PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ちいさな願い事

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

・望み叶えたまえ

 星の綺麗な夜だった。月は空の向こう側に沈み、暗い街を星の明かりが照らしている。
 空気は冷え切っていて、外に出れば心まで凍りそうになる。こんなときに出歩いている者などいないというのに、不思議と話し声が響いている。

「ねえねえ、どこにいけばいいかしら」
「願い事を叶えなくちゃ」
「そのためには何が必要?」
「まずは身体でしょ」

 声は、空の上から響いていた。姿形は曖昧だが、透明な何かが揺蕩っている。それらはくるりくるりと宙を舞い、街のある場所へと向かっていた。

「わたし、もう一度人間になりたいの」
「じゃあお人形を探しておいで」
「あたしはくまさん! あ、うさぎさんでもいいわ」
「ぬいぐるみを探したら?」

 彼女たちは、この世に生まれ、そして身体を失った魂。ある者は病に倒れ、ある者は事故で身体を失った。
 彼女たちは、まだ幼かった。自分の死には気が付いていても、それを受け入れて、この世から離れることができない。ないはずの身体を探して、再び生を築こうとする。

「わたし、かわいくなった?」
「かわいい。かわいいよ」
「みて、このしっぽ。あたし、うさちゃんになったの」

 しかし、まだ幼い少女たちだ。この世に恨みつらみがあるわけではない。彼女らがこの世に残りたかった理由は、母に抱かれたい、友達と遊びたい、綺麗な星を見たいといったもの。そんな、ありふれていて、それでいて大切なものなのだ。

「さあ、これで自由に動けるわ」
「これで願い事が叶えられるのね」

 少女たちは、願いを叶えるための一歩を踏み出した。しかし、彼女たちに残された時間は多くない。
 本来、魂を別の入れものに移し替えるときは、そのための儀式が要る。それを行うことなく身体を手に入れた魂は、放っておくと壊されてしまう。

 彼女たちの願いは、些細なものだ。それを叶えれば、彼女たちは自然と身体を手放し、自らの死を受け入れるだろう。
 魂の安寧のために、生まれ変わって幸せを手に入れるために、力を貸してくれないだろうか。


・夢をみせて

「少女たちの願いを、叶えてほしいの」

 境界案内人カトレアが差し出したのは、一冊の本。その表紙をそっと撫でながら、カトレアは言葉を紡ぐ。

「あの子たちは、死んでもなおこの世に留まり続ける魂よ。ちょっとした願い事を叶えるために、ここにいるの」

 そのちょっとした願い事は、少女たちにとっては大切なもので、世の理から目を背けてしまうほどのものなのだ。だから、彼女たちは身体を手に入れた。ある者は人形になり、ある者はぬいぐるみになった。

「願いを叶えてあげれば、彼女たちは死を受け入れるわ。あの子たちをね、解放してあげてほしいの」

 少女たちに残された時間はわずか。その中で願いを叶えるためには、すこし、他の誰かの助けが要る。

「本来の身体じゃないもの。動きにくいことも多いでしょうし」

 カトレアは一度言葉を切り、再び表紙を撫でた。それからゆっくり前を向く。

「あの子たちの幸せないつかのために、協力してあげてくれないかしら」

NMコメント

 こんにちは。椿叶です。
 お人形やぬいぐるみが出てくる話です。

世界観:
 人形などに魂を入れ込むことができる世界です。本来ならば魂を定着されるのには儀式が必要ですが、少女たちはそれを行っていません。そのため、魂は人形やぬいぐるみに入ることができましたが、時間が経つと壊れてしまいます。
 身体を失った魂は、死を受け入れ、心残りをなくすことで生まれ変わることができます。この話にでてくる少女たちは、死を受け入れるには幼く、小さな心残りがあるためにこの世に留まり続けています。

目的:
 少女たちの願いを叶えることです。向き合う少女を一人選んでもらい、少女の願いを聞き出してください。そしてその少女の願い事を叶えるため、助けてあげてもらえたらと思います。
 彼女たちの願い事は様々です。母に抱きしめられたい、友達と遊びたい、かわいい洋服を着たいなど、いろいろな願い事があります。

できること:
・少女を選ぶこと
・少女と対話をすること
・少女の願い事を叶える


サンプルプレイング:

 まあ、かわいいお人形さんね。お人形が動くなんて、びっくりしちゃった。素敵ね。
 ……あなた、お名前はなんていうの? 願い事は、何? ……そう、そうなの。もう一度街を歩きたいのね。
 うん。私が、一緒に行くわ。寂しいものね。寂しいよね、ひとりは。私も、そうだから。


 人形の特徴(性格や願い事など)についてご希望がありましたら、プレイングに記載していただけたらと思います。記載がなければこちらでお人形を用意致します。
 よろしくお願いします。

  • ちいさな願い事完了
  • NM名椿叶
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年12月08日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
陰性
ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
はづきのやくそく
ディアーヌ・アーベル・アルノー(p3p010063)
少年は世界の宝
ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)
凶狼

リプレイ

・小さな遊び

 数々の人形を目の前にしながら、『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)はふうと息を吐いた。
 ここに来るのも何度目だろうか。人形に魂を入れるところから始まって、次は取り出して、今度は子守か。

 決して広くない部屋の中に、少女たちの声が響いている。楽しそうに笑う声、寂しそうに誰かを呼ぶ声。その一つひとつが、世界の鼓膜を叩いていく。どうしてか、今までに出会った人形たちの声が聞こえる気がした。いや、ここにいるはずがないのだ。今は、やるべきことに目を向けよう。

 子供の相手は得意ではないのだが。そう口の中で小さく呟く。しかし、得意だろうと苦手だろうと、自分のやることは変わらない。目的は、少女の願いを叶えることだ。

「ねえねえ、あなた」

 誰に話しかけようかと思っていたところで、足元から声がした。見下ろすと、小さな子どもの大きさの人形が、こちらを見上げている。

「願い事は、何だ」
「ふふ、さっそくね。私、そう言ってくれるのを待っていたの」
「まあ母親にどうのこうのだの言われても無理だがな」

 予めそう伝えておくと、彼女は分かっているとばかりに頷いた。さすがに、こちらにできないことを要求されても困る。願いを叶えてはやれないのだから。一緒に遊ぶなどといった、簡単なことにしてほしかった。

「そんなに難しいこと、私は頼まないわ」
「それならいい」

 少女がスカートを翻す。あとについてゆっくり歩くと、床に広げられたおままごとの道具と、そこに座らされた人形を見せられた。

「お人形遊び、してくれないかしら」

 入れものは本来動くはずのない人形なのに、その頬が赤らむ。

 人形遊びか。流石にこの年齢でやるのは色々抵抗があるが、あるが、それはこの少女も同じらしかった。

「だめかしら」
「いや、いいけど」

 ぶっきらぼうに呟いた言葉に、少女はにっこりと笑みを返した。

 少女と、ひとつの人形を抱えて遊ぶ。気恥ずかしさは拭えなかったが、思っていたよりも人形遊びに溶け込むことができた。少女にせがまれた役になり、人形たちに触れていると、あっと言う間に時間は過ぎた。

「ありがとう。楽しかったわ」

 終わりは唐突だった。何の前触れもなく少女が遊び道具を置き、ふっと微笑む。世界が何かを返す間もなく、その身体が膝に倒れこんできた。

 目の前にあるのは、二人分の動かない身体。使ったばかりの遊び道具。それを見て、世界は再び息を吐く。思っていたよりも、重たい響きだった。


・星空を歩む

 彼女たちは、放っておけば壊れてしまう、らしい。それは虚しくて悲しいから、何かしてあげられたらと思うのだ。
 今度も見送る側になるということは、あまり考えない方がいいか。そう思いながら『粛々たる狙撃』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)は部屋を見回した。

 ふと、足元から声がした。見下ろせば一人の少女と目が合う。

「はじめまして」

 名前を教えてと言う彼女の瞳は、空の色を映しているようだった。


 外の空気は冷たい。身体の端から冷えていきそうになるけれど、少女と手を繋いでいるせいか、さほど寒いとは思わなかった。

「ジョセ。公園はあっち。きっとジョセもきにいるよ」

 ねえジョセ。ジョセ。

 少女は、ジョシュアの名前の響きを気に入ったらしかった。ジョセでいいと伝えたら、何かにつけて名前を呼んでくるようになった。同じくらいの子どもと思われている節があるが、話しやすいなら、良い。

 公園で遊びたいと言ったのは彼女だった。遊び相手として満足してもらえるかは分からないが、無理な願いごとではない。

 隣を歩いていると、やはり彼女は小さいと思ってしまう。気を付けないと転んでしまいそうだ。少し歩幅を緩めて、繋いでいた手をそっと握りなおす。

「ついたよ。ジョセ、ブランコのろう」

 公園はやはり静かだった。子どもの声はなく、星の光がやさしく降り注いでいる。

 少女をブランコにのせてやると、楽しそうな声が耳元で響いた。触れる道具はすべて冷たいのに、不思議と温かい。

「それでは、押しますよ。しっかり捕まっていてくださいね」

 揺れ出すブランコ。彼女が落ちてしまわないか心配だったけれど、杞憂に終わった。

「星空をとんでいるみたい」
「それならよかったです」

 ジョシュアがほっと息をつくと、少女がふいに笑うのをやめた。

「あのね、ジョセ。わたし、こんなふうにお兄ちゃんとあそびたかった」

 ああ、それは。
 ジョシュアには、兄とはどんなものなのかは分からない。だけど、これが彼女の本当の願い事なのではないのかと思うのだ。

「生まれ変わったら、何になりたいですか」
「またお兄ちゃんの妹になりたいな」

 彼女に、聞きたいことがたくさんあった。しかしすべてを言葉にすることはできない。ぽつぽつと語りかけているうちに、少女の身体から何かがふわりと飛んで行ってしまった。落ちそうになる身体を抱きしめて、ジョシュアは目を閉じる。

 ブランコの揺れる音が、まだ耳に響いていた。


・眠り姫

 ふむ。話を聞いていると他人事とは思えないな。
 顎に手を当てながら、『泡沫の夢』ディアーヌ・アーベル・アルノー(p3p010063)は一言呟いた。

 小さい頃は、いろいろあった。少し運命が違えば彼女たちの同じように――いや、それはいい。今回の物語の主役は、自分ではないのだから。

 部屋にこだまするのは、少女たちの声。それを聞いていると、どうにも親近感が湧いてくる。自分と似ているという、不思議な感傷が。
 力になりたいと思うのはこういう理由もあるけれど、それより、困っている子には手を差し伸べるのが自分の信条だ。

「キミの願い事はなんだい」

 じっとこちらを見つめている少女に、声をかける。長い睫毛に縁どられた宝石に、自分の姿が映った。

「どうかわたしを信用して手伝わせてほしい。必ずやキミの力になろう」

 少女は一度目を伏せた。そしてゆっくりと口を開く。

「お姫さまに、なってみたいの」

 何とも少女らしい願い事だった。よく聞けば、生まれも育ちも平々凡々だった彼女は、物語に出てくるお姫様に憧れていたらしい。

 ああ。油断すると、小さな声が漏れ出そうだった。そうか、彼女は。

「キミの心残りを晴らし、旅立ちを見送るまで、なんでもやるよ」

 どんなお姫さまになりたいんだい。遠慮なく言って欲しい。

「全力を尽くすよ。今日のわたしは、君の騎士だ」

 君のためだけの、騎士だ。

「エスコート、されてみたいの」

 顔を赤らめて、少女は言う。その表情に浮かんだ期待が、ディアーヌを揺さぶる。心の底から、何でもしてあげようと思った。

「さあ行こう、姫様」

 少女は、慣れないヒールを履いているようだった。歩きにくそうにしていたが、ディアーヌが支えてやると、何でもない顔をしようと努め始めた。かつ、かつ。ぎこちない足音が響いていく。

「どこまで行きたいんだい、姫様」
「星空の下にまで、おねがい」

 抱えて歩いてしまおうか。所謂お姫様抱っこなら喜ばれそうなものだが。そう思いはしたけれど、彼女が歩きたいのならこのままでいよう。

「このくつはガラスなの」

 少女の空想は、砂糖菓子を詰め込んだような甘さがあった。なんだかくすぐったいけれど、微笑ましい。

「きっと、叶うよ」
「ありがとう」

 星の下に出たとき、少女が目を閉じた。ふらりと身体が傾き、ディアーヌに寄り掛かる。

「ゆっくりおやすみ。眠り姫」

 王子様が起こしてくれる、その時まで。
 小さな姫を抱えあげ、騎士はひとつ呟いた。


・母のぬくもり

「わははー! ヘルちゃんはこう見えても巫女なので成仏させるエキスパートなのだ!」

 薄暗い夜の中に、明るい声が響き渡る。引き寄せられるように歩いてきた人形を抱きしめて、ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)はにっこりと微笑んだ。

「という訳で君の事を教えてほしいのだ♪ 大丈夫! ヘルちゃんが君の願いを叶えてあげるのだ!」

 少女は、いくらか戸惑ったようだ。

「えっと、ほんとに? おかあさんに、会わせてくれるの?」

 彼女のたどたどしい説明を拾っていくと、母親にもう一度抱きしめてもらいたいのだということが分かった。
 ちくり。胸を何かが刺す。それに気が付かないふりをして、ヘルミーネは明るく微笑んだ。

「任せるのだ! 絶対に君の願いを叶えてあげるのだ!」

 それからは、大変だった。まず、根気よく「お母さん」の情報を聞き出し、居場所や特徴を推測していった。街中を駆け回って、母親を見つけ出して、少女のことを説明して、信じてもらった。
 持っていたスキルが役に立ったと思う。これがなければ、もっと時間がかかっていた。

「信じられねーのは重々承知なのだ。だけど、もう一度この子を抱いてあげてほしいのだ。この子もそれを望んでいるのだ」

 少女の母親が、ゆっくりと息を飲む。震える手が人形の身体に触れ、やがてその手で抱え込んだ。

 もう一度、会えてよかった。ずっと、会いたかった。愛している。

 そんなやりとりが、ヘルミーネの胸に落ちていく。目を伏せたくなるのをこらえて、ギフトを発動する。優しく歌えるようにと、音色を唇にのせていく。

「君の死出の旅路の先に、安息と救いがあらん事を」


 少女の身体は、母親に預けてきた。短い間とはいえ、娘の魂が宿っていたものには思い入れができただろうと思ったから。

 夜空を見上げながら、ヘルミーネは口の中で呟く。
 お母さんに抱かれたい、か。ヘルちゃんはお婆ちゃんには何度も抱っこしてもらったけれど、終ぞ母ちゃんに抱かれた記憶なんてねーのだ。

 記憶の中の母は、ずっとこちらを見もしなくて、優しくなんかしてくれなくて、最期には――。

 そんなにいいものなのかな。嗚呼、でも、羨ましいのだ。母親に愛されるのは、心底羨ましいのだ。

 白い息が空に溶ける。そこに混ざるのは、ほんの少しの寂しい色だった。

成否

成功

状態異常

なし

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