シナリオ詳細
<ダブルフォルト・エンバーミング>永遠なる緑に眠れ
オープニング
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世界が終わりへと近づいていく。
砂嵐に於いてもその影響は顕著に現れており、『終焉獣』ベヒーモスの出現によって急激に悪化へと突き進む砂嵐の様相たるや『地獄』という他ない状態だ。それでもイレギュラーズが奮戦し、それに感化された砂嵐の者達が、自らの負けん気でもって反撃を重ね、少しでも押し返すべく死力を尽くしていた。
「イレギュラーズだかなんだか知らねえが、あいつらにやられてケチついた連中もいるだろうが! ここでおんぶにだっこで恥ずかしい思いしたくねえなら拳を上げろ! 前を向け! 俺の顔に泥塗りたくるクソ野郎は俺が言ってぶん殴ってやる! いいな!」
砂嵐の荒くれ者どもを率いて戦うのは、現実世界では夢破れ心根折れた“絶音”リッドの若かりし姿だ。血気盛んで実力派、人徳篤い彼こそがローレットに大きな狩りを作っているのだが、それを語らぬのもまた道理……だろうか。
「気に入らねえ翡翠の連中はテメェのことはテメェで守れる! 伝承の連中は黙っててもこっちに来ちまうだろうよ! 俺達だけデカブツに押し切られんのか? 冗談じゃねえぞ!」
「――ならばこの乾いた大地に潤いをあたえ、新たな生命を芽吹かせるために貴殿らの命を頂戴するとしよう! あの枯渇の娘のようにな!」
部下を先導し進むリッドはしかし、眼前に突如として現れた……どうにも形容し難い代物と遭遇する。幻想種であることは間違いないが、全身が蔦植物に支配され、耳から脳が侵されていそうな様相。
胴の部分ががら空きのようにみえるのに、謎の虚が渦を巻いている。魔力に疎い彼は理解し得ないが、軽々に拳を突き立てていい相手ではない。
ファイトゥフォリア・ノウゼン――かつて翡翠に現れ、とあるバグアバターを滅ぼした悪夢が如きバグNPCである。
乾いた砂に撒き散らされた蔦植物の残滓は瞬く間に姿を変え、植物ベースの化け物じみたものを生み出していく。運悪く蔦の破片に当たった部下の一人は、たちまちに蔦に巻き取られ塵すら残らず分解され、より大きな個体を生み出す糧となってしまった。
「私を認めぬ世界など滅べばいい。くだらぬ造物主の巷の夢に、我らが翻弄されて成るものか……!」
ノウゼンは吠える。終わる世界で、誰にともつかぬ叫びを。
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「あちゃー、まさかこんな場所で鉢合わせになっちゃうなんてねえ」
「な……なん……っ?!」
神様(p3x000808)は眼前で繰り広げられる状況に渋い顔だ。以前きっちり撤退させた相手と、このタイミングでかち合うものか、と。
リラグレーテ(p3x008418)は混乱していた。かつて辛酸を舐めさせられた相手へのリベンジマッチに、理解したくもない闖入者が(正確には自分達が闖入者であるが)いるという事実に。
「チッ、いつだかの小娘かよ……まあいい! このクソ幻想種とその辺の化け物を潰す手伝い、してくれんならとっととやってくれねえか! いがみ合う暇はねえんだ!」
リッドはリラグレーテを一瞥すると、恥も外聞もわきまえず助力を要請する。今、彼に飾り立てるという思考はない。仲間なら利用する。敵なら打ち据える。イレギュラーズなら、味方として扱う。
「ちょっとちょっと、これはもう細かい事考えてる暇なくない? ほら、あの子の弔い合戦でもあるし……」
「……チッ、しょうがないですね、今回だけですよ!」
「あ、凄い舌打ちした。聞きました奥さん?」
神様のゆるい調子はともかくとして、敵は数多、味方はそこそこ。ナメてかかれる戦場では――断じて、ない!
- <ダブルフォルト・エンバーミング>永遠なる緑に眠れ完了
- GM名ふみの
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2021年12月18日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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「ヤラない後悔よりヤッてする後悔……とは良く言ったもんで」
『R.O.Oの』神様(p3x000808)の前に現れたバグNPC、『ノウゼン』はその後悔の象徴だ。彼はベストを尽くしたし、仲間もそうだったはずだ。それで成し遂げられなかった事実は、神様が普段飄々として表に出さない感情を惹起する為に現れたようでもある。
「何もしないで終わるより、遥かにマシだ。砂の彼らは……そんな事を考えてすらいないだろうがな」
「あ? なんだよその意味深な目つきは」
『CALL No.666』CALL666(p3x010222)は依頼を引き受けたからには敵を撃ち抜く為に現れた、そういう男だ。『ヤッてする後悔』など体験したいとは思わないが、指を咥えて見ている気分でもない。神様や彼のような葛藤は、戦うだけのリッド達にはないんだろうと感じた……尤も、見られた側は知ったこっちゃないのだが。
「顔を合わせたことはないが、弔いのための戦いなのだな」
「翡翠の事件で大層暴れた相手だというのは耳にしている。『自分を認めない世界は滅べ』、か」
「フン、戯けたことを」
『正義の騎士』ジャスティーナ(p3x009816)と『ハンドルネームは』グレイ(p3x000395)はノウゼンとの交戦の過去を知り、そしてその意思を知って呆れたような反応を見せた。喪われた命は帰ってはこないだろう。この戦いも復讐や報復のたぐいではない。ただ正義に、世界にとって害となるがゆえに討伐される運命にあるというだけ。両者にあるのは敵意よりも純然たる目的意識である。
「まったく、こんな状況に迷惑な相手ですねっ。世界よ滅べよと、命を頂戴すると好き勝手に言いますが……ならばその傲慢な意思と力に私達の意思と力で抗いましょう!」
「あれを止めなきゃ、どこかで悲劇が起きる。それは混沌だろうと、ネクストだろうと変わらない」
『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)がぷりぷりと怒りを顕にする傍ら、『データの旅人』マーク(p3x001309)は冷静に敵を観察し、それを倒すべき相手と認識していた。既に悲劇は起きている。『ネクスト』を揺るがす悲劇が今起きようとしている。その事実を直視して、それでもなお後退を選択しない目には確かな強さが窺えた。カノンが怒りと抵抗の意思を以て立つのも、この世界に対して守るべきもの、ひとつの世界として認識しているからに他ならない。
「いや、こいつ、マジでどういう状態なんだ? よくこれで生きてんな。こういうのが文字通り植物人間だよなー」
「侵略的外来植物。生態系を脅かす者。世界の多様性を奪い、破壊し、許容しないというのなら、お前達のニッチ(生態的地位)はここにはない、ということだ」
「これから終わる世界の多様性とは面白いことを言う。これが『自然』となった私にとって、荒廃も破滅も終焉も心地良いものだ。存続の為の優位性など知ったことではない!」
『絶対妹黙示録』ルージュ(p3x009532)がその姿に軽く引く中、『AzureHarmony』アズハ(p3x009471)はノウゼンに向けてその存在意義の欠落を指摘する。が、世界終焉を目的とした彼にはそれすらも些事。植物に洗脳されているかのような外見ですらも己の自然と嘯く姿、胸元にぽっかりと発生した虚(うろ)は常識的な理解を拒むかのようでもある。
「その気色の悪い蔦、邪魔な種子もろとも正義の名のもとに薙ぎ払ってくれるわ!!」
「リッドのにーちゃん達は小型終焉獣を頼むな。さすがに、あの変なやつは下手に近づくと死ぬ可能性があるから注意だぜ」
「……チッ、イレギュラーズの嬢ちゃんにそう言われちまっちゃ世話ねえな。そこまで言うならあいつはキッチリ倒してもらおうじゃねえか」
ジャスティーナが堂々と啖呵を切るなか、ルージュはリッド達砂嵐の面々にこっそりと頼み事をする。妹的な所作と声音は男達に否と言わせぬ魅力を持ち、そのやる気を呼び起こす。
「君が認めなくても俺は認めてる、気に入った世界だからね!」
「砂嵐の地に、この世界に生きる命を荒らさせはしない! 共に戦おう。滅びを押し返せ! ……敵は全て、討伐する!」
グレイが、そしてアズハが宣戦布告とばかりに声を上げれば、僅かに様子見の姿勢を見せたノウゼンら終焉勢力はいよいよもって前進の構えを見せる。圧倒的に数的劣勢は否めない。されどイレギュラーズ達とて負ける気は、一切ない。
波を打って襲いかかる敵目掛け、一同は正面から切り込んでいった。
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「先陣きるから良い子ちゃんのみんなはCALL666の言うことしっかり聞いてて」
グレイは砂嵐の面々にそう言い残すと、終焉獣目掛け機械鋸を振り下ろす。1人で抱えられる数はしれたものだが、その実力があれば『抱えた』時点で殲滅が確定したようなもの。殲滅速度を慮るに、最高効率にほど近いものでもあった。
「敵の数は多い。ふた手に別れ、正面から1体ずつ切り崩す。弾き飛ばされたら合流に慌てず、慎重に立ち回るよう」
「……だとよ野郎共。悔しいがそいつのやり方に従ったほうが上首尾だ!」
CALL666はグレイの言葉どおりにリッド達に声をかけ、その動きを制御する。
盗賊が誰かに従うというのも噴飯物の話だが、彼らは状況を分かっている。一声ののちに別れた布陣は、向かってくる終焉獣を取り囲み潰しにかかった。
当然、その周囲から数倍に比する終焉獣が彼らを引き剥がしにかかるが、その接近に先立ち叩き込まれたCALL666の弾丸がその数を大幅に削り、押し留めた。
それが長く続くことはない。……だったら、勝つまで続けるだけだ。スコープを覗く目は、冷徹に戦局を見据えていた。
「はい可哀想だね世界が認めないのは神が救わないからだねザマァ~」
「神を僭称する貴様を蹴散らせば、少しは私の溜飲も下がるのかね? 無理か、偽神では物の数にもならないな」
神様の全力の煽りに、ノウゼンもまた挑発で応じた。下に見ているわけではない。挑発に正気を喪わぬための必死の抵抗と思えば、感じ入るものもあろう。
周囲の侵食素子を弾き飛ばされたのは心外だが、ならばと放出された魔力弾は神様を後退させる。……その程度か、と顔をのけぞらせた神様が凄絶な笑みを浮かべた。
「マークさん、合わせて!」
「勿論! ……ここ!」
アズハの声に応じ、マークは前に出てきた侵食素子へと視線を向けた。決意は言葉のみに表すものならず。その眼光に射抜かれた素子の大半は、彼を明確な敵として認識した。したのだが、一瞬の静止を狙い撃つアズハの追撃に巻き込まれた素子がまともな行動に移れるはずもない。怒りの意思を向けたまま、しかし戦えぬ悲哀とはいかほどか。
(蔦の動きは後続の仲間狙いか。素子の発生はあの瘤から……次は5か。多いな)
「ルージュ殿、カノン殿! 一気にあの虚ごと敵を吹き飛ばすぞ!」
「もちろん! おれの愛の力で全部蹴散らしてやる!」
「こちらもできるだけ邪魔していきますよ!」
ジャスティーナの呼びかけとともに放たれた光は、激しい熱を伴って侵食素子ごとノウゼンを焼き払いに行く。神様に散らされ、戻ろうとしたそれらが動き出すのがもう少し遅ければよかったろうが、本能には逆らえない。
続くルージュの複合した自己強化、積み重なった死の履歴、そして彼女自身の意思の強さによって強化された『愛』は地面に叩きつけられ、振り上げられ、奮った猛威で数体を消し飛ばす。凄まじい破壊力はともすれば味方を巻き込みかねない代物だが、その愚を犯さぬ程度には彼女も経験を積んでいる。
カノンの妨害魔術は、重ねられた攻撃で避けることを失念した彼らにこそ「刺さる」。もはや体力など無いに等しいそれらとて、動く暇を与えられねば反撃すらままならぬ。
それがすべてではないにせよ、攻勢としては十分すぎる。
「蔦の攻撃が来る! 女性陣は守りを重視、終焉獣周りは互いの位置を確認して慌てない! ……目的は勝利だ、無理に死に急がないように!」
アズハの叫びからややおくれて襲い来る蔦を切り裂き、焼き切り、撃ち落としながらジャスティーナ達はノウゼンに視線を向けた。あまりにいびつな虚が渦を巻いている。目に宿る狂気は偽りなく、受けた攻撃に頬を吊り上げつつ未だ余裕があるように見えた。……化け物め。
「認められるような事なんかしてたの? くだらない造物主にすら翻弄されてんじゃたかが知れてらぁウケるぅ」
「私がバグと呼ばれた時点で喪われた功績を話す意味があるか?」
「わかってんじゃ~~ん!」
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「反射されるとか、んなこと知るかよ!! 死ぬのが怖くて敵が殴れるか!!」
「どんな訳があるかも知りませんが、その他者を害する力は見過ごせません。ここで成敗させて貰います!」
ルージュとカノンの全霊の攻めが、ノウゼンの胸の虚に叩き込まれる。攻撃を拡散し反撃に転化するその悪意は受けるほどに『ろくでもなさ』が際立ち、2人の体力を削っていく……が、彼女らがその程度の傷や犠牲を気にするほど弱くはないことを、仲間達は知っている。
『妹』の奮起あってこそ、『兄』と呼ばれた者達が後に続く気力を生むのである。
「数の不利はこちらも数で押し込んで相殺する。少しずつでも、倒せばいつかは終わる!」
「分かってら、ンなこたよ……うちの馬鹿どもにも教えてやりたいくらいにはな!」
CALL666の声に、リッドが肩で息をしつつ応じた。終焉獣の隊列撹乱能力はかなり厄介で、孤立した盗賊が押し包まれて命を落とすこともままあった。だが、彼らが踵を返して逃げたり怖気づいたりしなかったのは、リーダーである彼の檄もさることながら、それを引き出すに至ったイレギュラーズの奮戦ぶりからである。
20の終焉獣、そして味方後列に照準した侵食素子の浸透を受けてなお終焉獣の半数をCALL666と砂嵐陣営が散らしたことは特筆に値する戦功であり。
その統制に一役買ったのは、アズハの俯瞰による戦局把握。蔦植物の面制圧を逃れた彼の指示で、幾人かの盗賊は命を拾っている。
「拒絶の虚は相当に弱っている! あれを撃破すれば俺達の勝ちは近いぞ! CALL666、右手で思い切り孤立している奴がいる! 火力を集めて逃げ道を!」
「了解した。全力で撃ち抜く」
名を呼ばれればどこであろうと撃ち抜く。その言葉に偽りなく、CALL666は孤立した盗賊に襲いかかった個体の頭部を打ち抜き沈黙させる。さらに迫ろうとしていた個体群に向けて追撃を放てば、漸く盗賊は仲間を視界に収め、駆け寄ろうとしていた。
「私達の前で悠長に連携などさせるものか! 全力で薙ぎ払い、受け止めてくれよう!!」
「チイイィっ、邪魔だ小娘! そこを」
「退かせはしない。ここまで痛めつけられた分、俺の刃も冴えているからね」
ジャスティーナを始めとするイレギュラーズが絶えず素子を蹴散らしにかかっているのは、実際のところ相当な圧力だったといえよう。なにせ攻撃力偏重タイプ、守りは些か不得手である。アタッカーである面々に痛打を与えはすれど、連携を十分に取ることは難しい状況であった。グレイの負傷は激しく、復帰の見込みもない。が、追い込まれてこそ威力を発揮する機械鋸を振り上げるその姿に気負いや衒いがないのは明らかだ。ジャスティーナを狙わんとした蔦を切りつけつつ間合いを詰めていく様は、重装兵のそれを思わせた。
「いくら刻まれようと、この身に得た力が衰えることなど……世界を偽りと嘯く者に負ける道理など……!」
「まぁ分からなくもない。世界は自分に興味が無い、ってのに気がつく事もあるよな」
悲鳴にも似た意気込みを以て、ノウゼン本体は魔力を吐き出す。彼の猛攻は強烈だ。状態異常への耐性も頭一つ抜け、イレギュラーズの猛攻に正面から挑む気迫もある。だが、欠落している。
神様はその欠落を理解しているかのように振る舞った。事実として神様と嘯くだけあり、多少の洞察はできて相手の望む言葉をかけられるけれど、神様は人の心に寄り添えないのが世の常だ。そうでなければ、緑の世界に生きてその力をバグと言う形で顕現せしめたノウゼン達に炎を向けるなどという非人道的行為が出来ようものか。
「興味の有無など今更どうでもいいのだ。この世界『すべて』が望まずとも、どこかに在処があるのが生命というものだろう。それを、『バグ』という言葉一つで切って捨てられた者達が、排斥され続けた者達の悲哀が、外様である貴様等にわかるはずがあるまいよ!」
「まー、わっかんないねえ。負け犬の遠吠えだもの」
「お前の呪いには共感できない。同じ立場になったとしても、僕は、僕達は違う未来を選ぶ」
神様の呆れ超えと入れ替わるように告げられたマークの宣言に、ノウゼンは激烈な怒りを覚えた。わかったふうな口をきく、生意気な男。その命を奪ってやろうと、彼は声にならぬ咆哮を上げた。
……すでに胸の虚が消えていることも気づかぬほどの咆哮。
「あとは任せたよ、にーちゃん、ねーちゃん。おれは死ぬけど!」
「気軽に死ぬとかいいやがって……! 俺達だってなあ、もうギリッギリなんだぜ!?」
「なら、死ぬまで奮戦するしかないな。極力生き残れるよう手は尽くすが」
虚の破壊を確認したルージュが散る様に、リッド達の動揺は少なくなかった。されど思考と戦闘を止めなかったのは、彼女への義理とCALL666の奮戦への報恩である。
それらがなければ、数と実力で劣る彼らはとうに全滅していただろう。終焉獣と砂嵐衆、ともに残り3。
「蔦にもう意思はない……これ以上の素子を生む力もないだろう、ノウゼン!」
「あなたの行動に理由があったとして、その他者を害する力は見過ごせません。ここで成敗させて貰います!」
「このっ、部外者共が……! 勝ち誇ったようにしたり顔でものを言う! お前達がこの世界に与する理由などないだろうが!!」
アズハの思考に届くレベルで、蔦から漏れ出る意思は潰えた。ほどなく残っている蔦も消えるだろう。体力の減りと状態異常の効果で、カノンの体力も残り僅かだ。最後に爪痕を残し、戦線を離脱することになるだろう。
イレギュラーズの戦力も僅か、されど、ノウゼンの力も風前の灯火だ。だからこそ、怒り狂う彼の魔術はイレギュラーズを強かに叩く。荒れ狂う。守りを完全に捨てたものの動きだ。
ここで引けば負ける、守ればやられる。彼を抑えていたマークと神様は、視線を交わし一気に踏み込む。
「手前を消すのに理由なんているか! 自分の不出来の八つ当たりだよ!!」
「お前が世界を呪うなら、僕は世界の盾となり、その怨嗟に訣別を告げる騎士となってみせる!」
かつて救えなかった者に掛ける言葉はない。これは自己満足である。
混沌で為せぬ戦い方をネクストでなぞるだけ。これは『彼』を追う男の自己満足の物語。
だからこそ裡から燃え上がる意思は真実であり、追う者から前に立つ者と化した姿は輝きを増す。
「残り僅かな力、すべて貴様に叩き込む! 正義の名の下に!」
ジャスティーナもまた、尽きた魔力を意に介せず、慈悲の刃に正義を籠める。真っ直ぐ前を向くだけの突きに狙いなど不要。前だけを見る目に、己の負傷など映らない。
遠く引き裂かれるような悲鳴とともに炸裂する魔力。最後っ屁のようなそれを受け、倒れる者も消える者もいる。リッドが粒子となって消える中、1人きり残った盗賊がいた。ジャスティーナが消える中、その一撃は確実に徹った。意思を以て剣をとった者の戦いは、何処かでなにかに遺される。
だからこれは、この勝利は、誰かに捧げるものでもない。
自分達の最善のために戦った。自己満足の結末であった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れさまでした。
一部の犠牲は儘ならぬものですが、それでも想定の被害を下回ったと言えるでしょう。
そして命を捨ててでも戦おうとする気概、見事でした。これを雪辱といわずしてなんとしましょうか。
ともあれ、長い戦いで疲れも溜まっていることでしょう。ひとまず肩の荷を下ろして頂ければ幸いです。
GMコメント
リベンジするかシないか迷ってたらすることになりました。
●成功条件
眼前敵すべての完全沈黙
●ファイトゥフォリア・ノウゼン(省略可。バグでもノウゼンでも)
バグNPC。およそ侵略的外来植物に由来するいろんな要素を兼ね備えた姿をしており、本体(幻想種)も頭部がアレされている状態。
全体的なステータスが極めて高く、近中距離をがっちりカバーした戦闘能力を有する。
幻想種(本体)、寄生蔦とその他部位の2つがそれぞれ行動を別としている。今回は鎧があった位置に『拒絶の虚』を備えている(防御用)。
本体は魔術攻撃に長け回復などもマルチに行い、寄生蔦は中距離までの束縛攻撃を放つ。遠距離への攻撃手段が減った分、個々の性能は大きく上がった。
『拒絶の虚』健在時に攻撃すると、『棘』と『Mアタック中~大』の反撃がきます。
さらに、後退という思考がさっぱりなくなった分、攻撃密度が苛烈になりました。
なお浸食素子は毎ターン行動に関係なく自動生成。
●浸食素子×初期10、増援あり(毎ターンランダム。最終的にかなり増えると見込んだ方がよい)
ノウゼンが生み出す、侵略的外来植物をパーツに用いた存在。
形状は様々だが、非常にパワフル(物理攻撃偏重)なところは共通している。基本的にノウゼン護衛:敵後衛重視=3:7くらい。前より前のめり。
場合によっては相手をブロックして後衛に攻撃を通そうとすらする。連携が怖いか。
●小型終焉獣×20程度
個体性能が然程高くないものの、数で圧倒するタイプの終焉獣。
攻撃とか威力はともかく、BSとか『飛』とか織り交ぜるテクニカルタイプ。隊列を乱されるのが面倒くさい。
●リッド+砂嵐兵士達×10
友軍。
リッドはそれなり戦え、兵士も雑魚ちらしには十分通用するだろう。
だがふっとばされ連携を見失いがち。あまり頼りにしすぎないほうが良い。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
R.O.O_4.0においてデスカウントの数は、なんらかの影響の対象になる可能性があります。
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