シナリオ詳細
アニマル・パレード・インパーソネイション!
オープニング
●
R.O.Oに再現された『幻想国』。内部世界では『伝承国』と呼ばれるエリアの一角。
そのとある街の広場に、今『移動式動物園』がやってきていた。広場を大きく借りて、多くの柵や檻を並べて、中に動物たちを放す。
例えば、ウサギやタヌキのような小動物からパカダクラ、大型動物はライオンやゾウの類まで。流石に移動式動物園ゆえ何頭も、とはいかなかったが、有名どころはそろえてあるイメージだ。
ウサギやタヌキのような小動物は、実際に――ある程度の制限があるとしても――触れ合うことができた。子供達が、動物たちに近づいて、管理員の監視の下、優しく撫でてやる。例えば、ここに一匹の猫がいる。赤毛の猫は些かふてぶてしそうな顔をしながら、ぶにゃあご、とないて、子供に頭を撫でられるがままにしていた。
もし、その猫の存在を知るものがいたら、驚いたかもしれない。それは間違いなく、特異運命座標――にゃこらす (p3x007576)であったのだから。
いや、よく見てみれば、そこにいたのはにゃこらすだけではないことに気づいただろう。同じく小動物コーナーにいる、なんだかよくわからない丸い生命体はBX16 (p3x008546)だ。BX16はにっかりと近くにいた女の子に笑いかけたが、女の子はなんか泣いた。怖かったのかもしれない。
「なんでですか」
とBX16は嘆いた。女の子はもっと泣いた。BX16も泣きたかった。そんな女の子を慰めるように、二足歩行のウサギがやってきて、ぽんぽんと背中を叩いた。ミセバヤ (p3x008870)である。まるでぬいぐるみのような容姿をしているミセバヤに、女の子はすっかり機嫌を直したようだった。しゃがんで、ミセバヤのあたまをポンポンと撫でた。
「なんでですか」
BX16は嘆いた。
さて、中型動物のエリアには、真っ白な毛並みの犬がいる。それは狼の姿となったアルヴ (p3x001964)だ。一応オオカミと言う事で、檻を隔てた中で外を見ている。思慮深げなその眼は、観客をつぶさに観察しつつ――同時に、いつでも飛び出せるように身体は緊張していた。内側から檻の中を見るものがいたら気づいたかもしれない。この檻にはかぎが掛かっていないのだ。いつでも、アルヴは外に飛び出すことができる――。
ではなぜ、特異運命座標たちが、動物園の檻の中にいるのだろうか? 捕まったのか? いや、そうではないことは、檻に鍵がかかていないことからもわかるだろう。そう、すべては、今も特異運命座標たちのシステム情報上に表示される言葉……つまり、『クエスト』中なのであった。
クエストの発生は今朝である。その日、たまたまこの街に集まっていた八人の特異運命座標たち。その共通点をあげるとしたならば、それは『全員が動物種アバター』であるという事だろう。果たしてそれがトリガーとなったかは不明だが、とにかく特異運命座標たちのシステム情報に、クエストの発生が知らされたのである。
では早速行ってみよう、との事で向かった特異運命座標たちを迎えたのは、空っぽの移動式動物園の姿だった。そして、その真ん中で途方に暮れている男は、移動式動物園の園長を務める男だった。
「へー、動物たちがいなくなっちゃったの?」
と、ロク (p3x005176)が言う。園長の話によれば、先日ここで興行を開いた後、夜の間に何匹かの動物たちが連れて行かれてしまったのだという。
手際は鮮やか。静かに、素早く。恐らく動物の扱いに慣れているであろう者の犯行。恐らく、常習者だろう。
「なるほど。それは大変だね……犯人の目星はついてるの?」
飛天丸 (p3x000068)の言葉に、園長は頭を振った。まったくもって、目星はついていないのだ。
「……ふむ。こういうのはどうだろうか?
おそらく相手は、昼間に客に紛れて獲物を物色しているに違いない。
なれば、昼間のうちに我々が動物園を監視し、怪しい人物を見極めればいい」
「でも大丈夫ッスか? リュートたち、目立っちゃうんじゃ?」
ヴァリフィルド (p3x000072)の言葉に、リュート (p3x000684)は言った。確かに、彼らは目立つだろう。が。
「問題ない。動物園に動物がいることに何の不自然がある?」
「なるほど、確かに、それはちょうどいいね!」
飛天丸が頷いた。つまり、動物園の動物に成りすまして、観客たちを観察するわけである。それに、もしこちらも『動物園の動物として』稀少であると印象付ければ、動物誘拐犯たちもより強欲に犯行を行おうと決意するだろう。
特異運命座標たちの提案に、園長は喜んでご協力します、と何度も頭を下げた。
かくして、クエスト受領のメッセージが表示され、クエスト『impersonation』がスタートするのだった――。
- アニマル・パレード・インパーソネイション!完了
- GM名洗井落雲
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2021年11月27日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費---RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●アニマル? アニマル!
「にゃーにゃーにゃぁご。ぶなぁああご。なぁぁあご」
……いっそのこと一思いに殺してくれ、などと思いつつ、嘆くように鳴くのは『怪異狩り』にゃこらす(p3x007576)である。にゃこらすは猫ではないが、アバターは猫である。いわゆる人に懐かぬボス猫の如き様子を演じて見せたが、しかし子供達にそんなものはお構いなしだ。さっきから女の子が尻尾の付け根辺りをぺしぺし叩いていてめっちゃ心地がいい。猫だからしょうがないね。同時に、喉のあたりを男の子がこしょこしょしててめっちゃ心地がいい。猫だからね。しょうがないね。
「ぶなぁぁぁぁ」
やめろ、やめてくれ、俺をこれ以上猫にしないでくれ。そう叫びたくても叫ぶことはできない。ああ、頼むから知り合いだけはここに来ないでくれ……来なくてよかったね……きてたらもう……名実ともに猫……!
「猫さーん!」
ぽふ、と小さな男の子が、にゃこらすの背中に顔を埋めた。あーお客様困ります! 猫吸いですか!? 猫吸いは困りますあーお客様!!
さて、どうしてこんなことになっているのかと言えば、クエスト攻略のためである。伝承国にやってきた移動式動物園、その動物たちがさらわれてしまったのだ。その犯人をおびき寄せるため、特異運命座標たち自慢のアバターを利用し、こうして動物のふりをして観客から犯人を割り出そうとしているのである。
にゃこらすは猫としてふれあい広場で子供たちと触れ合っていたし、例えば『天駆ける小狐』飛天丸(p3x000068)なども、同様にふれあい広場にいた。
「こゃーん」
狐です。これは狐の鳴き声です。三つのしっぽをパタパタ、飛天丸が子供たちを先導するように歩いている。愛らしいその姿は、女性はもちろん、男性もとりことするのだ。見れば人だかりができていて、子供たちはそのふわふわのしっぽにじゃれついている。ぱたぱたぱた、と尻尾が揺れるたびに、そのさきで子供達がわー、きゃー、と歓声をあげて走り回る。此処が再現性東京のような場所だったら、撮影を行う両親なども多く居ただろう。
飛天丸がくあぁ、とあくびをして見せた。その様子も愛らしく見えるらしく、客たちの声が上がる。それに、三本尻尾の白狐となれば、珍しいものだろう。愛嬌を振りまくように見せつつ、飛天丸は客たちに視線をやっていた。
(……怪しい奴、って言ってもね。すぐには尻尾を出さないと思うから……)
飛天丸が小声でつぶやくのへ、にゃこらすはぶにゃあ、と鳴きつつ、小声で返す。
(一日仕事だな……勘弁してくれよ……)
首根っこを掴まれて抵抗する気力もなくなったにゃこらすの横に飛天丸は寝っ転がると尻尾をパタパタさせて、子供たちと遊んでやった。
「ビ~~~~ンビンビンビン」
なんか鳴いた。蝉かな? 蝉じゃないな……『ハイ↑↑テンション』BX16(p3x008546)だ。
「ビ~~~~~ンビンビンビンビン」
鳴いた。とことこと歩きながら、BX16が鳴いた。笑いながら。笑顔で。精一杯の笑顔で。
「うわあああああああん」
泣いた。子供が、割とガチの泣き声をあげて逃げ惑う。
「どうしてですか」
BX16が嘆いた。なんででしょうね。鳴き声が蝉過ぎましたか? それとも可愛すぎた……?
「BX16さん、それはちょっとヤバいですよ」
『ウサ侍』ミセバヤ(p3x008870)が言う。
「どこかですか?」
「いや、その、全般的に……」
BX16が首を傾げ……首ないな……全身をこう、傾けた。
「どこかですか?」
圧が強い。
「いや……それより、芸なんかどうですか?」
ごまかすミセバヤ。
「なるほど……」
ふむぅ、とBX16が唸る。
「ではこうしましょう。耳を貸してください」
びっ、とBX16が、ミセバヤの耳を引っ張った。そして、ごにょごにょごにょ。
「なるほど、楽しそうですね!」
「というわけで、サンシャインアニマルパワーメイクア~ップ!!」
BX16が叫ぶ! 同時、ミセバヤがその身体の上に飛び乗った! 合体! そう、これは玉乗りの構図だ!
「では回ります! ビ~~~~~ンビンビンビンビン!!!」
ぐお、と回転するBX16。その上でぱたぱたと足を動かすミセバヤ。なるほど、芸である。シンプルに玉乗りだが、足元に得体のしれない動物、上にウサギ、と言う事で、何となく、注目を引くことに間違いはない。実際、子供達も大人たちも――若干遠巻きながら――驚きの声をあげていた。
「ウケてますよ、BX16さん!」
「まぁ当然ですよね!」
人としての尊厳を失った弾が答える。
「あ、ミセバヤさん。僕足の甲に爆破スイッチがあるのでそこだけ押さないでくださいね。いいか? 押すなよ! 絶対押すなよ!」
「なるほど、爆破スイッチ付きのボールなんて超スリリングですね!
「絶対押すなよ」ってそれ振りですか? やだなぁもう!
所でめっちゃくちゃ加速してますけど、これどうやって止まるんですかBX16さん?」
「……」
「あの?」
「……」
「えっ?」
なんか遠くの方で何かが爆発している。そんなことは気にせず、『食いしん坊ドラゴン』リュート(p3x000684)は柵の中で、くぁ、とあくびをして見せた。
リュートは偉大なるドラゴンである。動物園にいる動物ではない。でも自分より大きなドラゴン(『悪食竜』ヴァリフィルド(p3x000072))がそう言ったので、自分は動物園の動物なのである。ドラゴンは自分より大きなドラゴンには逆らわないのだ。
「なんかいるー」
子供の素直な声が聞こえる。なんかじゃないッス、ドラゴンッス、とは言わない。今は愛らしい動物枠なので。リュートはぴょこぴょこと柵の近くにやってくると、
「ぎゃうー」
とかわいらしく鳴いて見せた。
「すごい、ぎゃうー!」
子供が真似して、ぎゃうー! と言ってみせた。ぎゃうー、と柵越しに、リュートも愛嬌を振りまいて見せる。
「お母さん、お父さん、これなにー?」
子供が指さすのへ、両親は首をかしげた。
「さぁ、なんだろうねぇ。可愛いねぇ」
「これほしー」
「大きいからうちじゃ飼えないわねぇ」
「ぎゃうー」
頷いた。飼われたくはない。
「ばいばいー!」
子供が手をふったので、リュートも、ぴかぴかと身体を輝かせながら、ぱたぱた尻尾を振って返してやった。去っていく親子を見やりながら、
「……愛嬌を振りまくの、結構大変ッスね……」
と、呟いてみる。空を見上げてみれば、ヴァリフィルドが客と、園長を乗せて飛んでいた。
「この園長は、かつては名のある竜騎士でな……」
ヴァリフィルドが言う。
「我と共に空をかけ、悪しき竜を狩っていた。
さる王国の騎士団長にまで上り詰めた、由緒正しき英雄だ」
「ヴァリフィルドさん、無茶がありませんか……」
まさに着られている、といった様子でよりを着こんだ園長が、ヴァリフィルドの背中で呟く。ヴァリフィルドの背中には、園長と、客が一名乗っている。客にはハーネスがつけられていて、万が一でも落ちないようにはなっていた。
園長はどう見ても武闘派には見えない。その為、なんともアンバランスな主従関係に見えたが、それはそれで、客としては演出の一環ととらえるのだろう。
「なに、こう言うのは雰囲気が大切だ。堂々とせよ」
ヴァリフィルドは笑うと、ぐわん、と空を旋回した。動物園を眺めながら、さて、怪しいものはいないか、と探す。すぐ下にはリュートの姿が見えて、ぴかぴか光りながら、客に愛嬌を振りまいているのが見えた。
(さて……まだまだ日は高い。探し続けんとな)
ヴァリフィルドはそう呟きながら、引き続き上空を飛んだ。
「いけ! サイバーロリババア!
うめ! やきにくの じゅんびだ!
やかれるのは おまえたちだ!」
牧羊犬が叫ぶ。ロリババアが焼かれる。ロバが。焼かれる。
と言うわけで、再び地上へ。広場では牧羊犬……まぁ、要するに『サイバークソ犬』ロク(p3x005176)なのであるが、とにかくロクがロバを引き連れて捌いて焼いていた。動物園でロバ焼肉を展開するのはどうなのだろう。実際子供は泣いていた。
「なんで泣くの?! お肉おいしいよ!!!」
ロクが笑った。お肉は美味しい。それはそれとして絵面は最悪なのでは? 大人は流石に割り切った……いや、ヒいているものもいたけれどそれはさておき。動物園にはジューシーな香りが漂い、夏場のバーべキューレジャースポットみたいな空気を醸し出している。
「どんどん食べてね!! どんどん焼くから!!!
わたしが命じればロバは産まれる! わたしが命じればロバは死ぬ! 生かすも殺すも思いのまま!」
もはや牧羊犬と言うよりは暴君か何かである。阿鼻叫喚のロバ焼肉大会が繰り広げる中、檻の中で静かにたたずむのは『分岐点の別の道』アルヴ(p3x001964)だ。
(……みんな、大忙しみたいだね……。
……こんなクエストが発生するなんて……条件も結構厳しそうだし……これって相当珍しい隠しクエストだったりして……?
……というか……動物園で動物のふりをするなんて……現実世界だとまず起こりえないこと……だよね……)
白いオオカミの姿となって、檻の中にたたずむアルヴ。その綺麗な容姿は、客たちの目を引いていた。もちろん、悪しき者の目も。いや、アルヴだけではない。動物園で多くの人々の目を引いている動物たち……つまり特異運命座標たちを、なにか品定めするかのような目で見ているものを、アルヴだけではなく、他の皆も感じ取っていた。
(……後で、情報を共有しないといけないね……これだけみんなが印象付ければ、きっと、今晩には……)
アルヴは胸中で呟いて、目を閉じた。自らの身体を指す視線、その中に、何か邪悪な意思を感じながら、日が落ちるのを、じっと待つ。
戦いの本番は、夜からだ。アルヴはわずかに緊張しながら、しばしの務めを果たすのであった――。
●アニマル・リベンジ
さて、すっかり日が落ちて、暗闇の中に動物園もまたある。
檻では動物たちが、日中の疲れを取るべく休んでいるはずだ。そんな誰もいないはずの動物園に、いま25人と言う、大掛かりな数の人間たちが、暗闇に沈む衣装で訪れていた。
客か? いや、もちろん、そうではない。噂の動物窃盗団だ。年齢や性別は様々であったが、少なくともこの全員が大規模な窃盗団の仲間達であろう。
「昼間は妙な動物がいたな」
男が言う。
「ええ、あの丸い……なんなの、あれ? わからないけど、レアなのは間違いなさそうね」
「ドラゴンみたいな奴もいたな。それから、白い毛皮の狼だ。あれは賢そうだったな。好事家に売れる」
「いつも通り、手早くやっちまおう。なに、ここは警備がザルだ。すぐにでも……」
「おっと、そうはいかねぇよ」
ぶにゃあ、と、声がした。気づけば、窃盗団たちは、八匹の動物たちに……いや、特異運命座標たちに囲まれている!
「……やっぱり、あなた達だったんだね。此方を値踏みするような視線……忘れてないよ……」
アルヴが言う。その瞳に、窃盗団、はっ、とした様子を見せた。
「まさか……噂の特異運命座標……!?」
「そうッスよ!」
リュートが吠えた。
「さぁ、観念してお縄につくッス! そして、先日攫った動物たちも返すッス!」
「くそ、だが、数はこっちの方が上だ! やっちまうぞ!」
叫び、窃盗団たちがナイフや鈍器を取り出す。
「お? お? 汚物ですね!? 消毒しちゃっていいですか!?」
ケタケタとBX16が笑う。
「分かりやすくて助かるよね! いくよロリババア! まとめて踏みつぶそう!」
ロクが叫ぶ。
「不届きものが。命を命と思わぬのなら、その報い、身をもって受けるが良い」
ヴァリフィルドが吠える。
「行きましょう、皆さん!」
ミセバヤの言葉に、
「よーしここからがお仕事の本番! 戦闘は不慣れだけど、頑張ろうねぇ! 泥棒退治だー!」
飛天丸が声をあげた。雄叫びをあげて、泥棒たちが迫る。ミセバヤはぴょん、と飛び跳ねると敵陣のただ中に切り込む。ウサギのように見えてもその本質は侍! 泥棒相手に遅れはとらない! 自らを中心に、繰り広げられる神速の斬撃が、泥棒たちをまとめて吹き飛ばす!
「くっ、あいつを捕まえろ!」
慌てて反撃にうつる泥棒たちだが、ミセバヤを捉えらない!
「ふふん、悔しかったら捕まえてみろなのです!」
挑発するように飛び跳ねるミセバヤ――同時、BX16の口からにょき、と火炎放射器が顔を出し、
「ヒャッハー!
誘拐犯 鳴くまで焼こう ホトトギス
放火だーーーーーッ!!!」
勢いよく炎を吐き出す! これにはたまらない! 悲鳴をあげながら逃げ惑う泥棒たち!
「な、なんだこいつ! 昼間から思ってたが化け物か!?」
「愛らしい! マスコットですよッ!!!」
火を吐く化け物。
「リュートのおねむの時間を妨げるやつはやっつけるッス!」
一方、残る泥棒たちをどーんっ! するリュート。その名の通り、吐き出された様々なブレスが、どーん、とあちこちで爆風を巻き起こし、泥棒たちを薙ぎ払った。フッ飛ばされた泥棒たちが、近くにあった檻に放り込まれて、そのまま目を回して気絶する。
「お、ちょうどいいッスね! あそこに突っ込んでおくッス!」
「ふ、よかろう」
ヴァリフィルドも、リュートに負けずと強烈なブレスを吐き出した。炎のブレスは爆風と共に泥棒たちを吹き飛ばし、檻の中へとホールインワン。
「安心せよ、殺しはせん。
お前たちのような輩には、死を与えるよりも、しっかりと労働と言う対価を払わせた方がよいという事は知っている」
ふん、と鼻を鳴らすヴァリフィルド。あくまでアバターではあるが、龍の怒りに触れたものが、無事に逃げおおせるわけはない。
「ひ、ひぃ! か、こんな連中には勝てねぇよ!」
怯え逃げようとする泥棒たち。だが、その退路を塞ぐ飛天丸とにゃこらすが、同時に泥棒たちへと襲い掛かる。
「あ゛あ゛あ゛ー!!! やっっと解放された!!!! この鬱憤晴らさでおくべきか!
アンタらの! せいで! 俺はなぁ! 吸われたり! こちょこちょされたり! ぺちぺちされたり……とにかく、許さん!」
鋭い爪が、泥棒の顔面をひっかいた。ぎゃあ、と悲鳴をあげた泥棒たちが、飛天丸の後ろ脚キックで止めを刺される。目を回して気絶する泥棒たち。
「まったく、どうしてこんな悪いことしたのか、後でみっちり聞いてあげるからねぇ!」
ぷんぷんと怒る飛天丸に、にゃこらすは
「金じゃねぇの……?」
と呟くが、飛天丸にはとどかない。次々とぴょんぴょん跳ねて、後ろ足でぺしぺしと不殺の一撃をくらわしていく。気絶した泥棒たちは、そのまま檻の中へ。
「よーし、大体数は減ってきたね!」
飛天丸がそう言う。残った泥棒たちは何とか逃げ出そうとするが、その前に獣人の姿をさらしたアルヴが立ちはだかる。
「……残念だったね……逃げられるだなんて……思わない方がいいよ……」
「あ、あの白いオオカミ……!? くそっ、邪魔するんじゃ……!」
叫び、襲い掛かってくる泥棒に、アルヴは先制の攻撃を仕掛けた。目にも止まらぬ速度で放たれた鋭い爪の一撃が、泥棒の身体を切り裂き、そのまま意識を刈り取る。
「……やり過ぎちゃったかな……でも、これくらいは、お仕置きだよね……?」
もちろん、命を奪うまではしていない。泥棒を担ぎ上げて、檻の中へと運び込む。
「よーし、もう残りわずかだね! ほら! ロリババア! 出番だよ!」
『NOJAAAAAAAA!!!』
吠え猛るロリババア! どこからともなく現れたロリババア(ロバ)達が、残る泥棒たちへ次々突撃!
「な、なんだこの……なんだこれ!?」
「いけ! サイバーロリババア!
あの人たちに自分たちロバがただ肉を取るだけの家畜じゃないってところを教えてあげよう!」
『NOOOOOJAAAAAA!!!!!』
ロリババアたちが、困惑する泥棒たちにタックル、そのまま檻の中へと放り込んでいく。果たしてあっという間に、すべての泥棒たちは、檻の中へと閉じ込められていた。アルヴは、かちゃん、と檻に鍵をかける。
「……しばらくそこで反省してもらうよ……もちろん、騎士団には通報するからね……」
目を回して気絶する泥棒たちに、そう告げる。
「おー、これで終わりッスね!
他の動物たちは……」
リュートが言うのへ、ヴァリフィルドが頷いた。
「うむ。目覚めてから取り調べを行うことになるだろうな」
「あああ、やっと終わったぜ」
にゃこらすが、にゃぁん、と伸びをした。
「動物園の動物になるなんて、中々ない体験でしたね」
ミセバヤが笑った。
「ええ! 子供に泣かれたのは納得いきませんが!」
BX16が言う。
「でも、楽しかったよぉ」
飛天丸が笑う。そう、終わってみれば、意外と楽しかった……かもしれない。
「……でも、檻の中、って言うのは……あんまり経験したくないな……」
アルヴが苦笑する。
特異運命座標たちのインターフェース上に、クエストクリアの文字が踊る。どうやら、クエストも成功終了したようだ。
「どう? 今度はお客さんとして、皆で来てみない?」
飛天丸の言葉に、
「それも楽しいかもね!」
ロクはそう言って、笑ったのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
ご参加ありがとうございました。
皆さんの活躍により、泥棒たちは逮捕。
盗まれた動物たちも、後日帰ってきたそうです。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
此方のシナリオは、特異運命座標たちへの助けを求める声(リクエスト)により発生したクエストになっています。
●成功条件
動物誘拐犯の捕縛。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●状況
ネクスト世界内を回る、移動式動物園。彼らが伝承国で興行を行っていた際、何者かにより動物たちがさらわれてしまうという事件が発生しました。
このままでは、興行が続けられない他、攫われた動物たちの安否も保証できません。
クエストの発生を受けた皆さんは、この動物園にて『動物に成りすまし』、昼の興行にて実際に動物園の動物として活動します。
その際に、目立ったり、怪しい人を見つけたりして、誘拐犯の目星をつけたり、獲物として目をつけられたりしましょう。
首尾よく情報を入手できれば、夜に皆さんをさらいに、誘拐犯たちがやってくるはずです。
そこを一網打尽です!
クエストの発生タイミングは、昼と夜。
昼は、動物園にて、お客さんと触れ合ったりするシーンがメインとなります。
夜は、閉園後の動物園で戦います。あたりは広場になっていて、暗い以外に障害物はありません。
暗い事によるペナルティは極小ですが、光があれば有利に動けるはずです。
●エネミーデータ
動物誘拐犯 ×25
20人の動物誘拐犯たちです。皆剣や拳銃などで武装しています。
各々の戦闘能力は低いですが、数が多く厄介です。
BSとして『出血系列』や『痺れ系列』を持つスキルを使用してきます。
●復活用サクラメント
広場にあります。
数回程度なら復活し、戦闘には復帰できるはずです。
以上となります。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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