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シナリオ詳細

<ダブルフォルト・エンバーミング>ご安全に!第46話『魔法少女は永遠に!』

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「さあ、次回の『ご安全に! プリティ★プリンセス』は――?」
 明るい声音を弾ませて。何時も通りの次回予告、とは行かなくて。
 浮かない青色の瞳はどこか寂しげ。ヒロインがそんな顔をしちゃいけないと『アン・ゼーン』が怒りんぼ。
「だって、アン・ゼーン。私が知らないことが沢山あったんだ!
 敵だと思ってたド・カーターのセメンテートがプリティ☆プリンセスだったり……。
 けどけどっ、『悪の』プリティ★プリンセスとして頑張らなくっちゃ! 今度は負けたりしないんだから!」
 えいえいおーとやる気を漲らせたのは金髪の少女。
 彼女の名前は現場 ネイコ。
『起立! 気をつけ! プリティ☆プリンセス』の正統派の後継作としてファン人気も高いプリティ☆プリンセスのヒロイン――のパラディーゾ。
「ネイコちゃん、次はどうするの?」
「そうだね。次こそは、私が『正義の味方』をやっつけてこの世界を安全にしないといけないんだ!
 だって、この世界を更地にすれば誰もが平和に暮らせるんだよ? その為に生み出された私たちだもん。頑張らないと!」
「ネイコちゃん。正義の味方は悪い奴なの?」
「そうだよ。私からすると私が正義の味方なんだけど。視聴者の皆に分かり易く『悪』になってみたんだ。分る?」
「ん~、わかんない!」
「ふふ、良いよ。やることは決まってるもん。ね、ラグナヴァイス。私に力を貸して!」
 微笑んだネイコが振り返る。其処には鮮やかな青と緑の瞳を持った二体の終焉獣(ラグナヴァイス)が立っていた。
「ジコルちゃん。ネガイちゃん」
 ――それは彼女の戦友の名前。プリティ★プリンセスとなった少女の名前を獣に付けて。
「二人とも、それから アン・ゼーン、行くよ! ワールドイーターと共に世界を『安全』に導かないと!
 ――貴方の心に安全確認っ! 今日も、明日も、安全ヨシッ! ご安全に! プリティ☆プリンセス!」


「まーたなんですけど。聞いて貰えますか。あの、解釈違いなんですよ。
 あのね、私は『プリ☆プリ』は正義のために頑張る女の子が尊いなって作品でして、まあ、私が魔法少女になるのは吝かではないんですけど」
 魔法少女と付き合うのは解釈違いな方の『春の魔術士』スノウローズ (p3y000024)はスンッと冷めた瞳でイレギュラーズへと声を掛けた。結い上げた可愛らしい桃色の髪。魔法少女を思わせるコスチュームの彼女は急を要する実情を指折り告げる。
「まず、『フルメタルバトルロア』『Closed Emerald』……それから『神異』。
 沢山のイベントが起っていたけれど、それも佳境に入ったの。イノリとクリストによる破局――世界の終焉が迫ってきているみたいなの」
 真摯に告げる彼女はイベントモニターを指さした。砂嵐は『終焉(ラスト・ラスト)』から現れた謎の軍勢により蹂躙されていた。
 傭兵であり盗賊である獰猛な彼らの身に起きた悲劇は世界中の人々を震撼させた。それは外から見るだけでも明らかだ。
「こいつ……こいつがね、攻め込んでくる。
 その為に隣国である伝承は大防衛戦を展開したんだけど――ここに、パラディーゾが姿を見せたの」
 その言葉に呼び出された側である現場・ネイコ(p3x008689)と指差・ヨシカ(p3x009033)は顔を見合わせる。
「まさか――」
「その、まさかなの。『ご安全に! プリティ☆プリンセス』のヒロイン『現場ネイコ』の姿をしたパラディーゾ。
 ネイコさんのアバターに『原作ヒロイン』を搭載した子なの。ネイコさんとヨシカさんはよく知ってる相手だと思うけど……」
「そうね。一度戦ったわ。どうやら『初期アバター』だから私のことは知らなかったみたいだけど……」
 呟いたヨシカにスノウローズも同じ見解だと頷いた。彼女は足りないものを補うように『終焉』より姿を見せたモンスターを配下に着けたのだという。
「終焉獣(ラグナヴァイス)。そう呼ばれた黒い体をしたモンスターがいるの。外見は人間に近いのかなあ。でも、のっぺりしてる。
 二体を『ネガイちゃん』『ジコルちゃん』って呼んでる。ネイコさんの仲間になる初期の二人……『看板・ネガイ』と『零回・ジコル』を模してるのかも知れないね」
「まさか、私を知らないから寂しくなって、なんて言わないわよね?」
「……んー、どうだろ、でも、『データから作られた彼女』は自分に足りないものには気付いたかも知れないね。
 ネイコさんの存在だって認識してる。どちらがホンモノのネイコかを決めなくちゃならないと考えてるかも。
 ――と、なると、ヨシカさんは気をつけてね。攫われちゃうかも知れないから」
 ヨシカはあからさまに蒼い顔をして「マジで」と呟いた。その少女らしからぬ表情にネイコが肩を竦める。
 幻想の大防衛線へと姿を現し市中を蹂躙するパラディーゾを止めるのが今回のオーダー。
 其処には金髪のパラディーゾが一人。まるで『アニメの世界』のように立っている。
「スノウローズさん、変なことを聞いても良いかな?」
 ネイコはそろそろと唇を震わせた。
「なあに?」
「……もし、此処で負けたらどうなる?」
 問うた彼女にスノウローズは肩を竦めてから、笑った。
「世界の終焉が見れる、かも」

GMコメント

 日下部あやめと申します。どうぞ、よろしくお願いします。

●目的
 パラディーゾ『現場ネイコ(ヒロイン)』の撃破

●パラディーゾ『現場ネイコ(ヒロイン)』
 パラディーゾ階位 天国篇第六天 木星天の徒。
 プリティ☆プリンセスシリーズ『ご安全に!プリティ☆プリンセス』の主人公『現場ネイコ』をイメージした明るく元気なパラディーゾです。
 マスコットキャラクター『アン・ゼーン』と共に『悪のヒロイン』として戦います。
 戦闘方法は物理を活かした魔法少女です。剣で切ったり殴ったり。蹴り技なんかもお手の物。原作準拠。

 ・アン・ゼーン
 マスコットキャラクターです。ユニットとして明確に存在しています。
 ネイコに回復やパワーチャージを行います。パワーチャージを行った場合、『ヒロイン』はBSが全解除されます

●終焉獣(ラグナヴァイス)『ネガイちゃん』『ジコルちゃん』
 青い瞳と緑の瞳のプリティ☆プリンセスの名前を冠する終焉獣です。
 人型を思わせるフォルムをしていますがモンスターのようで「ああ」「うう」としか発声をしません。
 『石花の呪い』を振りまくことが出来ます。ネガイちゃんはバッファー、ジコルちゃんはアタッカーです。

『石花の呪い』
 ・石花病とは『体が徐々に石に変化して、最後にその体に一輪の華を咲かせて崩れて行く』という奇妙な病です。
 ・石花病は現実の混沌でも深緑を中心に存在している病です。
 ・R.O.Oではこの病の研究者アレクシア・レッドモンドの尽力により『試薬』が作られました。対象となる1名に対して誰かが1Tをかけて、『石花の呪い』に対抗できます。

 ・『石花の呪い』はバッドステータスと種別を同じくする特殊ステータス状態です。
 ・敵の攻撃がクリーンヒットした時に20%程度の確立で『石花の呪い』が付与されます。BS回復は出来ません。
 ・『石花の呪い』に感染したキャラクターは3ターン後に体が石に転じ死亡します(デスカウントが付与される状態になります)

●フィールド情報
 伝承国。砂嵐に現れた終焉の軍勢へと対抗するための防衛戦付近。市街地に『ヒロイン』達は現れました。
 周辺の一般人は戸締まりをして息を潜めているようです。市街地ですので、それなりの障害物は存在します。
 サクラメントはとても近くに存在します。1T程で戦線復帰可能です。

●味方NPC スノウローズ
 プリティ⭐︎プリンセスの大ファンな打たれ強いヒーラーです。

●重要な備考
 <ダブルフォルト・エンバーミング>ではログアウト不可能なPCは『デスカウント数』に応じて戦闘力の強化補正を受けます。
 但し『ログアウト不能』なPCは、R.O.O4.0『ダブルフォルト・エンバーミング』が敗北に終わった場合、重篤な結果を受ける可能性があります。
 又、シナリオの結果、或いは中途においてもデスカウントの急激な上昇等何らかの理由により『ログアウト不能』に陥る場合がございます。
 又、<ダブルフォルト・エンバーミング>でMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
 MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
 指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
 予めご理解の上、ご参加下さいますようお願いいたします。

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 R.O.O_4.0においてデスカウントの数は、なんらかの影響の対象になる可能性があります。

  • <ダブルフォルト・エンバーミング>ご安全に!第46話『魔法少女は永遠に!』完了
  • GM名日下部あやめ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年12月05日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

セララ(p3x000273)
妖精勇者
ゼロ(p3x001117)
よう(´・ω・`)こそ
カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者
鬼丸(p3x008639)
鉄騎魔装
現場・ネイコ(p3x008689)
ご安全に!プリンセス
ミセバヤ(p3x008870)
ウサ侍
指差・ヨシカ(p3x009033)
プリンセスセレナーデ
エーミール(p3x009344)
夕焼けを穿つヒト

リプレイ


 中世欧羅巴を思わせたナチュラルにして豪奢な街道。その中に、余りに不似合いな桃色のコスチュームを身に纏う少女が立っている。
 ふんわり可愛らしいマスコットキャラクター、そして連れ歩くには作品が『違う』二体のモンスター。お決まりになった台詞を口にした『ヒロイン』はパラディーゾとして悪の花道をずんずん進む。
 その様子に「わあー」と感激の声を発して手を叩き。苺のような鮮やかな瞳を輝かせて見せた『妖精勇者』セララ(p3x000273)は「わーい! 魔法少女だ!」と万歳をして見せた。
「ご安全に! プリティ☆プリンセスはボクも見てたから知ってるよ。面白いよね」
 そう言われると何だかむず痒くなってしまう『プリンセスセレナーデ』指差・ヨシカ(p3x009033)は整ったかんばせに少し不格好な笑顔を貼り付けた。『ご安全に! プリティ☆プリンセス』のキャラクターをモチーフにしたアバターを利用しているヨシカは抜き打ちテストを受けた気にもなったのだ。
「けど、何だか違うのよね……」
 そう呟いたのは、以前もパラディーゾ『ヒロイン』に出会ったからこその違和感。胸に何かが詰まり、喉を堰き止めているような不安が其処には存在している。其れが何かずっと分からずに、難しく、悩み続けていたヨシカは期待と希望を込めた瞳のセララを見遣ってから漸く合点が言ったというように頷いた。
「ヒロイン、やっぱり貴女は私の知るプリンセスルミナス……現場ネイコじゃない」
 呟けば、穏やかな波が押し寄せるように情動が揺らいだ。名を呼ばれたような、そうではないような――僅かな違和感に顔を上げた『ご安全に!プリンセス』現場・ネイコ(p3x008689)は曖昧な笑みを浮かべてみせる。
「そうだね。現場ネイコ……ううん魔法少女(プリティプリンセス)はこうじゃないよね。
 だって、今訪れたのは世界の終焉で。余計に負ける訳にはいかないね。
 だって、ホントの魔法少女は世界の為に……んーん、大事な日常を護る為に戦っていた筈だからっ!」
 だからこそ、『ヒロイン』は『本物のネイコ』から欠けているものがあることをネイコは気付いて居た。自身もアバターを作る際に確認した作品群で彼女は何時だって希望に溢れていたのだから。
「遂にヒロインとの最終決戦なのです! 必ずハッピーエンドを掴んでみせるのですよ! 見ていて下さいね、御主人様(スノウローズさん)!」
「えへへ、うん」
 満更でもないように蕩けるような笑みを浮かべた『春の魔術士』スノウローズ (p3y000024)に『ウサ侍』ミセバヤ(p3x008870)はぴょこんと跳ねて見せた。魔法少女スノウローズちゃんのマスコットウサギとして此処では絶対に負けられない。そんな強い意志を見せ付ける小さな兎さんはたしん、たしんと地を蹴って。
「どうしよう、アンゼーン! やっぱりきちゃったよー!」
「大丈夫だよ。ネイコちゃん! 今日は皆居るんだから!」
『皆』と呼ばれた終焉獣(ラグナヴァイス)。丸い瞳をきょろりと揺れ動かして、地を抉った爪先は硬質に、鋭く研ぎ澄まされて。
 静寂の凪をも打ち払う獣の吐息が肌を撫でる。その感覚こそが悪と対峙した時のものなのだ。正義と悪は立場にとって簡単に反転する。それでも、だ。大衆にとっての悪に此方が『悪』だと責め立てられる謂れはないと『夕焼けを穿つヒト』エーミール(p3x009344)は嘆息し肩を落として。
「悪……悪ですか。自分を正義だと自称している連中にそんな事言われたくはないですね。
 その安全の名称だって、自分らの存在と目的を無理矢理肯定させるために使っているだけでしょうに。
 真の安全を守るのは、我々ですよ。こちらにはそう……本物がいるんですから」
 エーミールが視線を向けたのはコスチュームチェンジをし見分けが付きやすいように気を配るネイコと、その傍らでまじまじと終焉獣を眺めたヨシカであった。
「あ、でも私に悪って言われても逆に嬉しくなります。だって、武器商人はキレイなものばかり扱ってるわけじゃありませんし」
 揶揄うような声音はリズミカルに弾むように。その傍らで、雪の様な美貌を歪めることなく佇んでいた『よう(´・ω・`)こそ』ゼロ(p3x001117)はゆっくりと剣を引き抜いた。
「さぁ行くぞ、パラディーゾだかヒロインだかよくわからないけど悪なら敵だ!
 人数を大量投入できる戦場ならまだしも、この場にはスノウローズを含めて9人しかいない。サクラメントは近いといっても気を抜かずにいこう!」


 無味乾燥と。虚無とも呼ぶべき闇。その中にオブジェクトは必要ない。組み上げたブロックをおざなりに壊した後の全てを失った世界。
 そうしてから新たに平和を作り上げようと彼女達はそう言った。『鉄騎魔装』鬼丸(p3x008639)は「なるほど」と緩やかに頷いて。
「何もない、誰もいない世界なら確かに争いもなくて平和だね。でもそこには何の喜びも、楽しみもない。ただ『平和』なだけだ。
 こっちの世界では魔法少女じゃない私だけど。それでも、私たち機動魔法少女は『人々の平和』を守るためにいる。
 プリティ☆プリンセスだってそれは同じなはず……だから、その姿の貴方にこれ以上人々の生きる世界を壊させはしない」
 鬼丸が狙いを付けたのは『ジコルちゃん』――つまり、緑色の瞳の終焉獣だ。ふわふわ天然枠であったというキャラクターが『反転』したように暴力的に爪で地を抉る終焉獣が口を開く。呼気と共にぼとりぼとりと落ちた唾液は獲物を探す獰猛なけだものに他ならない。
「私たちだって、世界を護るために此処にやってきたんだ! 『はじめからやり直す』事を台無しにしないで!」
 叫んだ『ヒロイン』にセララは「駄目だよ!」と叫んだ。ぎゅうと握りしめた聖剣チョコソードは甘い香りを漂わせる。
「それに、ちょっと待って! 君達は攻撃する前に指さし確認して間違いが無いか確認しないといけないよね? 『安全』じゃないかもしれないし」
「ええ……してる場合じゃないわ!」
「本物の現場ネイコちゃんならきっと安全確認するもん! ――トラチェック、ヨシ!」
「それは、私じゃないわ!」
 頬を膨らませた『ヒロイン』の挙動は可愛らしい。まるで本物のアニメキャラクターが顕現したように天真爛漫なヒロイン像を其処に描く。
 そんなかんばせを眺める度に「ああ~」と呟くスノウローズは理想が顕現してしまった以上、愚かな獣に成り果てる。
「大丈夫ですか、スノウローズさん!」
 慌てるミセバヤがまじまじとみやったのはアン・ゼーン。魔法少女スノウローズのマスコットとしてマスコット対決を挑む所存なのである。ぴょいんと跳ね上がったウサギの耳は危険を察知するようにヨシカを一瞥する。
(ヨシカさんを狙う可能性がありますよね……! ネイコさんとヨシカさんは護ります!)
 ミセバヤがアン・ゼーンと対峙するように、エーミールは『ネガイ』を見つめていた。使用したアクティブスキルが鋭く飛び込んでゆく。
「さて、会話をしたいのもやまやまですが……バッファーはアタッカーより早く動かないと、大事なバフを与えるのが遅れますからねぇ。
 あとついでに失血でどんどんスリップダメージを喰らいなさいな。塵も積もればなんとやら」
 ゲームに於いて、戦闘は戦略が重要だ。エーミールは『敵エネミー』を倒す戦略を脳内で構築していた。影となり、時に剣となり矢を穿つ。
 金欠武器商人は運勢トラブルメイカー。彼が一瞥すれば、今日は天晴れの幸運なりと言うようにネガイが可愛らしくはないフォルムで可愛らしい仕草で転んで見せた。
「……」
「ええと、今が狙いですね! 自称魔法少女がなんですか! 私は冒険者カノンです。いざっ!」
 星の輝きを読み解けば、冒険精神は燃え上がる。困難さえも何のその。天空見据えた瞳は狙い定めて『魔術師』の弾丸を放ち続ける。
 最前線を進むが為に、ラグナヴァイスなる悪辣さえも敵ではないと少女は異世界の力をその身に宿す。
「アン・ゼーンよりも先にこいつらだ。あの二人よりは格下――その癖に『不便な病』を振りまくのだから、気にせず闘える環境にしないとね!
 ボクはまだR.O.Oには慣れてないが、やりようはあるんだ!」
 行くよ。堂々と振り下ろした魔剣は嵐の気配を纏う。予測困難な攻撃は加速する剣閃に星の気配を宿した。
 真白の髪がふわりと揺れる。身を翻せばネガイの代わりにジコルがゼロへと飛び込まんとその脚へと力を込める。地を踏み締めた肢体は靱やかに。
 斜線を塞ぐようにして立ち塞がったジコルもろとも空より放たれたのは氷結拡散閃光砲。レッグオメガスラスターは鬼丸のその身を容易に宙へと踊らせて。
「石花の呪いはスノウローズが解除を宜しくね!」
「ええ、任されたわ。私が支えるから頑張って!」
 ふわりと纏う薔薇のかおり。鬼丸を包み込んだその気配はスノウローズのヒール。花弁散らすように踊った魔力の中を、鬼丸はジコルを目がけて絶えず、砲撃を放ち続ける。
「ウウ―――ウ―――」
 唸る声。其れを聞きながらエーミールはネガイを見定めた。ゼロの剣戟が散らす幻影がラグナヴァイスを貫き続ける。
「ああー、ジコル! ネガイ! 大変だあ~!」
 慌てた様に脚をぱたぱたと動かしたアン・ゼーンに「余所見はだめです!」とミセバヤが頬を膨らませる。
「ヘルメットには使用期限があるんだよ。キミ、そのヘルメットは『安全』? 今確認した方が良いかも!
 確認作業は大事! 毎日チェック――ワン・ツー、今日も元気に~~、いってらっしゃい!」
 アニメの台詞を口にして、セララはアン・ゼーン達の意識を引き続ける。
 ラグナヴァイスを取り囲むイレギュラーズ達の猛攻は止むことは無く。流れるように剣を引き抜いてセララは甘い香りをその身に纏う。
「味方は巻き込まない位置だね。セララチェックヨシ! ――究極! スーパー安全セララキック!」
 正義の想いを剣に込めるのは何時も。だけれど、今日は『ご安全に!』と願うように。
 プリティ☆プリンセスのように。可愛くキュートに踊るセララの『ギガ安全セララブレイク』が感電防止の絶縁手袋に包まれたその手に握る剣より放たれる。
「安全第一、だけど、そうだね……この身を盾にする位は厭わない!」
 セララを強敵と認識したアン・ゼーンが「えいやー」と指示を送る。満身創痍のラグナヴァイスを受け止めたゼロは現実での培った戦闘知識を活かしその身をその場へと止める。
「今!」
「はい!」
 魔力は弾丸となりて。カノンは魔弾の雨を降らせて、ラグナヴァイスを撃退する。倒れ伏せたそれらの向こうで頭を抱えたアン・ゼーンを逃すまいとミセバヤが鋭くうさぎの蹴撃を叩き込んだ。
「最後に多対一で悪を追い詰めるのはある意味魔法少女らしいでしょうか? どうあれ、世界の終焉なんてさせませんよ!」
「ううー、どうしよう、ルミナス! 此の儘じゃ負けちゃうよ~!」
 騒ぐアン・ゼーンにエーミールが「余所見はいけませんと先程も言われていたでしょうに」と肩を竦めて。
「ッ、アン・ゼーン! 気をつけて!」
 声を荒げた『ヒロイン』は自身を食い止めるネイコを睨め付けた。アン・ゼーンへと向かうヨシカは『ヒロインに欠けた要素』――だから認められないのに。彼女の妨害で止められない。
「貴女が言ってたようにこの世界は確かに『おかしなこと』ばっかりなのかもしれない。
 でも、それでも、今を必死に生きようとしている人達だっているんだ。私はそんな人達を守りたい!」
「私の正義と貴女の正義、形が違うんだよ!」
 二人のネイコが向き合えば、自身が側に居るとヨシカは側に立っていた。
「彼女は確かに、世界を安全にしようと一生懸命だった。誰も事故のないよう優しい世界にする事に必死だった。
 それでも自分……ううん、それだけじゃない、敵であるド・カーターの事ですらも『正義や悪』で判断する事はなかった。
 自分の間違いを認め、敵の認められる部分は認める――光だけじゃない、光で出来る影ですら慈しむ魔法少女」
 作品でセメンテートはこういった。射干玉の闇は、出口の光(ルミナス)さえ示してはくれなかった。子守歌(セレナーデ)はまだ遠かった。
 それでもヨシカは走り抜けた。生きることを諦めずにいられた『僕』の手を握って走り出すような、とびきり明るい光。
「確かにこの世界はおかしな事ばかりかも知れない。けれど、その中でも確かに一生懸命生きて居る人はいるんだよ!」
 叫んだヨシカの頬をすり抜けてゆく光閃。
 ヨシカと手をぱちり、と叩き合わせて前線へと後退する。アン・ゼーンも『ヒロイン』も、本物でいて欲しい。
 ヨシカのトゥインクルハートロッドが目映く紫の光を宿す。世界も、彼女も救ってみせるために。
「簡単に安易な方に流されちゃダメだよ。貴女だって本当はそうだったんじゃないの?
 今の私よりきっと、もっと真っ直ぐで――だって、貴女はプリンセスルミナスなんだからっ!」
 脚が震えたって、ネイコは『ネイコ』に向き直って。
 アン・ゼーンの体がモザイクに侵食される。ヨシカの剣が切り伏せて、残る『ヒロイン』は「くっ」とわざとらしくそう言った。
「此の儘、私が負けるのかしら」
 呟いた『ヒロイン』に「そうだよ」とゼロは静かに言葉を紡ぐ。
「君の負けだ」
「ふふ」
 睨め付けた、視線の先――『ヒロイン』現場・ネイコは満足そうに笑みを零した。
 アン・ゼーンが消え失せた。残るはパラディーゾのみ。そうともなれば、イレギュラーズは彼女を狙う。
「あーあ、なんどだって、君たちは生き返ってくるんだもん。知ってたけど、知ってたけど、ずるいなあ。
 でも、それでも誰かを護りたい……それが、君たちのプリティ☆プリンセスの『在り方』なんだね!」
 向き合うのは同じ顔。
 笑ったネイコに、苦しげなネイコ。
 そんな二人を眺めるヨシカと、仲間達。ゼロはコスチュームの違うネイコの表情と心境を感じ取り息を呑んだ。
 一方はプレイヤー、一方はバグNPC。そうして生まれが違っても、重ねたい言葉は同じ。
 どちらも『ご安全に!』と作品に忠実であろうとしたか。エーミールの側でミセバヤは「スノウローズさん……尊さに固まってる……」と呟いて。
「私たちは『安全』を護るために貴女を倒します」
 カノンに『ヒロイン』は頷いた。セララが剣を構えれば「貴女、立派なプリンセスね」と『ヒロイン』はセララの徹底した『安全』ぷりを褒め称えて。
「それじゃあ、最後の戦いを始めましょう?」
「うん。……貴女のやろうとした事は極端で間違ったやり方だったかもしてないけど。
 ありがとう、皆の為に戦おうとしてくれて。やっぱり貴女はヒロインだったよ」
 二人のネイコの振り下ろした剣は、鮮やかな軌跡を描いて――


「世界が、崩れる――!?」
 はっと息を呑んだ鬼丸に「逃げましょう」とエーミールが後退する。
「『ヒロイン』は!?」
 ネイコが顔を上げれば、目の前に立っていた『現場ネイコ』はその身をざっくりと斬られた姿で微笑んでいた。
「私の負け」
 言葉が、怪人が負けたときのように光を作り出す。呼気が、鮮やかな気配を宿し少女の体を包み込んでいく。
 まるでモザイクの世界だった。可愛らしいふわふわの綿飴も、桃色のリボンも宝石も。
 この場所には存在しない。身を苛んだ石花の呪いも疾うの昔に解けてしまって。残されたのは『ヒロイン』だったものの最後。
 カノンは「魔法少女らしく、勝利できたでしょうか」と呟いた。
「どうかな。でも、平和を守れたのは……ボク達の勝利ってことだよ。だから、魔法少女として皆を守れただけでいいのかも」
 最後、あの『ヒロイン』――現場ネイコの顔を見れば、少しばかり胸につきりと痛みが走った。
 彼女の言うとおり全てをなくして安全にしたいというのは屹度パラディーゾならではの思考回路。其れを否定し、戦ったイレギュラーズはこの地を守り抜けたのだから。
 ほうと息を吐いた鬼丸はふと、うずうずと身を揺らしたミセバヤに気付く。
「『アニメの世界』っぽいということは、敵を倒したらスタッフロールとか流れたりするのでしょうか?
 エンドカードは『笑顔で勝利を喜ぶ8人のアバター集合絵』でお願いしますです。プラス、マスコットです!」
 ぴょんと跳ね上がったミセバヤの言うとおり勝利を喜び、跳ねたミセバヤを抱きかかえようと姿勢を崩したスノウローズに手を伸すヨシカ。
 明るく元気にピースをするセララにクールなゼロ、鬼丸と共にポーズを決めたカノンに静かに佇むエーミール。そして、主人降として堂々と微笑んだネイコの集合絵が切り取られる。

 ――ご安全に! プリティ☆プリンセス 第46話『魔法少女は永遠に!』

 そんな文字が宙に浮かんだと思えば、クエストエリアはぱちん、と音を立てて弾けた。気付けば、伝承世界に元通り。
「勝利した、のね」
 呟いたヨシカにセララは「ネイコちゃん、消えちゃったね」とパラディーゾが立っていた位置を茫と眺めて。

 コングラッチュレーション! 君たちの護った『安全』が、この町に住む沢山の人々を救ったのでした!

成否

成功

MVP

なし

状態異常

現場・ネイコ(p3x008689)[死亡]
ご安全に!プリンセス
指差・ヨシカ(p3x009033)[死亡]
プリンセスセレナーデ
エーミール(p3x009344)[死亡]
夕焼けを穿つヒト

あとがき

 この度は可愛らしい魔法少女達の戦いへとご参加頂き誠にありがとう御座いました。
 パラディーゾネイコさんは、満足したのか消滅致しました。
 皆さんの素敵な正義と魔法少女の理念が確かに彼女に届いた事でしょう。

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