PandoraPartyProject

シナリオ詳細

その点トーポッて凄いがスニークさせて貰う

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

⚫︎其れは約束された旗が立つ時
 その館は商店街ではよく知られる商会の象徴、シンボルだ。
 昼は気前の良い声とサービスが飛び交い、夜になれば屈強な傭兵達が武装して警備に立つ。
 警備が立つ理由は自然。盗まれては困る物があり、部外者に入られては困る。知られては困る。とにかく都合が悪いからだ。
 普段ならばその館の主人の職業柄が商人である以上、今示した例の全てが当て嵌まる。だがこの夜はまた一つ違った。
「あー……怠いな、戦闘が少ない仕事とはいえ拘束規則のせいで色気が少なくていけねえや。……ようこそ我が主の館へ、お求めの品は如何に?」
 深夜。時計塔かと見紛う細長い館を出入りできる唯一の扉を、男が三人並んで客人を迎えていた。
 男達の装備や体格からして傭兵の類である事は明らか。
 しかし任されているのは単純な警備だけでは無く。館入口側面にある小柄な人間なら忍び込めそうなほど大きな通風孔(ダクト)から響く風の音に負けじと大きな声で、館を訪れた者達へ問いを投げた。
「へっへっへ、それは勿論『蜜』でさぁ」
「畏まりました。……かぁー羨ましいねぇ」
 警備の男の一人が首を鳴らして客人が浮かべた薄ら笑いと答えの意味に、唾を傍らに吐いて応じた。
 館の正面扉に掛けられた錠を開けた警備兵は、小さなカギを首元のペンダントケースに収め、客である男を中へ通した。
 客の男は口笛を吹きながら入る。外観こそ細長く見える館だったが、内部は狭くなく、40m四方の中に人が隠れられそうなコンテナがあちこちに置かれ。中央には2階以上へ繋がる螺旋階段が上に伸びている。
 出入り口に立っていた男達と同じ装備の案内役に導かれ、薄暗い館の中央にそびえ立つ螺旋階段へと向かう。
「へ、へへ……今夜はイイのが入ってますかね?」
「んあー? あぁ、そりゃ『協力者』の為に揃えたミツバチどもだぜ。ったく、旦那もこっちにたまにゃ回してくれたら良いのによ。仲間達もいいかげん飢えてきたぜ」
 暗く、狭い、人が並べても四人。3m幅の螺旋階段を登って行った彼等は5階に当たる所で階段の途中にある連絡通路へと降りる。
 窓も無い中空気が澄んでいるのは天井にある通気口、ダクトの類があるおかげか。外の夜露の香りと風が通路に吹いていた。
「客だ。旦那に通せ、オーダーは『蜜』だとよ」
「ハッハァ! どいつもこいつも一端に貴族みてえな事するじゃねえの! おいオッサン、ついてきな。ブツを用意しておけよ?」
「へへっ、わかりやした……!」
 簡素な外套の下から客の男は言われた通りに、ジャラリと重々しい音を立てて革袋を取り出して。それを大事そうに胸元で抱えてついて行った。
 その階をぐるりと回り込む様に連絡通路から廊下へと景色変わり、無数の扉が並ぶ中を進んで行く。
 その最中、扉が開け放たれたままの部屋を覗き見れば、ベッドや商品の並ぶ棚を清掃する者の姿があった。どうやらこの地上25mにある階からは部屋に窓があるようだ。
「到着っと、失礼の無いようにな」
 そして遂に奥の部屋へ案内された男は館の主と対面する。
「客か、そろそろ私は眠ろうと思っていたのだがね。オーダーは通信機で聴いている、先ずは対価を払って貰おう」
「へっへっへ、これはアタシの店の売上金の20%ですァ。これでその……へへっ」
「……この金額。家具店かね、まあいい充分だ。『蜜』を存分に味わうといい」
 館の主である鋭い眼の男は指を軽快に鳴らして配下の男を呼びつける。その傍らには……豊満な身体の娘が二人。
 彼女達はそれぞれ、潤んだ瞳で顔を見合わせ、館の主を見て。諦めたようにその上着を脱ぎ捨てて際どい水着姿へと変わる。
「では隣の部屋を使いたまえ、時間は2時間だ……良い夢を見るがいい。そして明日からもまた励みたまえよ? 我らが商会の未来は明るいぞ」

●蜘蛛の館
 見慣れない姿にイレギュラーズ達は首を傾げた。
「特異運命座標の皆様、初めまして。私はミリタリアと申します、以後お見知りおきを。
 先日ローレットの情報屋として名を連ねる事となりましたが、皆様は特に気にせず依頼を遂行して頂ければと思います」
 黒スーツに身を包んだ『完璧なオペレーター』ミリタリア・シュトラーセ(p3n000037)と名乗る情報屋の女性は卓へ優雅に資料を並べて行く。
 イレギュラーズの誰かがその後ろ姿へ声をかけようとした。
「あの……」
「今回の依頼主は最近王都で開店したデパート、『キノコノサトー』の支配人です。皆様に要請されたのは対象人物の誘拐もしくは潜入ミッションです。
 場所は同じく王都にある高級商店街『トーポッ商会』の所有する蜘蛛の館と呼ばれる、多重高層建造物。つまり塔です」
 サイドテールをぶるぅんと振って踵を返して、ミリタリアは資料に書かれた一文を指でなぞった。
「この館、ないしは塔内の構造は地上25mの五階までは窓が無く。裏口に該当する物はありません、探せばどこかルートが見えるのかも知れませんが、そこは皆様にお任せします。
 塔の正面入り口には昼間は大勢の憲兵や一般警備兵が立っていますが、夜間は商会の雇った傭兵しかおらず。必然的に潜入は深夜の時間帯となります。
 塔内部の構造、様子に関しては資料を。戦力詳細としては白兵戦に長けた警備兵が入口の三人と内部の『螺旋階段』『連絡通路』『各階廊下』にそれぞれ10人ずつ配置されているようです」
 ヤバい。なんか真面目だぞこの情報屋。
 というかずっと言いたいことがあるのだが、一向に隙を見せてくれないミリタリア。何と戦っているのだ。
「このミッションで重要なのは、彼等との戦闘で多大な被害をもたらすより、最重要ターゲットとなる『アクダイカン・トーポッ』です。
 彼を連れて塔内を脱出、或いは自白させる事で今回のミッションは成功となります」

「自白って、そもそも何故その男を狙うんだ? どう見ても公の場に出てるタイプの人間だが……」
「かつてタケノコノヤンマーという商店街、商会が存在した事はご存知でしょうか?」
 一同は曖昧な反応を示した。
「それら商会を潰して吸収したのが現在のトーポッ商会です。彼等は勢いのある商会として名前が挙がっていますが、
 その裏では商会に属する店舗や一団を非人道的かつ法に反しない方法で操っているのです。
 配下となった前商会の幹部の娘達を売上金の献上する事でスライムバスと称した、接待行為など下衆なやり口が調査で分かっています」
 それでも表向きの決定的な証拠はありません、とミリタリアは頷いた。
「依頼主のオーダーは『あの卑怯者の悪事を暴く手伝いをして欲しい』、とのことです。キノコノサトー商会との繋がりができる良い機会です、悪い事は無いと思いますが?」

 そう言ってミリタリアは引き続き説明と情報の提供を行った後、やはりイレギュラーズ達に一切の隙を見せず立ち去って行った。
「……いいのかなぁ」
 彼女の後ろ姿を見送りながら誰かが呟く。
(最初の顔見せとしては完璧でしたね)
 などと背を向けて静かにドヤ顔をかましている彼女、ミリタリアは最後までスカートの後ろが破れた事に気付いていなかった。

GMコメント

 皆様初めまして、ミス・ちくわと申します。
 以下情報です。(今回のOPでの描写は全て形を変えて参加者の皆様に伝わっている内容となります)

●依頼達成条件
 アクダイカン・トーポッの誘拐、または悪事を暴いた内容を持ち帰る
●明確な失敗条件
 アクダイカンを殺害、重傷を負わせる

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●潜入における依頼主からの支援
・多額のGOLDが入った革袋

●蜘蛛の館
 40m四方の塔の形状をした多層建築の館。中央にある吹き抜けの螺旋階段は頂上の10階相当まで伸びており、階段の幅は3m。
 警備兵は入口に3人。1階の螺旋階段前に10人。連絡通路とその先にある各階廊下に10人ずつ配置されており、いずれも接近戦を得手とする傭兵の為、正面戦闘は難度が高いと思われます。
 潜入ルートは情報屋のミリタリアが放った偵察者の報告(冒頭OP)を元にして皆様にお任せされます。
 潜入、誘惑、或いは皆様のスキルを用いて上手くミッションに当たって下さい。

●敵エネミー
 警備兵は無名の傭兵団のようです。彼等の生死は問いません。
 特筆する能力やスキルはありませんが、いずれも至近戦闘が得意なステータス構成となっています。囲まれた場合は苦戦する可能性があります。

●アクダイカン
 最重要ターゲットです。彼を連れて塔内を脱出、或いは彼の悪事を暴く内容を持ち帰る事で依頼は成功となります。
 仮にも表で顔の知れた、それも明確に法を犯していない商会の主です。重傷を負わせたり殺害してしまう事は今回の依頼主には処理出来ません。
 どうにかして自白させたり彼が悪事を行っている証拠が必要なので、皆様の手腕が問われます。

 以上となります。

 善良な商売をしている商人達の顔に泥を塗るトーポッを倒しましょう。最強なのはキノコ派なのだ。
 イレギュラーズの皆様のご参加をお待ちしております。

  • その点トーポッて凄いがスニークさせて貰う完了
  • GM名ちくわブレード(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年07月29日 22時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

鏡・胡蝶(p3p000010)
夢幻泡影
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
リノ・ガルシア(p3p000675)
宵歩
メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
アーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)
シティー・メイド
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
Ende-r-Kindheit
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
沁入 礼拝(p3p005251)
足女

リプレイ


 紳士、『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)は館の正面を守衛する男達の前へ進んだ。
 男達は目の前の寛治より、その背後で待たされている美女達へ視線が注がれている。
「私は新田寛治と申します、既にあなた方の主人には話を通していますのでどうかご確認を」
「アンタがそうか。いいぜ、通りな」
 男はすんなりと正面扉の鍵を開錠して開けた。
「流石はトーポッ様に雇われている方々だ、警備と連絡が行き届いている様は実に素晴らしく思います」
「ハッ、まあそうだろうな! 階段はちぃと段差が急だ、向こうの女どもに伝えな!」
「これはご丁寧にどうも」
 寛治は小さく微笑んで礼を言うと、館の正面で互いの身を寄り添うようにしている美女達へ手招きをした。


 今回の作戦はシンプルである。
 事前に寛治はトーポッ商会に属する商人に近付き。話を合わせながら自身も傘下に加えて貰うべく土産を献上したいと申し出たのだ。
 当然、他言無用である筈の話をされれば寛治が只者ではないと商人は勝手に悟る。約束を取り次ぐのに手間はかかるかもしれないが、面倒に巻き込まれるのを避ける為なら仕方ない。
 故に、この夜のアポは取れたのである。
(と、ここまではスムーズに事が運びましたか)
 寛治は一階の内部の様子を記憶に留めておく様に視線を回した。
「ここからは俺が案内するぜ、オッサン」
「ええ、ありがとうございます」
 トーポッ程の男ならもう少し厳しいチェックが入るかと思われたが、寛治達はそのまま中央の螺旋階段へと案内された。
 静かに男達の後をついて行く女性陣にも拍子抜けしたような空気が流れる。
(見てる見てる、これ怪しまれてる訳じゃないのよね?)
(それもこれも時の運かしら、まぁやるだけのことをやるしかないわね)
 階段を行く足音に紛れて小声の会話を交わす『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)と『宵歩』リノ・ガルシア(p3p000675)の二人。
 片目を閉じるレジーナの瞼裏には分割された映像が見えている。彼女が使役するファミリアーからの視界だ。
 螺旋階段を登っているイレギュラーズ達を警備兵達は女日照りからガン見して追っている。
 もう片方の映像では豪奢な部屋を床(というのも彼女が使役しているのが鼠だからなのだが)から見上げていた。
(ターゲットの様子は?)
(通りがかった女の子を連れ込んだ所ね、マッサージにしてはやらしい手つき)
(そんなことをさせている男のものは潰しても許されるんじゃないかな……)
 レジーナの言葉に信じられないといった表情で軽蔑の声を漏らす『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)。
(ったく……! ちゃーんと成敗してやらないとネッ!)
 螺旋階段を上がりながら、『寄り添う風』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は階下の警備兵達を見下ろして言った。

「中々上まで行きますね。何階なのでしょう」
「あん? ああ、なんか旦那が来るっつーんで最上階の客室へ案内するんだとよ。VIPだな、『蜜』入りさせる女が七人も来るなんざ初めてだしな」
「それはとても光栄なことですね」
 警備兵がジロジロと見て来るのに対して寛治は笑顔で応じる。
 そうしている内に、少し足が疲れを感じ始めた頃に彼等は最上階の十階に到達した。
(……この高さ、窓からの脱出は無理ね)
 有り得るとすれば緊急時か。
 ある程度の動向は掴んでいたものの、事前にレジーナのファミリアーを内部に忍び込ませるだけで精一杯だったのだから最低限相手の行動が分かるだけでも幸運である。
 最上階に到着した彼等は連絡通路を抜け、開けた回廊の奥にある客室へと導かれる。
 音を立てない様に扉を開ける警備の男が手で示した先では、通信機らしき機械を通して寛治達が訪れた事を聞いたのだろう。
 館の主である『アクダイカン・トーポッ』がソファーに体を沈ませて、衣服の乱れた侍女らしき女を部屋から追い出している最中だった。
 その姿を見送るイレギュラーズへ声がかかる。
「入りたまえ、我が商会の客人よ」
 鋭い眼は戦士や魔種とは違う。商人としての磨き抜かれた刃を思わせた。

●商談という名の
 商人同士の話に欠伸をしながら入り口の扉の前に立つ、警備の男は部屋の後ろに並ぶ美女達に目を奪われていた。
 スカートから覗く美脚、時折警備の自分にすら向く熱い視線。メイド服の女達など随分大人しい物だと、ここ数ヶ月ここへ連れられて泣き叫ぶ少女達を見て来た男は思い出す。
 微妙に物理的に浮いている少女は『飛行』の技能でもあるのか。レジーナをまじまじと警備は眺めている。
 そんな彼は置いておいて。
「ファンド……?」
 トーポッが手の中のグラスを揺らしてワインの香りを楽しみながら、目の前の紳士に首を傾げて見せた。
 それに対して寛治は名刺をテーブルへ置いたまま鞄から取り出した資料を並べて行った。
「ええ、一人では負担が重すぎる企画も、皆が少しずつ力を合わせることで実現する事が可能になる。
 そのファンドの特長を活かし、企画立案、賛同者の募集、適切な資産運用を行い、全ての関係者の利益を最大化すること。
 当社は「Pleasure for all stakeholders」をミッションとし、皆様に喜ばれる企画をご提供いたします」
 身振り手振り、そんな物は三流のやる事。具体的なプラン、所詮は自信の持てない『計画倒れ』を誤魔化す詭弁。
 本物の一流とは堂々と脚すら組んで真っ直ぐに相手の眼の奥を見据えて語るのだ。寛治はこの時、正しく目の前に居るトーポッと同じ高みに座して語っていた。

「……なるほど」
 トーポッは静かに目を閉じて笑った。
(やべぇ……多分なんか凄い画期的な感じのアレなんだろうが分からん……)
 アクダイカン・トーポッ。彼は実は馬鹿だった。

「素晴らしい。我が商会には是非君のような人材が欲しいと思っていた所だ(とりあえずやらせてみたら分かるかな)」
「それは奇遇ですね、実に光栄です」
 只者ではないのは間違いないだろう。そう思い、頷いたトーポッは寛治と熱い握手を交わした。
 その先は恐らく正式な商談、或いは契約の話となるだろう。場合によってはこの後ずっと第三者の介入もあり得る。寛治は話を背後の仲間達に向けようとし――
「それで、そちらが先日君が私に献上したいと謳っていた美女達。本当に彼女達を? むふ」
「むふ?」
「ムォッホン! ……失礼」
 首を傾げる寛治だが、さりげなくその手が背後の仲間へ合図を出した。
「この街でのビジネスを考えるなら、顔役に筋を通すのは当然の事。それに、彼女達については既に十分『楽しんだ』ので」
「ほうそれはつまり……ん?」
 ふわり、と。トーポッの目の前に躍り出た姿にその場の誰もが息を飲んだ。
「どうか私に御慈悲を……。賢い方、貴方に触れられるのが私の悦びです」
「お、ぉ……君の名は……?」
「沁入礼拝と申します、どうかお見知り置きを」
 深いスリットの入ったスカートの裾を指で摘み上げて、『足女』沁入 礼拝(p3p005251)は甲斐甲斐しく頭を垂れる姿を見せた。
 ただ、それだけの筈なのに。トーポッはそれまでに感じた事の無い何かを彼女に感じた。手が、誘われるがままに美脚へと伸びる。

 主に礼拝の白く滑らかな曲線を描く、その美脚に。
(どうしたことだこれは……!! め、目が離せない。あの、あの足で踏まれ、蹴られ、この娘に冷ややかな目を……かの暗殺令嬢を写真で見た時の様な衝撃……! 私はあの時から脚への欲情を秘めて……!)

「あの……?」
 小首を傾げる礼拝を他所に、何かに覚醒したトーポッのステータスがなんかすごい上がった。
 今にも彼女の白い脚へ舌を這わせて押し倒しそうな勢いの大柄な悪党(バカ)に、何となく察した寛治が眼鏡を上げながら察した。
(……これだけの人数に誘惑をされてオーバーキル、ということでしょうか)
 思わず止めようとするが、逆に止まらない。
「ああ、素敵な殿方。私を好きにして……お楽しみくださいませ……」
「ねぇ、可愛がってくださいな。ステキな方に所有されることこそ女の喜びでしょう?」
 『夢幻泡影』鏡・胡蝶(p3p000010)が音も無くソファーの後ろから寄り添い、リノが甘える様に擦り寄って行く。
 それまで礼拝の脚線美に見惚れていたものの、これを無視出来るわけもなく。遂にそれまで保っていた威厳が最低の笑顔で崩れ去った。
「彼女達は胡蝶、リノ、そしてこちらは楽士の技能を有しています。ミルヴィと申します、彼女は演奏も得意ですが……勿論その可憐な声はさぞ『良い声』として楽しめるでしょう」
「お見知り置きをっ♪ ふふ、一曲如何ですか?」
 アンティークギターを鳴らして前へ出るミルヴィを「おおっ」と警備の男から感心の声が上がる。
 瞬く間に部屋にムーディな曲が流れ、彼女から聞こえる歌が、ただ色のある雰囲気から気分が高揚する空間になった。
「そして、こちらの三名はいずれも器量良くルックスやスタイルも抜群。
 小柄なお嬢さんに至っては飛行の能力も持っているなど、彼女達は皆ただの客商売をしている者達とは違い一芸に秀でています」
 寛治の紹介にメートヒェンがびくっと反応し、同じくメイド服の『シティー・メイド』アーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)は丁寧にお辞儀した。
 望んでこの場へ来た、と寛治に話を聞いていたトーポッはメートヒェンの様子に眉を潜める。
 だがこの幻想でそう珍しい事ではない。望んで身を差し出すような結果に落ちた商家や貴族というのは、人知れず意外な場で見つかる事があるものだ。
「……素晴らしい手腕をお持ちの様だ、非合法でもないのにそれだけの娘達を集め私に献上して下さるとは。
 その期待に是非応えたい。ニッタ氏のお望みは我が商会の傘下に加わる、それ以外は事前に話があった通りでよろしいかな?」
「ええ。是非……私も館の名物の『蜜』を味見させていただきたく。それともう一つ……私は『複数で楽しむ』のが好みでして。トーポッ様もご一緒に如何でしょう?」
 重量のある音と共にテーブルに置かれたのはGOLDの詰まった革袋である。慣れ親しんだその音に相手もまた直ぐ理解した。
 だが。
「それは出来ない。まだそれをするにはニッタ氏と親睦を深めなくてはね」
(は、はやくこの女達をめちゃくちゃに……いや、まずは脚! 足! 踏まれるか? 舐めるか? いや!! 先ずは撫でる、肌が赤くなるまで撫でよう!!)
 馬鹿過ぎる彼の身に起きている事を説明するなら、思考する前に背中! 腕! 足元! 三ヵ所から押し寄せるフェロモンと艶かしくも美しい誘惑の数々に頭の中の方が滅茶苦茶になっていたのだ。
「だが『蜜』の味見、用意は出来ている……私は隣の部屋に行こう。ニッタ氏はこのままこの部屋を使ってくれていい。何ならそこの警備を交えて楽しんでみてはどうかな」
「マジかよ、ボス! ひょっほう! やったぜ!」
「……! では、是非そうさせて貰いましょう」

●色香に飛び入る毒の虫
 密室で交わる吐息は色香と欲望を表していた。
「アクダイカン様、これまでどんなに悪いことなさったのかしら」
「悪い事ぉ? ふふっ、私の話に興味があるのかね?」
「えぇ……それはもう」
 艶っぽく耳元で囁き、トーポッに腰を抱かれている胡蝶が間近で妖艶に微笑んで見せる。
 右から左へ首を回せばリノが豊満な肢体を密着させて甘えて来る姿が。肩口から覗く黒豹の尻尾がまた野性味とクールな色気を感じさせる。正に両手に華である。
 そして、目の前には礼拝がその足を際どい所まで見せて、白い手を伸ばして男の顔へ添えられた。
「折角の夜伽ですもの……賢い方のお話を聞きながら、私達を沈ませて下さいまし……」
「お、ぉぉぉ……っっ」
 唇が触れそうな、その刹那。息を飲んだトーポッが黒い月をその眼中に見た瞬間。
 彼の意識が泥水に飲まれるかのような、眠気とは異なる重みに引かれた。

「…………」

 それまで聞こえて来ていた生々しい吐息が鳴り止む。
 色香に呑まれて脆弱な精神力と化した男は果たして、礼拝の瞳に映し出された魔性に催眠状態となっていた。
「あなた様のお名前は?」
「アクダイカン・トーポッ」
「私の名は?」
「レイハイ……」
 リノと胡蝶が顔を見合わせた。
「成功かしら、ね」
「見た目ほど苦労しない性格で助かったわ、随分いやらしい性根だったみたいね」
 と、その時。
 彼女達の部屋の隣にある客室から物音が鳴り響いた。恐らくは花瓶か何かが割れたのだろう。
「向こうも成功したのね」
「お疲れ様礼拝。後はじっくりとお話しましょう、私達は」
 胡蝶は頬杖を突きながらトーポッへの問答に耳を傾ける事にした。

 とても鮮やかな光景に寛治は思わず股間を守る動作に入った。
「そんな所、触っても良いですが……後悔してもらうよ!」
「この乙女の敵めっ!」
 クロスアタック。クロス……ブレイカー。
 メイド達に迫っていた警備の男は背後のミルヴィと眼前の彼女に振り上げられた蹴りに股間ごと打ち上げられ、天井に叩き付けられて死んだ(彼の息子が)。
 寛治が抱き寄せていた『蜜』の少女達は目を丸くしてそれを黙って見ている事しか出来なかった。
「終わったみたいね、こっちも礼拝の魔眼で上手く聞き出せそうよ。はい、通信機ね」
「お疲れ様でしたリノ様。では聞き取りが終わるまでは予定通りに進めましょう」
「じゃ、アタシは女の子達連れて廊下の奴等を黙らせて来るネ!」
 レジーナ、アーデルトラウト、メートヒェンが動き出す。彼女達は何か決定的な証拠になり得る物品を探す役目なのだ。
 そしてミルヴィは通信機で警備兵達を逃走する際に向けて誘導しようとする。
「『私だ、トーポッだ。緊急招集! 十階までの警備を各客室へ集中、窓を見張れ!』」
 彼女の声は先ほどまで聞いていたトーポッの物と全く同じ声音。話し方だった。
 所謂、声真似(クローンボイス)の技能である。
 突然の緊急招集に通信機からはあちこちから説明を要求する声が重なる。だがミルヴィが一喝すれば疑問の声は聞こえた物の、直ぐに静かに警備達は従うのだった。
「オーケー。これで問題ないね、じゃあ後は……」
「ええ、探しましょう」

 さっきの通信は何が起きたのか問い質すべく、十階の警備兵達は客室へ向かっていた。
「お暇なら少し遊びましょうよ、トーポッ様は他の子とお楽しみなの」
「トーポッ様からのご命令で、貴方がたのお相手をしろと」
 しかし、客室の前に立っていたのは催眠による聴取を終えた礼拝とリノの二人だった。
 最初こそ彼女達をどかそうとする者もいたのだが……
「いや待て、この際どっちでもよくねーか? お前らだって見ただろ! 主人があんな美人を毎日連れ込んでるの!」
「だが契約が……」
「目の前に美女吊るされて黙ってられるのかよお前は!!」
「無理だ!!」
 実は既に何人かが礼拝の魔眼による催眠を受けていたのだが、こうなってはもう止められない。
 リノ達はその場にあった客室へ大勢の警備兵と連れ込まれ。その様子を見送った、廊下の天井に張り付いてて気配を立っていたアーデルトラウトが降りて来る。
「では、礼拝様のお話し通りに『隠し金庫』を開けに行きますか」
 メイド服の裾を翻して、客室とは違う無骨な木扉の部屋へ彼女は入って行った。
 掃除用具、或いは何らかの『道具』を納めた物置部屋か。カビ臭く薄暗い中には雑多に木箱が置かれている。
 その奥で彼女が向かうのは窓枠の下。小さな穴を見つけてアーデルトラウトは礼拝に教わった通りに、持ち込んだペンで隠し戸をスライドして開いたのだ。

「……! これは……」
 埋め込み式の金庫。
 これでは証拠品か、或いは裏金の類を回収する為に開錠の技術が必要となるだろう。少なくとも力技で持ち出せる物ではなかった。
 彼女は惜しくも手ぶらのまま部屋を出た。

●イレギュラーズエイト
 暫くして、警備兵達の持つ機器に突然新たな通信が入った。
『総員、現在時刻を確認しろ』
 指示に首を傾げながら、男達はそれに従い部屋の時計や懐中時計に目を通す。
 その動きを、彼等と共に部屋で舞踏で楽しませ魅了していたリノと礼拝は見捉える。仲間からの合図である。
「あら、ごめんなさいね。ちょっと戻らないといけないみたい」
「名残惜しいですが……また、戻って来ます」
 またボスか! という非難の声が客室に上がるが、これ実際に彼等の雇い主が起きていたらどう言い訳するのだろうか。と気になるリノ。
 それはそうと、彼女達が部屋を出た後で更に通信が入った。
『客のお帰りだ。土産に「蜜」を渡しているのでくれぐれも粗相のないように』

 麻袋を軽々と肩に抱え、悠然と正面入り口から寛治は出て行った。
 扉前にいる警備兵にからかいの言葉は掛けられたが、特に怪しまれている様子は無かった。

「money maketh man.しかし、manners maketh manもまた、忘れてはならない」
 街を覆う夜闇の中へ進みながら、彼はいつの間にか脱出を果たした女性達と並ぶ。
 彼女達の衣服の胸元に加え手や傍らには、『蜜』の少女や調度品、羊皮紙らしき物が見える。
 夜の街を八人のイレギュラーズは去って行った。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 成功となりました!
 持ち帰った品々は確たる証拠品としては弱かったのですが、アクダイカン本人の確保によりのちにキノコノサトー商会が尋問と調査を進めた事で彼の悪事は明るみに出ました。
 貴族や各商会を相手に取引をしてきた彼が非人道的行為によってブランドの価値を下げた事に、利用客である貴族達が黙っている筈も無く。間もなくトーポッ商会は潰れます。
 それによってキノコノサトー商会へ人が流れてまた一騒動起きるのですが……それはまた別の話。

 皆様の活躍により、アクダイカンは『スケベ卿』と罵られる様になりました。
 お疲れ様でしたイレギュラーズの皆様。
 またの機会があれば再び皆様の素敵な姿を描きたく思います。

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