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シナリオ詳細

<濃々淡々>夢幻の桜花

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●極光降り注ぎ
 鏡の山――雪童子達が住まう雪山には、とある言い伝えがある。

 ――極光を見たものには幸いが訪れる。

「へえ、そんな話があるんだね」
 と雪童子達に関心を示して見せたのは絢。境界案内人であり此の濃々淡々出身であるおとこ。
 化け猫であるのだというその見目は麗しく、伏し目がちに開かれた瞳は緩く瞬いて。
 とはいえこれまでに雪山で風邪を拗らせ旅先で寝込んだ前科もあるのだからと、今回はしっかりもこもこふわふわの厚着である。
「はい! ぼくたちもたまにしかみられないんですけど、もうすぐみられんですって」
「だから、絢にいさんにもみてほしいなっておもって!」
 雪童子たちの間では夢幻の桜花とも呼ばれる其れ。冬の間にのみ咲く虹色の花。中央に咲く大樹とはまた違う其れを、心から愛しているのだろう。
「本当かい? でもおれ、前にきたとき君たちに迷惑をかけたよね」
「いいのです。ゆきやまはなれぬひとにはいのちのきけんもあります」
「それをかえりみずきてくださった絢にいさんのかっこよさといったら!」
「あはは、照れるね。でも、それじゃあ。誰かと一緒に来てみようかな。それでも構わないかい?」
「はい、もちろん!」
「あしもとにはちゅういして、あたたかいよそおいできてくださいね」
「うん、解った。気を付けるね」
 頷き示し。こうして、絢はまた依頼の便りを纏めることにしたのだ。

●幸あれと願い
 斯くして、もたらされたのは極光を見ると言うなんとも言えない依頼。
 真偽のほどは不明だが、見るだけで幸せになれるのならば話は早い。
 其れに、ライブノベルの幾多ある物語のなかでも極めて温厚な此の世界『濃々淡々』においては、美しいものを見たり触れたり作ったりする依頼が多いのもまた事実。
 極光――すなわちオーロラを観測することを目的とした依頼である今回は、雪山での活動になることも事実。服装には注意して出向く必要があるだろう。
「旅行と言うか、きゃんぷというか……なんていえばいいんだろう。天体観測に近いような気もするし……」
 うんうんと首を傾けた絢は、軽く手荷物を纏めて極光を見る準備を進めているようで。
「皆も、見に行かないかい?」
 ほら、マシュマロなんかも持ってさ。なんて笑う絢は、冬の僅かな楽しみに心踊らせる犬のように、楽しげに笑って。
「雪童子たちが極光――夢幻の桜花を見る場所を貸してくれるんだって」
 ね、どうかな。と笑った絢はもちろん、断られることなんて考えていないのだった。

NMコメント

 どうも、染です。
 一度はオーロラを生で見てみたいのですが、寒いところには行きたくない我儘。
 今回の依頼は、オーロラの観測となっています。

●依頼内容
 『夢幻の桜花』の観測

 この世界でのオーロラの呼び名です。
 虹色の光が満ちるところまでは通常のオーロラと同じですが、花弁のごとく降り注ぐのがこの世界のオーロラのようです。
 まだカタカナはあまり浸透していないようで、極光と呼ばれるのが主です。
 風邪を引かないように、暖かい格好をして見に行きましょう。
 待ち時間は雪遊びなんかをしても良いですね。

●ロケーション
 鏡の山

 雪が降り積もる山です。煌めく雪が人を惑わせることから鏡の山と呼ばれています。
 奥には雪童子と呼ばれる冬の精霊が里を築き住んでいますが、人間たちにはあまり知られていません。

 また、今回は雪童子達が普段観測のために用いている場所を貸してくれるようです。
 毛布や食べ物など、キャンプ気分で遊びに行くと良いでしょう。

●世界観
 和風世界『濃々淡々』。

 色彩やかで、四季折々の自然や街並みの美しい世界。
 また、ヒトと妖の住まう和の世界でもあります。
 軍隊がこの世界の統制を行っており、悪しきものは退治したり、困りごとを解決するのもその軍隊のようです。
 中心にそびえる大きな桜の木がシンボルであり神様的存在です。
(大まかには、明治時代の日本を想定した世界となっています)

●絢(けん)
 華奢な男。飴屋の主人であり、濃々淡々生まれの境界案内人です。
 手押しの屋台を引いて飴を売り、日銭を稼いでいます。
 屋台には飴細工やら瓶詰めの丸い飴やらがあります。
 彼の正体は化け猫。温厚で聞き上手です。

 マシュマロやおにぎりなど、食べ物と毛布を持ち込んだようです。が、楽しみすぎて玩具を持ち込むのを忘れたようです。

●雪童子
 冬の間、桜の精に代わって世界を見守る精霊。
 普段は鏡の山にいますが、冬の間だけ街に下りて冬をもたらし、適切な四季の運営のための重要な役割を担います。
 鏡の山を塒としていますが、冬の間は活発に動き回ります。

●サンプルプレイング
 トランプを持ってきました!
 これで一緒に遊びながら、オーロラが来るのを待ちましょう。
 寒いからかまくらなんかを作るのもありですね。雪を固めてみますか!

 以上となります。
 皆様のご参加をお待ちしております。

  • <濃々淡々>夢幻の桜花完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年01月02日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女

リプレイ

●出発
「オーロラか……生きているうちに見られるとはな」
「ええ! オーロラなんて初めて! 楽しみね!」
「オーロラ……いえ、夢幻の桜花、でしたか。わたくしも、見るの、楽しみです!」
「お星さんやないみたいやし……いつになっても、初めてのものは胸が高鳴るもんです、楽しみやねぇ」
 『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)に『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)、それから『happy Birthday』ネーヴェ(p3p007199)と『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)は並んで鏡の山に居た。
「雪ちゃんさんたちと絢お兄さんお誘いありがとうございます!」
「いえいえ、おかまいなく!」
「どうせなら誘ってみたかったんだ。雪童子達も了承してくれたことだから、ね。折角の冬だもの、いい思い出を沢山作りたいからさ」
「絢様、お洋服は大丈夫、ですか? 手袋にマフラー、それから帽子。もこもこチェックをして、出発しましょう、ね」
「あはは、もう風邪は引いていないよ。平気さ、ほら!」
 ちゃんともこもこにしただろう? と首を傾げた絢。ネーヴェも満足げに頷いた。
「ちゃんと、絢様なら、同じ轍は踏まないと…思っては、いるのですが。それでも心配させて、下さいな」
「ありがとう。ネーヴェは優しいね」
 微笑んだ絢。蜻蛉はふむ、と瞬いて。
「にしても、絢くんの言うてるそれはどんな色でどんな景色なんやろか、頑張って起きとかんといけへんね」
「まぁ眠くなったら起こしてやるさ。なんせこれだけ人数がいるんだしな」
「うんうん! それじゃあ行きましょ! しゅっぱぁーつ!」
 世界の声に頷いたキルシェ。彼女の号令に合わせて、一同は雪山を進み始めた。

●提案
「あのね、ルシェね! かまくらさん作りたいの!」
 到着してまず最初にキルシェが放ったのは、かまくらを作りたいという希望だった。
「それから中でお汁粉食べるの! かまくらさんの中はあったかいって聞いたけど、本当なのか実践ね!」
「せっかくなら、皆で入れるくらい、大きく、大きく、作りたいです、ね」
 ネーヴェもそれに頷いた。せっかくの雪国、しかも鉄帝よりもだいぶ平和な国。これは活かさない手はない。
「労力は掛かるが寒さを凌げる場所ができるのはありがたいしな。暗くなるまでに協力して作ってみるか」
 世界もうなずき同意する。こうして突貫のかまくらづくりはスタートした。

「といっても、おれも鎌倉は作ったことがないんだよね……」
「まぁ、感覚でやってみるしかないだろう」
「ルシェは雪をかためてから、中をくり抜くのかと思ってたわ!」
「じゃあそんな感じてやってみるのがええかしら」
「はい、やって、見ましょう!」
 わっせわっせと雪を集めては固める。単純な作業のように思えて、実はこれが難しい。雪は重みを持っているので案外大量に運ぶのは重労働だし、雪を固めるのもやりすぎたところからひびが入る。
「持ち上がらない……!」
「大丈夫、キルシェ? おれと世界に重労働は押し付けてもいいんだよ?」
「でもルシェ、やれるところまでは……ぐぬぬ! ……やっぱりお願いしてもいいかしら!」
「はは、もちろん。じゃあ代わりに叩いて固めてもらおうかな」
「そうするわ! 叩いて固めるなら、ルシェもお手伝い出来るのよ……!」
 ふんす、とシャベルを握ったキルシェに蜻蛉は微笑んで。
「ふふ。見かけはあんまり大変や思わんかったけど、実は思ったよりも力仕事、回言さんと絢くんがおってくれて良かったわ」
「だな、俺もこんなに疲れると思ってなかった……」
 一方で、内側を削っていたネーヴェがかまくらからひょっこりと顔を出した。
「中をくり抜いた分の、雪で…雪だるまを、作りませんか? あ! 皆様と、おそろいな、雪だるまが作りたいです」
 ネーヴェの提案に皆は頷いて。余った雪を丸くするところから、始まった。

「まさかこんな歳になって雪だるまを作るとはな」
「でもとっても楽しいのよ! ほら、ルシェはこんなかんじ!」
 雪だるまにハーモニアの特徴である長耳を落ち葉で表現する。得意げに笑ったキルシェ。
「わぁ、上手だね。おれは……こうかな」
 猫のかたちをつくり、口元に包装した飴を埋める。彼なりに頑張ったのだろう。世界がその横に雪だるまを並べて。
「俺はメガネを付けておいた。これならまぁ、分かるだろう」
「では、わたくしも」
 ネーヴェは南天と落ち葉で耳と瞳を表現して。
「こやって並べてみると、それぞれにええ味しとるよ? 可愛らし」
 最後に蜻蛉が銀杏で己を模した雪だるまを並べる。
「わぁ……圧巻、ですね」
 かまくらの周りに雪だるまが並ぶ光景は、なんとも言えぬ愛らしさを感じさせる。
 空がだんだん夕焼けに染まり始めた。
「あとは、あたたかいものでも準備しようか」
「……おしるこなんてどうだ」
 メガネをくいとあげた世界。彼は言葉を続けた。
「かまくらの中に火鉢を持ち込んで皆でその周りを囲みながら温かい飲み物をいただく……なんて中々風流じゃねぇか?」
「ふふ、せやね。うちも賛成よ」
「かまくらさん作り殆ど役に立たなかったけど、お汁粉作りはもうちょっとお手伝い出来るように頑張るわ!」
「わたくしは初めて食べるのですが……お手伝い、します!」
「おう。じゃあ、準備するか」
「あとで持って来たお餅焼いてお汁粉……それから絢くんのましゅまろ言うんも焼こね」
「うん。楽しみだ」
 ふにゃりと笑った絢。夜に向けた備えは、まだまだ終わらない。

●ひかりにあふれて
「お外は寒いけど、かまくらさんの中あったかくて、お汁粉美味しくて幸せね!」
「寒い中で食べる暖かいもんは、格別美味しいもんやねぇ」
「だな。苦労したからかうまく感じる……」
 メガネを曇らせながらおしるこを味わう世界。ごしごしと曇りを吹きながら、また味わって。
 一方で、ネーヴェはその独特の見た目に表情を曇らせていた。
「……なんというか。罰ゲームでは、ないのですよね?」
「はは、そんなことないよ。きっとネーヴェも飲んでみたら気にいるさ」
「うう……皆様が食べているのを、見たら…わたくしも、食べてみます!」
 ふーふー、ごくん。口の中に広がる優しい甘さ。
「……おいしい!」
「ふふ、だろう?」
「絢おにいさんが持ってきたマシュマロもとっても美味しいわ!」
「やね。これも甘くて美味しいわ。伸びるんはちょっとびっくりしたけど」
「マシュマロは焼かなくても美味しいからな。ま、冬といったら焼きマシュマロだろうが」
「ふふ、楽しんでもらえれば幸いだよ」
「お腹もいっぱいになって、ぬくぬくで眠いわ……でも、雪遊びしたいし、オーロラ見るの……」
「あら、キルシェ様?」
 うとうと、こっくりこっくり。かまくらの中はあたたかいから、少しずつ眠くなってくる。キルシェは思わず首を振る、も虚しい抵抗だ。
「雪ちゃんたち、誘ってくれたの、みんなと…………オーロラ……起こして……」
「起きとる……? キルシェちゃん」
 とんとん、と肩を揺するも起きそうにない。くすくすと笑った蜻蛉は、その肩に毛布をかけて。
「それじゃあ、一旦外でも見てこようかな。キルシェが寝てしまったことだし」
 そう言ってかまくらの外に出た絢。わ! と驚いた声がする。……絢は戻ってこない。
「ちょっと絢くん、大丈夫……?」
「絢様……?」
「……俺が見てくる。みんなは其処に居てくれ」
「絢おにーさん……?」
 緊迫した空気にキルシェも思わず目を覚ます。
 世界が絢の後を追い、外へ出る。世界はすぐに戻ってきた。
「……始まってる」
「なにが、ですか?」
「夢幻の桜花が」
「「「!!」」」
 三人も、慌てて外へと飛び出した。
 そこには、想像以上の景色が広がっていた。

「まあ……! すごい、すごいです!」
 歓声をあげたのはネーヴェだ。
 空から降り注ぐ光の花。虹色にきらめいた其れは、まさしく夢幻の名を関するに相応しい。
(そう言えば夜空を見上げるのも随分と久しぶりだな……。最後に見上げたのは何時だったか……)
 世界の目に映る空はきっとこれまでのどれよりも色鮮やかだ。
「まだ眠いけど……凄いわ……!!」
「ネーヴェちゃんやみんなと一緒にこの綺麗なお空を見に来れて良かった……」
 落ちる光の花にふれて微笑んだ蜻蛉は、幸せを噛みしめる。
「雪童子さんたちに感謝せんとやね、それから絢くんにも」
「はは、それはありがたいね。きっとみんなの世界には無いものだろうと思ったからさ」
 幻想的な世界は広がる。その世界においては、あまりにも簡単に。
(「幸い」を言うのなら、きっとこの瞬間を言うのやないかしら……今、この時を)
 夜空に満ちる虹色の花は、散ることを知らず、ただ咲き乱れる。儚くも美しいそれは奇跡を象ったようで、目頭が熱くなるような錯覚に陥った。
「見たら幸せが来るって聞いたけど、この光景見られたことが幸せね!」
「そやね、キルシェちゃん」
「はい、わたくしも、そう思います……!」
「同感だ。こんな光景、二度も見られるかはわからないしな」
 普段は星しか見上げることはないけれど、こんなものが見られるならば空を見上げるのも悪くはない。
(オパールとかラブラドライトとか、角度変えると色が変わるものが沢山空から降ってくるみたい)
 きらきらと降ってくるそれにつん、と触れてみれば、光が弾ける。
 こうして五人は、夢幻の桜花が消えるまで、いつまでもその光を楽しみ続けたのだった。
 奇跡足り得る瞬間はきっと人生に何度でもあるものではないとわかっているからこそ、かけがえのない今が愛おしい。
 ただ今この瞬間が刹那であると。永遠でないことは理解しているからこそ、五人は今にだけ続く幸せを手に入れたのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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