シナリオ詳細
2人の怪盗と船上の仮面舞踏会
オープニング
●2つの予告状
「仮面集いし船上にて
魅惑の宝を頂戴する
――アシカール・ツパン」
「舞踏会の夜は海盗日和
アナタの宝を頂くわね
――スレンダー♡ゼリー」
●狙われた船上仮面舞踏会
「2人の怪盗が同時に!?」
ギルド・ローレットに緊急の依頼が届いたのは、その日の昼下がりだった。
「特につながりもなく、それまで別々に活動して混沌各地で話題になったりならなかったりしていた怪盗2人が、偶然にも同じイベントを狙って予告状を出したようなのです! 海洋で貴族派の船上仮面舞踏会が予定されているのですが、その主催に怪盗からの予告状が同時に2通届いてしまったのです」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が会場の見取り図をテーブルに広げて説明をする。
「怪盗の魔の手から『宝』2つを守って頂くのが今回の依頼内容となるのです。メイン会場は、港が視認できる程度の距離で海上に浮かぶ大きな客船ファンタスティック・オーシャン号。仮面舞踏会は夜20時から23時までの3時間なのです」
依頼人は船上仮面舞踏会の主催者エミュール・アイス・ユティルティス子爵。
依頼状には、「主催側で現地警備員を増員して警戒する一方で、名高いギルド・ローレットにも力を借りて万全を期したい」と記されている。
堂々と身分を明かして警備員として活動するもよし、仮面をつけ招待客を装ったり、各種裏方スタッフとして潜伏するもよし、アプローチ方法はギルド・ローレットに一任するとのこと。
船上パーティは200人ほどが招かれている。
船首側に街灯りを眺め、パーティ会場は上甲板(露天甲板)会場と下甲板(船内)会場とに分かれている。
星空の下、魔法や電光のイルミネーションが眩くゴージャスに煌めく上甲板(露天甲板)会場は、肩ひじ張らない開放的なダンス会場。船尾側にステージが設けられ、音楽隊が情熱的な合奏を提供する。
下甲板(船内)会場は天井高があり、床はウィルトン織のカーペット。白いテーブルクロスの上品な円卓並ぶブッフェ会場となっている。
「なお、依頼人いわく『宝』の心当たりは複数あるみたいなのです」
20時に上甲板のステージ上に子爵が手に持って現れ挨拶をするパフォーマンスあり、22時から下甲板で競売にかけられる予定の『旅人が異世界から持ち込んだという噂の珍しいワイン』、世に1本しかないという噂。
20時に下甲板で招待客の中でも特別親しい数人だけに振る舞う予定の『希少な黄金林檎入りゼリー』。
22時から23時に上甲板のステージで公開する『魔法のアイテム』は最近沈没船から発見されたのを子爵が競売でゲットした世間で話題の宝物。
会場中を自由に移動する一人娘クララの首飾りと奥方エーディトの指輪は、ロマンチックなエピソードがある特別な宝石を使用したオンリーワン。
「そして、『人』なのです」
子爵いわく、家族、友、招待客、スタッフたち――全てがかけがえのない大切な宝。
「海洋の民の性質ともいえるのですが、依頼人はおおらかで、多少の被害は構わないようなのです。けれど、貴族としての威信ですとか、信頼にもかかわるので、できるだけ被害を抑えてほしい、と」
ひととおり説明を終えると、ユリーカは心配そうにあなたを見つめた。
「頼りにしているのです……!」
- 2人の怪盗と船上の仮面舞踏会完了
- GM名透明空気
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年12月22日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●????
「それでは、予定通りに」
「ええツパン。私は海盗の宝を」
「私は、ゼリー、魅惑のキミの宝を」
●警備員の士気は高かった。
著名な戦は勿論、それ以外でも彼らの海で日々活躍してきた名声高き英雄が眼前に居るからである。
「怪盗の事情には詳しくねぇが、予告状ってのは被るモンなのかね……」
警備に就く『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)が紫煙をくゆらせた。
「とはいえ、景気よく盗ませてやる訳にはいかねぇしな」
「潜入調査か。たのしそうだね。怪盗が例のあの人達ってのがまたなんとも気が抜ける話だけども」
海軍軍服姿の『若木』秋宮・史之(p3p002233)が頷き、招待客に扮する心積もりを明かせば縁が首を捻る。
「俺もだが、今更顔を隠した所で意味がねぇほどすっかり名前も顔も知られちまってる。今更顔を隠した所で意味がねぇだろ」
「うん。だから隠さないよ」
史之はVIPとしての招待状を見せた。
(個人的にはあまり目立ちたくはないのだけれど)
「俺達がいることで抑止力になるかも知れないね」
「ああ、警戒させるくらいの効果はあるだろうさ」
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は音楽隊の制服に身を包み、ソルベ派バッジをつけている。
「大事な宝物を必ず守るよ。だがピリピリしてては疲れてしまうから、パーティを楽しくするお手伝いもするよ」
「また現れたか、スレンダー♡ゼリーめ! ウオオオオ! 絶対ニ捕マエテヤルゾォオ!!」
『甘い筋肉』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)がサイドチェストで意気込んだ。
「怪盗ツパン! とーちゃんから聞いたことがあるぜ!」
『わもきち』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)は警備員にツパンの情報を共有している。とーちゃんことゼニガタ・D・デルモンテといえば知らぬ者がいないこの国の重鎮である。
「なんと! あの提督に!?」
「お宝はしっかり守ってみせるよ。俺たちイレギュラーズの名誉にかけてね」
史之はギフトで偽物だとわかる目印付そっくりワインを用意した。
「では、偽ワインを持ってステージに上がりましょう」
子爵が感心している。
そんなやりとりを見守る『天空の魔王』ハンナ・フォン・ルーデル(p3p010234)は、最近ギルド・ローレットに加わった無口がちなルーキーだ。故国では数々の戦場で戦果を挙げ敵から恐れられた彼女は、目頭を揉み。
「なんというか……あらゆるところにツッコミどころが存在しますが」
……困惑していた!
「まあ、依頼された以上は全力で任務を遂行いたしましょう」
軍人だけあってハンナの切り替えは早かった。黒と白の狭間の色纏う軍人少女は仏頂面に近い無表情ながら、可愛らしい顔立ち。指揮下の警備員チームはデレデレして少女の指示に従った。
「ハンナ殿、当チームはどこを警戒しますか」
「開放的な造りになっていますからそこを狙ってくる可能性があります。とはいえ場数をこなしてきた怪盗が、初手でいきなり宝を盗み出そうとする可能性は低いようにも感じますが」
「ご尤も。初手から盗み出そうとはしますまい!」
ハンナはその瞬間ぞくっとした悪寒に襲われた。
●「今何かのフラグが立ったような」20:00
マッチョは下甲板のブッフェ会場にいた。
具体的に言うと、希少ゼリーの隣でテーブルから頭部のみを出し、巨大プリンのオブジェクトに扮していた。
(オレハプリン……オレハプリン……)
「ムウ、ゼリーメ。ギフトデ甘い物=プリンヲ見ツケタト思ッタラゼリーダッタ、トイウ目ニ何度会ッタコトカ!!」
(一番ハプリンダト言ウ事ヲ教エテヤルゾ!)
「ママァー! プリン!」
(スレンダー♡ゼリーハ無類ノゼリー好キ……必ズゼリーヲ狙ウ!)
「わあ、プリンだー!」
スプーンが頭をつんつん突いてくる。周囲に漂う甘ぁいバニラエッセンスの香。ぷよぷよプリンがぷるんっ、スプーンに掬われて。
「ママァー! プリン甘い!」
テーブルに人だかりができて無数のスプーンがプリンを襲う。マッチョの頭、大人気!
「勝ッタゾゼリー!」
ここにプリン派が勝利を収めた!
めでたしめでたし。
(ソレニシテモ、ゼリーガイナイ)
マッチョには計画があった。マッチョはギフトでゼリーが感知できるので、ゼリーが近くに来たらガバッとアレしてやろうという計画だ。だというのに。
「あれ? ゼリーが1人分足りない」
「!?」
テーブルから食われかけのプリンがマッチョになって立ち上がり会場を後にすると、子どもたちは大号泣。
「ママァー!! プリンがマッチョになったぁ!」
「マッチョ食べちゃったぁあ!」
●同時刻、上甲板。
「まあ、あの方をご覧になって」
「女王陛下の覚えめでたき『若木の君』よ」
「貴族派の集いに彼を遣るとは。王の目があるのを忘れるなと釘を刺しているのだろうか?」
史之は囁きの渦中にて堂々とイザベラ派バッジと女王の珊瑚のネクタイピンを煌めかせ。ご婦人を誘い光と注目を一身に集めて忠義の騎士の名に恥じぬ所作で踊り出す。
「今回のお披露目会にはちょっとしたサプライズがあるようですよ、ご婦人」
紳士的に微笑み礼をする史之の指に輝く指輪に婦人は切なく嘆息し、一夜の夢を友人達に自慢するのであった。
「ブランシェットのお嬢さんが一緒にいてくれるなら、心強いわ」
エーディトが娘と手を繋ぎ、仮面の令嬢『雪原に舞う』クロエ・ブランシェット(p3p008486)に笑みを向けた。クロエは楚々として礼をして、話をきく。
「この宝石は、海賊と貴族の姫の冒険と恋愛物語に登場する宝石なの」
「素敵ですね……」
「クララと、らあらです」
クララはシロイルカのぬいぐるみを見せて挨拶した。
「わあ、可愛い……。はじめまして、らあらさん、クララさん」
「クララはローレットファンなのよ」
母がこそりと囁いた。
イズマはティンパニを担当しながら感情探知している。深い響きが厚みを増したのは、ギフトを使って音を密やかに足しているから。常人にはできない芸当に音楽隊の仲間が尊崇の念を募らせ「正式メンバーにならないか」と勧誘までされてしまう始末。
「子爵の警備に当たるのでこれで」
「そんな!」
夜を高き宙に追いやろうとするかのように船に光が咲いている。華やぐ神聖なアカンサス模様の船体装飾、ウィンザーチェアの車輪装飾。仮面の下で密やかに交わされる視線。
(……懐かしいな)
(毒と陰謀の気配は欠けているが、あんなものは無い方がいい)
『夜に這う』ルブラット・メルクライン(p3p009557)は常の白き鴉の仮面のまま、杖を手に会場を見回っている。
「素敵な仮面ですね。ダンスはいかが?」
話しかけてきたのは、烏天狗めいた仮面の飛行種貴族。典雅な翼を誇るようにルブラットに差し出される鳥の手。
「……舞踏は遠慮しておく。今宵の舞踏の相手は、もう決まっているから」
その手に痣があるのを見てルブラットは軟膏を差し出した。
「お医者様でしたか。これはありがとうございます」
舞踏会で染みついた仕草と医者の気遣いに烏天狗は感激した様子でプレゼントボックスを仮面の内側から取り出し、差し出した。
「それはどこから出したのかね?」
仮面に収まる物には思えないが。ルブラットが疑問を呈すが、烏天狗は「お礼にどうぞ」と押し付けて行ってしまった。
「あの方、素敵ね」
「お医者様らしいわ」
ルブラットは「我々に知らされていない秘密の演目があるらしい」と招待客の間に噂を撒いた。途中何度かダンスに誘われたが、誰もそのハートを射止めることはできなかったという。
ワモンは子爵にぴたりとついて回り変装チェックをしている。
「デルモンテ家の末の子息ですね。お会いできて光栄ですわ」
視線を合わせて挨拶する客にワモンがアザラシハンドをぺたっと当てると、客は「あら、坊ちゃんに気に入られたかしら」と幸せそうな顔をした。
ぷにっ。その頬がつねられる。変装していないかの確認だ。
「ふぇっ」
「ヨシ!」
「坊ちゃん?」
「次!」
「なになに?」
「デルモンテ家の坊ちゃんが握手会ならぬつねつね会をしているらしい」
噂が広まり、行列ができていく。
イズマはつねつね会のど真ん中で子爵を庇うようにして警戒していた。たまにワモンにつねられるのは、偽物かどうかの確認のためらしい。
「ワインはお好きですか?」
子爵に問えば、子爵はこっそり打ち明けてくれた。
「実は私はそれほど嗜まないのだ」
「ほう?」
「とはいえ、社交ツールというものでね。好む、という事にしている」
「なるほど」
感情探知には「ワイン大好き」「自信満々」な貴族たちの感情がひっかかりまくっている。
「あっ、今ぷよんって」
ワモンが手応えに声をあげる。指をペロッと舐めると――「ペロッこれはゼリー!」ゼリーが出たぞー。
しかし、人だかりがものっすごい。
「どいつがゼリーだー!?」
「ちょ、あの、全員動かないで……誰が誰だか」
(ゼリーがワインの方に?)
ハンナが眉を顰めて部下にゼリーを探させる。だが、ゼリーは見つからない。史之は子爵の元に駆け寄った。
「あらためまして、秋宮史之と申します」
「ヨシ!」
ワモンのチェックを通過して史之が挨拶をする。
「いやぁ、ゼリーには驚きました。でも、おかげでワインは今のところ無事ですよ」
子爵が笑顔でワインを見せる。史之はボトルに目印がないことを確認し、笑顔で返した。
「なによりです」
(偽物を盗んでいったよ)
船尾ステージ周辺で騒ぎが起きている。
(視線が外れている隙に、ってか)
縁はその時、船首側を見ていた。鋭い眼光は暗闇の海に浮かぶ一隻の小舟を発見した。
●「おっさんは視た」21:00
ハンナは部下の一部にゼリーを捜索させ、自身は魔法のアイテムの警護に移る。保管場所は寒々として、暇である。部下たちは暢気だった。
「ハンナ殿~、しりとりしましょう」
「やりません」
「そんなこと仰らず」
「ワイン。終わりです」
ハンナが取り付くしまなくあしらうと、部下たちは「俺と喋ってくれた」とか「冷たくされちゃったぜ」とか喜んでいる。
(子爵が手配した警備員が特殊なのでしょうか)
ハンナは深くため息をついた。
ワモンも警備隊を率いてワインの保管庫を厳重警備している。
「本物のワインに近づくやつは要警戒だー!」
「はっ! ワモン様!」
「今トイレから戻ったおまえ、こっちに来い!」
「はっ! つねってください!」
クロエは仮面舞踏会の主役と化していた。シャンパンゴールドの照明に照らされて、白い羽をふわり。周囲に踊る薔薇色の光を交わすようにドレスを翻し、リボンを揺らし、仮面の下から美しき瞳が間近に微笑みを伝えればダンスパートナーが魅了されたように頬を赤らめる。遠目にルブラットが貴婦人に囲まれているのが視える。
結界担当は上で待機。それは縁からの謎の指示だった。
「不審な感情が……」
母娘の警護をして船内の通路を歩いていたイズマが眉を寄せる。マッチョがその後ろで忍び足でついてきている。
「ムッ?」
「あの方々は?」
進行方向から不穏な会話が聞こえてくる。
「私見たのよ。さっき舞踏会でクロエ嬢に鼻の下を伸ばしていたわね!」
「き、君だって秋宮氏に秋波を送っていたのを見たぞ!」
言い争う男女。
「何事です?」
そこに現れたのは、子爵だった。子爵は男女を宥め、妻子を見つけて手を振った。
「エーディト、クララ。探したぞ」
「パパ!」
その手には目印付ワインが握られている。イズマは駆け寄ろうとしたクララの肩を抑えた。
「子爵、先ほどはどうも。ところで、ワインはお好きですか」
「? もちろん」
近寄ろうとした子爵が足を止めたのは、同時だった。何かを察知したようにハッとした子爵は、くるりと踵を返して駆け出した。
「パパ?」
「あなた?」
「待テ!」
声を挟み、飛び出したのはマッチョだ。
「オレノプリン☆センサーニカカッタ! スレンダー♡ゼリーダ!」
「くっ、出たわねマッチョ☆プリン!?」
「お出ましだな、怪盗さん?」
「皆さん離れて。今から始まるのは……サプライズショーだ!」
イズマが夜を抱く瀟洒な細剣を芝居がかった仕草で振りパフォーマンスだとアピールすれば、周囲にいた客がざわめいた。
スレンダー♡ゼリーが逃走に移る。警備員に母娘を託して怪盗を追い立てるのは、イズマとマッチョだ。
●22:00
「怪盗が?」
クロエは母娘を引き受け、警戒を強めた。
場所は、上甲板。
『魔法のアイテム』がステージ上にローレットの冒険を立体映像化したものを映し出している。視線がステージに集まる中、早速クララに伸びてきた手をクロエがさっと掴んだ。
「あっ」
「この手はなんですか?」
「す、すみません。つい」
警備員が不審者を連れていく。調べによると、ただの幼女愛好者だった。
「最後まで気が抜けませんね」
クロエが困った様子で呟き、続いて奥方の胸元に伸びた手をパッと掴む。
「……なんですか?」
「アッ」
警備員が不審者を連れていく。調べによると、生活に困ってスタッフのアルバイトに応募したが宝石に目が眩んだ者だった。
やがて、イズマとマッチョが上甲板にやってくる。
●サプライズイベント
小舟が海に浮かんでいる。
夜陰に紛れ、2人の怪盗が合流していた。
「ハァハァ、お待たせツパン」
「待っていたぞゼリー」
怪盗は互いが盗んだ宝を交換し、逃げようと――、
「へーそれがあの有名なゼリーか、レシピが知りたいなあ」
そこに、柔和な声が挟まれた。
振り返れば、自前の小型船を装備で持ち込んだ史之が距離を詰めている。
「「!?」」
傍には特異運命座標が揃い踏み。子爵の船からは無数の照明が降ってくる。
「皆さま! こやつが今宵紛れ込んだ道化です!」
史之が凛とした声を響かせ、ルブラットとクロエが保護結界を張り巡らせる。
縁が高度に組み上げた掌握魔術を放てば、気で練られた糸が夜空に流星めいて迸り、ゼリーを絡め取った。そこに史之が覇竜穿撃を叩き込む。
「ゼリー!」
「ツパァン!」
ツパンが必死にゼリーを救出する。史之はツパンが盗んだ宝のゼリーを取り戻し、にっこり。
クロエの手で勇壮なマーチが奏でられている。
これはショーだ――皆の笑顔を思い描きルブラットが優雅に流麗に杖を廻し、外套を翻してステップを踏む。舞踏を断り続けた噂の医者が躍っているのだ、人々はその華麗な姿に夢中になった。その眼に映るのは、独楽めいて円舞曲の軌跡に灰の髪を棚引かせる、どこか神聖さと不吉さが同居する靜かな舞姿だった。
「ツパン! 今日こそ年貢の納め時だぜ! とーちゃんに代わってオイラがお前を捕まえてみせるぞー!」
ワモンが背中に背負ったガトリング銃の銃口を海に向け、MADACO弾を連射した。
「ゼニガタの息子か!」
ツパンのパンツァーファウストが快音を轟かせ、真蛸弾を迎撃すると花火のように夜の海が爆発光に照らされる。
「ワモンよ、私はキミに今宵真実を明かさねばならない」
「なにぃ!?」
「実はゼニガタではなく私がキミの父親なのだ。私が若きゼニガタと酒を取り合っていた話を知っているかね? 酒というのは女の隠語なのだよ」
「な、なんだって……!?」
「もちろん嘘だ。ハハハ」
「っておい!」
「ゼニガタによろしく伝えてくれたまえ!」
「ツパーン! 逮捕だー!」
「はぁ」
やりとりに頭を痛めながら背の翼を羽ばたかせて飛翔するハンナは魔砲の照準を合わせ。
「――外しません」
短い髪を夜風に遊ばせながら魔力を漲らせ、放つ弾が風を切り花火のように――ザバァァン! ドォォォン!
「「おおっ」」
歓声が上がる。魔砲が命中し、ツパンの小舟を沈めたのだ!
「確保だ!!」
ワモンが確保に向かい捜索したが、怪盗は終ぞ見つからなかった。
史之が肩を竦める。
「いいんじゃないかな――なんかまた面白いことやってくれそうだし」
「驚かせちまって悪いな。イレギュラーズのサプライズイベント、楽しんでもらえたかい?」
『切り身にされない程度には努力しよう』
縁が自身の映像を背負い、大歓声に盃を掲げた。依頼人が秘密で分けてくれた貴重な一杯だ。
負傷者はいなかった。ルブラットがプレゼントボックスを開ければ、平凡なゼリーが詰まっている。
照明に照らされたぷるんとした艶めきを見て、ルブラットは幻想外れの廃教会を思い出した。自身の情報屋――子どもたちの笑顔を。
映像の中で、少女が歌を歌っている。
「らあら」
クララがクロエの袖を引く。
「ファンなんですか?」
「うん。帰ったらね、白い鳥さんのぬいぐるみも買ってもらうの」
くろえって名前をつけたいな。
「たのしかった!」
クララはそう言ってこの日一番の笑顔を見せたのだった。
マッチョがプリンキッズに囲まれ、ハンナは部下に別れを惜しまれ、イズマは音楽隊に勧誘されている。
後日、情報屋は2人の怪盗が別の事件を起こしたと告げる。怪盗は生き延びたのだ。
「しかし、子爵からは感謝状が届いているのです」
子爵は、サプライズショーがとても盛り上がった事と、パーティの間中、招待客や警備員や妻子を喜ばせてくれた事、宝を守り――取り戻してくれた事をおおいに喜び、心から感謝していると丁寧に綴った手紙と報酬をギルドに届けたのだった。
●????
「やられてしまったな」
「マッチョ対策したのに……次は負けないわ」
――続く?
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
依頼お疲れ様でした。おかえりなさいませ、イレギュラーズのパーティの皆さん!
「ストーリーは俺のプレイが創る!」というプレイヤーさんの実力の高さを見せつけていただきました。
依頼人の子爵が感謝してるので依頼は成功です。名声も上がりました。やったね。プリンもゼリーも美味しかったですね。
MVPはワインの偽物と船を用意したあなたに。
ルーキーのハンナさんはイラストがこれからのご様子で、納品をGMも楽しみにしています。ゲームは楽しい体験を味わうためにプレイする方がほとんどだと思います。このゲームを通じて得る体験が楽しく、素敵な思い出となりますようにと、応援しています。
もし「自分が考えてるうちの子はもうちょっとこういうキャラなんですよ」とかあったらこっそりFLで教えてくださいね。全力で反省して、次回に活かして参ります。
――参加してくださって、ありがとうございました!
GMコメント
こんにちは、透明空気です。
今回は船上の仮面舞踏会です。2人の怪盗が「宝を奪う!」と予告状を寄こしたのですが、2人が狙う宝はまず何でしょう? 頭を使う系ではなく、それっぽい雰囲気を楽しむドタバタワイワイゲームです。
●成功条件
狙われている宝(2種類)を守る事
●舞台
海上の船が舞台です。
仮面舞踏会なので、招待客として参加する場合は仮面をつけてご参加ください。
招待客以外に、警備員や各種裏方スタッフ(例えば、メイド、執事、シェフ、清掃役、などなど)として自由に遊んで頂けます。
●宝候補
1.『旅人が異世界から持ち込んだという噂の珍しいワイン』……競売にかけられ、競り落とされるところまで守ればOKです。
2.『希少な黄金林檎入りゼリー』……特別親しい数人に無事配り、食べてもらうところまで守ればOKです。
3.『魔法のアイテム』……ステージで無事お披露目できればOKです。
4.クララの首飾り……パーティが終わるまで無事であればOKです。
5.奥方エーディトの指輪……パーティが終わるまで無事であればOKです。
●怪盗
・怪盗アシカール・ツパン
シナリオトップ画面でCOOLでつぶらな瞳を見せてる彼です。
海洋出身の自称世界を股にかける海盗(かいとう)アシカ。
どこにでもおもむき何でも盗むが、特に希少な酒をターゲットにすることが多い。
盗みの手法は様々、変装も得意だとか?
――ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)さんの関係者さんです。
・怪盗スレンダー♡ゼリー
シナリオトップ画面でセクスィーダイナマイッラブリィフェイスしてる彼女です。
ゼリーとスレンダーなボディを素敵に愛する女(?)怪盗。
主な標的はプルプル揺れるものや、スラリとした造形の物。特にプルプルしたお宝には目がない。
彼女のゼリー♡レーダーは一定範囲内のプルプルした物体を感知する。女の子の胸に反応する事があるのが悩み。
――マッチョ ☆ プリン(p3p008503)さんの関係者さんです。
●タイムスケジュール
20時~21時、21時~22時、22時~23時の3回に分けて、「どの時間にどのPCがどこで何をするか」を書いてくださると助かります。
義務ではありませんが、もしよければ。
●依頼人NPC
・エミュール
依頼人です。舞踏会の主催者さん。
・クララ
依頼人の娘です。首飾りがとても目立ちます。
・エーディト
依頼人の奥さんです。指輪がとても目立ちます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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