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シナリオ詳細

最終戦だけ味わおう
最終戦だけ味わおう

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●前回のハイライト
「くそっ、ここまでか!」
 剣を杖がわりに身を預け、それでも敵を睨めつけながら悪態をついた。
 皆、疲労困憊だといった有様だ。
 敵も同様に消耗しているが、このまま戦い続けても先は見えている。ひとり欠け、そこから総崩れになるのは自分たちの方だろう。
「だが、追い詰めた。次だ、次こそは決着をつける! お前を必ず葬ってやる!」
 仲間と支え合いながら撤退を開始する。
 追ってはこれまい。
 そのために、ここまで犠牲を払ってきたのだ。
 溢れ出る焦燥感を奥歯で噛み、深くのみ込んだ。

●ついに因縁のラストダンジョンだ
「やあ冒険者諸君! ついにこのシリーズも大詰めであるな! あのにっくき殺人ロボット、T-04をよくぞ追い詰めた! ここまでくれば、あとは溶鉱炉の間の封印を解いて、きゃっつめを灼熱の底へ突き落と……おんやぁ、見ない顔であるな?」
 依頼の説明を受けるべく、一部屋に集まった君たちを前にして、そのハイテンションな男性は不思議そうに首を傾げた。
「ミス・ギルド員くぅん! 一体どうなっているのかね?」
 男性が振り向いた先、彼とは対象に落ち着き払った少女は、よくあることだとばかりに返した。
「申し訳ない、ミスタ・ルマン。前回と同じ冒険者を揃えることができなかった」
「ぬぅーむむむ……いや、仕方あるまい。シリーズシナリオでもないのに続きものをやろうとした我輩にも落ち度があろう。何せ抽選制だからな」
「ご理解いただけて何よりだ。しかし、彼らは貴方と初対面だろう。自分だけで理解できる語句を混ぜるのは控えていただきたい」
「ぐぐぅ……しかしそうなれば、ちと面倒だが互いの紹介と経緯説明から始めねばなるまい?」
「承知している。諸君、彼が依頼人の―――」
 この、テンションの高い男は吟遊詩人のメタ・ルマン。今回の依頼人だ。
 彼はこれまで、T-04という敵対生物の討伐依頼を何度も出している。その度に悲劇があり、喜劇があり、冒険があり、浪漫があった。
 T-04に致命傷を与えることは難しく、何度も撃退だけにとどまっていたが、前回の依頼でようやく、超高熱であれば完全に破壊することが可能だろうという結論を得たのだ。
 そして、某ダンジョンに押し込めることに成功する。
 あとはこのダンジョンの奥にある溶鉱炉の間の封印を解き、T-04を誘導し、その先へと突き落とせば、これまでの因縁に終止符が打てる。はずだった。
「しかぁし、このラストシナリオにおいてだぁれも通らなかったのであるな……」
「依頼がご破算になることはないので安心して欲しい。諸君は早速、某ダンジョンに赴き、溶鉱炉の間の封印を解いて、T-04をその奥に突き落としてくれ。そうすれば依頼は完了だ。難しく考える必要はない。とにかくT-04を攻撃してくれ。封印も、誘導も、突き落とすのも、攻撃していればなんとかなる。そういうものだからな」
「ぶっちゃけHPトリガー制であるな!」
「意味不明なワードでひとを惑わすのはやめてくれないか」
「今回のシナリオには我輩も同行しよう。これまでのシリーズはまとめて歌物語にする予定であるからな! しかし、そうなると少し問題がある。諸君……因縁を適当にでっちあげてそれっぽく戦ってくれんかね? 具体的にいうとノーマル4回、間に番外編としてイベシナ2回挟んだくらいのテンションでお願いしたい。最後の最後で別の冒険者が倒しましたオシマイでは、ちと格好がつかんのでな」
 なんだか、面倒なことになった。

GMコメント

皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。

どうやら、長い因縁の末の依頼に入り込んでしまったようです。
しかし、参加者が確定した以上、それを覆すことは致しません。
この最終戦を、なんとしてもクリアしてください。
ただ、そこでひとつだけお願いがあります。
依頼人は、これまでの依頼を歌物語としてまとめたいようで、盛り上がりが欲しいとのこと。
そこで、何かしらの因縁をでっちあげ、それっぽく攻略してください。

【用語集】
●吟遊詩人 メタ・ルマン
・テンションの高い男性。
・今回のシナリオに同行する。
・時々、よくわからない語句を台詞に散りばめる癖があるが、理解できない。してはいけない。
・戦闘には不参加。
・でも口出しはする。「ハイここで因縁めいたセリフ、ね!」とか。

●殺人マシーン『T-04』
・親指立てて溶かされていく役。
・人型の鋼鉄で出来た人間ではない何か。
・ひとの形をしていますが、心はなく、ただ殺戮を繰り返す兵器。
・外観は筋肉モリモリマッチョマンの変態。
・これといった弱点はありませんが、逆に言えばどんな攻撃も等しくダメージを与えるため、ひたすら正面から攻撃するというのが最も友好です。
・攻撃ダメージで完全に破壊することは困難です。よって、超高熱による融解が提案されています。
・TEA-04の略称です。

●某ダンジョン
・封印された溶鉱炉の間があるダンジョン。
・何に使うための溶鉱炉なのかはわからないし判明しないのでそういうものがあるとみんなほんわかインプットしている。

【今回の作戦】
①ダンジョンに侵入し、T-04と戦闘開始。
②戦闘中、隙を見て封印の間を開放。(T-04にダメージを蓄積させるとオート進行)
③その部屋までT-04を誘導する。(T-04にダメージを蓄積させるとオート進行)
④溶鉱炉に頑張って突き落とす。(T-04にダメージを蓄積させるとオート進行)

  • 最終戦だけ味わおう完了
  • GM名yakigote
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月05日 21時55分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

亘理 義弘(p3p000398)
義に篤く
ユリウス=デア=ハイデン(p3p000534)
破顔一笑
レイン・ラディア・クレイドル(p3p001124)
勇者魔王
あずき・フェル・守屋(p3p001476)
見習い騎士
雷霆(p3p001638)
戦獄獣
枢木 華鈴(p3p003336)
ゆるっと狐姫
八卦(p3p003829)
宵越しの金と残機は持たない
レスト・リゾート(p3p003959)
遠足ガイドさん

リプレイ

●気持ちを切り替えていこう
 長く苦しい戦いだった、ってのは最終章の冠言葉としてはありきたりだ。だが想像を掻き立てる装飾語で彩るよりも、慣用句で表すほうが良いこともある。例えば、実際には装飾が存在しない時なんかがそうだ。

 殺戮兵器。
 字面だけでここまでわかりやすい悪もそうそうあるだろうか。
 名前にこの冠詞がついているだけでもう倒さなければならない相手だと分かる。
 放置していれば良くないことが起きるに決まっていると断言できる。
 そんな非常にわかり易い言葉だ、殺戮兵器。
 よって今回はこれを討伐するのが任務となるわけ、なのだが……
「厄介な仕事を引き受けちまったもんだな」
『任侠』亘理 義弘(p3p000398)が嘆息する。
「まさか既に何度も戦って、敵を追い詰めた後だったとはよ。そして、それを詩に纏める奴がいるとはな……」
 受けた依頼に、たまたま『これまで』があったというのは想定外だ。
 その上で、その『これまで』が重要なのだなどと。
「まあ、仕方ねえ。柄じゃねえがよ、敵は実際にいるわけだし、依頼主に付き合ってやるかね」
「まあ、なんだ」
『破顔一笑』ユリウス=デア=ハイデン(p3p000534)がちらりと同行者に視線を向けた。
 ルマンは道中でもこういった因縁が、ああいった必殺技がと細かな注文をつけている。
「どこの世界に行っても、変わり者はいるもんだなぁ」
 そうとしか言い様がないのだろう。
 言葉の意味は時折、理解不能な物を含んでいる。受付嬢にも同行してもらうべきだったろうか。
「ともあれ、これで終わらせようか。ハッハッハ!」
「僕は、街でT-04に遭遇した。別の依頼の帰りで巻き込まれ重傷だった僕を、その時T-04は何故か見逃したんだ」
 道中、『勇者魔王』レイン・ラディア・クレイドル(p3p001124)がぶつぶつと設定を作るその横で、ルマンが一言一句をメモしている。
 後で書き起こすときの資料になるのだろう。
「本当に殺戮の機械でしかないのか?」
「良い。最終回でその葛藤、実に良い。あとはラブロマンスなどあればグッドであるが!」
「初陣です! でも最終決戦! ですね」
『見習い騎士』あずき・フェル・守屋(p3p001476)の言葉は何やら矛盾しているが、このシナリオ上ではまるで問題がない。
 何せこれは数々の死闘の果ての決着の物語なのだから。
「物語が唄になったり、演技指導があるみたいですが、ボクがすることは変わらないのです!」
 きっと、武器も曰くの付いた格好いい名前で呼ばれたりすることだろう。
「騎士として、戦士として、立ち向かいます!」
「因縁が無くとも、戦いが有ればそれで良い。この戦場こそ俺の望みだ」
 殺戮兵器。『漆黒の赤焔』雷霆(p3p001638)にすれば非常においしい相手だろう。
 戦うだけの機械なら、煩わしいことは言わず、戦うだけに没頭できるのだから。
 それでもこれが、この依頼が成り立つ経緯を思えば、胸に渦巻くものがなくもない。
「しかし敢えて多くを望むなら、戦闘狂として、戦場に立てなかった者達の無念は晴らしてやりたい」
『くるくる幼狐』枢木 華鈴(p3p003336)が何かを考えている。
 何か、とはつまりルマンより依頼されている因縁のことだ。
 危険な相手であるT-04を倒さねばならないのは最優先だが、依頼された内容はそれだけではない。
 ルマンの詩を無事に完成させてこそ、依頼の達成と言えるだろう。
「T-04によって殺された人の仇討ち。色々お世話になって、まるで家族のようにわらわに接してくれていたのじゃ……という設定で行くのじゃ」
『宵越しの金と残機は持たない』八卦(p3p003829)の中で、これまでの思い出が蘇る。
「T-04の作った殺人料理を客が食べる前に阻止する配膳ギャンブル……T-04の悪用を狙う組織の工作員を暴く裁判ギャンブル……」
 因縁をでっちあげてと頼んだのはこちらなので何も言うまいが、それは果たしてギャンブルなのだろうか。
「そして今、目の前にあるギャンブル。T-04を落とすか私が落とされるか……名付けて『溶鉱炉デスマッチギャンブル』」
「あらあら~、なんだか因縁めいたお話に迷い込んでしまったみたいね~」
『夢色観光旅行』レスト・リゾート(p3p003959)がぽわっとした感想を述べる。
 あーでもない、こーでもないと頭のなかで『これまで』を彩るお話を作っては消していく。
 専業作家ではない身にすれば、いちからでっちあげるというのは存外に難しい。
「だけど、これもイレギュラーズのお仕事だもの。精一杯演じて見せるわ、因縁めいた戦いを、ね?」
 ルマンの案内を受けた先、開けた道に出た。
 いかにもダンジョンでございと言わんばかりの洞窟が現れる。
「さあこの先だ。色々と注文をつけたが、やつは強い。よろしく頼むぞ、諸君」

●来たぞ決戦の地
 勇者のひとりが愛剣を掲げ、名乗りを……え、前回と勇者の名前が違うって? あー、そうだった、かな? まあ、そんなときもあるよ。

 いくつかのフロアをこえると、その部屋にやつは居た。
 筋骨隆々の肉体。濃いサングラス。
 どこかの田舎できこりでもやっている元大佐かなにかにしか見えないが、こいつがT-04なのだろう。
 これまで、数々の苦渋を舐めさせられてきた。
 時には撃退し、時には砂地を噛まされてきた。
 だが、それも今日で終わる。
 おあつらえ向きに封印の間の扉を背にして立ちふさがるやつを前にして。
 彼らは己の武器を手にした。

●そして因縁の戦いは
 迫りくる剣が私を打ち据える。金属がぶつかり、火花が散る。彼が何か因縁めいたセリフを吐いた。それが己への鼓舞になったのか、剣を握る握力が僅かに増したのをスキャナが捉えている。困ったことに、全く身に覚えがない。

「てめぇを倒す為にこの一年、俺は自分を追い込んできた。その成果を見せてやる……」
 義弘は一度、T-04に完膚なきまでに叩きのめされた苦い記憶がある。
 未熟だった、といえばそれまでだ。
 あの頃は、自分ひとりで戦えると信じていた。孤高の強さを確信していた。
 だがこの殺戮兵器は、それをあざ笑うかのように彼を一蹴したのだ。
 仲間の動きに反応し、視線の反れた敵の顔を殴りつける。
 こちらに意識が向いたところを、さらに仲間が追撃する。
 もうひとりではない。
 仲間というものを信じている。
 傷つけられた誇りを取り戻すために来たのではない。
 新たな誇りに磨きをかけるためにここにいるのだから。
 ここで隣りにいるルマンから差し出されるカンペ。
 戦闘に関わらないっていうのは攻撃もされないと同義語だっただろうか。
「T-04……てめぇとの因縁もこれまでだ。てめぇと出会ったからこそ、俺は強くなれた。
その事には、感謝するぜ」

「嘗て貴様と戦って受けた傷……今もこの服の下で疼いているぞ」
 ユリウスも同じく、距離を詰めての肉弾戦に出た。
 T-04を殴りつけ、その拳に金属の硬い感触を感じる。
 痛みを訴える神経に、思い起こされる敗北の記憶。
 これを、人を殺すように作られた兵器を、野放しにしてしまったという事実。
 恥よりも人命を優先すべく、負けたことを表明し、出現区域周辺に危険性を伝えて回ることになった。
 おかげで、人的被害は最小限に抑えられたものの―――
「あの街に迷惑をかけた分、今回で返させてもらう……ということにしておこうか。ハッハッハ!」
 思い切り打ち付けられたT-04がバランスを崩す。
 そこにチャンスとばかり、猛攻を浴びせた。
 それを必殺技として謳うつもりなのか、ルマンがスケッチを開始する。
「よし、そこで決め台詞である!」
 注文も飛んできた。
「どうだ、貴様を追い詰めるために私は鍛えてきたんだ!」

 レインは戦いながらも、T-04の真意を探ろうとしていた。
 依頼人からはずっと、殺戮兵器だと聞かされてきた。
 人間を殺して回るだけの心無い機械だと。
 だが果たして、本当にそうなのだろうか。
 これまでの戦いで、どこか感情めいたものがあるのではないかと思うようになったのだ。
 無論、理由があるからと許されるものではない。
 T-04が大量殺人を犯しているのは事実なのだ。
 それでも、そうあるだけの存在でしかないのだとは納得できなかった。
 そうならざるを得なかった何かがあったのではという疑念が消えず残っていた。
 仲間の傷を癒やしながら、レインは思う。
「魔物にも戦う理由がある。T-04は……」
「おお、その路線も捨てがたい。して、T-04の理由とは!?」
 隣でルマンが興奮しながらメモを書き溜めている。
 その理由とは……
 ……
 …………
 ………………ごめん、思いつかない。

 あずきの場合、他の仲間と違ってT-04の出現当初からこれら依頼群に関わってきたわけではない。
 元はと言えばあずきの先輩がその仕事を請け負っていたのだが、T-04との戦闘で無茶をしたことで大怪我を負い、その代役として参戦することになったのだ。たぶん。
 その大怪我を負った彼は、今も戦いには出られずにいる。最後の戦いに出ると言った自分の安否を願ってくれていることだろう。うん、そんな感じ。
「今まで先輩や、皆さんと一緒して追い詰めたこの瞬間! その硬い身体に阻まれてきましたが、もう今までのようには行かないのです!」
 あずきからT-04を挟んだ向こう側で、ルマンがカンペを掲げている。彼の隣を流れ弾が、余波が通り過ぎるが何食わぬ顔だ。危ない、そこ危ない。
 曰く、『ここでかっこいいセリフ』。
「壊せなくても! 届かなくても! 今まで積み重ねてきた傷は、無駄じゃないのです!」
 スポンサーの注文は多い。

「さあ、誰もが望んだ最終決戦だ。TEA-04よ、お前がばら撒く死すら乗り越え育んできた俺達の絆の力、とくと思い知るが善い!」
 雷霆にとって、戦いこそが身上である。
 争いに生き、爭いに生き、闘いに身を投じるべくして生きてきたのだ。
 だからこそ、彼だからこそ、戦えなかったものたちの無念はよく理解できる。
 闘争の果てに至れなかったものたちの悲願が、決戦の地に立てなかったものたちの切望が、痛いほどに理解できるのだ。
「俺は純然たる戦闘狂として、其の無念を背負って此処に来た」
 戦いを、純粋な戦いを。
 機械だ、だが強者だ。心がない、だが強者だ。ひとを殺して回る、だが強者だ。
 故に争うのだ。
 だがひとつだけ、これだけは果たさねばならない。
 果たしてやらねばならないのだ。
 そう誓ったものがいるのだから。
「約束だ。『次こそは決着をつける』とな。さあ、今こそ決着の時だ! 『お前を必ず葬ってやる』!」

「あの人の仇……取らせてもらうのじゃ!」
 ルマンの言う「ここで必殺技!」に合わせて華鈴がT-04に肉薄し、剣を振るう。
 あのひとが誰かとは聞いてはいけない。みんなも、架空の親戚の生い立ちとか聞かれたら困るだろ。
「例えこの一刀で倒せなくとも、わらわには汝を斬るだけの理由がある……!」
 そう、深く重い、積み重ねてきた理由があるのだ。詳細は聞くんじゃないぞ。それは後でルマンが考えるんだから。
「汝を倒せなければ、わらわはいつまでもあの時のまま……今日こそ、この因縁を断ち切るのじゃ!」
 あの時、いいねあの時。具体的な設定は帰ってから打ち合わせようか。
 既に、封印の間の扉は開いている。
 具体的な描写は避けよう。だって戦闘ログ上は攻撃してただけだしね。
 今はうまい具合に溶鉱炉を背にしたT-04に向けて皆で猛攻を浴びせているのだ。
「こんな事をしても、もうあの人は帰って来ぬ……それでも、汝を許す事は出来ないのじゃ!」

「気分はいつも最終戦! 人生即ち背水の構え! 私あるところにギャンブルあり!」
 八卦がテンション高く叫ぶが、背水というのは気構えを強化するものであって、賭博とは関係がなかったと思う。
 韓信も流石に、ギャンブラーだと評価されたことはあるまいに。
「ファンブル出ても凹まない、クリット出ればお慰み!」
 その勢いはいいのだが、台詞に使えそうなところがことごとくメタい。いや、ひとのこと言えないんだけどさ。
 赤々とたぎる溶鉱炉。距離をおいている今でさえ、その熱は伝わってくる。
 今もT-04にはダメージを与えている。
 だがそれでも、それだけで仕留めきれるとは言えなかった。
 この生物離れしたタフさ。
 故に、この奥へとこの怪物を押し込もうというのだが。
 八卦にとって、これはギャンブル。落とすのか、落とされるのか。
「え? 負けたら? え、ええ勿論飛び込みますよぉ……」
 鉄骨から落ちるより確実に死ぬ。

「おばさんはとある街に旅行に来ていたの。そこには、とても美味しいパンケーキを出すカフェがあったのよ。だから、とても楽しみにしていたのだけれど……」
 レストの因縁は、なんというか空気感の違いを感じる。なんか流れ変わったな。
「T-04が現れたと聞いて、街の住人はみんな避難してしまっていたの。おばさんは前日の夜から何も食べずに楽しみにしていたのに、ひどいお話よね」
 よーし、『ひどい』がかかってる修飾対象がなんか皆と違う感じだぞ。いいのか、食べ物の恨みは怖いで締めくくっていいのかこれ。
「こんな悲劇を繰り返さないためにも、T-04にお仕置きをしなければいけないわ、と決意したの。やっとここまで追い詰めたんだもの、仕留めてみせるわ。絶対にね」
 こえー。食べ物の恨みこえー。
「ふわふわクリームにカラフルなフルーツ、甘いシロップがかかったパンケーキの仇、取らせて貰うわよ」
 打ち上げの会場、決まったな……

●長く苦しい戦いだった
 溶鉱炉に沈む時はこのポーズが慣習なんだとプラグラムされている。

 最後の一撃が、バランスを崩したT-04をその奥へと突き飛ばした。
 如何に強力な兵器とはいえ、羽もバーニアもない存在に空中でその身を制御する術はない。
 落ちていく。
 ついに、これを成したのだ。
 硬い鋼鉄のボディも、超高熱にかかれば溶かされていく。
 己の死期を悟ったのだろう。
 T-04は何も言わず、ただ溶けるままに身を任せ、そして最後、おきまりのポーズをとって沈んでいった。
 さむずあっぷ。

 後日、街ではとある勇者たちの話題で持ちきりであった。
 鋼鉄の化物と何度も渡り合い、最後には打ち勝った彼らのことだ。
 吟遊詩人の謳うその冒険譚に憧れ、何人もがその勇者たちを探そうとしたのだが。
 何故だか誰も、真実に行き着くことはできなかったとか。なんとか。

 了。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お茶さんはいずれ帰ってくる。

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