PandoraPartyProject

シナリオ詳細

極寒に消ゆ

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 R.O.O、ネクストにおけるラサ――すなわち砂嵐、その一角。
 翡翠に聳える青々と茂った木々に雪が降り積もる頃ともなれば、木々は眠り芽吹きが途絶えたとて違和感はない。
 では、砂嵐ならば? 砂漠気候を有する砂嵐。地方によりその差はまちまちであるが、此度焦点を当てるインベルノにおいては、その名が冬を冠する通りの真冬が砂漠を覆う。
 息をするのも憚られるような極寒の中に取り残されてしまえば、生きて帰るなど砂漠に落ちた糸屑を探すようなもの。不可能に等しいのである。
 ただしそれは知られていないだけで、インベルノ地域特有の魔獣、ギアッチョが猛威を奮っているのである。一定期間ごとにスポーンする彼らを打ちのめすことさえできれば、命を繋ぐことも容易だろう。しかし、それを知ることがなければ、なすすべなどないのである。
「おい、目を覚ませ! 救難信号は出したんだ、諦めてたまるかよ!」
「けどよぉ、こんなに寒いんだぜ。俺たちこのまま凍え死んじまうよ……」
「まだ諦めるには早えよ。俺たちにゃまだやらなきゃいけねえことが山程残ってんだ。飲み残した酒とか、置いてきた女とかな!」
「で、でも、寒いんだよぉ……」
「おい、なぁ、おい……しっかりしろ!」
 身体を揺すれども微かに開いた目に最早意識等感じられない。反射で開いたかのようなその瞳は緩やかに濁りだす。
「畜生ッ!! 誰も気づきやしねえのかよ……ッ!」
 ゆったりと積荷を引いていた駱駝も虫の息だ。ここまでの相棒と身体を寄せ合えども、凍えるような寒さが意識も、命の灯火さえも奪い去ろうとしていた。
 夜闇に合わせてギアッチョの唸り声が星空に溶ける。ガチガチと震える歯の音が、それすらも消し去ってしまうけれど。
 日中に合わせて誂えた薄い布ではこの極寒の夜を耐えきることなど夢のまた夢、千夜一夜物語にすら登場するはずのない物語だ。だからこそ、救わねばならない。否、きっと救えるはずだ。
 電子世界であろうと、それが命だと肯定した君たち特異運命座標ならば。
 天候、砂嵐時々晴れ。人々が日較差に潰える前に、どうか。


「ようこそおいでくださいました、それでは情報をお伝えいたします」
 此度のクエストを案内するのだという少女――コルクが手をひらりと振った。
 今回のクエストにおける同行NPCである彼女は、集った面々を確認しながら、その薄い唇を開いた。
「今回討伐しなくてはならないエネミーはギアッチョ。狼に近い姿をしていますが、実態は魔獣です」
 手渡された資料によれば、氷を纏う狼のような姿をしているようだ。実態は狼よりもより凶悪で有害、今回のクエスト発生の原因そのものである。
 また、と加えてコルクは口を開いた。
「救難信号が出されてから時間が経過しているようですから、早く対象を見つける必要があるでしょう」
 依頼を出したのだという同僚からの伝言は、案外にそっけないものだったようだ。が、しかし依頼を出しているのだから、それなりに心配ではあるのだろう。だからこそ、見つけなくてはならない。
 サクラメントが淡く光りだす。瞬きほどの間に、先程いたオアシスから遠く離れた砂の上へと飛ばされてしまったようだった。
「さて、皆様。準備は宜しいですか?」
 大きなライフルを構えて笑ったコルク。空が静かに藍色を滲ませはじめた頃。

 消えかけていた灯火が、また微かに灯り始めた――

NMコメント

 クエストテイル実装! ということで張り切りました。
 どうも、染です。砂嵐にて発生したクエストをお伝えいたします。

●クエスト内容
 遭難した人々の保護

 道中では戦闘が行われる可能性があります。十分に注意してください。
 また、このクエストテイルではデスカウントが増加する可能性があります。ご注意ください。

 ※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
 『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。

●フィールド
 砂嵐の夜。
 インベルノと呼ばれるエリアです。
 日中はなんら通常の砂漠と変わりませんが、夜間になるとみるみる気温を下げてしまい、多くの人が彷徨うとの噂。
 体調には十分に注意して進みましょう。
 最寄りのサクラメントからはある程度距離があります。が、ちゃんと追いつける距離です。
 また、視界が悪いため光源の用意やスキルなどで創意工夫が必要でしょう。

●エネミー
 ・ギアッチョ ×無数
  氷の狼のような姿をした魔獣です。3~5匹ほどの群れを形成して動きます。
  非常に嗅覚と聴覚が鋭いです。反面、視力が弱いので上手く行けば戦闘を避けて通れるかもしれません。
  彼らは人間を発見すると襲ってくるため、注意が必要です。
  氷結系BS各種、出血系BS各種を持ったスキルを使用します。
  噛みつかれるとHPを吸収されるので注意が必要です。
  ギアッチョを一定数倒す毎に気温が上昇するため、戦闘のみを行っても構いません。

●保護対象
 ・ラサのキャラバン
  5人で形成された小規模キャラバンです。
  派手な柄の布を纏っているため、スキルなどを使用した場合の発見は容易でしょう。
  寒さに体力が奪われているため、なにか温かい飲み物などを用意してあげるといいかもしれません。
  回復スキルなどを使っての蘇生も可能ですが、あくまで NPCのため死亡するとイレギュラーズのように復活はしません。

●友軍
 ・コルク
  PCNPCです。
  指示がなければ攻撃に加勢します。遠距離アタッカー、回復などは持ちません。
  混沌における【暗視】スキルを保有しています。

●サンプルプレイング(コルク)
 さて、それでは参りましょう。
 ギアッチョ……は、あちらの獣でしょうか。音を立てぬように慎重に行くべきでしょうか。
 いえ、やはりここは戦闘をしてこそのクエストですわ。
 アクティブスキル1で狙いを定めて、打ちます!

  • 極寒に消ゆ完了
  • NM名
  • 種別クエストテイル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年01月10日 22時22分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

樹里(p3x000692)
ようじょ整備士
回言世界(p3x007315)
狂言回し
アーゲンティエール(p3x007848)
魔剣遣い
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影

リプレイ


 コルクよりクエストを受注した四人は早速砂漠のサクラメントへと転送される。
 時間帯は夜。電子空間だと言うのにやけにリアルな微風が頬を撫でる。きらきらと瞬いた星はこれからの険しい旅路を応援するかのようだった。
 目を細めても砂漠らしい砂の山と濃紺の夜が見える以外には何も見えそうにない。これでは砂漠の砂の中におちた金をひろうよりももっともっと大変そうだ。
「皆様、お集まり頂きありがとうございますわ。ここからは徒歩での移動となります。それから、天気はエネミーの影響があるようです。慎重に進むことを推奨いたしますわ」
 NPCである彼女はにこりと微笑んだ。
「成程、エネミーの影響で気候が左右される事もあるのだね。そうでなくとも夜の砂漠は危険だ…早く見つけてケアしなくては」
 これが現実のラサであっても同じように厳しい道中になっていただろうし。現実なら己も死んでしまう可能性があるから一層注意を払わねばならないが、R.O.Oのなかならそんなことはない。だいぶ気楽なものだ。
 ぼんやりと考えた『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)が夜の砂漠に吐息をとかした。頭上で煌めく宵星がイズルを嘲笑うようだった。
「よるのさばく、こごえるほどのさむさ。…わたしはこの聖骸布があるのでわりあいへいきですが、キャラバンのためにチョコと、あと火酒でももっていってあげましょう」
  何にも侵されない聖域としての修道服――美しき信仰を砂埃と共にはためかせた『祈りの存在証明』樹里(p3x000692)はぼんやりと紺の空の境に目を凝らす。そう簡単に見つかればいいのだが、夜に目がなれるまでは見つかりそうもない。
 手元に用意された人数分の光源だけでは手元を照らすことしかできず、エネミーたるギアッチョを引き寄せることになりそうだ。ふぅ、と吐息でその炎を吹き消した。
 かくして再び真っ暗になった夜の砂漠。これでは進むのも一苦労だし戻るのも一苦労だ。
「現実側の我自身の修練も同時に積めるようだし一石二鳥、やらない手はないね。まずは目の前の生命の危機を救うところからだ。今一度気を引き締めてかかろうか」
 鎧の下に笑みを浮かべた 『魔剣遣い』アーゲンティエール(p3x007848)は仲間を見渡し。それに頷いた『貧乏籤』回言世界(p3x007315)は砂に足をとられつつもしっかりと一歩を踏み出した。
(さて、R.O.Oでの挙動にも慣れてきた……というか現実とほぼ変わらなんな。もっとも向こうと違って今の俺は装備も力も心許無いがそこはしょうがない。これからどうにかしていくしかないな)
 過酷な環境にもある程度の耐性を持つ冒険者ならではの屈強な身体を活かし世界は道なき道を先導すべく先を歩く。
「では、まずは我にお任せいただこうか」
「はい、おねがいします」
 樹里はこくりと頷いて。アーゲンティエールがその銀剣を空へ掲げる。

「天より光芒の降る如く――!」

 紺碧の夜がみるみる美しい晴天へと変わっていく。砂漠の外はおそらく夜が続いているのだろうが、アーゲンティエールを中心とする砂漠一帯は美しい晴れの日となった。
 夜だと言うだけでみるみる冷え込んでいく砂漠。しかし日中であればそのペナルティを受けることもない。これで安心だ。
 ほ、と胸をなでおろしたアーゲンティエールは、美しい青が広がる澄み渡った空に目を細める。
「少なくともこれで光源くらいは確保できるだろうか……やはり慣れないものだ、少し緊張してしまったよ」
 謙遜しているものの彼女が齎した効果は絶大だった。冷たい風が比較的マシになったように思われたからだ。それに誰よりも早く気付いた世界は頷いて。
「ああ、ばっちりだ。お疲れ様」
「それは何より。日中であれば少しはキャラバン隊も探しやすくなるだろう。ついでに周囲が暖まってくれればいいんだが……」
 きょろきょろと辺りを見渡してみる。目に見える変化は無いが、しかし。
 期待する心とは裏腹に、現実とは残酷なものだ。
「流石にそう早く気温が上がるのは難しそうだね……ギアッチョは視力が弱いんだっけ。風向きに注意しながら上から捜索出来れば、彼等に絡まれずキャラバンを探せるかな」
 首を傾げたイズルに対しぴょこん、と飛び出してみせたのは樹里だ。
「だれかの祈りがきこえたのならば、それを受信してあげるのがわたしのじゅりセンサーです」
 いえ、べつに祈り以外のもろもろも受信するのですが。と、小さく咳払いはしてみせるものの、樹里は言葉を続けて。
「とまあ、つかいがってりょーこーですので。助けてほしいとおもう人がいる方向、わたしならばわかるとおもいます」
「なるほど、名案だな。であれば樹里のセンサーに頼らせてもらうとするか」
 ふむ、と肯定した世界に樹里も頷き返し。その視線は後方を歩くコルクへと注がれた。
「はい、おまかせください。コルクさまはさむさはへいきですか?」
「ある程度は着込んできたつもりなのですが……やはり少し冷え込みますね」
 まだ白い吐息に笑ったコルク。そんな彼女に樹里が差し出したのは持ち込んだチョコレート。
「よければかるく一口どうぞ。なめるだけでも体があたたまりますよ」
「あら、ありがとうございます。助かりますわ」
「みなさまもよければ。まだまだ旅路はながそうですので」
 樹里がチョコレートを配り一同は一旦休憩。慣れぬ砂の足場ではたとえ仮想体であろうとも疲れてしまうものだから。
「それでは、センサーが受信するほうがくへとすすんでいきましょう。じゅりアイズもありますから、夜がきてもだいじょうぶです」
 こくり。穏やかに笑った樹里。樹里のセンサーが受信する方へと、一同は進み続けた。

「……あまり気温が上がりませんわね」
 と呟いたコルク。歩き続けて身体が暖まったものの、少しも寒さが収まる様子はない。
「ギアッチョを狩るしかなさそうだね」
「ですね。すこしでも寒さがやわらげば、キャラバンのせいぞんりつも高まる、というもの」
「そうだね。じゃ、行くよ」
 イズルの声を合図に、近くに居たギアッチョへと世界が矢を放つ。
「遭難者の所へトレインするわけにはいかないからね、手早く抑えられるといいんだけど」
「わりあい、みなさまコスパがよいですからね。なんとかなるのではないでしょうか」
 では聖句より一節、とうやうやしく咳払いしてみせた樹里は、溶けていくギアッチョに向けて語りかける。
「『主は新しい歌を私の口に授けられた』。この声をききなさい。この声をひびかせなさい。この声をとどかせなさい――これはすべてをつつみこむ言の葉。じゅりのふところは海よりもふかいのです」
「我が魔剣の冴えはいつだって健在。その神髄を己が身を以て知るがいい!」
 アーゲンティエールが撓まず、倒れずの一閃はギアッチョの身体を二つへと別つ。
 氷を意味するその獣の名前は、煌めく氷魔を呼び寄せる。
 夜告鳥の護るその揺り籠の中。イズルが手を振りかざせばギアッチョは無慈悲な一撃を受けてその身を砂海に沈めていく。
「道を阻むなら、それ相応の覚悟があるってことだろう?」
 世界の矢は、確実にギアッチョの頭を貫いた。
 その後も群れになって襲ってくるギアッチョを倒しては進み、倒しては進みを続ける一同。
「だいぶ進んだような気がするけど、気温はどうかな」
「さて、これで気温が上がればいいが……」
「ずっと歩いていると、あんまりわからないものだね」
「ですねえ。身体がなれちゃってます」
「まぁそういうこともあるだろう。とりあえず今は、探すのが先決だ」
 矢道を先導するように吹き抜けた狂風が、砂道を切り開く。
「おい、あれって……」
 世界が指さした先に居たのは、救援を待つキャラバンのメンバー達だった。

「はぁ……生き返るようだ、ありがとう」
「だいじょうぶか、きずはあさいぞしっかりしろーというやつですね。まったく、無理はいけないのです」
「はは、身にしみるよ」
 チョコと火酒でぽかぽかと身体を温めるキャラバンのメンバー達。
「こういうのは想定外としても、砂嵐等で身動きが取れなくなる事は今後も発生し得る。小規模なキャラバンでは荷を増やす余裕があまりないのかもしれないが、備えは常に必要だよ」
「うむ……本当に申し訳ない」
「わかったならいいさ。私は料理はダメだけれど、薬湯を煎じたりは出来るんだ」
 といってイズルが取り出したのは小さな鍋。持ち込んだ薬草で低体温症対策を行おうというのだ。
 世界やアーゲンティエールも加わり、冷えた身体に応急手当を施していく。
「我々が来たからにはもう大丈夫だ。さあ、全員で生きて帰ろう」
「ああ……ありがたい」
「ま、これにこりたらしばらくは大人しくしてるのが吉だな」
「はは、だろうな」
 夜告鳥の加護を活かしてイズルが献身的な手当を行えば、冷え固まった身体も少しずつ動くようになっていく。
「これで動けそうだよ。本当に有難う」
「いえ、とんでもない。それが我らの仕事だからな。あとは街まで送り届けよう」
「ああ、助かるよ」
 ぐったりとしたらくだたちにも水をやり、ようやく立ち上がったのを支えながら一同は次の目的地であるという熱砂の国へと足を進めた。
 ときにはまた手当を施し、ギアッチョを倒しながら。夜が明ける頃には砂嵐の目的地にもたどり着き、キャラバンの無事は確保されたのだ。
 かくしてクエストはクリアされた。
 NPCたちが誰も死なずに済んだのは、四人のヒーローたちの活躍があるからに他ならない。

成否

成功

状態異常

なし

PAGETOPPAGEBOTTOM