シナリオ詳細
クラーケンとその他の些末なこと
オープニング
●青い空、白い雲、不穏な景色
「今日の海はコバルト・ブルーね……」
『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)は、物憂げな視線で海辺に目線をやった。
イレギュラーズたちが訪れたのは、海洋(ネオ・フロンティア海洋王国)の港である。今回の依頼は、簡単な貨物船の護送依頼……。
かと思いきや、事態はそう単純ではないらしい。
「あなたたちはこの国の”色”について、どこまで知っているかしら……」
曰く、どこの国もそうであるように、海洋(ネオ・フロンティア海洋王国)にも権力闘争というものがある。
中には海賊まがいの行為をしているものの、貴族と結びつき、その身の安全を保障されている、いわば持ちつもたれつの関係を持つ交易商人たちもいる。
「出自の怪しい船が、ここではいわば『黙認』されている。……少し物申したくはあるけれど、そこは置いておくとしましょう。
けれど、その商人が、積み荷に違法の薬物を積み込んで、なおかつ、それを『申請していない』というなら話は別だわ。
……つまり、その船は、きちんとしたみかじめ料を支払っていないの。
あなたたちは護衛として船に乗り込み、護衛任務を果たす。一方で、積み荷を確かめて、それが違法のものである場合は、警告を込めて、積み荷を破棄してほしい、というのが貴族からの依頼よ。
あなたたちは護衛依頼を受けて、交易船に乗り込むことになる……。
つまりこのミッションは、クラーケンを退治すること、そして、積み荷が申請されていないものであった場合は、破棄してしまうことの二つ、やることがあるの」
プルーは告げた。
「もっとも、おおっぴらに商人たちと敵対する必要はないわ。依頼主も、正義のもとに暴き立てて、事を荒立てることを望まないでしょう。でも、積み荷が破壊されたのが『事故』ならば、仕方ないことだわ」
青い大海原が、目の前に広がっている……。
- クラーケンとその他の些末なこと完了
- GM名布川
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年07月31日 21時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●青い海、白い砂浜
「海はやっぱりワクワクするなァ!」
きらきらと陽光を反射する水面を眺めて、『水葬の誘い手』イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165) は心底嬉しそうな声をあげる。
水と海をこよなく愛するイーフォは、許されるならば海に飛び込みたいと思っている。しかし、依頼の最中とあってはそうもいかない。
ただ、水海(みずうみ)の瞳で見つめるのみだ。
「海がおれを呼んでいる! 潜りたいけどいまは我慢しなきゃネ」
(出自の怪しい船でも『黙認』はされる。ちゃんと出す物を払っていれば……)
『自称・旅人』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)は、港を行き交う船を眺めている。
「むー、お金が儲かるのかもしれないけど、ルール違反はダメだよね!」
『見習いパティシエ』ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098) が頬を膨らませる。
「私の実家も生業としては似たような感じで。信用関係って大事よね」
『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883) は、海洋の小さな島で漁業・交易を営む、「光鱗のアトラクトス」の娘だ。
海洋の情勢にもかなり詳しい。
「海洋での御仕事は初めてなのですが、幻想とは違った意味でキナ臭いのですね。それはそれで我々には都合が良い、とも言えるでしょうか」
尋ねるたびに出身世界についての話が千と変わるヘイゼルは、どこか皮肉げな調子でそう言った。
「かもしれないね」
イリスが頷く。
「俺はクラケーン対応班だな」
『海抜ゼロメートル地帯』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072) は、2mを超す巨体で腕を組み、やはり楽しそうに海を眺めている。
エイヴァンの素性は知れないが、どことなく海洋の事情に明るいようだ。
「洋上では戦い慣れております。クラーケンについては……お任せください」
『戦乙女』ファリス・リーン(p3p002532)の 魔力の込められたルミナス・スピアは、青白い燐光を放っている。
「よーし、クラーケンがくるまでに違法な荷物を探すのも頑張るよ♪」
「そうだな、どれがその積み荷なのか、予め確認しておいた方がいいはずだ」
『特異運命座標』ティバン・イグニス(p3p000458) は、まぶしい日差しに目を細める。ティバンは日の光が得意ではない。
「それなら俺”たち”に任せて」
「ああ、上手くやるぜ」
『二重旋律』星影 霧玄(p3p004883)は、霧玄と零夜、二つの人格を併せ持っている。そして、……何か考えがありそうだった。
「では、ゆるり参りましょうか」
「おー!」
「いっちょやるぜ!」
ヘイゼルの号令に、ミルキィとイーフォが続く。
船が動き出した。
「待ってろよ、クラーケン!」
エイヴァンが水平線を睨んだ。
●潜入調査・序
「海は良いよネ!」
「ああ、いろんな表情を見せてくれるもんだ」
甲板ではイーフォとエイヴァンが会話に花を咲かせている。
イリスは待機し、周辺を警戒しながらも、それとなく船の構造を探っている。
全員が倉庫に向かうと怪しまれる。向かうのは限られた仲間だけだ。
羅針盤を手に、ファリスは翼を広げて物見を行っていた。海の風にたなびく金髪と、銀翼の煌きが人々を魅了する。
「っとと、ちょっと足場は悪いけど、大海原を眺めて飲むお茶は美味しいよね♪」
ミルキィが茶をふるまう。仲間たちと、そして船員にも。
「おっと、俺たちにもか。ありがとよ」
見習いパティシエであるミルキィのいれるお茶は、かなり美味しい。
そして添えられている菓子が、また、見た目から味わいから、何とも言えない美味さなのである。
幾たびも交易を重ね、いろいろなものを味わってきた船員たちにとってしても、食べたことのない美味しさだった。
「う、美味い……」
「この船にも茶葉があるんだよね。どんな茶葉があるかみてみたいな♩」
積み荷を見て見たいと言われて、視線によって密やかに相談が交わされたようだが、すぐ警戒を緩めた。腕の立つイレギュラーかもしれないが、それにしても料理人が本業であるのだろうと思ったのもある。
「まあ、いいんじゃないか、少しなら?」
「一曲、披露しましょう」
そうしているうちに、ファリスがゆるりと楽器を取り出した。洋上での慰みにとばかり、歌と演奏を披露してくれるらしい。
船員たちは大いに沸いて、凛とした声に聞き惚れている。
どうしたらこれほどしなやかなファリスの身体から、力強く美しい声が出るのだろうかと思うほど、朗々と響き渡っている。
視界の端、甲板の下の方へ向かう霧玄の姿を見て、船員の一人は首をかしげる。甲板には確かに霧玄の姿があるのだ。
「あれ、さっきいなかったか?」
「ああ? 気のせいだろう。そこいるしな。ほら。それより、2曲目だ」
甲板から、美しい演奏と歌声が響いているのをヘイゼルは耳にした。
上手くやっているようだ。
(敵の仕業にするにしても戦いは数分でしょうから、事前に対処すべき積み荷は見つけておかないとなりませんね)
とはいえ、ヘイゼルは木箱の外から中身を検める手段などは保持してはいない。だから、それは仲間に任せるとする。
「ここは何ですか?」
「ああ? 操舵室だよ」
好奇心旺盛を装って、舟全体をうろつきまわる。
船乗りはどこかうんざりしたように答えるが、興味を持たれるのはまんざらではないらしい。
「見ていても構いませんか?」
さりげなく体で視界を遮ると、仲間たちが後ろを船倉のほうへと通り過ぎて行った。
「倉庫を見せてもらいたい? うーん、そうだな」
「戦闘になったら破壊されやすそうな場所をあらかじめ確認しておきたい」
「それと、珍しい茶葉に興味があって♩ 許可はもらったんだ♩」
ティバンの言葉を、ミルキィが補足する。
「おい、どうする?」
「……いいんじゃないか、見るだけなら?」
「……よし、案内しよう」
了解は取れたが、船員がついてくるようだ。
「これが茶葉だね♪」
ミルキィは茶葉の積み荷を開けてもらって、ふんふんと検分する。
「そっか、こっちの箱より、こっちの箱のほうが高いやつなのかな?」
「おお。分かるのか」
質問を重ねて、船員を一人引き留めている。
(大まかな目星までしぼれればティバンくんや霧玄くんが戦闘中に破棄にまわるのもやりやすくなるだろうからね!)
思惑通り、ティバンが荷物を眺めている。
(事前に確認するのは2点だ)
まず、違法薬物の混じっている積み荷に目星をつけておくこと。それから、穴を開けれそうな場所を確認することだ。
穴をあけても船が沈まなそうな場所には見当がついた。……残るは積み荷か。
そこに、零夜が現れた。
「おっと?」
「あれ、どこから入った?」
「ちょっと見せてもらってたんだ」
「お、おお?」
船員は、印象とは違い、どこか快活そうな霧玄の様子に首をかしげる。いや、霧玄ではない。零と無限の永劫輪廻……ギフトによる分身だ。
気を引いている間に、ティバンはうまく動ける。
(これか)
ティバンの超嗅覚が、茶葉の匂いとは違う荷物を看破していた。隅の方にあって分かりづらいが、たしかにこれだけ、匂いが違う。
箱を分けておくと、破壊するべき壁の際に寄せる。
そうしているうちに、船が大きく揺れた。
「……来たみたいだな! こっちの様子を伝えるのに、一足先に戻るぜ。気を付けて」
「まかせておけ」
そして、零夜の分身は姿を消す。
●クラーケン、現る
ファリスは異変に気が付き、美しい旋律を止めた。エイヴァンとイーフォがそれぞれ立ち上がる。
ほどなくして水面が持ち上がり、巨大なクラーケンが姿を現す。
「う、うわあああ!」
船が大きく傾き、ずり落ちそうになった男を、エイヴァンがしっかりとキャッチする。
「ほいっと!」
そして、流れるようにイーフォへとパスをした。イーフォは男を引っ張り上げると、ロープを船員をかばいながら戦闘態勢をとる。
「船員サンたちは危ないから安全なトコロにいてネ」
「わ、わかった!」
「あ、船底とかの船倉は船が揺れて大ケガするかもだからおススメしないヨ。丈夫なものにしっかりつかまっててネーェ!」
「ほう、10mはあるか……なかなか大きいですね。さあ上手く暴れてもらいましょうか」
ファリスが勇ましく、クラーケンに宣戦布告をする。
戦闘開始だ。
ファリスの凛々しい歌声が、仲間を鼓舞する。
ヘイゼルとイリスが次々とボートを下ろし、クラーケンへと接近していく。
ヘイゼルはクラーケンのすぐ傍へと至ると、【0】を構える。一見して棒のように見えるそれは……それ以上のことが分からない。
逆再生。触手が触れた個所から損傷を受ける。攻撃を受けてなお、クラーケンはその攻撃の正体がわからなかった。
恐怖し、思わずはねのけるようにヘイゼルを叩きつける。ボートが大きく揺れる。
「させるか!」
咄嗟に攻撃に転じたエイヴァンのバウンティフィアーによる連撃が、触手の軌道を大きく逸らした。
もう片方の触手は、イリスのほうへと。
波間に何かが輝いた。
イリスの光鱗が決定的に攻撃を弾いた。人並ならざる防御力に、クラーケンは思わずうろたえる。そして、イリスのブロッキングバッシュが決まった。
相手の力すら、その攻撃に利用する。
「ヤッホーDhr Kraken!」
イーフォのソウル・ブラスターの照準が、クラーケンを捕らえている。
「ちょーっと痛いかもしれないケド、おれたちの相手をして貰おうかナ」
魔力を弾丸に込めて、トドメの一撃。
耐えかね、触手がはじけ飛んだ。
「しかし大きいネ……。おれぁ、自分より大きなタコは食べたくないナ!」
「調理次第では何とかなりそうだが」
イーフォの言を受けて、エイヴァンはちらりと獲物を検分する。荷物の中の弁当のことが、ほんのわずか脳裏をかすめる。
「まぁ生憎料理スキルはないので食べるつもりなら他の奴に任せるとしよう」
クラーケンはボートを転覆させるのを諦め、その攻撃をファリスに向けた。
攻撃を食らう位置にいるのは、……「わざと」だ。その意図を察して、仲間たちは攻撃を集中させる。
ヘイゼルは集中し、逆再生を食らわせる。
訳の分からぬ不快感に、クラーケンは身を縮めて荒れ狂う。
この得体の知れなさはなんだろうか?
しかしクラーケンは、違和感を説明する語彙を持たない。
クラーケンは続けざまにエイヴァンにも攻撃を仕掛けるが、エイヴァンにとっては獲物があちらから寄ってきたくらいの意味しかなかった。腕をまくり、フリーオフェンスの構えをとる。
クラーケンの連撃を、難なくその巨体と重盾『海洋』で軽々と受け止め、なおかつ盾で押し込んだ。
怒り狂った触手がうねるが、後方からの魔砲によって粉々になる。
霧玄の魔砲だ。破壊的威力をもってして振るわれる、魔力の暴力。
もんどりうったクラーケンが船に襲い掛かろうとする。
それは狙いではあるが……操舵室はまずい。
広い大海原に、イリスの名乗り向上が響き渡る。戦意を高めて、襲い来る触手を、固めた防御で待ち受ける。
手早く済ませる必要はない。
長期戦に備えて、仲間たちは体勢を立て直す。
イーフォが警告したので、人数は少なかったが、それでもやはり、後ろ暗いところのある荷物は気がかりなのだろう。
「おっと、すまない」
一目散に船倉に潜り込もうとする船員がいた。ティバンは揺れに合わせて転んだふりをして、思い切り蹴撃を食らわせた。目撃者はいないが、事態は非常事態。言い訳には事欠かない。とにかく、安全な場所に転がしておく。
船が大きく揺れている。
「こっちは任せておけ」
船員が倉庫を諦めて、近くの船室に避難した。
「援護射撃は任せて☆」
ミルキィのマギシュートが炸裂する。
そうしているうちに、倉庫で積み荷の対応にあたっていた仲間たちが戻ってきた。
最初、くみしやすい相手だと踏んで狙いをつけたファリスは、しかしクラーケンにとってたやすい相手ではなかった。ファリスは攻撃に耐えながら、相手の力量を分析する
(威力は大したことはない。手加減、する必要はないが、手数が厄介か)
だが、確実に触手の数は減っている。
重い一撃が、ファリスのほうへと向かってきた。
「おっと!」
ファリスを庇い、海上へと躍り出たエイヴァンは、ぐるりと胴を巻いた触手に引きずり込まれる。しかし、海が近いのは、エイヴァンに有利に作用する。
海神の軍規。海こそエイヴァンの戦場である。
鋭く胴体を蹴り、むしろ、引きずり込まれているのはクラーケンの方だ。掴んで大倒しにする。
その隙に、ファリスはシールドバッシュにより触手を破壊し、翼を広げて空へと逃れる。大きな攻撃を仕掛けたエイヴァンに、ファリスが手を差し伸べる。
獲物を逃すまいと、クラーケンが墨を吐いた。
靄が視界を覆ったが、ちらりとそちらを一瞥しただけで、ヘイゼルは即座にその正体を見切る。
「たやすいですね」
この程度の正体。ヘイゼルの超分析により、すぐに周りの様子が分かる。
そして、外からは何も見えまい。
今だ。
ようやくチャンスが訪れた。
イリスが曲刀ドレイクの尻尾を降りぬき、船に穴をあける。
上手く船に穴が開いた。ティバンのもとに、勢いよく水が流れ込んでくる。狙った積み荷が零れ落ちる。
(よし)
ティバンが必要な荷物を思い切り外に蹴りだす。
「いくよ♪」
ミルキィのマジックフラワーが、荷物に引火してダメ押しをする。これで、もはや商品にはならないだろう。
「うん不幸な事故ならしょうがないよね!」
「ああ、やむを得ないな」
クラーケンが至近のものへと、再び墨を吐いた。
「効かないナ!」
視界を覆いつくした墨の効力を、イーフォのキュアイービルが即座に打ち消す。触手は残り数本、本体は荒れ狂っていた。
一本が船を貫いた。
だが、そこにはティバンがいる。
ディスピリオドが、一本の触手を狩りとった。
危ない荷物が次々と流れ出していく。
もう、十分に暴れまわった。目的は果たした。
加減する必要はないだろう。
ティバンも戦闘に加わり、蹴戦で触手をいなした。
クラーケンはもう虫の息だ。最後のひと暴れをしている。霧玄は近くに寄ってきたクラーケンに魔力撃を見舞う。
ミルキィとイーフォのSPDが、エイヴァンへと降り注ぐ。
「よし、ありがたい!」
一度距離をとり、仲間からの支援を待っていたエイヴァンは、流れてきた木箱を足場にして、再び勇ましく前線へと復帰する。ゴルゴダを構えて、まるで銛を打ち込むかのように一撃を食らわせ、仲間の助けを借りながら、その反動で船に飛び乗る。
クラーケンは大きくのけぞった。
「せーので、いくよ♩」
ミルキィのマジックフラワーが、クラーケンへと降り注ぐ。
水面に火の粉が輝いている。
(うん、きれいだネ)
イーフォは遠術で狙いを定める。
霧玄はクオリアス・ノーツを浮かべ、演奏と共に魔砲の照準を合わせる。
「今だ!」
その旋律に乗るようにして、ファリスが槍を構える。
仲間たちと共に、ヘイゼルが狙うは、角の根本。王者たるその王冠を、はぎ取るようにして、一撃。
水しぶきがあがり、おさまっていく。
「決まったネ!」
クラーケンは、重い音を立てて沈んでいった。
●顛末
「やったね」
「やったな!」
水面に映る鏡像のように、零夜と霧玄がハイタッチをする。
「全員、無事ですね」
ファリスが優雅にルミナス・スピアを収めた。
次々と船員たちがもどってきた。
船員たちがファリスを初めて見た時の印象は可憐な歌姫……といったようなものだったが、今は、それに加えて、勇敢な戦士だということを思い知り、言葉が出ない。
なんとでも言い訳のできる範囲で、的確に破壊された荷物。
圧倒的な力を前にして、船員たちは事態を悟った。
クラーケンの退治など些末なこと、イレギュラーズたちにとってはそちらが「ついで」であったのだ、と。
とはいえ、船員たちにケガひとつないのには舌を巻く。船に空いた穴も、すぐに修理できる位置に空いている。
「これは、狙ってやったのか?」
被害の出ないように的確に船を壊し、なおかつ、船員たちを上手く誘導したのか。
そう聞けば、依頼であるから、ティバンはこう答える。
「まさか」
「そうか……」
「これでよし、と」
イリスは平然と船員に交じり、船の修理をやり遂げていた。水を多少かき出す必要はあったものの、順調に陸に戻れるだろう。
「恐れ入ったぜ……」
船長と思しき男は、その詳細は延べはしない。しかしどこか言外に含みを持って、イレギュラーズたちを讃えたのだった。
「クラーケンは……美味しくはなさそうだね♪ というわけで、またお茶をどうぞ♪」
「美味しい」
イリスがミルキィに感想を漏らす。
ヘイゼルは甲板に落ちていたクラーケンの角を拾い上げる。
「おっ、それ、結構珍しいんじゃないか」
エイヴァンがしげしげと眺める。
「王冠だネ!」
王冠の欠片は手のひらの上で、きらきらと輝いていた。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
イレギュラーズたちの活躍あって、クラーケンの討伐、荷物の破棄と、目的は果たされました。
お疲れ様でした。
これにて、世界がほんのり平和になることでしょう。
船や船員の被害が最小限だったこともあって、船員たちは、思いのほか爽やかに敗北を受け入れたようです。
また機会がありましたら、一緒に冒険いたしましょう。
GMコメント
●目標
クラーケンを退治する。
+どさくさに紛れて<積み荷>を(一部)使い物にならなくする。
●場所
海洋(ネオ・フロンティア海洋王国)領海上。
時刻は快晴。
イレギュラーズたちが乗っているのは、中型の貨物船。
いくつか小型のボートが船上に備え付けられている(戦闘時、使用可能)。
日中、航行中にクラーケンと遭遇する模様。
●積み荷
<積み荷>……茶葉として届け出の出された、違法薬物の混じる積み荷。
全てがすべてではなく、実際にただの茶葉の積み荷もある。
実際に破壊するべき積み荷がどれなのか見分けるためには何らかの調査が必要だろう。
舟の船倉、木箱に格納されており、そこには船員はあまりイレギュラーズたちを近寄らせたがらない。
(が、露骨に拒否もしない。いやな顔をする程度。中身は見せてくれないが……)。
舟の中央部の底あたりに格納されている。
警告の意味合いが大きいため、すべてを破壊する必要はないが、違法薬物の積み荷をピンポイントで使い物にならなくできればベター。
燃やすなり、濡らすなり、海へ流出させるなり、手段は様々。
なお、表向きは、クラーケンとの戦闘でやむをえず損失を被った、など、理由をつけるのが望ましい。
●出現
クラーケン・クラウン
巨大なタコのような姿をしている、およそ10mほどの生き物。つきだした角から、冠を被っているように見えることからこう名付けられた。
10本の触手を持ち、体長の大きさはほとんどはこの触手のせい。
海上を泳ぎ、攻撃的に船を襲う。
・墨を吐く……行動を妨害する。
・触手……触手を振り回す。
・引きずりこむ……海に引きずり込む。触手を破壊するか、仲間の助けがあれば緩むため、簡単に逃れられるが、水上から船に復帰するのに注意。
触手にはそれぞれに体力があり、破壊すると弱体化する。本体を先に狙っても良い。
なお、おいしくはない。
●補足
・通常の場合、交易船の船主は、積み荷の破壊がそれとなく関係のある貴族の差し金(警告)であることを悟るため、報酬や名声、立場を含め、積み荷を破壊することによるペナルティーはない。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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