PandoraPartyProject

シナリオ詳細

たすけて!大掃除が終わらない!

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 砂嵐、とあるオアシスの町にある古い館。その主、キドー・ルンペルシュティルツは外出の準備を進めていた。
 年齢の割にはよく動く短い手足を忙しなく動かし、原稿用紙にペン、手帳、そして愛用の煙草の箱を、次々に古い鞄へ放り込んでゆく。
 皺の少ないシャツを見繕い、鏡の前でベストのボタンを片手で器用に留め、右袖にピンを刺した一張羅の上着に片腕を通す。
 真っ白になった髪と髭を整えながら、既に無数の皺が刻まれた緑色の肌につい、新しい皺を探してしまう。
 右腕を喪って数十年。もはや左腕一本だけでも手間取ることはない。幾度も、幾度も繰り返してきたルーティーン。
 そう、云うことになっている。

 ここはネクスト。練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界。
 この老いたゴブリン、キドー・ルンペルシュティルツはこのネクストの住人。仮想環境上に構築され、数十年砂嵐地域で活動してきたという『設定』を付与されたデータ、NPCである。
 けれどそれが事実でも真実でもあっても、この世界に生きる者達にとって(極一部の例外を除いて)は関係のないこと。
 それでも、彼はここで生きている。

 世界が滅びかけてから数週間。キドーの日常はようやく元通りになりつつあった。
 傭兵たちへの取材へ出かけて、共に話し、酒を交わし。時には、取材の条件として血なまぐさい乱闘に巻き込まれたりもした。(対処はイレギュラーズに押し付けたが)
 持ち帰った取材メモと記憶を元に、書斎に籠もってペンを走らせる。傭兵達の足跡を親しみやすい物語に整え、それが子供達の元へ届き、キドーは日銭を得る。
 その繰り返しがキドーの日常だ。

 ドアをくぐればいつもの光景。高い空に強い日差し。泥を塗り固めた日干しレンガの家々の間の乾いた小路を、水瓶を載せたロリババアが男に引かれて通り過ぎてゆく
「ここらでひとつ、大物に取材を申し込むか。それか、世界を救った英雄サマを……」
「ノジャア〜〜〜」
「……誘って、飯でも食うか」
 のじゃりながらゆっくりゆっくりと歩く幼女フェイスにロバボディのネクスト原生生物を見送り、キドーは片手で煙草に火をつけて独りごちた。
 吐き出された煙は砂嵐の乾いた空へ風に乗って散ってゆく。こんな何気ないごく普通の光景こそが、イレギュラーズが護ったかけがえのない……

 ドグワッシャ!!ズガゴロロロゴガガ……。

 キドーの背後、つまり先程閉めたドアの向こう側からすごく嫌な音がした。
 具体的に言えば、硬かったり柔らかかったりする多種多様な大量の何かがまとめて落ちて崩れて、それからごちゃまぜになりながら濁流のように転がってゆく音だ。
「アッ、アッ! ヤバイ。これはいかんマジで」
 老骨らしからぬ瞬発力でキドーが飛び退いたその刹那、破壊されたドアと共に、圧倒的な質量が押し寄せてきた。



「ノォ↓ジャアアァァァ↑」
「世界が滅びるか滅びないかの瀬戸際で、大掃除どころじゃあなかったもんなァ……」
 ギリギリ成立するかなってぐらいの言い訳をこぼしながら、キドーはガラクタが散乱する小路で3本目の煙草を踏み消した。ロリババアは20mぐらい進んだ先でのじゃった。

 そうだ、イレギュラーズ呼ぼう。
 そう思った。

NMコメント

 はじめまして。或いは、お久しぶりです。ゴブリンです。
 全二章のラリーシナリオです。一章は大掃除。二章は依頼主キドーの奢りでおつかれさま会の予定です。

 はじめてのクエストテイル。どうか皆さん、今年(去年)の汚れを今年(去年)のうちに片付けられなかった老小鬼に救いの手を。


●クエスト目標
・老小鬼の住処を生活可能な状態まで復帰させる。

 早い話が、遅すぎた大掃除です。
 家事や料理、力仕事など得意分野で活躍してみたり。或いは、苦手分野なりに奮闘してみたり。大掃除というイベントを通じて自由にキャラクターを表現して楽しんで頂けたら幸いです。


●老小鬼の住処
 今回の戦場です。
 元々はとある商人の家だったようです。何やら後ろめたい事情で手放され、何やかんやな経緯を経て老作家 キドー・ルンペルシュティルツの住処になりました。
 豪邸という程ではありませんが、老いた小鬼が独りで住むには「」広すぎる中庭付きの家です。使われていない部屋も幾つかあります。

以下、主な部屋の説明です。
プレイングの一行目には、どこを掃除したいか【居間】【書斎】【台所】【その他】のタグで指定してください。
 指定を忘れてしまっても、それらしい所で執筆しますので大丈夫です!

【居間】
 最も酷い状況です。
 足の踏み場もないとはこの事です。

 傭兵としての現役時代から今に至るまで、キドーが蒐集した戦利品や資料。客人に押し付k……寄贈された品々。等々の数多くの物品が積み上がり層を成し……そして、崩壊しました。玄関ドアも破壊されました。
 ちょっとアブナイ物や、モンスターから剥ぎ取った生モノなどが紛れ込んでいるかもしれません。
(プレイングで何を発見したのか指定して頂いて構いません。それに驚いたり、呆れたり、自由にリアクションすると楽しいかもしれません。)

【書斎】
 酷い状態です。
 床は見えています。
 キドーはここに居います。『いるものBOX』と『いらないものBOX』を用意し、目についたモノをとりあえず『いるものBOX』に放り込んでいます。

 普段、キドーの仕事部屋 兼 寝室です。大きな机と小鬼の体格に合わせた椅子、本棚、ほとんど使われていないベッドがあります。
 居間と同じような状況ですが、積み上がった物品の層は崩壊していません。
(居間と同様に何を発見したのか指定して頂いて構いません。居間よりもっと個人的な物品があるかも……?)

【台所】
 マシな方です。
 埃が積もっている程度。使われてこなかったようです。

 掃除はした方が良いでしょうが、それほど手間取らないでしょう。
 この場にそぐわないガラクタはありませんが、本来あるべきモノもほぼありません。調理器具は必要最低限。食材は干し肉やドライフルーツなど保存食が少々。
 水はオアシスの井戸から汲んでこなければいけませんが、かまどは問題なく使えます。
(掃除の他に、調理も可能です。肉体労働にはエネルギー補給も必要ですから!)

【その他】
 上記の他に使われていない部屋が幾つかあります。ドアは封鎖されていて、キドーも把握していません。
 ちょっと息抜きに探検してみるのも良いかもしれません。もしくは……サボっちゃう?


●NPC
・キドー・ルンペルシュティルツ
 依頼主。老いたゴブリン。
 ROOでのキドー(p3p000244)。NPCです。砂嵐を中心に活動している元・傭兵で現・作家です。自身の経験と、傭兵への取材を元に子供向けの冒険小説を執筆しています。
 彼も大掃除に参加しています。基本的に【書斎】にいますが、プレイングで指定して下されば他の場所にも出没します。


●サンプルプレイング
【居間】
どうしてこんなことになるまで放っておいたんですか……!ねえ!?
とにかくこの大量のモノを分別しましょう。とりあえず、燃えそうなモノと燃えなさそうなモノに!
全ては燃やせば解決します!燃やしましょう今すぐに!消毒!加熱殺菌!です!
だってこんな何かよくわからないモノ、ばっちくてあんま触りたくないです私

  • たすけて!大掃除が終わらない!完了
  • NM名ゴブリン
  • 種別ラリー(QT)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年05月05日 02時30分
  • 章数1章
  • 総採用数6人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

グドルフ(p3x000694)

「よおし燃やそう家ごと丸ごと。どうせ全部ゴミなんだろ」
「酷いこと言うねェ、若いの。老い先短いこの俺から終の棲家すら奪う気かよ? え?」
「もう許してやれよ。早く楽にしてやろうぜ、この家を」
「いいや、まだまだ付き合って貰うね。潰れるまで使い倒してやらあ」
「老い先短いんじゃなかったかあ!?」

 書斎では箱と箱の間でガラクタを行ったり来たりさせながら、山賊と老作家の言葉の応酬も続いていた。
 とりあえず『いるものBOX』にガラクタを放り込むキドーと、それを根こそぎ奪って『いらないものBOX』に突っ込む『山賊』グドルフ(p3x000694) 。大袈裟に言うならば、強欲と強欲のぶつかり合いであった。
「ちっ……めんどくせえ! 3日つかわねえものはゴミでいいんだよ!」
 ネクストでの付き合いは長くはない割にこなれた雰囲気のやり取りを強引に断ち切ったのはグドルフであった。
 『いらないものBOX』を抱えて、足元でウダウダ文句を言う老いぼれゴブリンを軽く蹴っ飛ばし、外へ走る姿はまさに山賊!
 そうして哀れ、ガラクタたちは用意されていたドラム缶の中で踊る炎に包まれた。

「て、てめェこの小僧……!」
「げはは! 焚き火にちょうどいいぜ!」
 炎に照らされて一層増した悪人ヅラで笑うグドルフを、追い付いたキドーが息を切らして下から睨め付ける。

 ボズン!

 炎の中で何かが爆ぜる大きな音。思わず二人は揃って肩を竦ませたのであった。

成否

成功


第1章 第2節

蕭条(p3x001262)
叩いて直せ!
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用

 大掃除の手伝い。それが『叩いて直せ!』蕭条(p3x001262)が受けたクエストの内容の筈であった。
 しかし、リアルな景色に浮かび上がるいかにもゲームでございといった風のシステムガイドを頼りに目的地を訪ねてみれば、目に飛び込んできたのは黒煙をあげて燃えるドラム缶の傍で言い争うガラの悪い中年と老人という近寄りがたい光景。
 訪ねる家を間違えたかと蕭条は辺りをぐるりと一周し、そして結局元の場所に首を傾げながら戻ってきた。
「こんにちは、大掃除のお手伝いが必要と聞いてやってきまし……」
「確かに、全部燃やした方が早いですよね。山賊殿は賢い。金目のもの回収しきったら更地にして、新居を借りるか建てた方が早いかも知れません」
 けれども戻ってみれば、大掃除らしからぬ、債権者じみた事を言って埃をかぶったガラクタを容赦なくドラム缶へshoooot!! エキサイティンッ!!してゆく『書類作業缶詰用』黒子(p3x008597) の姿。それはもう、容赦なく入れていた。
「ソーリーおうち間違えましたー、失礼しましたーー」
 蕭条は回れ右をして町内一周の旅TAKE2を続行するのであった。



 軽いアクシデントはあったものの、イレギュラーズの協力で大掃除は順調に進んでいた。家も無事だった。

 価値のありそうなモノは売り出して後の打ち上げ会の資金の足しにするという黒子の発案の元、蕭条はガラクタの選別と修理を担当していた。
 具体的に言えば、選り分けたガラクタを胸ビレでぺちぺち叩いていた。
 極めて正確な斜45度。斜め上からの迷いのない軌跡。気合の入った掛け声と共に繰り出されたその一撃は、亜竜種らしき頭骨を真っ二つに叩き割った……。
 大丈夫!想定通りです!
 何度目かの打撃の後、ペロンという気の抜けた電子音と共に頭骨は元の形に修復されていた。それどころか、欠けていた筈の角まで元通りになっているではないか。然るべき鑑定眼を持つNPCの元へ持ち込めば価値が付くことだろう。
 これが蕭条のアクセスファンタズム。叩けば直る(断言)。間違いない。

 一方、黒子は破壊音と電子音を背に、驚異的な速度で書類を纏めてバインダーに閉じていた。もちろん、速さに任せてテキトーに進めている筈が無い。
 キドーが記録したメモや収集した資料。他者の目に触れることを前提としていないそれらは分類はおろか解読すら困難な状況であった。
 だがそれは黒子の前では困難と呼ぶのも生ぬるい。メモからキドーの筆跡情報を集積し、それらを元に不明瞭な部分を解読・修復。並行して、使用されている単語や紙の古さを基準に国別・時系列で分類。
 こうして書いてしまえばやっていること自体は単純だ。黒子が優れているのはその処理速度と正確さ。常人であれば数時間、いや数日かかる時間と手間を短縮し、ミスを排除する。
 1と0とで構築された疑似世界でも、歯車には一切の狂いも歪みも無かった。

成否

成功


第1章 第3節

神谷マリア(p3x001254)
夢見リカ家
きうりん(p3x008356)
雑草魂

「火の手が上がってたしそろそろ家全部燃えたかな~? って思ってたんだけど、案外しぶといね!」
「まだ燃えてもらったら困るにゃ! こういう一見なにも無さそうなところにこそ、お宝は隠されて……はっくしょん!!」
 キドー邸は相変わらず存亡の危機にあった。じゃなくて。ここ、台所でもイレギュラーズの協力で大掃除は順調に進んでいた。
 食器や調理器具を自ら品種改良したヘチマスポンジで洗いながらあっけらかんとした口調で言う『わるいこ』きうりん(p3x008356)の横で、 棚を漁っていた『夢見リカ家』神谷マリア(p3x001254) が大きなくしゃみをしてしっぽの先まで毛を逆立たせる。
 ちなみにこのヘチマスポンジ、きうりんが1000Gでキドーにセールスしてみたところ残念ながら売れなかった。水も洗剤も要らない便利なスポンジなのに!
 モノは良いが、セールス先が悪かった。

 独り身であること。そして、長らく根無し草の傭兵暮らしであったこと。これらの理由によりキドーには自炊の習慣が一切なかった。基本は外食。たまに家で干し肉やドライフルーツを齧る程度。
 そのため台所に近寄らず、おかげで居間や書斎と比べて遥かにマシな状況で収まっているという利点はあった。……あった、のだが。

「にゃああああ!!!」
 さっきはくしゃみをしていたマリアが今度は悲鳴をあげた。その理由は先ほど戸棚の奥から掴み取り、そして間髪置かずにゴミ箱の底へにダンクシュートされた干し肉の束。
 腐るということは微生物に分解され消費されるということである。微生物に分解も消費もされにくい保存食というものは、適した保存と消費がされなければ微生物よりも大きな生物を寄せ付けるということで……。
 詳しく描写は控えるが、いた。目に見えるのが色々と。重ねて束になった隙間とかに。つぶつぶ、つやつや。
「にゃああ! もったいないなら今すぐ食ってみろにゃああ!」
 容赦なく保存食を捨て、衛生的な環境を取り戻してゆくマリア。流石のキドーもこれには文句も小言も言えないだろう。

 一方、食器類、調理器具や洗い場周辺の洗浄を終えたきうりんは調理に取り掛かっていた。この家の以前の持ち主だった商人一家が出て行って以来初めて、この台所が真っ当に使われた瞬間であった。
「きうり炒めでいいかな!ㅤいいよね!」
 フライパンの上できゅうりが踊る。きゅうりは生で食べるイメージが強いが、火を通しても案外美味い。栄養はほぼないそうだが。
 棚の手前の方にあった無事な唐辛子でピリ辛に味付けされ、ごま油のツヤと香りを纏うきゅうり。卵や肉と合わせても良いが、ここはあえてきゅうりをメインに据えて作った。
「こりゃあ完全に酒のアテだなあ」
 横で覗き込んでいたキドーがきゅうりをつまみながら呟く。いつの間に!
「あっ、ヘチマスポンジ買う気になった? 今ならなんとお値段たったの1000G!」
「いや。買わねえ」

成否

成功


第1章 第4節

樹里(p3x000692)
ようじょ整備士

「ふむ…げんじょーはおーそうじしたいけど、ものがおおすぎてそもそもそうじができないじょうたい、ですね」
 『ようじょ整備士』樹里(p3x000692) は腰に手を当て、小さく頷いた。
 黒子と蕭条が修復した金目の物をそれなりの量持ち出し、そうでないものは灰になったものの、未だに居間には物が溢れかえっていた。こうも物が多くては掃除もままならない。
 この状態を改善するには何をするべきか。まずは物を減らしてゼロに近づけるべきだ。では、どうするべきか……。

「あるものをてきとーにニコイチしていけば、おのずともののかずが減っていくいはずです!」
 たった一つの冴えた答え!樹里はぱちーんと指を鳴らした。
 樹里の小さな身体に溢れんばかりのイマジネーションが湧き上がる。ここはようじょ整備士の腕の見せ所。イマイチときめかないものはとりあえず玄関の方へ寄せておく。きっとドラム缶に放り込まれて灰になる筈だ。
 残った物をセンスと直感で選び取り、組み合わせたりくっつけたりしてゆく。1個と1個で2個。くっつければニコイチ。
 居間にカーンカーンと軽やかな音が響く。トンカチでくっつくものか?と思う物もあったが、そこは仮想空間。何とかなるものだ。

 暫く経って。
 居間には名状し難く、しかし奇妙な存在感と惹きつけるものに溢れたオブジェがそそり立っていた。
「あとはおそうじだけですね」
 樹里は腕をまくってやる気をみなぎらせた。

成否

成功


第1章 第5節

 ――ひどく手こずったが、なんとかなった。まるで……そうだな、体感的には一年以上大掃除が終わらなかったような……。
 ――まあ。なんにせよ、あんたらがいなけりゃあどうにもならなかったし、終わりもしなかっただろう。感謝してもしきれないよ。

 老小鬼はなんとも言えない左右非対称な笑みで感謝の言葉を述べながら、皺だらけの左手を差し出した。
「なんでもそうだが、後回しにするもんじゃないねえ。積もり積もって忘れた頃に伸し掛かってくる」
 肩を竦めた老小鬼とあなたの間に砂嵐の乾いた風が通り抜けて、空っぽの右袖がはたはたと踊った。

PAGETOPPAGEBOTTOM