PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<ダブルフォルト・エンバーミング>鋏と拳

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 伝承西部、バルツァーレク領。ここから砂嵐へと続く街道に、城塞都市ビルレストがある。
 辺り一帯にはこのビルレストを拠点に伝承貴族連合軍が陣取り、今まさに終焉の軍勢を迎え撃っている。

 その一角、大量の石材が無造作に積まれた広大な集積場にも連合軍に参じた私軍が陣を構え、壮絶な戦いを始めていた。
 戦況は一進一退、私軍の長たる貴族・ウィルド=アルス=アーヴィンは前線を駆け回り懸命に兵たちを鼓舞する。
「私たちの伝承に、安穏の領土に、終焉などあってはならない! 民が笑って明日を迎えるため、私たちがここで踏ん張るのです! この痛みも、苦しみも、決して無駄にはならない――いいえ、私が決して無駄にはしない! さあ、禍々しき魔物たちを、何としても押し返すのです!」
 兵たちにとって、普段は威圧感極まりないウィルドの巨躯も強面も、彼が繰り出す岩のような拳も、今この場では何よりも心強く頼もしかった。
 石材の間を縦横無尽に駆け回り兵を焼き払おうとする火鼠のような魔獣の群れに、「世界の終末を」「良き終末を」「破壊こそ真理」などと喚きながら武器を振り回す者たち……ウィルドは火鼠を蹴り飛ばし、ならず者の武器を拳で打ち払い、兵たちを援護する。

 しかし、突如辺りに飛散した電撃が一瞬にして戦況を変えた。
 木っ端微塵になった石材が立てる砂煙の奥から姿を現したのは、長い銀髪を靡かせ不敵に笑む一見女性を思わせる風貌の何者か。
「難しいこと言ってないでさ、拳で語り合おうよ」
 たった今炸裂した電撃といい、闘争を好まんとする微笑といい……
「魔物連中とは違うようですね……あなたは何者ですか」
 ウィルドの背筋が凍る。彼は、眼前の見知らぬ存在が只者ではないことを肌でビシビシと感じていた。
「何者と問われたら名乗るしかないよね。初めまして、オレは『天国篇第二天 水星天の徒』Ignat。キミ、強いんでしょ? オレと戦ってよ」
「アーヴィン様、危ないです!」
 数人の兵が歩み寄る水星天の前に立ちはだかり、ウィルドは血相を変える。
「駄目です! その者から離れて下さ――」
 ――雷轟に耳を劈かれた時には、ウィルドを守ろうとした兵の体は数多の石材に埋もれ、物言わぬ骸と化していた。
 水星天は物憂げにそれを眺める。
「邪魔しなきゃ死なずに済んだのに、何で余計なコトしちゃうかな? これじゃまたあっちの『オレ』に『弱い者いじめ』なんて言いがかり付けられちゃうじゃないか」
「……何が目的ですか」
 普段は「胡散臭い」などと思われがちな笑みさえ、今のウィルドの顔からは消えていた。
 誰もが根っからの善人と断言出来る心根を持ったウィルドの感情は、憤怒と悲しみに満ちた冷たい炎を燃え上がらせる。
 ウィルドの滾る怒りに、水星天はニヤリと口角を上げた。
「オレはただ語り合いたいんだよ、拳でね」 


 このまま水星天による蹂躙と殺戮が展開されるかと思いきや、伝承貴族連合軍が意地を見せる。ウィルドの私軍が配置された石材集積場に援軍を送り込んできたのだ。
 増援軍は怒号を上げるならず者連中に武器を向け、その間に生き残った兵たちとウィルドは水星天から距離を取った。
 更に、ウィルドたちに追い風が吹く。イレギュラーズが強力な助っ人として駆けつけたのだ。
 増援軍の長はならず者を槍で牽制しながらウィルドとイレギュラーズたちに声を掛ける。
「この者どもは私たちで引き受けましょう! その間に火鼠とあの……明らかに危険な奴――水星天――を鎮圧して下され!」

 4.0にアップデートされたR.O.Oで幕を開けた『ダブルフォルト・エンバーミング』。
 この世界を滅ぼさんとする大いなる破局に、イレギュラーズが立ち向かう――。

GMコメント

マスターの北織です。
この度はオープニングをご覧になって頂き、ありがとうございます。
以下、シナリオの補足情報ですので、プレイング作成の参考になさって下さい。

●成功条件
 終焉獣、終焉の使徒、パラディーゾの撃破
 ※ぶっちゃけてしまえば、「敵全部倒しましょう」ということです。
 ※NPCやモブ兵たちの生死は成功条件に影響しませんが、モブ兵が全員早々にやられてしまうと終焉の使徒を相手取る者がいなくなってしまうので皆様の負担は増すと思われます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 現時点で判明している情報に嘘はありませんが、不確実な要素や不明点が幾つか存在します。

●戦闘場所
 城塞都市ビルレストの付近にある広大な石材集積場です。
 巨大石像が作れそうな大きな岩からどんぐり大の小石まで、石柱のように整えられた形のものから何にも形容しがたい自然のまんまの形状まで、とにかく様々な石材が大量に置かれています。
 石材が死角となっている場所もあれば、積み上げられた石材が今にも崩れ落ちてきそうな箇所もあります。
 地面には水星天が飛ばした電撃で木っ端微塵になった石材が散乱しています。
 総じて、予期せぬ事故が起こりやすい危険な場所と言えます。
 なお、この石材集積場の外に強化サクラメントが存在していますが、集積場がけっこう広いので戦線復帰にはある程度の時間を要します。

●敵について ※一部PL情報です。
 ・終焉の使徒(数十人)
  ラスト・ラストを信奉する破滅主義者たちで、世界の滅亡を目指しています。
  この集積場に集った使徒たちは、特殊な力を持っているわけではありませんが全員武装しています。
  銃器や鈍器、刀剣類……と、遠近様々な武器を手に暴れています。
  現在、貴族連合軍からの援軍数十名とウィルドさんの残存私兵がこれに対処していますが、兵たちもまたイレギュラーズのような特別な力を持っているわけではありませんので、まさに「決死の覚悟」で使徒たちに挑んでいます。
  兵たちが使徒連中に敗北した場合、使徒たちはイレギュラーズに攻撃を仕掛けてきます。

 ・終焉獣(4~5体)
  オープニング内では「火鼠」と表現されており、鼠と聞くとあまり脅威を感じないかもしれませんが、「終焉獣」と言うだけあって侮れません。
  イメージとしては、「トンデモ威力の巨大火炎放射器が燃え上がりながら超高速で縦横無尽に駆け回っている」感じです。
  大きさも、一体につき猪程度はあります。
  基本的な攻撃は、燃える体での体当たりや口から噴き出す火炎によるものです。火炎系列のバッドステータスを含んでいます。
 ・パラディーゾ
  『天国篇第二天 水星天の徒』Ignatと名乗っています。
 『アンジャネーヤ』Ignatさん(p3x002377)のデータを解析され、生み出されたバグNPCです。
  高い物理攻撃力を有しますが、生半可な「高い」ではありません。とにかくバグッているのでとんでもない物理攻撃力です。まじパねぇというやつです。
 しかも、前回<Closed Emerald>でイレギュラーズを前に撤退を余儀なくされたことで、今回は更にぶっ飛んだステータスでやってきた模様です。
 特にEXAとCTの値が少々おかしいことになっているとか、いないとか……。

●NPCについて
 ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)さんのR.O.O版です。
 伝承の貴族で、私財を投げ打ってまで善政を敷くとても善良な貴族さんです。
 腕っぷしの強さには定評があります。
 特にプレイングでの指定がなければ、主に終焉獣の対処に当たると思われます。

●R.O.Oとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で、練達ネットワーク上に構築された疑似世界を指します。
 練達の悲願を達成するため、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、暴走した結果、情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しました。
 更に、ログイン中の『プレイヤー』がこの世界内に閉じ込められるという深刻な状況が発生しています。
 R.O.O内の造りは現実の混沌に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在するなど、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されているようです。
 ローレット・イレギュラーズの皆様はログイン装置を介してこの世界に介入し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指して活動、今回アップデートされた4.0では最終決戦を迎えています。

●重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 R.O.O_4.0においてデスカウントの数は、なんらかの影響の対象になる可能性があります。

●重要な備考
 <ダブルフォルト・エンバーミング>ではログアウト不可能なPCは『デスカウント数』に応じて戦闘力の強化補正を受けます。
 但し『ログアウト不能』なPCは、R.O.O4.0『ダブルフォルト・エンバーミング』が敗北に終わった場合、重篤な結果を受ける可能性があります。
 又、シナリオの結果、或いは中途においてもデスカウントの急激な上昇等何らかの理由により『ログアウト不能』に陥る場合がございます。
 又、<ダブルフォルト・エンバーミング>でMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
 MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
 指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
 予めご理解の上、ご参加下さいますようお願いいたします。

最終決戦を迎えるR.O.Oで、派手に暴れましょう!
皆様のご参加心よりお待ち申し上げております。

  • <ダブルフォルト・エンバーミング>鋏と拳完了
  • GM名北織 翼
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年12月06日 22時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

†聖天使†セシリア(p3x000215)
蒼天の女神
グレイ(p3x000395)
自称モブ
スティア(p3x001034)
天真爛漫
Ignat(p3x002377)
アンジャネーヤ
ロロン・ホウエン(p3x007992)
カラミティ・クリエイター
きうりん(p3x008356)
わるいこ
ミセバヤ(p3x008870)
ウサ侍
エール(p3x009380)
ネプチューンライト

リプレイ


 飛び交う怒号と悲鳴、舞う砂煙――最終決戦に相応しい熾烈な戦いの中、イレギュラーズは戦場に降り立った。
(んん……ここが攻め落とされたら伝承国に危機が迫る。全ての敵勢力とココで決着を着けないといけない)
 『ハンドルネームは』グレイ(p3x000395)は水星天を見据えながら
「Ignat、覚悟と準備は出来てる?」
 と『アンジャネーヤ』Ignat(p3x002377)に声を掛ける。
「そりゃあね! 最初から火力爆発で行くよ!」
「良かった。早速ケリをつけにいこう」
 水星天と瓜二つの微笑を見せるIgnatに、グレイは頷きを一つ返した。

「待ってたよ、『オレ』」
 水星天はIgnatの姿を見るなり双眸を爛々と輝かせる。
「実はオレもちょっと嬉しいよ。キミが、オレの感じてる戦いへの快感を共有出来そうな相手になってくれてね。ただ戦いたいだけって……なかなか分かってきたじゃないか水星天イグナート! ゼシュテル人はそうでなくちゃ!」
 昂ぶる心そのままに水星天はIgnatに斬撃の構えを見せた。
 だが、剣を振るうよりも先に彼のサイドに『ウサ侍』ミセバヤ(p3x008870)が突っ込む。
(翡翠では逃してしまいましたが、二度目はないのです!)
「たとえこの世界を滅ぼすのが目的でも、私たちはそれを止めてみせる」
 ミセバヤが突っ込むのと、流れるような斬撃の連鎖が水星天を襲ったのは同時
だった。
 ミセバヤと一緒に水星天に肉薄した『天真爛漫』スティア(p3x001034)の刀の閃きが空間を裂く度に勇気と希望の証たる眩い花弁が舞い、終焉の使徒たちとぶつかり合う兵たちを奮い立たせる。
 スティアの斬撃に耐えきれず石の山に叩きつけられた水星天に、体勢を立て直す隙を与えず黒い流星が突き刺さった。
「悪いけど、放置したら被害が大きくなるような相手を放っておく理由がなくてね。さっさと消えてもらおうかな」
 『ネプチューンライト』エール(p3x009380)の冷ややかな視線が黒い流星とともに石山に刺さり、砕けた石が水星天に打ちつけられる。
 水星天を石山に縫いつけたエールは、ウィルドを一瞥した。
(現実のボクと同じならそれなりに頑丈だろうし、せいぜい頑張ってもらおうかな。ま、あの様子ならそうそう死にはしないでしょ)

 数瞬の沈黙の後、込み上げる笑い声を堪えながら水星天は崩れた石山から立ち上がる。
「いいね、これなら弱い者イジメにならないね――オレ、本気で行くよ!」
 直後、電撃が四方八方に走り、エールとミセバヤが消えた。


 その頃、戦場を駆け回る終焉獣は『グリーンガール』きうりん(p3x008356)に次々と突撃していた。
「よおしねずみ! 私が一番燃えやすいぞ来い!!」
 持ち合わせた能力を存分に引き出せる状態にありながら何故か「美味しそう」に見えてしまうきうりんに、火鼠は唸るような鳴き声を上げながら怒濤のスピードで襲い掛かり灼熱の太い牙を食い込ませる……が。
「ギャウ!?」
 火鼠は何か妙な物でも噛んだかのようにきうりんから一歩離れ首を振る。欠けた牙の先が石の上に転がった。
(囮と時間稼ぎは私の専売特許、みんなが駆けつけてくれるまで何としてでも持たせてやるよ! さて、そのためにも――)
「――ウィルドくんは私が引き付けた終焉獣を叩いてね! でも、トチッて私を殴ったりしないでね!」
「……分かりました、やりましょう!」
 ウィルドはきうりんを心配そうに見つめながらも、腹を括って火鼠に豪速の拳打を入れる。
 終焉獣たちは入れ代わり立ち代わりきうりんに噛みつき、爪を立て、火を吹いたが、きうりんはハムスターのようにもぐもぐと青果を頬張りながら火鼠を迎え入れた。
(これくらい、まだまだ耐えられる!)


(たった一発で二人を……)
 『蒼天の女神』✝聖天使✝セシリア(p3x000215)は水星天の電撃の威力におののいたが、ここにくる途中で微かに聞こえてきていたウィルドの口上を思い出して己を奮い立たせる。
(民が笑って明日を迎えるため――ええ、私もそのために、全霊を尽くしてお力添えを致しましょう!)
 ✝聖天使✝セシリアは大きく息を吸い込むと、
「我が名は聖天使セシリア! 拳でお相手出来ないことは残念ですが、いざ勝負と参りましょう!」
 と名乗り水星天に杖を振り上げた。
 蒼く光る杖は水星天の肩口に激しく叩きつけられ、ますます闘争心に火が付いた水星天は✝聖天使✝セシリアの顎下に至近距離から閃光をぶち込む。
(や、やはり彼は危険すぎます! ですが……幾度でも、幾度でも復活して挑み続けますから!)

 水星天の閃光は✝聖天使✝セシリアを消し去るが、その直後には頭上から『カラミティ・クリエイター』ロロン・ホウエン(p3x007992)が急接近していた。
 白き群狼が上空から牙を剥くが如く迫り、水星天は鬼気迫る表情で大剣を掲げてロロンの凍てつく拳を受け止め凌ぐが、その一打の重さと衝撃に傷を負い蹌踉めく。
 そこに、
「大した火力だよ全く!」
 とIgnatが閃光を放つと、水星天もまた閃光を繰り出し、瞬時にIgnatを消し飛ば……せなかった。
 瞠目する水星天に、イレギュラーズは息吐く間も与えず仕掛ける。
「弱い者イジメしないとは良い子良い子、お礼代わりに全力で相手してやる」
 グレイは「来い」とばかりに人差し指をくいくいと曲げて水星天を挑発すると、
機械鋸の回転音を上げた。
 大剣を振りかざして瞬時に距離を詰めた水星天にグレイは機械鋸の光刃を高速回転させて突撃する。
 スロットルを大きく捻った機械鋸と大剣がぶつかり合うと、水星天は気合の一声を上げ機械鋸を弾いて斬撃を繰り出した。
 グレイが消えても今度はロロンが至近距離から再び氷結の拳を打ち込み、ロロンの拳打の痛みを堪えようと動きを止めた水星天にIgnatが踏み込んでこれでもかと斬撃を次々と繰り出す。
「成長して再登場してくれるなんてね! ちょっとは分かったんじゃないかな!? 命を懸けて今の自分よりも強くなる楽しさが!」
「そんなの、オレは『オレ』なんだからとっくに分かってたよ!」
 水星天はIgnatの斬撃の合間に自身も刃を走らせ、Ignatが身を捩って避けたところにえげつない閃光を撃ち込んだ。
 Ignatを消し飛ばした水星天は明らかに傷を増やし疲弊し始めていたが、その表情は驚く程に朗らかだ。


 次々と仲間たちが消える中、スティアは水星天に連撃連打を叩き込む。荘厳に舞う花吹雪の中を剣閃が縦横無尽に走る様は、そこだけが別世界のようにも見えた。
「キミ、ほんとポテンシャル高いね!」
 瞳に花弁を映しながら、水星天はスティアに何度も斬撃を入れる。剣先の軌道に鮮血が散り、花弁を紅に染めていった。
 その中にいながらも、スティアは傷の痛みも疲労もおくびにも出さず懸命に致命傷を避ける。
 すると、今度は空中で身を翻したロロンの打撃が水星天の肋を軋ませた。
「全力で叩き込まれる一撃一撃、イイね! それじゃオレのも食らってよ!」

 容赦ない電撃の後、水星天の前に佇むのは満身創痍のスティアだけ。
「みんなが戻るまで頑張ろうね! 私も頑張る!」
 きうりんはスティアを励ましながらひたすら火鼠を誘き寄せ、その牙爪に耐える。
 ウィルドや彼の部下たちも懸命に火鼠に立ち向かうが、素早い動きに翻弄されては手を焼かれ足を焦がされじりじりと追い詰められていた。
「まだまだ頑張れるよね!?」
 きうりんはウィルドたちの傷を癒しながら火鼠の猛攻を受け止めるが、その彼女もいよいよ限界寸前まで追い込まれた時、視界の端でスティアが消える。
 水星天は戦い続けているきうりんの姿を認めると電撃を繰り出そうとした……が。
「お待たせなのです!」
 ミセバヤが目にも止まらぬスピードでぴょんぴょんとリターンし、それを筆頭に一度消されたイレギュラーズたちが続々と舞い戻ってきた。

「後を頼むよグレイくん!」
「任せて……イグニッション!」
 復活したグレイは火鼠にお尻を齧られ消えたきうりんと入れ替わるように火鼠の前に躍り出ると、早速機械鋸をふかして火鼠の腹に光刃をめり込ませる。
(きうりんのことは心配だけど……まぁいいか、きうりんだし。きうりんよりもウィルドが死ぬのはまずい)
「ウィルド、君は何であってもどんな形であってもこの世界を生きろ」
 声の限りにそう叫びながらグレイが光刃を振り切ると、火鼠は死の危機を感じ取ったのか深手を負った状態で飛び退いた。


「戻ってきた! さぁ、全力でやり合おうよ!」
 水星天の閃光がミセバヤをまたも消し飛ばすが、エールの流星が闇の軌道を描きながら瓦礫の陰から伸びる。
「幸運を塗り潰す黒い流星だ。頑張って避けてみるといいよ」
「お互いにね!」
 迸る無数の電撃、消し飛ぶ流星。だが、流星は「幸運を塗り潰す」だけあって水星天の下腹を抉り、仲間の攻撃の呼び水となった。
「うわっ!」
 流星を追うように風を切って突撃したロロンの一撃にふらついた水星天に、復活した✝聖天使✝セシリアの杖が猛り、ようやく舞い戻ってきたIgnatの意地の猛攻が唸りを上げる。
「我が心の刃が折れることは決してありません!」
「楽しめよ! 世界とか、大切な人とか、背負うものはあれど敵と拳を合わせる一瞬だけは戦いの昂ぶりに身を任せて笑えよ! それが、ブレちゃいけないオレのたった一つさ!」
「見て分かるでしょ、『オレ』! オレは今超絶最高に楽しんでるよ!」

 水星天が高らかに叫んだ直後、打撃と斬撃で飛び散る彼の鮮血が――花弁に入れ替わった。
(この世界で平和に暮らしている人たちが笑って明日を迎えるためにも――)
「――私たちは負けるわけにはいかない!」
「ダブル侍アタックなのです! うおぉー!!」
 復活したスティアとミセバヤが、今度は当初のように連れ立って水星天に肉薄したのだ。
 その逞しいスピードに目を剥く水星天にスティアが刀を振りかぶるが、そこにサイドから終焉獣が猪突猛進してくる。
 水星天を追い詰めているこの機を妨害されてはならない。ミセバヤは突撃してくる終焉獣に自ら突っ込んだ。
「お前の相手はこっちなのです! オラァーなのです!」
 手足を懸命に伸ばして通せんぼしたかと思うと、可愛らしい姿からは想像もつかない激烈ドロップキックを終焉獣の体にめり込ませ、着地したミセバヤは所々ちりちりと焦げた毛並みを気にしつつも今度は戦場を駆けずり回る。
「燃えてたり火を吹いたりでアッチチなのです! こんがり丸焼きは嫌なのです! ぴゃー!!」
 ミセバヤはまるで野生のウサギそのままに石材を飛び越えたりしながら、殺意むき出しで追い縋る終焉獣に後ろ足で石材を蹴り落とし、何が何でも火鼠たちをスティアから引き離した。
 その間にスティアの刀が水星天に振り下ろされる。
 神速の連撃は水星天に次々と傷を刻むが、彼の双眸は嬉々としていた。
 霞む視界に狼狽えるどころか、水星天は再び口元に笑みを刻んで構えるとIgnatに強烈な閃光を放つ。
 しかし、Ignatは直撃を避け揺らめく砂煙の中立ち上がり、
「楽しさを共有出来るのは嬉しいけど、それでもね――勝つのは、オレたちだッ!!!」
 と全身全霊の一太刀を入れた。
「うん……最高の一撃だよ、『オレ』」
 倒れる水星天に、Ignatは反射的に手を差し出す。
「この世界のどこかに生まれ変われたらまたオレと戦ってよ! 出来れば人に迷惑が掛からない状況でね!」
 水星天は誰もが思わず目を見開いてしまう程の清々しい笑みを見せて倒れ――消えた。


 水星天を撃破したイレギュラーズは今度は火鼠を殲滅しようと視線を移す。
 火鼠はグレイの機械鋸を避け、ウィルドやイレギュラーズたちに襲い掛かってきた。
「ウィルドさん、そっちの奥に隠れとくのです!」
 息を切らし始めたウィルドを見てミセバヤが叫んだが、その時にはもう火鼠はウィルドに跳躍し弾丸のように迫っていた。
(自分たちと違って、この世界の人は死んだらそこまでなのです。だから、絶対に――守るのです!!)
 ミセバヤもまた矢の如く跳びウィルドの前に躍り出ると、決死の防御姿勢で火鼠の体当たりを受ける。
「今のうちに早く隠れるのです! 領土の人たちのためにも、今ここで貴方を失うわけにはいきません。皆で勝って帰るのですよっ!!」
「……っ、ありがとうございます!」
 ウィルドは感涙を堪えながら指示された石材の陰に移動した。 

 恐れを知らぬ終焉獣の動きに鼓舞されたのか、終焉の使徒たちは雄叫びを上げ貴族連合軍の兵たちをじりじりと押し返す。
(このままじゃいけない、皆に勇気を与えないと!)
「私に任せて!」
 スティアがならず者の集団に怒濤の一撃を見舞う。更に一歩踏み込んでもう一閃。
 更に、
「よおしパラディーゾ討伐隊が戻ってきたね!」
 ときうりんが戦線復帰し癒しの青果を仲間たちに大盤振る舞いした。
 そして、きうりんは使徒たちに向き合うと
「死んだこともないくせに終末終末って、まるでそれが救いみたいに叫んでんじゃないの! 言っとくけどそんないいものじゃないからこれ! 60回死んでるきうりんからの忠告だよ!」
 と煽り立てる。
「我々の究極の真理たる死を軽々しく語るな!」
(よおしそうやって怒ってこっちに群がれ、正気には戻らなくていいから! 終わるまでは楽しいかもだけど、終わったら絶対虚しいんだから!)
 あえて弱肉感を醸し出しながらきうりんは使徒たちを引きつけると、
(私ごとやっちゃうといいよ!)
 とイレギュラーズたちに目で訴えた。
 すると、それに応えるように
「滅んでしまえという気持ちが理解出来ないわけじゃないけど、残念ね」
 という冷ややかな一声とともに剣が雨となって容赦なく使徒たちに降る。
 剣の雨は周囲の石材をも穿ち砕き、崩れ落ちる石材が数人の使徒を生き埋め状態にした。
 剣の雨の軌道を遡ると、そこには
「今は雇われ正義のミカタだからサヨナラよ」
 と、半ば呆れ顔で使徒たちを見据えるロロンが立っていた。
  
「今のうちなのです!」
 勢いを挫かれた使徒たちの前で、ウサギ――ミセバヤ――の青き煌めきが火鼠に入る。
(「勝って帰ろう」って言われて涙ぐんで礼を言うとか……虫唾が走る)
「炎撒き散らしてないでさっさと消えてくれるかな」
 戦線復帰したエールは御しがたい嫌悪感を火鼠にぶち当てる。
 遠距離からの予期せぬ一撃に火鼠は咄嗟に火を吹き反撃を見せるが、ちょうど眼前を横切った別の火鼠に阻まれ自らその火を食らった。

 同士討ち状態になったことで動揺したのか、挙動のおかしくなった一匹に✝聖天使✝セシリアが杖を叩きつける。
「皆さん、どうか諦めないで! 民が――いえ! “皆”が笑って明日を迎えるために!!」
 戦場の兵たちの生存と勝利を願う強い想いを言葉に乗せた✝聖天使✝セシリアの隣でグレイの唸る光刃が最後の一匹を両断すると、戦場からは禍々しい炎も熱もすっかり消え失せた。


 その後、終焉の使徒たちはイレギュラーズと貴族連合軍の兵たちに完全に退路を塞がれた。
 ウィルドも再び前線に立ち、兵たちとともに使徒らを叩き伏せていく。
(そうだウィルド、君がこの戦場の要、兵を鼓舞し奮い立たせる「旗」だ)
「兵たち、彼を見ろ、勇敢な俺たちを見ろ!」
 見えてきた勝利をものにすべくグレイが声を上げた。
「この姿を目に焼き付けて奮い立て! 使徒共を追い返してやれ!」
「うおおおおっ!」
 グレイの言葉が兵たちの背中を一気に押したことで戦場は完全に貴族連合軍に支配され、やがて終焉の使徒らも鎮圧された。

 戦いに勝利したものの、ふと戦場を見回せばそこここに息絶えた味方の骸が横たわっている。
「どうか安心してお眠り下さい……」
(……貴方たちのおかげで、生き残った民はまたいつか必ず笑って明日を迎えます。私も必ずそのお力添えを致しますから)
 亡くなったウィルドの部下に✝聖天使✝セシリアは祈りを捧げる。
 こんなものがゲームであっていいものか。
 如何な世界であろうと、命の重みに変わりはないというのに。 
(ここにいる誰もが生きていた……確かに、生きていたんだ……)
 光る粒が✝聖天使✝セシリアの睫毛を静かに濡らした。

「力を貸してくれたこと、心より感謝します。……おや? そういえば、誰か足りないような気が……」
 ウィルドは何度かイレギュラーズ全員の顔を見回す。
 戦いによって消された者たちも全て強化サクラメントから復活している筈なのだが、やはり一人いない。
「何か、お忙しい事情でも抱えていたのかもしれませんね。その方にも、私からの礼を伝えておいて頂けますか」
 ウィルドはイレギュラーズたちにそう言って丁寧にお辞儀した。

「……ったく、何だったのアレ」
 戦いを終えてひと足早く現場から撤退していたエールは、サクラメントに向かいながら何度か何かを振り払うようにかぶりを振る。
 R.O.O世界の「自分」とやらを見てみることを、エールは内心楽しみにしていた。混沌世界のウィルドのように己の掲げる理想のためなら手段も目的も選ばぬ悪党的側面を持つのか、はたまたそれを上回る純度を誇る悪党として君臨しているのか、と。
 だが……。
(身を挺して他人のために戦うだの、国のためにどうこうだの……あれが本当にウィルド=アルス=アーヴィンなのか? あんなの……み、見ているだけで気が滅入ってしょうがない)
「あれは悪い冗談だ……あり得ないよあんなの」
 エールは背筋を這い上がる悪寒に耐えかねて二の腕をさすった。
(これ以上ここの空気を吸っていたらボクの精神が保ちそうにない。さっさとこの場を去ろう)
 後にウィルドが心から礼を言っていたことを人伝に聞き、更に身震いすることになるとは知る由もなく……。

成否

成功

MVP

スティア(p3x001034)
天真爛漫

状態異常

†聖天使†セシリア(p3x000215)[死亡×2]
蒼天の女神
グレイ(p3x000395)[死亡]
自称モブ
スティア(p3x001034)[死亡]
天真爛漫
Ignat(p3x002377)[死亡]
アンジャネーヤ
ロロン・ホウエン(p3x007992)[死亡]
カラミティ・クリエイター
きうりん(p3x008356)[死亡]
わるいこ
ミセバヤ(p3x008870)[死亡×2]
ウサ侍
エール(p3x009380)[死亡×2]
ネプチューンライト

あとがき

マスターの北織です。
この度はシナリオ「<ダブルフォルト・エンバーミング>鋏と拳」にご参加頂き、ありがとうございました。
少しでもお楽しみ頂けていれば幸いです。
かつて撤退を許したパラディーゾでしたが、終焉獣や終焉の使徒たち諸共見事に撃退出来ました。皆様の半端ない気合を感じました。
今回は、とことんまでパラディーゾとやり合ったあなたをMVPに選ばせて頂きました。そして、戦場でぴょんぴょん頑張ったあなたとブォンブォン頑張ったあなたに称号をプレゼントさせて頂きます。
改めまして皆様に感謝しますとともに、またのご縁に恵まれますことを心よりお祈りしております。

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