シナリオ詳細
<ダブルフォルト・エンバーミング>終焉を運ぶ者達
オープニング
●
ネクスト、砂嵐は現状、終焉(ラスト・ラスト)から突如出現した闇の大軍勢に襲われている。
砂の王ディルクを始めとした実力者たちは夢の都ネフェルストを取り戻すべく終焉の者たちと交戦している。
そうした状況もあり、国内の所々に現れる終焉の手勢に対処できずにいるのが現状だ。
「我ら、終焉の使徒なり……」
「終焉獣(ラグナヴァイス)と共に、世界を終わらせる者なり……」
黒い神官服を纏った僧侶たちは口々に終焉を語り、砂嵐の中央に向けて侵攻する。
神官たちもかなり異様な見た目であり、不気味な存在だが、それ以上に彼らの引き連れるモノ達があまりに奇怪でおぞましい姿をしていた。
「オオオオゥ、オオゥ、オオゥオゥ……」
片や巨大な口。
どこにつながっているかともわからぬ口内からは嗚咽の様な声が漏れ出している。
「シュルルル、シュル、シュルルル」
そして、片や人間の後ろ髪の様な物体が束となって浮いている物体がいくつか。それらもまた意志を持って動いていた。
それらは終焉獣(ラグナヴァイス)と総称される。
「ひっ……」
「お、お助けぇっ!」
砂嵐南部にあるチャミド村の人々はそれらを目にしただけで体を震え上がらせる。
傭兵の多い砂嵐とはいえ、民間人は異様な集団に怯えるばかり。
とはいえ、生まれ育った故郷から出たことのない者も多く、逃げる宛もない為に自宅へ閉じこもる他ない。
少しずつ近づいてくるそれらの群れが通り過ぎることを、村人たちはただ願うのである。
●
悪意は形となり、ネクストを襲う。
散発する事件は止まらず、各地で戦乱が巻き起こっている。
「一つ、頼んでもよろしいですかな?」
砂嵐を行くイレギュラーズへと声をかけたのは、パイプを手に持つ初老の男性。
一見すればどこにでもいそうな老紳士といった見た目だが、その左手は明らかに異形のそれであった。
「失礼、私はジェームスという。探偵業と情報屋を営んでいましてな」
簡単に自分のことを名乗ったジェームスが依頼してきたのは、とある村へと近づく異様な群れの撃退。
砂嵐南部にあるチャミドと呼ばれる村は砂嵐にあって珍しい農作地帯。乾燥に強い作物を育てているそうだ。
村へと近づいてきているのは、終焉を名乗る集団なのだという。
「その話、俺にも聞かせてくれないかな」
いつの間にか、イレギュラーズの横にいたのは、赤い短髪、隻眼隻腕の青年だった。
アラドと名乗った青年を加え、ジェームスはさらに話す。
「終焉の使徒。そして終焉獣。いずれも恐ろしき存在です」
その狙いは、世界の滅亡と言われる。
まずは、力持つ砂嵐に目をつけ、実力者である傭兵達を倒そうとしているとも言われており、事実、終焉の手勢と交戦の最中にあるとか……。
「であるならば、砂嵐にあって辺境であるこの村にまで、防衛の余裕などありますまい」
ジェームスとて、邪神憑きなる体を持てども、荒事はさほど慣れてはいない。それでも、自分が出ねばならぬ状況なのだと考えているそうだ。
「あんたもそうか、奇遇だな」
軽いノリのアラドも傭兵業を引退した身。
現状、用心棒を生活の糧としてネクストをさすらっていたそうだが、砂嵐の危機に黙ってはいられなかったという。
「予め、敵情報は可能な範囲で得ております。ご確認くださいませ」
ジェームスが提示したのは、終焉の者達の集団について。
終焉の使徒は数で攻め来る破戒僧。
そして2種の終焉獣。髪の毛が束なった「束縛の頭髪」は文字通り獲物を捕らえることを得意とし、「飽食の口」がそれらを食べてしまうようである。
「この口の恐ろしさは、石化の呪いを振りまくことにあるのです」
体が石化してしまう恐ろしい病気。
翡翠の地では、この特効薬の開発が進んでいるらしく、幻想種がいればその試薬を使うことができるというが、それ以外の手段では治すことはできないという。
イレギュラーズとしては、幸いにも近場にサクラメントがあることを確認する。倒れた際に利用できるだろう。
「では、皆さん、この度はよろしくお願いしますぞ」
駆け付けてくれた2人は満足に戦えるというわけではない。
彼らのサポートを受ける形で、イレギュラーズが主体となり、終焉を名乗る集団と対するのである。
- <ダブルフォルト・エンバーミング>終焉を運ぶ者達完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年12月18日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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ネクスト、砂嵐の南、翡翠にほど近いステップ地帯にあるチャミド村。
「ラサ……こっちだと砂嵐っていうのか?」
北をみやる『ホワイトナイト』リック(p3x007033)。村のさらに向こう側には首都ネフェルストがあるはずだ。
おかげで、村は通り道となる。被害に遭うのは避けられず、村人達は家に籠ってただ何事もなく済むことを祈るばかりだ。
「混沌の方でもお世話になったし、仮想世界の中といっても見過ごすのはできねーよな!」
ただ、頻発するこの状況は、現実世界である混沌でも起こりかねないとの示唆ではないかと、『屋上の約束』雀青(p3x002007)は思案する。
「だとしたら、奴さん方が本格的に動いたら寒気がしてくるな」
他所にも現れる終焉を名乗る集団、そして終焉獣。それらは首都を目指しており、この村にも差し掛かる。
すでに畑にも立ち入っているが、神官も獣も一切作物には興味を示していない。
それが終焉獣の習性なのか、あるいは……『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)はそこまで推して首を振る。
「いえ、今はそれより防衛の方が優先ですね」
「人狙いなのは厄介な面もあるけど、こいつらを全員ぶっ倒した後でも畑とか家の被害は少なめってことだよな!」
身構えるカノンの言葉を受け、リックが前向きに意気込みを見せていた。
徐々に近づいてくる終焉の集団。
多数の使徒と思しき神官に引き連れられているのは、どう見ても人体の口と髪の毛の塊である。
「気味の悪い見た目をしているな」
「同感だな。随分と不気味な見た目の終焉獣だ」
それらに『正義の騎士』ジャスティーナ(p3x009816)、『青き調和』アズハ(p3x009471)が眉を顰める。
「口と髪の毛とかちょっと気持ち悪い敵だよなー、っていうか身体の一部なんだろうけど……」
「……襲ってきてるのが口と髪の毛ってことは、どっかに眼とか耳とかもいるのか?」
『絶対妹黙示録』ルージュ(p3x009532)は、人体の一部といった相手を見て、他のパーツの存在を気にかけると、リックがそれに言及する。
「……この間、目の形をした終焉獣いませんでしたっけ?」
そこで、『うわキツ』ミミサキ(p3x009818)がすでに伝承の地で
同種かつ別の終焉獣……瞳や指と対していたことを話す。
「なんスか? 合体してハイパーフェイス終焉獣にでも成るつもりでスか?」
毎回移動して相手にするのも疲れると、ミミサキは始めから合体した状態で来てほしいと所望するが、終焉獣も易々とは応じてはくれないだろう。
何せ、終焉獣の中に石花の呪いを使う飽食の口がいる。何か相手が訴えかける前に石と化してしまいことだろう。
「どこかの神話で、目が合ったら石になってしまう化物がいると聞いたことがあるが……」
ジャスティーナは別世界の神話に登場するメデューサを思い出すが、今回の終焉獣とは別物とすぐに否定する。
ただ、その終焉獣は生ある者に食らいつく。例えイレギュラーズであっても、その関係者であっても。
「おれ達で対処しねーとな」
「NPCには攻撃を向けさせたくないでスからねー」
ルージュ、ミミサキは、攻め来る終焉の手勢から駆け付けた関係者達へと向く。
「たしかにありゃ、相当のバケモノだな」
「……げっ、鬼神衆のクーガーじゃねえか、アイツ?」
笑う隻眼隻腕のアラド・クーガーに、『ロックンロール』アーロン(p3x000401)が顔を引きつらせる。
どうやら、駆け付けた1人はアーロンの背後の知人……いや、その現身ともいえるネクストの住人らしい。
(まあ、味方のうちは気にする事ねえか……どっかに鬼迅衛とか隠れてないだろうな……?)
終わってからの連戦など、勘弁してほしいと嘆息するアーロン。
何せ、今の彼はただのロックンローラーで、戦う仕様ではないのだ。
そのアラドとは別にもう一人、協力者がこの場にはいる。
「ふむ、私にどこまでできるかわかりませぬが……」
今回の状況について情報をもたらしてくれた異形の右腕を持つジェームス・イスティオンだ。
「NPCの再現条件は……現実の混沌に居る、或いは居た、だったか」
雀青もまた背後として、ジェームスが現実に存在することに喜ぶが、それは後にして。
「奴さん方に足元を掬われる訳にはいかん」
その雀青の言葉が聞こえたのか、ジャスティーナが頷いて。
「支援してもらえるのはありがたい、が。いざという時は、彼らを庇わねば、要らぬ犠牲が出てしまうからな」
協力者であるジェームスやアラドはそれぞれの事情で満足に交戦できぬ理由がある為、気を配ろうとジャスティーナは考え、彼らへと呼び掛ける。
「貴方がたには、頭髪や破戒僧の殲滅組に回ってもらいたい」
その指示は、イレギュラーズ達にはサクラメントを使った復帰があるという理由もある。
「ああ、『飽食の口』以外と戦闘するように頼むぜ」
アーロンもまた、ジャスティーナと同じことを考える。
(戦力的にも人情的にも、相手させるのは酷ってもんだ)
何せ、今回のメンバーに幻想種はいない。受けたら即人生すら退場してしまうというリスクをNPCは負ってしまうのだ。
「わりー、にーちゃん達。にーちゃん達は使徒の連中がこっちの邪魔をしないようにしてくれよな!!」
ルージュが頭髪も請け負うとしていたのは、情報精度がさほど高くないことも理由としてある。
「了解した」
「頼んだぜ」
2人の協力者はその策を快く引き受けてくれた。
そのやり取りの間にも村へと迫る終焉の集団を、イレギュラーズはサクラメントのある村入口近くて迎撃する。
「万一の時、素早く戦線復帰できるようにしたいからな」
村の畑は多少なりとも戦場となる。アズハはやむなく畑を荒らさぬよう飛行していた。
「我ら、終焉の使徒。世界を終わらせる者なり……」
「オオウ、オウオウ……」
「シュル、シュルルル」
「奇怪な様相ですが、あれも終焉獣とその仲間。当然油断は出来ません」
改めて、カノンが近づいてくる集団に警戒する。
「それに終焉の使徒も……その思想とは相容れないよ」
「世界を終わらせるなんて妄言を実現させる訳にはいきません!」
アズハの主張に皆頷き、カノンが声を荒げると、違いに臨戦態勢へと入って。
「終わらせるわけにはいかない。世界の終焉は、我々の手で食止めるのだ!!」
剣を抜くジャスティーナ。他の面々もまた武器を抜き、終焉を招かんとする集団へと立ち向かうのである。
●
仮想世界内に現れる終焉の手勢。
まさに破滅をもたらすその集団へと、イレギュラーズは仕掛ける。
「村へは一歩も立ち入らせない」
世界の滅亡を謳う者を全て討伐すべく、アズハは自己強化しつつ最も危険な飽食の口を抑えに当たる。
抑えといえど、アズハは口からは十分な距離をとり、拳を振り上げる。
「そっちに飛ばすぞ!」
仲間に呼びかけた彼は、強く殴って口を大きく村の外側へと弾き飛ばす。
「来い。一歩たりとも進ませはしないが」
しばらくは追いすがってくる敵を突き放し、アズハは木を弾き続ける。
もう1体はリックが抑える。
「おれっちの新生ライトニングオーバーロード……食らわせてやるぜ!」
その口内目掛け、リックは三叉戟に雷の精霊力を集めて思いっきり突き出す。
「オ、オオ……ウ……」
「まだまだ行くぜ!」
やや硬直した動きを見せていたが、発する怨嗟の声はひどく耳障りだ。リックはできる限りその力を封殺する役目を全うしようと、さらに武器へと雷を纏わせていく。
そうして、危険な相手を抑える間に、他メンバーが使徒と頭髪の殲滅を急ぐ。
「じー……」
ミミックであるミミサキは敵の様子を覗き見ていたが、すぐさまレアリティの高さを醸し出して敵の攻撃を誘う。
タンク兼アタッカーの役を担う彼女は闇の力を纏わせて攻撃を仕掛ける使徒や自らの身で縛り付けてくる頭髪を引きつける形となる。
ただ、ミミサキも黙ってやられているわけでなく、箱から伸ばす舌をメインに反撃を叩きつける。
とはいえ、ミミサキはあくまでタンク役が中心。火力は仲間に託すこととなる。
「はっ、はああっ!」
「オラオラァ!」
戦いは不慣れというジェームスだが、死神の憑く腕はかなりの破壊力があり、アラドは群がる使徒を隻腕で振るう短剣で切り刻む。使徒も迂闊に攻撃できずにいたようだ。
アーロンはそれを横目で見ながら、広範囲にロックな歌声を響かせる。
「復活は可能だが、タイムロスもあるし、出来るだけ倒れないようにしないとな」
ヒーラーとなるアーロンだ。早々にいなくなっては話にならない。敵との相対は仲間に任せ、あちこちに移動する彼は歌声を響かせて仲間の支援と敵の妨害に注力する。
「世界の終焉という終演にはまだ早い!! 正義の名の下に、貴様らを食い止めてみせる!!」
ジャスティーナは仲間の抑える口を目標とはしていたが、周りの頭髪や使徒も巻き込む形で正義の光を発する。
(クリーンヒットさえすれば……)
上手く相手を恍惚状態とすれば、仲間が大ダメージを与えられる。ジャスティーナは積極的に敵を異常状態とすることでスムーズな討伐を目指す。
雀青も同様に口をメインに、他を巻き込んで「恵璽御魂刀静神楽」から青い音の塊を一直線に飛ばし、精神を削り取る。
仲間が多く交戦する状況もあり、雀青は十分立ち回りには注意していたようだ。
(頭髪の束縛と口の噛みつきコンボはかなり辛そうだ)
ルージュもまた自己強化を施した上で、頭髪をメインに紅いハンマーから光を飛ばして対抗する。
その光は広範囲に燃え盛る炎を残す。
「頭髪ならば、よく燃えるだろうからな」
堅実な立ち回りのアーロンに対し、ルージュは防御を考えずに攻勢を強めてガンガン攻め立てていた。
「やはり数で負けている以上、敵の数を減らし、数の利を奪うのが得策でしょうっ」
敵から適度な距離をとるカノンもまた早期の撃破殲滅をと、阻害の範囲魔法を放つ。
敵陣は一斉に苦しみの声を上げ、仲間の攻撃も手伝って、使徒数体と頭髪1体が抵抗できぬまま果てていく。
「……他の方が狙われるよりは全然マシですしねっ」
「「応えよ、我らの声に」」
だが、そんなカノンの思いとは裏腹に、使徒らは数体が集まって言葉を紡ぎ始める。
「「シュル、シュルル……」」
すると、虚空より現れたのは、新たな束縛の頭髪2群。
「やはり、情報外の行動をとったな」
警戒していたルージュはその新たな敵に対しても、果敢に攻め立てていくのである。
●
新たに現れた頭髪は一旦ミミサキが抑えに回る。
ルージュが頭髪1体を燃やし尽くす間、口の抑えはリック、アズハが注力し続けていた。
何せ下手をすれば体が石と化してしまう。
敵の行動パターンを固定、もしくは行動を阻止する戦法はうまく機能していたようで、彼らの体力回復をアーロンがサポートする形でしばらくその場を持たせる。
「ふむ……」
ジェームスも舌を巻きながら、使徒を殴り倒す。
何せ、使徒が新たな飽食の口を呼べるのであれば、それだけで戦線が壊滅すら危機すら生まれるのだ。
「どうした、終焉をもたらすんじゃなかったのか」
それでも、アラドは嬉々とし、ナイフで相手を切り崩す。
五体満足で活動していた傭兵時代の力がいか程だったのか、気になるところだ。
「終焉、しゅう、えん……」
卒倒する終焉の使徒。動かなくなったそれらの姿がかき消えてしまう。
駆け付けたNPCの力を垣間見ながら、雀青は青い音の塊を飛ばし、口と合わせて狙いを定めた使徒を倒していく。頭髪1群もまた意識が途切れたのか、地面に落ちていたようだ。
「数で押し寄せてきやがって!」
口の石花の呪いを気にかけ、封殺を行いたいジャスティーナだが、敵もこちらの狙いを察して邪魔をしてくる。
彼女もやむなく三叉戟に水と波の精霊力を集めて一気に浴びせかけ、頭髪2群と使徒を纏めて倒していく。
少しずつ数が減ってきたことで、ミミサキも抑えが楽になったのか、新規に召喚された頭髪へと纏めて舌を叩きつける。
「ミミックが束縛されるはずないじゃないっスかー」
パラパラと地面に落ち行く討伐へと言い放つミミサキ。
傍では、カノンがこれ見よがしに呆れを見せていて。
「全く、世界を終わらせて彼らに何の得があるかなんて知りませんが……」
悪態づく彼女は頭髪1群や使徒を纏めて捉え、詠唱を行う。
「……そうなった時点で問答無用で私達の敵です。覚悟して貰いましょう!」
発動したインタラプトはその行動を強く奪い、火力でもって敵を次々に地に沈めていた。
敵の撃破も加速する中、しぶとく食らいついてくる2体の飽食の口。
アズハが変わらず弾き飛ばしつつ、村、そして仲間から引き離していた。
もう束縛する頭髪はほとんど残っていない。
その背後で、最後の頭髪を光で燃やし尽くしたルージュがアズハの方へと近づいてくる。
「1回くらいは齧らせてやるよ。けどな、そのままその口の中、爆破させてもらうぜ!!」
ここまでもかなり前のめりに交戦していたルージュだ。かなり疲弊はしていた彼女だが、敢えて腕ごと武器を敵の口の中へと突っ込み、愛の力を発動させる。
「オオウゥゥ!!??」
口内で眩い光が放たれ、飽食の口もないはずの目を白黒させるように慌てる。
だが、相手も強かな面を見せつけ、そのままルージュへと噛みつき、その体を飲み込み、噛み砕いてしまう。
一方で、序盤から口を抑えていたリック。
防御にはそれなりの自身があったが、消耗が激しかった上、口から放たれる石花の呪いには対抗できず。
「しょうがねえ」
ここは割り切り、リックは全力で飽食の口へと武器を突き出し、薙ぎ払う。
仲間達が布陣し、態勢を整える中、リックの体は徐々に石と化していき、やがて完全に動かなくなった体が砕けてしまう。
「ふむ、話の通り……」
「おいおい、やべーじゃないか」
そのリックの姿を目の当たりにすれば、ジェームスもアラドも二の足を踏む。相手が口だけであれば、彼らも手を出せずにいたようだ。
だが、それでも前に出るイレギュラーズ。アーロンもヒーラーとして、声を張り上げる。
「HAHAHA、ミーの歌を聴きやがれ、オーディエンスども!」
仲間達の負傷も小さくはない。アーロンは敵の行動阻害から完全に回復へと徹し、ロックなシャウトを周囲に響かせて仲間を癒していく。
そこで、ルージュがサクラメントから戻り、再び決死の覚悟で飛び込む。
自身が攻撃した相手はすでに虫の息。それを完全に断つべく、ルージュは渾身の力でハンマーを叩きつけ、飽食の口を完全に叩き潰してみせた。
残る敵は終焉獣、飽食の口の片割れのみ。
一時、ミミサキが攻撃を引きつけに当たり、相手の攻撃力を見てその口を捕食する形で応戦する。
戦線に戻ったリック、自身の抑えていた口が倒れたことで駆け付けたアズハと合わせ、3人がかりでその力を封じる。
手数が多ければ、それだけで石花の呪いを抑える確率を上げられるのだ。
「やはり、口内への攻撃は有効なようですね」
カノンは先程のルージュの特攻を目にしており、自身もまた仲間へとかぶりつく口が大きく開いた瞬間を見計らう。
「これも食らってみてください!」
魔弾を撃ち込むカノンはさらに、切り札である術式を組み立てる。
自身にまで余波のある程の魔力量を刃状にし、カノンは一気に飽食の口へ解き放つ。
「オオ、オオオウオウオウオウオウ!!」
その魔力の刃を全て食らうことができず、唇ごと裂かれた口が痛みに悶えていた。
「もう一息だな」
ならばと、ジャスティーナが後光を背にし、強く飽食の口を照らす。
「オ、オウ……」
ジャスティーナの光にしばし見とれる口。瞳がなくとも、それを感じとることはできるらしい。
呆ける終焉獣を雀青が見逃しはしない。
確実に敵を仕留めるべく、雀青は黒いオーラで形成された直接武器から投擲武器、射撃武器と様々な武器で異様な姿をした敵を攻め立てる。
「最後に喰うものがこんなもので悪かったな。あの世で良いもの喰って来い」
トドメにと放った特大ミサイルを雀青が口の中へと放り込むと、すぐに爆音が外にまで響き渡る。
もはや声すら上げることすらできなくなった終焉獣は、さらさらと砂のように消えていったのだった。
●
終焉獣及び終焉の使徒を討伐し、息つく面々。
「もう大丈夫だ!」
『響鳴静轟』によって、アズハが大声で危機が去ったことを告げると、村人が皆家から飛び出してくる。村は畑も含め、無事だったようである。
「ジェームスさんもアラドさんも、協力してくれてありがとう」
「何事もなく、何よりです」
「いい経験になった。今後の対策にさせてもらう」
さらに、アズハは協力者2人に礼を告げると、2人はまんざらでもない表情で言葉を返す。
そんな中、雀青がつかぬことをとジェームスへと近づいて問いかける。
「探しているものはあるか?」
ネクストでは赤の他人ではあるが、彼は何か思うことがあるのか少し考えて。
「同郷の男性がおりましてな。今は何をしておりますやら」
パイプを吹かす彼を見て、雀青はぼそりと呟く。
「……必ず、会いに行くぞ」
すでに彼女は、いやその背後はすでに混沌を見据えていたようだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは決死の覚悟で敵の口内へと武器を押し込んだあなたへ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
<ダブルフォルト・エンバーミング>のシナリオをお届けします。
●目的
砂嵐南部の街の防衛、及び終焉獣の殲滅。
●概要
砂嵐で発生した終焉獣(ラグナヴァイス)の一部がそのまま砂嵐に留まってネフェルストを目指しているようです。
ただ、その途中にチャミド村があり、間違いなく巻き込まれるとみられています。
オアシスと接し、幻想や翡翠にも近しいこともあってナツメヤシやトウモロコシ、品種改良したコムギなどを育てる砂嵐では珍しい場所です。入口にはサクラメントもあり、利用可能です。
ただ、終焉の手勢はそれらの作物には一切見向きもせず、人だけを狙ってくるようです。
●敵……終焉獣と終焉の使徒
○終焉獣(ラグナヴァイス)
大量の怪物達です。これまでに類を見ない凶悪なモンスター達であり、その姿は様々です。
・飽食の口×1体
全長3mほど。直接噛みついてくるだけでなく、歯ぎしりや怨嗟の声を発し、石化の呪いを振りまいてくることもある恐ろしい敵です。
(『石花の呪い』はバッドステータスと種別を同じくする特殊ステータス状態です。
敵の攻撃がクリーンヒットした時に20%程度の確率で『石花の呪い』が付与されます。『石花の呪い』に感染したキャラクターは3ターン後に体が石に転じ死亡します(デスカウントが付与される状態になります)
なお、幻想種がいれば、R.O.Oにて作られた試薬(要1ターン)を使ってその呪いに対抗できます)
・束縛の頭髪×6群
全長5mほど。後ろ髪の束の様なものが浮遊し、襲ってきます。
髪の毛を投擲武器として放ってくる他、相手を縛り付けたり、束ねて叩きつけたりと見た目以上に多様な技を使ってくるようです。
○終焉の使徒×20体
ラスト・ラストを信奉する破滅主義者達。
神官のような見た目ですが、その思想は破戒僧といった印象です。
遠近問わず叩きつけてくる闇の力は肉体、精神共に耐えがたい苦痛を与えてきます。
●NPC
○『隠影』の探偵:ジェームス・イスティオン
今回の情報提供者。混沌におけるマカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)の関係者ですが、今回登場するのはネクスト側のジェームスさんです。
情報者として活動する「邪神憑き」であり、その腕を使って自衛程度の戦いをしてくれます。
○アラド・クーガー
砂嵐で活動する隻腕隻眼の用心棒。混沌における郷田 貴道(p3p000401)さんの関係者ですが、今回登場するのはネクスト側のアラドさんです。
片刃の短剣を主武器に、格闘、喧嘩スタイルも混ぜながらも粘り強く戦う歴戦の元傭兵です。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
●重要な備考
<ダブルフォルト・エンバーミング>ではログアウト不可能なPCは『デスカウント数』に応じて戦闘力の強化補正を受けます。
但し『ログアウト不能』なPCは、R.O.O4.0『ダブルフォルト・エンバーミング』が敗北に終わった場合、重篤な結果を受ける可能性があります。
又、シナリオの結果、或いは中途においてもデスカウントの急激な上昇等何らかの理由により『ログアウト不能』に陥る場合がございます。
又、<ダブルフォルト・エンバーミング>でMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
予めご理解の上、ご参加下さいますようお願いいたします。
それでは、よろしくお願いします。
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