PandoraPartyProject

シナリオ詳細

光り輝く、君の笑顔に

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「ねえシスター」
 小さいロジーが私のスカートを掴んで引き留める。
「今年はシャイネンナハト、おいわいするの?」
「まあロジー。勿論ですとも、お祝いしますよ」
「ケーキある?」
 ひょこ、と後ろから顔を出した、小さいJ.J。
 何も問わず私を見ている、カチェリーナ。
 可愛い私の家族たち。この“小さな星のさと”と呼ばれる孤児院の仲間たち。
 年長さんは、誰かが面倒をみているのでしょう。小さい子は、いつもより静かなこの幻想に不安を抱いているみたい。
 では、私が拭ってあげなくては。
 私はそっとスカートを掴むロジーの手を取ると、屈んで彼と目線を合わせた。
「ロジー、J.J、カチェリーナ。可愛い私の子どもたち。勿論です、ケーキだってツリーだってありますとも。いつも悲しい思いをさせているものね、光り輝かんばかりの夜くらい、贅沢をさせてあげますよ」
「本当? ぼく、でっかいツリーが見たい! きらきらおほしさまがうえについてるの!」
「ケーキ、しちめんちょう。いっぱいたべたいな」
「……」
「勿論ですとも。さあ、廊下は寒いでしょう。皆がいるお部屋に戻りましょうね」
 廊下から部屋に戻る途中だった私は、可愛いおちびさん三人を連れて皆がいる大ホールに戻る。
 ――ああ、天にまします我らが主よ。どうか我が子たち全ての頭上に、星が輝かんことを……



「其の孤児院はね、シャイネンナハトってものを経験したことがないんだって」
 机の上に頬杖ついて、くるりと白い指先がマルを描く。リリィリィ・レギオン(p3n000234)はにこりとどこか蠱惑的な笑みを浮かべ、とんとんと地図の一点を叩いた。
「舞台は此処。“小さな星のさと”という孤児院だよ。幻想の隅にあってね、主にスラムで捨てられた子を引き取って育てているのだって。とても献身的だよね。でも、スラムの近くにあるからとても貧しくて――イベントらしいイベントごとをした事がないそう」
 可哀想だよねえ、とリリィリィは小首を傾げた。
「だからね? 僕、声をかけてあげたの。色々忙しい時期だけど、手伝ってあげる人手ならありますよって。だから其の人手になって下さらないかしら」
 例えばね、色々あるでしょう?
 ツリーになる木を切ってきてあげるとか。
 七面鳥でも捕まえて、お料理してあげるとか。
 あ、ツリーは飾り付けがとっても大事。上にお星様が輝いていれば、きっと小さい子は喜ぶわ?
「ね? 普段戦いに明け暮れてる皆からしたら、とっても簡単でしょう? ……この世に生まれ落ちた人間には、みんな、楽しい事をする権利があるんだよ」
 其のお手伝いをしてあげられる皆は、凄いよね。
 にこ! と笑ったリリィリィ。イレギュラーズには――拒否権はなかった。

GMコメント

 こんにちは、奇古譚です。
 リクエストありがとうございます。
 さあ、シャイネンナハトの準備をしましょう。少し早くても構わない、輝かんばかりのこの夜に!


●目標
 孤児院に光を届けよう

●立地
 スラムと一般街の間にある孤児院“小さな星のさと”です。
 シスターが3人、子どもは10名ほどいます。
 代表してローレットに頼み込んできたのはシスター・ミランダです。

<小さい子たち>
★ロジー
 シャイネンナハト、という言葉に憧れる小さな子。5歳くらい。
 ツリーにお星様が載ってるのが見たい。

★J.J
 男の子。黒い髪をおかっぱにしてる。
 しちめんちょう、というものが食べてみたい。絵本に書いてあった。

★カチェリーナ
 すごく無口な女の子。最近拾われてきたばかりだそう。
 彼女の望みは……判らない。


●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。


●やる事
 近くの山でツリーにするもみの樹を伐る
 七面鳥狩り(買ってきてもOK)
 ツリーに飾る星を捜す
 その他、シャイネンナハトらしいことならなんでも

 もういっそ、普通のパーティー的な感じでもOKです。
 出来上がったら皆さんも楽しんでいきましょう。
 アルコールの扱いはお任せしますが、孤児院側の人間は飲みません。


 此処まで読んで下さりありがとうございました。
 アドリブが多くなる傾向にあります。
 NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写致します。
 では、いってらっしゃい。

  • 光り輝く、君の笑顔に完了
  • GM名奇古譚
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年12月31日 22時07分
  • 参加人数6/6人
  • 相談6日
  • 参加費200RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
※参加確定済み※
カティア・ルーデ・サスティン(p3p005196)
グレイガーデン
わんこ(p3p008288)
雷と焔の猛犬
※参加確定済み※
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)
慈悪の天秤
※参加確定済み※
朔(p3p009861)
旅人と魔種の三重奏
※参加確定済み※

リプレイ


 ――誰しも生を受けた以上、幸せに生きる権利がある。

「こんにちは」
 『罪のアントニウム』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)は扉を開いたシスターに、依頼を受けたイレギュラーズですと簡潔に自己紹介した。其の後ろからおずおずと顔をのぞかせるのは『グレイガーデン』カティア・ルーデ・サスティン(p3p005196)。
「こ、こんにちは」
「こんにちはだぜ!」
 カティアを飛び越してしまいそうな勢いで『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)が。慣れない“シャイネンナハト”にきょろきょろしながらも頭を軽く下げるのは朔(p3p009861)。
 子どもが苦手だという『慈悪の天秤』コルネリア=フライフォーゲル(p3p009315)と、見た目で怖がらせてしまうかもしれない『機心融解』フリークライ(p3p008595)は一番後ろ。
「まあまあ、よくいらしてくださいました。シスター・ミランダが頼んだ方々ですね。輝かんばかりのこの夜に(メリークリスマス)!」
 年若いシスターは少し驚きはしたけれども、拒むまいと笑顔を浮かべてイレギュラーズを歓迎した。
 まずは子どもたちとシスターに挨拶して下さいな、と通される。フリークライは扉をくぐるのに若干苦労したが――子どもたちは目を輝かせて彼を歓迎した。

「「「“ろぼっと”だーーー!!!!」」」

「ウン フリック ロボット」
「まあ男の子は憧れる年頃だよな」
 朔が頷く。己も幼いころは――どうだったっけな。
 男の子がわいわいとフリークライを取り囲み、おそるおそるその樹木に覆われた体に触れる。
「フリックさん、大人気ですね」
「とはいえ、あのままにしてはおけませんね……今日はみんなやる事が沢山ですから」
 クラリーチェがそっと目配せをする。フリークライは子どもたちにされるがままだったけれど、其の視線に気付いたのか、己の肩に止まっていた青い鳥を腕に止まらせ、すっと手を伸ばした。
「青イ鳥サン ミンナト 遊ビタイッテ」
「わあ!」
「鳥さん何する? おいかけっこ?」
 鳥は答える言葉を持たない。だからただ、飛び立った。幸せを運ぶ色の鳥は、ふうわりと孤児院の中を舞う。フリークライに夢中だった子どもたちは鳥を追いかけて、わあとフリークライから離れた。
「さて、じゃあ役割分担の確認ね」
 コルネリアが改めて、と言う。
「アタシと朔は買い出し」
「っす」
「わんことクラリーチェサマは料理だぜ! 買い出しまでは子どもたちのお相手デス!」
「はい、頑張りましょうね」
「フリック イイ樹ヲ探ス」
「僕は料理のお手伝いや、飾り付けの手伝いですね」
「よし、各人判ってるね。じゃあ始めるとしよう」
 ……コルネリアは、子どもが苦手だ。嫌いな訳じゃないけれど、彼らは曇りのない瞳で、何もかも見透かすように覗き込んでくるから。
 決まったら早速、とばかりに出て行くコルネリアを、朔が追う。そうして、イレギュラーズたちのあわただしいシャイネンナハトは始まったのだった。



「美術データ メモリ 読ミ込ミ」
 フリークライの目がぴかぴか光る。此処は孤児院近くの山。大きなもみの木を見上げながら、フリークライは思考した。
「モミノ木、根 乾燥 枯レル原因。ナラ、フリックニ植エル 元気 大丈夫」
 フリークライの大きな手が土を掘り、もみの木の根を露にしていく。元々樹木の友であったフリークライだ、もみの木という新入りがあっても平気。
 もみの木の根っこが千切れないよう慎重に、けれど大胆にひょいと持ち上げると、己の背中に植え付ける。暫くは支えていなければならないかもしれないが、数分もすれば己のギフトによって根付いてくれるだろう。
 大きなツリーが歩いてやって来る。きっと子どもたちは驚いて、はしゃいでくれるかも知れない。
「他 美術データ確認 クリスマスツリー 飾リガイル」
 自然の中で飾り付けに使えるものはないかと、フリークライは暫し森を歩き回るのだった。



「七面鳥、七面鳥……」
「おっ、兄ちゃん、七面鳥をお探しかい? うちはこの辺りで一番安いよ!」
 一方、市場。
 七面鳥を捜す朔を肉屋が呼び込む。朔は招かれるままに歩み寄り、出来るだけ絵本に出て来るような、立派な鳥を選別する。J,Jに聞ければ良かったのだが、青い鳥に夢中になっているのを邪魔するのは憚られたのだ。
 朔は七面鳥とケーキなどの材料、コルネリアはツリーに飾るもの。二人は手分けしてお買い物。
「んー、じゃあ、これで」
 朔が指差したのは、一番大きな七面鳥。
「あいよ! じゃあ準備するから、其の間にお代準備してくれな!」
 肉屋は威勢よく相槌を打つと、七面鳥を乗せていたカゴをひょいと屋台の奥へと持っていく。朔が其れを待っている間に、コルネリアが歩み寄ってきた。
「朔。こっちは終わったよ」
「お、終わった? 早いな。こっちは今包んで貰ってるところ」
「ボールに人形、後は柔らかい素材のもの。ガキ共が怪我したらいけないからね」
「……そういうとこ優しいよな、コルネリアは」
「何か言った?」
「何でも。で、七面鳥の後は?」
「ケーキの材料、まだ買ってないだろ? あとは、わんこが色々頼んでたよ。野菜に牛乳、パン……」
「わかった、じゃあこれが終わったら生鮮の市場だな」
 朔が頷くと同時に、肉屋の主人が戻って来る。
「おまたせ! 脂が沁みないようにはしたがな、新鮮なうちにパパッと調理してくんない! お代は……はい丁度! 毎度ありィ!」
「結構デカいの買ったね?」
「皆で食べるだろうしな。じゃあ行こうぜ」



「ロジーサマはシャイネンナハト、何がしたいデスカ?」
「ぼく? あのね、あのね、ツリーにおほしさまが乗ってるのがみたいの。ツリーにはおほしさまをのせるんだよね? 絵本でみたよ」
「ソウデスソウデス! でっかいお星様が上に乗るんデスよ~!」
 皆が準備に出ている間、わんことクラリーチェ、カティアは下準備と子どもたちからの情報収集。
「J.Jはどうですか?」
 青い鳥を追いかけ疲れて座っていたJ.J。其の隣に同じく座って、クラリーチェが問う。
「おなかへった」
「まあ。何が食べたいですか?」
「ケーキ。しちめんちょう。ご本で見たの」
「ええ。じゃあ、其れを作りましょうね」
「ほんと?」
「ええ、本当」
 クラリーチェは頷く。其の語り合う声、子どもたち同士が「どうなるんだろうね」「楽しみだね」と囁き合う声を聞きながら、カティアとカチェリーナはORIGAMIを折っていた。
 特にカティアが手招いた訳ではない。カチェリーナが今できる準備をしているカティアに寄ってきて、じいと見ていたから。だから、カティアは勇気を出して聞いたのだ。「やってみる?」と。
 そうするとカチェリーナは小さく頷いて、カティアをちらちらと見ながら一緒に紙を折りだした。
 無理に喋らせる必要はない、とカティアは思う。わんこが「いざというときの秘策がありマス!」と言っていたし。だから自分は殊更にゆっくりとORIGAMIを折る。
 静かな時間。だけれど其処に温もりをカティアは感じている。カチェリーナのふくふくした指先が、懸命にORIGAMIを折っている、其の時だった。

「ただいま」
「ただいまー」
「ズシーン ズシーン 戻リマシタ」



「凄いツリーが帰ってきたよ。フリックやるじゃない」
 コルネリアがそう言っていた通り、見事なもみの木が外に“いた”。正確にはフリークライである。
 子どもたちはきゃあきゃあ言いながら、今度は女の子も一緒になってフリークライの周りに群がっている。ロボットに木が生えて、おまけに絵本みたいに青い鳥がぴぃちりりと鳴いている。其の様は本当に、絵本のようだった。
「という訳で、其の間に料理だぜ! クラリーチェサマ、カティアサマ、頑張るデスよ!」
「はい。子どもたちがフリックさんに気を取られているうちに、ですね」
「コルネリアさんと朔さんは飾り付けのお手伝いするって言ってましたから、其の間にですね」
 三人はさて、と腕まくりをする。

 まずは七面鳥。丸焼きデス!
 でも其の前に、バターを余熱で溶かして、塩胡椒と刻んだハーブを混ぜておきマショ。七面鳥に刷毛でまんべんなく塗って風味を付け、そうしてやっと窯に突っ込みマス。あとは七面鳥の皮がふくふくと粟立つまで焼くだけだぜ!

 其の間にスープを作りましょう。
 じゃがいもをスライスして、鍋にバターを入れましょう。玉ねぎも一緒にね。炒めて玉ねぎがしんなりしてきたら、調味料を咥えて、水を入れて、煮ます。じゃがいもが柔らかくなったら一旦火を止めて、潰して水に溶かしましょう。そうしたら牛乳を加えて更に熱を入れて、最後の細かな味付け。あとはパセリを……

 ちょーっと待った! 良い考えが浮かんだデス。この作っておいたほうれん草のペースト! これをお皿に入れたスープの上にかけて、スプーンで切って模様付け。どう? もみの木っぽくなったっしょ?

 成る程、もみの木。とても可愛らしいです!

 僕はケーキを手伝いながら、焼き林檎と林檎のスープを。作り方は大体じゃがいものスープと同じ。じゃがいもと玉ねぎを入れて、充分いたまったら林檎と水を入れて煮る。
 其の間にわんこさんがケーキを作り始めたみたいだ。

 YES! おっけーいい塩梅にあったまってきたのでケーキだぜ! シャイネンナハトと言えばケーキ! ってな寸法よ! 卵に小麦粉、砂糖を混ぜて、メレンゲを混ぜて焼く! そうしたらシフォンケーキの出来上がり。……おおっと? 流石に生クリームはなかったかー。なら牛乳とバターで代用だ! 砂糖を入れてホイップクリーム! シフォンに塗るのと苺を乗せるのは、子どもたちに手伝ってもらおうかなって思うんデスけどどうデショ!?

 ええ、良い考えだと思うわ! きっと子どもたちも喜ぶはず。

 子どもたちはいま何してるかな? コルネリアさん達と飾り付けかな? ちょっと行って手伝って来るね。



 そうしてカティアが広間を見ると、外のテーブルで子どもたちがきゃあきゃあ言いながら飾り付けを作っていた。
 松ぼっくりに銀色の絵具を塗っている子どもがいる。聞いてみると、あのおっきなもみの木さんが取ってきたものだそうだ。成る程、フリックも飾り付けの材料を取ってきたのか。
「大丈夫?」
 コルネリアが普段より優しく声をかけている。優しい言葉を持たない、愛想笑いの出来ない彼女だからこそ、声音を優しく、同じ視線になって声を掛ける。
 子どもは苦手だし、きっと生きる世界が違うけれど。一緒に聖なる夜を迎えるならば、仲良く迎えた方が断然良いから。
「紐が通らないの……」
「ああ、これは小さいからね。大丈夫、一緒にやりましょ。さあ、しっかり紐の先を持って」
 子どもの小さな手に手を添えて、柔らかな人形飾りに紐を通す。通った! と笑顔を咲かせる子どもに、コルネリアの視線も自然、柔らかなものになって。
「お兄ちゃん、もうちょっと右ー」
「右な、はいはい……これくらい?」
「こんどは左ー! うふふ!」
「こら、遊んでないかー?」
 朔が子どもを肩車している。フリークライが分離して大きな鉢に植え替えたもみの木に、飾り付けをしているのだけれど……子どもは肩車されるのが面白いようで、朔を操縦して遊んでいる。怒る気のない声で朔がゆらゆらと子どもを揺らすと、きゃあとはしゃいだ声が上がった。
 生まれた場所に反して子どもは素直なもので、少し楽しんだらちゃんと飾り付けをして、終わったよ、と言う。朔は言われたら子どもを下ろし、其の頭をぽんぽんと撫でてやる。子どもは一様に恥ずかしそうに、嬉しそうに笑って、飾り付けを作る皆の元へ走って帰っていく。
 朔はそうして次、と見下ろすと……ロジーがじい、と彼を見上げていた。
「ロジーか。お星様飾るか?」
「ううん」
 ロジーは頭を振った。ぼくじゃなくてね、とたどたどしい声で続ける。
「カチェリーナにね、これをかざらせてあげてほしいの。カチェリーナ、きっと今までたのしいことしてこなかったんだ。だからめったにしゃべったりしないんだ。ぼくたち、カチェとなかよくなりたい。カチェに、ここにきてよかったって、思って欲しいの」
「……」
 其れは、子どもが考えたシャイネンナハトの贈り物。
 ツリーのてっぺんにお星様を飾る権利を、あげたいと。其の大任を君にやってほしいんだと、そう願った。
 朔はロジーが差し出したきらきらのお星様を受け取ると、判った、と頷いた。
「じゃあこれは、カチェリーナのためにとっとくよ」
「……! お兄ちゃん、ありがとう! じゃあぼくはね、これ! まつぼっくりぬったの!」
 朔が飾り付けをしている子どもたちを見れば、松ぼっくりを掲げる子どもたちに寄ってたかられて、穴あけに苦心しているカティアが見えた。
「よし! じゃあロジーの松ぼっくりは二番目に高い所に吊るそうぜ」
「ほんとう? やったあ!」



「みなさん、お食事が出来ましたよ」
 丁度飾りつけもツリーのてっぺんだけとなった頃、クラリーチェとわんこが食事を持って来る。カティアとシスターたちも手伝いに入り、手伝いに使っていたテーブルは綺麗に掃除され、スープが人数分並び、七面鳥と作りかけのケーキが置かれた。
「しちめんちょうだ! みんな、見て! これ! しちめんちょうだよ!」
 J.Jが興奮した様子で周りの子の袖を引っ張って見て見てと言う。美味しそうだねえ、と黒いどんぐりみたいな瞳を煌めかせて、七面鳥に視線は釘付け。
「お姉ちゃん、ケーキ作りかけだよ?」
「此処からは皆さんで作るんですよ。はい、では、ケーキにクリームを塗ってみたい人?」
 クラリーチェが問うと、あちこちの女の子がはいはいと手を上げ始める。わんことクラリーチェが動き、わんこはボウルに残っているクリームを一塗りずつナイフで塗らせてあげて、クラリーチェは上に乗せるシフォンケーキに一粒ずつクリームのデコレーションを載せさせてあげていく。ちょっとムラがあったり、うまく塊に押し出せなかったりするのはご愛敬。クリームが足りなかった子たちには、苺を乗せるのを手伝って貰う。年少さんが乗せた苺を、年長さんが大人ぶって直してあげる。「こうした方が見栄えがいいよ」と知ったふりして言う言葉に、シスターはまるで童心に返ったかのように笑いを堪えている。
「よし、じゃあ食事の前に……ツリーのてっぺんに星を飾ろう、カチェリーナ」
「……?」
 一通りケーキのデコレーションも落ち着いた頃、朔が声を上げる。カチェリーナは不思議そうに瞳を瞬かせた。何故自分の名を呼ばれたのか判っていないようだ。
「カチェリーナ、ロジーが譲ってくれたのよ。アンタに星を飾って欲しいんですって」
「……? ……!?」
「ほら、こっちにおいで」
 朔が手招く。コルネリアが背を押す。椅子から降りてとてとてと歩いてきたカチェリーナに、朔がうやうやしく星を差し出した。
「では、これをもみの木のてっぺんに」
「……」
 両手で星を受け取ったカチェリーナを、朔は抱き上げた! 驚いて声も出ないカチェリーナを、フリークライの肩に乗せる。
「カチェリーナ ダイジョウブ?」
「……」
 こくこくと頷くカチェリーナ。フリークライは慎重に身を起こして、小さなカチェリーナが星を乗せられるように寄せる。
 小さな手が、ツリーに星を乗せた。カティアの作った飴玉入りボックスに、ORIGAMI。コルネリアが買ってきた柔らかで角のない人形飾りに、色とりどりのクーゲル。そして、てっぺんには優しく孤児院の灯りを受けて煌めく金色の星。
「……きれい」
 小さく、カチェリーナが言った。
 フリークライがそっとカチェリーナを下ろす。ロジーとJ.Jが駆け寄って、カチェリーナの手を取った。
「カチェ、ぼくたち、きみのことすっごくかんげいしてるんだ!」
「……」
「しちめんちょうおいしいよ。カチェも食べてみようよ。ぼくもいまからだけど」
「……」
「カチェ、……輝かんばかりのこの夜に!」

 ――メリークリスマス!

 誰ともなく声を上げた。其れは瞬く間に合唱となって、カチェリーナに星屑のように降り注ぐ。
 スラムで親に捨てられた。信じられるものなんてなかった。人の手を取れば引かれて転ぶ。運が悪ければ売られて死ぬ。誰も信用できなかった少女が行き着いた、小さな星のさと。其処には悪い人なんていなくて、手を取ったら優しく引っ張ってくれて。ツリーのてっぺんの星を取り合うんじゃなくて、そうじゃなくて、……優しくて。

「カチェリーナ、……楽しい?」

 コルネリアが優しく問うた。今日は誰もが優しくなって良い日だから。
 カチェリーナはにっこりと笑った。初めて見せた笑顔だった。

「うん!」

 この後はケーキを組み立てて、お祈りをしよう。七面鳥とスープを皆で食べて、ケーキで締め括ろう。
 そうしたらフリークライが余った松ぼっくりや材料でリースを作る事を教えてくれるだろう。
 ツリーにカティアが隠した飴玉を見付けて、みんなで自慢し合うだろう。
 それから、明日には余った材料でクラリーチェが作ったクッキーが待っている。

 生まれ落ちた人間には、皆楽しい事をする権利がある。
 ――メリークリスマス!

成否

大成功

MVP

クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。とても素敵なリクエストをありがとうございました。
輝かんばかりの、其の夜に。少女の笑顔がポインセチアのように咲きました。
ご参加ありがとうございました!

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