幸福を与え賜え』
その信仰の言葉を合い言葉にし、裏切りし者は断罪する……そんな裏切り者達を日夜探し求めるアドラスティアの日常は、影を落とすのであった。
●
「あっ……皆さん、もうお集まりに成られていたのですね……?」
と、ギルド・ローレットに集まった君達へ、『深森の声』ルリア=ルミナス(p3n000174)は頭を下げる。
そんな彼女にうなずうくと、ルリアはありがとうございます、と深々と頭を下げつつ。
「皆様……以前幻想で発生していた『奴隷事件』は覚えていらっしゃいますか? ……どうも、その事件を経て、オンネリネンの子供達による活動が、全国的に見られるようになっている様なのです」
「そんな全国的な動きの中で、特に活発になっているのは『アドラスティア』での活動……現状においても、アドラスティアに対しては、下層までしか潜入が出来ていません」
「このままでは膠着状態になるだろう、と言うのもあり、探偵サントノーレ&ラヴィネイルの方々と協力し、アドラスティアの中層へ進む手立てが検討されていました」
「アドラスティアの中層は、嘗てはこの場所に存在した都市『アスピーダ・タラサ』をそのまま使用しているらしく、『アスピーダ・タラサ』は海沿いに存在する事から、鉄帝『不凍港ベデクト』へと対抗するべき港湾の警備隊が設置されています」
「そのお陰もあり、『アスピーダ・タラサ』に関する情報は天義にも多く残されて居て、その構造地図はある程度得る事が出来たのです」
「ですが……中層に繋がる扉は、『通行証』が必要となり、それらは全て中層の『プリンシパル』が管理しており、それを手に入れる必要が有ります』
「正面から突撃しても、門前払いを喰らうのは間違いありません。しかし、中層の内部には『プリンシパル』に指示が出来る組織『新世界』が存在します。この『新世界』のメンバーとの接触の為に、下層及び外部にて陽動作戦を行う必要があります。そこで皆様には、アドラスティアの下層において騒ぎを起こし、注意を逸らして頂きたいのです」
「皆様が意識を逸らしている間に、『新世界』のメンバーへ接触し、通行証を手に入れる事が出来れば、アドラスティアの中層へと進む事が出来るでしょう……地味な作戦かとは思いますが、大事な下地を作る作戦でもあります……どうか、皆様の力を貸して頂ければ……と思います。その……宜しくお願い致します……」
アドラスティアを切り拓く為の一歩となるべく、再度深く頭を下げるルリアであった。
- <ディダスカリアの門>聖と共に手を取り完了
- GM名緋月燕
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年01月24日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●裏切りの味をしめ
天義首都、フォン・ルーベルグより離れた海沿いに立つ独立都市『アドラスティア』。
その下層はまるでスラム街の如く貧しい者達が住まう。
ただ、住まう子供達はその貧困を憂うような事は無かった……指導者であるティーチャー達の下、懸命に生きている。
しかし……懸命に生きる為に犠牲にするものは仲間達という……怒り、憎しみ、裏切りがその貧困の中に渦巻く。
……そんな人の様々な陰が大量に湧き出ている街へと潜入したイレギュラーズ。
姿を隠しながら街を歩くと、街の様々な所から、ティーチャーを呼ぶ声と、裏切られて怒りに震える絶叫が度々響き渡る。
「どうしてこう……どこの世界にも、宗教の悪い所を煮詰めたような勢力が出てくるんだろうな……」
深い溜息を吐く『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)。
広い世界を旅するイレギュラーズ……だがこの世界に限らず、同様の風景は幾度となく見てきた光景。
そして、その被害に逢うのはいつも弱い立場の女子供達。
「犠牲になるのは、いつも子供や民ばかり……この様な状況をいつまでも繰り返させてはならないな……」
怒りを抑えきれず、エーレンは己の拳をぎゅっと握りしめる。
彼の言葉に、ロレイン(p3p006293)は。
「そうね。アドラスティア……天義の信仰が揺らいだ果てがこれだ、というのね……」
瞑目し、空を見上げるロレインに、優しい笑みを浮かべた『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)も。
「ええ、ええ……信仰……神の言葉……聖職者……私が知るそれらそのものです。良かった……ローレットでは良心的な者ばかり目について、もしかして間違っているのかと、心配になっていました……」
「……どちらが正しい聖職者かは、人によるでしょう。彼らが率いる子供達が今、幸福かどうかは判りません。ですが……誰が率いていようと、全てを救う事なんてできないし、神は誰も巣くわないのだから……自分たちで抗えばいいのに……」
ロレインの言葉に、エーレンが。
「抵抗する力も無い人もいる。だからこそ、他者を蹴落とすことで自分の心の安寧を保って居るのだろう……そんなの間違っている。だから俺達が、ここでその悲劇の連鎖を止めなければな」
腰に下げた剣に手を添え、精神統一するエーレン。
そんなイレギュラーズ達に託された今回の依頼は、スラム街での陽動作戦。
騒ぎを起こして、仲間達が中層に向かう為の『通行証』を手に入れようとする仲間達の動きを助ける事。
「うん、今回は陽動作戦! とにかく時間を稼ぐ事が最優先事項だね、ぼんちゃん!!」
と、『ぼんちゃんといっしょ』滋野 五郎八(p3p010254)が笑いながら言うと、それに『雷虎』ソア(p3p007025)と、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)も。
「そうだね。うーんと……注意を引いて、時間を稼げば良いんだよね?」
「ああ。今迄手をこまねいていたが、アドラスティアへの根本的な対処が、やっと動き出せた。やっと、この街に手を伸ばせる。今、チャンスを作るんだ」
「うん……何というか……このままにはしておけないもんね」
ソアは頷きつつ、振り返る。
その声のした方向からまた、何か子供の叫び声が聞こえてきたような気がする……。
「……時間を余り掛けておく余裕も無さそうじゃな」
「そうだね。正直な所……わたしは戦いたいわけじゃ無いんだよね。目的からすると、敵を倒しても何かが達成出来る訳じゃないし……」
『黒鉄守護』オウェード=ランドマスター(p3p009184)に『赤い頭巾の断罪狼』Я・E・D(p3p009532)が目を伏せる。
戦いたくなくとも……事態は進んでいく。
このままでは不味いからこそ、中層に繋がる為に『新世界』のメンバーの力が必要であり、今こそがそのチャンス。
「『新世界』……無理やり召喚されて、帰りたい旅人種の気持ちを知らない集団じゃが……まあ必ずや成功し、アドラスティア解放に、一歩を踏み出そうかね!」
「そうだね……という訳で『暴れて、殺さず、逃げ回るよゲーム』を開催するとしよっか」
オウェードにЯ・E・Dはこくりと頷き、そしてソアが。
「うん。それじゃあみなさん、陽動役、頑張ろうね!」
そう仲間達を鼓舞しつつ、イレギュラーズ達は人の陰極まるアドラスティア下層での陽動作戦を開始するのであった。
●聖なるかな者と共に
『みんな、こっちだ!! あそこに裏切り者がいるぞー!!』
『っ……ふざけやがってぇ!!』
更に、スラム街に響きわたる怒号。
裏切り者の汚名を着せられた孤児と、それを追いかける孤児とティーチャー。
アドラスティアに繰り広げられる、魔女狩りの日常……孤児達の告発を聞けば、周りの者は全て敵になる状況。
そんな日常を繰り広げる街中で目立つ為にはどうすればいいか……その答えは。
「それじゃあ、派手にやろうか……!」
騒動を上書きするが如く、イズマがスピーカーを通じて派手な音と、カラフルな光を街中で唐突に発する。
更にはその音色をサイレンや爆発音、燃える音など不穏な音も掻き鳴らすことで、更に騒々しくさせる。
…そんなイズマの掻き鳴らす音は、当然周囲に居た孤児とティーチャー達にも聞こえてきて。
『む……何だこの音は……皆さん、この音の元に裏切り者がいるかもしれません。さぁ、向かいましょう』
『え? あ、うん。判ったよティーチャー!!』
『よーっし!! それじゃーいっくぞー!!』
ティーチャーの言葉に従順に従う孤児達。
音の場所へ様々な方向から集結し……そこには、裏切り者の孤児ではなく、イレギュラーズ達の姿。
『裏切り者ではない……見ない顔だな、だれたお前は!!』
とティーチャーが問いただすと、それにオウェードとロレインが。
「さぁ……誰じゃろうな? 少なくとも、お前さん達の仲間じゃないのは確かじゃよ?」
「そうです。信仰を盾に暴力を許し、都合の良い駒として未来を閉ざす。アドラスティアのやり方は、天義の民としても許せない……覚悟、して下さい」
ティーチャーを小馬鹿にするように名乗りを上げつつ、己達が敵であるというのを刷り込む様に言い放つ。
一方で孤児達に向けては、イズマは。
「俺達はローレットだ。キミ達のことが知りたくて、来たんだよ?」
と優しく笑い掛けながら、孤児達の警戒心を下げるように取り繕う。
……だが。
『何……!? 私達のやっている事は間違ってなどいない! 皆……いいですか? あいつらも、裏切り者です。アドラスティアの教義に反する事をしている彼らは生かしてはおけません。殺した子には、ご褒美をあげましょう!』
『え、ティーチャー本当!? うん、判った!! 絶対に殺すね!!』
『そうだそうだ!! よーっし、頑張って行くぞー!!』
ティーチャーの指示の下、威勢良く『殺す』等と言う言葉を軽々しく口にする孤児達。
そして様々な方角から、次々と孤児達はその手にナイフや鍬の様な刃物を持ち、躊躇する事無く攻撃為てくる。
しかし、まずはその攻撃を素早い動きで躱していくのはソアとЯ・E・D。
『え? 消えたっ!?』
『いや、あそこにいるぞっ!! えーーいっ!!』
各々の孤児達の攻撃自体を躱す事は、そこまでむずかしい事ではない。
ただ、ティーチャーにより指導を受けて、次々と波状攻撃を仕掛けてくる為、手数が多い。
そんな孤児達の攻撃を躱しながらも、ソアとЯ・E・Dは。
「キミ達はどうして、ボク達を殺そうとしているのかな? ティーチャーに言われたから? ティーチャーの言葉、全部が全部正しいのかな?」
「わたし達は、あなた達を助けたいと思っている。ティーチャーを盲目的に信じる事なんて、必要無いよ?」
と声を掛けていく。
だが、子供達はというと。
『うるさーいっ! ティーチャーの言う事は、ぜーったいぜったいに正しいんだーっ!!』
『ティーチャーが嘘つく筈無いだろー! やっぱりアンタ達は裏切り者だ!!』
と罵声を浴びせかけ、全く聞く耳を持たない。
そして、そんな子供達の攻撃をアクロバティックな動きで躱したり、惹きつけたりしてもらいつつ、エーレン達が、直接ティーチャーの懐へと潜り込む。
『っ……来るなっ! おい、あれを呼んでこい!!』
別のティーチャーに指示を与えるティーチャー。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。そこのコソコソ隠れている大人。神の名を借りれば全てが許されると思うなよ!」
エーレンが威圧しつつの牽制を行う。
イレギュラーズ達の動きは、今の所倒す為ではなく、彼らを牽制する為の動き。
ただ、孤児とティーチャー達はそんな事おかまいなく、目障りなイレギュラーズ達を殺すべく、容赦無く攻撃してくる。
「ええ……ええ。元気があって良い事です」
とライは敵の動きに微笑みつつ、その手のロザリオに祈りを込めて、自己の力を強化していく。
次の刻、最速にソアが。
「子供達を苦しめるのは、許せない。でも、殺さない……」
と自分に言い聞かせるようにしつつ、孤児達の下から迅速にティーチャーの懐に潜り込んで、嵐の如き封印の一閃を放つ。
続くЯ・E・Dは、孤児達への対応を継続。
先陣を切って攻撃してくる子供達を素早い動きで惹きつけつつ、その手から放つ光の糸で絡め取り、行動を大幅に制限していく。
『う、体が重いよぉ……!』
雁字搦めにされた子供の悲鳴に、Я・E・Dは。
「追いかけてきても無駄だよ。あなた達じゃ、わたし達には追いつけないから」
と言い放ち、更にイズマ、エーレン、五郎八も子供達をターゲットに収める。
勿論殺す為ではなく、彼らを救うために不殺を常に選び、攻撃していく。
その一方で、ロレイン、オウェード、ライの三人の狙いはティーチャー達。
数人のティーチャーが笛を吹き……その音色を聞いた聖獣を呼び寄せようとする。
流石にそれを妨げることは出来ないが、笛を吹いた者共を纏めて範囲に収めて。
「目を覚ましなさい。暴力を伴う信仰など、かつての天義でさえほとんどなかったでしょう?」
ロレインの聖句と共に放たれる雷鳴は、ティーチャーだけをターゲットに降り注ぐ。
更にはオウェードの重い重い一撃が積み重ねて脳天から地面に叩き伏せると、そこにライの捧げる平和の祈りで、一人を確実に不殺に落とす。
『っ……!?』
仲間が倒され、驚愕の表情を浮かべるティーチャー……それに。
「ご安心ください……彼はまだ息があります。彼を救う善行を、きっと神は見ておられるでしょう、勿論……私達も邪魔はしませんよ?」
と、赦しを与える事で彼等が寝返る事に一抹の期待を抱く。
だが、やはり。
『くそが……皆、殺せ、死ぬ気で殺せ!! サボった子も裏切り者だ、殺せ!!』
と孤児達に殺戮命令を下し、孤児達は裏切り者の烙印を押されない様、一層奮起。
更に、空から飛来する羽根を生やした虎が戦場に降り立つと。
『わーー!! かみさまがきたー!!』
『かみさまの前で戦えるなんて、俺達ついてる、絶対に裏切り者を殺すぞー!!』
一層色めき立つ子供達は、聖獣に鼓舞される。
そんな聖獣に、速攻でソアと五郎八、オウェードの三人が即座に対峙。
『ガルゥ!!』
高らかなる咆哮と共に強烈な一撃を放つ。
「ガハハ! ワシの鎧を破れると思ってるのかね!?」
と、その攻撃を敢えて受けるも、強烈な装甲ではじくオウェード。
『何だと……!?』
ティーチャーは驚き目を丸くさせて動揺。
更に聖獣へ五郎八は立ち位置をシフトし、死の凶弾を一直線上に放つ。
加えてライの破壊の砲撃と、イズマの漆黒の大顎。
聖獣達に対しては、一切手加減をする事無く、熾烈な攻撃を大量に重ね行く。
勿論その間、孤児とティーチャーは牽制し、戦況を継続させる。
そして聖獣達の襲来より数刻。
『グギャアアア!!』
と聖獣の断末魔の悲鳴が響きわたる。
『なんだと……!?』
想定していなかった、と愕然の表情を浮かべた彼等に、オウェードが。
「見よ!お前さんらが崇めて来た者の無惨な姿を! それでもまだ戦えるか!」
と、動揺を揺さぶる様に言い放ち、エーレンも。
「いいか、考えてもみろ! 子供たちがお互いに蹴落とし合って少数しか生きられないのは何故だ! この国の懐が狭いからだ! 差し伸べる手はいくつもある。外の世界では、そんな事をしなくとも生きていける道はたくさんあるぞ!」
と大きな声で叫び、彼等の目を覚まさせようとする。
しかし……。
『……煩いっ!! お前達に、私達の真意など分かるはずもない!!』
『死ぬ気で、殺せ。いいか、殺せ殺せ殺せっ!!』
『う……う、うん……』
ティーチャーの絶叫と、恐怖を感じながらも、頷かざるを得ない子供達。
「……あなた達が頼り差し伸べられた手は地獄そのもの。その手に縋り続ける限り、魔女狩りの恐怖と暴力はつきまとう……その手にあるのは現状を打ち壊す武器であって、祈りの手ではないはずよ」
「そうだ。この街は、キミ達が生きるにはあまりにも狭い……それでも未だ、武器をとるか?」
ロレインとイズマの言葉……だが、最早引く道は失われており。
『煩い……煩いっ!!』
言葉の否定と共に、死に物狂いで反撃。
「そう……それじゃ、仕方ないね」
悲しげに呟く五郎八。
そして、仕掛けてくる子供達を殺さぬように注意を払いながら、ティーチャー達を確実に仕留めて行くのであった。
●横凪ぐ風
「うーん……この位で良いかな? 必要なら殺し遭いもするけど、必要無いなら無駄に血が流れる必要は無いからさ」
Я・E・Dの言う通り、子供達を不殺にどうにか収めたイレギュラーズ。
このスラム街の周りに居たのは大方惹きつけたことだろう……後は、仲間達が中層へのアクセスを無事に行えるのを祈るばかり。
……とは言えこのまま孤児達を放置しておく訳にも行かない……だから。
「ちょっと我が儘かもしれないけど……子供達が目を覚ますまで、待っててもいいか?」
とイズマの言葉に五郎八も。
「そうだね。子供達が悪い訳じゃないし、彼らを救えるなら、救いたいですしね!」
そう頷く。
暫くの間、子供達が目を覚ますのを待ち……十数分して、彼等が目を覚ます。
『……?』
視線はぼんやりとしており……周りの状況が、まだまだ上手く飲み込めて居ない模様。
そんな彼等に対しオウェードはぽん、とその頭を一人一人撫でつつ。
「このままお前さんらが帰れば、恐らく崖に落とされるじゃろう……それが嫌なら、ワシらに付いて来い。後の事は保障しよう……」
と声を掛ける。
そんな彼の言葉にエーレンも。
「ああ、オウェード殿の言葉は正しい。少なくともお前達の衣食住と学びの保障はしよう……そう言えば言ってなかったか。俺達はローレット。実は悪者ではない組織だ」
と、子供達に、アドラスティアからの退避、そして保護を申し出る。
でも子供達は……今迄この街から外に出たことが無い……だから不安。
「……不安に思うのも仕方ありません。でも、ティーチャーの方々ももう居ません……私達についてくるも、この街に留まるのも自由……少しの勇気で新たなる道を踏み出すのも、貴方達の意思一つです」
ライは、シスターとして、子供達の選択を促す。
……そして、子供達は。
『……ほんとうに、まもってくれる……?』
まるで捨て犬が庇護を求めるが如く、上目遣いで呟く。
「ああ。約束だ」
イズマが強く頷き……子供達は互いに顔を見合わせて。
『……わかった、ありがとう……』
と、イレギュラーズ達の手を取るのであった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
アドラスティア侵入、お疲れ様でした。
子供達の将来も気に掛けて頂くプレイングも多数頂けたの、心が少しばかり暖かくなりました……ありがとうございます……!
GMコメント
皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
今年もどうぞ、宜しくお願いします。
今回の依頼ですが……アドラスティアの全体シナリオとなっております。
●成功条件
アドラスティア下層で子供達やティーチャーの気を惹く為の陽動作戦となりますので、
子供達・ティーチャーを暫くの間足止めする事が出来れば成功です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●独立都市アドラステイアとは
天義頭部の海沿いに建設された、巨大な塀に囲まれた独立都市です。
アストリア枢機卿時代による魔種支配から天義を拒絶し、独自の神ファルマコンを信仰する異端勢力となりました。
しかし天義は冠位魔種ベアトリーチェとの戦いで疲弊した国力回復に力をさかれており、諸問題解決をローレット及び探偵サントノーレへと委託することとしました。
アドラステイア内部では戦災孤児たちが国民として労働し、毎日のように魔女裁判を行っては互いを谷底へと蹴落とし続けています。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/adrasteia
●周りの状況
アドラスティア下層は、言うなればスラム街の様な様相を呈しています。
掘っ立て小屋の様な家々が立ち並び、見通しも悪いです。
当然ながらそんな場所に住んでいる子供達やティーチャー達は健康状態は悪い……ですが『魔女裁判』によって仲間を売ることで強力な力を得たりしている者も居る様です。
●討伐目標
アドラスティア下層にいる『子供達』や『ティーチャー達』が軸となります。
彼ら彼女らは戦災によって親を失った孤児の子達が多く、ティーチャー(今回は孤児達を養う孤児院の神父様・シスター様等)によって統率された状態での戦闘になります。
ティーチャー達は、はっきり言って孤児達を戦闘に使える駒、の程度にしか思って居らず、自分の身を守るために孤児達を盾にするのも厭いません。
孤児達は武器を持ち、命を厭わずに攻撃してきます。彼らについては人を殺す事も厭いませんので、下手な慈愛を向けても、彼らには効果が無いでしょう……心底から彼らを説得すれば、確率は低いですが説得出来るかも知れませんが。
この子供達とティーチャー達の他に、数匹ではありますが『聖獣』と呼ばれる魔物が存在します。
その姿形は獰猛な虎の様ではありますが、背中に2対の羽が生えており、飛行する事が可能です。
尚、彼らは子供達からは、聖なる存在として崇める対象であり、彼らと一緒に戦えるという事に士気高揚しています。
それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。
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