シナリオ詳細
<lost fragment>彼女の血で満たされることはない
オープニング
●少女とワールドイーター
真上から覗く太陽が川面を照らす頃――。
「遅いな、師匠……」
湧き水の清流が流れる川のほとりで、1人の少女――ゼファーは待ち人が来ないことをぼやいていた。
ゼファーの待ち人である師匠が、村で食糧を調達しているはずなのだが、一向に姿を見せない。一足先に川のほとりに来ていたゼファーは、待ちくたびれて村へと引き返した。
ゼファーは村に踏み入った瞬間、何か異様な雰囲気を感じた。その予感が的中したように、ゼファーは道端に倒れている老人2人の姿を見つけた。
「ねえ、どうしたの?! 何があったの?」
ゼファーはその内の1人を抱き起こそうとして気づいた。体が異様に軽く、体全体がしなびたミイラのような状態になっている。もう1人も同様の状態で、そのことに驚いたゼファーは、慌てて老人のそばから身を引いた。
異様な事態に直面し、ゼファーはその場で硬直する。しかし、直後に誰かの悲鳴が響き渡った。ゼファーは迷いを振り払い、悲鳴の主の下を目指して駆け出した。
家屋の向こうを覗いたゼファーは、その光景を見て息を飲む。何者かが巨大な注射器を村人に突き立て、その中身を赤黒い液体で満たしていた。それは常人とはかけ離れた姿をしていた。医者のような白衣を身につけた体は人間そのものだったが、その頭部は異様だった。
等身大の注射器を掲げる人物の頭もまた、注射器の形をしている。短身の注射器そのものの頭に目は存在していなかった。しかし、注射器頭――ワールドイーターはゼファーの方に振り返り、確かにゼファーの存在を認識した。
●予測とイレギュラーズ
正義国は、既に侵略されていた――。
正義国の大司教、アストリアが構築した『短期未来予測術式』『【偽・星読星域】(イミテイション・カレイドスコープ)』。その星よみの結果が見せたものは、国土の7割を虚空に飲まれた正義国と言う痛ましい現実だった。
敵、『ワールドイーター』達は、世界のデータを喰らい、食らったデータをもとにでたらめな『バグの世界』を生み出し、正義の国土を侵略していたのだ。
データが食らわれたことによって生じた世界の歪みを認識できるのは、限られたわずかな住民――そして、イレギュラーズである。
イレギュラーズならば、バグを認識し、対抗できる。ワールドイーターに奪われた地を奪還すべく、正義国はイレギュラーズに協力を仰いだ。
イレギュラーズ一行は、大司教アストリアから【偽・星読星域】の予知を託され、ワールドイーターの襲撃が予測された正義領内の村に訪れていた。
異様に静まり返った村で、丁度イレギュラーズが村民を探し始めた時、どこからかゼファーの悲鳴が響き渡った。
「あの声は……?」
イレギュラーズの内の1人である『Fascinator』 セフィーロ (p3x007625)は、どこか聞き覚えのあるその声に注意を傾けた。
- <lost fragment>彼女の血で満たされることはない完了
- GM名夏雨
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年11月24日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
「水面下でこのような状態になっているとは……」
『物語の娘』ドウ(p3x000172)は、予知に従って正義領内の村に訪れたイレギュラーズの1人。
ミイラ化した複数の村人――ワールドイーターによる被害の実情を目の当たりにし、正義の現状を憂うようにつぶやいた。
ドウを含めた8人は、ワールドイーターの痕跡をたどりつつ、目標対象であるワールドイーターの姿を探していた。その時、確かに何者かの悲鳴が遠くからこだますのを耳にした。
「あの声は……?」
少女らしき悲鳴に誰よりもはやく反応した『Fascinator』セフィーロ(p3x007625)は、悲鳴の主の下を目指して駆け出した。
「く、来るな……!」
少女ゼファーは、注射器を構えて近づこうとする目の前のワールドイーターに対し、手にした槍の切っ先を向ける。
じりじりと距離を詰めるワールドイーターを見据えるゼファーは、敢然と立ち向かう姿勢を崩さない。その両者の姿を視界に捉えたセフィーロは、一瞬立ち止まり少女の姿を見つめる。ドウもセフィーロの様子に気づき、少女とセフィーロのつながりを察する。
――あれは……随分幼く見えますが、こちらの世界のゼファーさんでしょうか!?
セフィーロの現実世界の姿と、目の前のゼファーの姿を脳内で比べ、目を白黒させる『音速の配膳係』リアナル(p3x002906)。
リアナルは怪訝そうな表情で、ぶつぶつとつぶやく。
「……現実のゼファーの成長って、変態レベルの成長じゃないか? アレがアレになるんだろ?」
――何食ったらあれが数年であんなにデカくなるんだ?
リアナルの視線は、どこかゼファーの胸元辺りに集中していた。
「これ以上好きにはさせない!」
率先してゼファーとワールドイーターの間に割り込んだ『天真爛漫』スティア(p3x001034)は、手にした両刀を構えてワールドイーターをけん制した。
――現実とは違う世界であっても、正義の国は私の故郷なんだ! 絶対に取り戻してみせるよ!
本来の正義の姿を取り戻したいという強い意志を、スティアはワールドイーターを見据える眼差しに現す。
スティアと同様にゼファーの前に進み出た『桃剣舞皇』モモカリバー(p3x007999)も、
「この私、"桃剣舞皇"モモカリバーの前で悪事は許さん!」
巨大な注射器を構えるワールドイーターに対抗するように、桃の大樹から作られた大剣を掲げた。
続々と駆けつけたイレギュラーズの姿を目の当たりにし、目を丸くするゼファー。その内の1人であるセフィーロは、自身を見上げる幼いゼファーと視線を交えて言った。
「……死にたくなきゃ、大人しく見てなさい。此処で子どもに出来ることなんて、ありゃしないんだから」
どこかただ者ではないセフィーロの雰囲気に圧倒されつつも、ゼファーは己の目的を伝える。
「あ、あの……私は、師匠を探していて――」
懸命に『師匠』である人物の所在を気にかけるゼファーの様子を見て、『Dirty Angel』ニアサー(p3x000323)は言った。
「……そうか、君は『師匠』の身を案じているんだね」
――わたし……にとってそうなのだ、彼女にとってもそうなのだろう。
自身も『師匠』という存在を敬愛するニアサーは、少女の願いを叶えたいと強く望んだ。
目の前に立ちはだかるニアサーらと共に、堂々とワールドイーターを見下ろすドラゴン――『竜空』シラス(p3x004421)は、相手を威圧する鋭い眼光でワールドイーターを見つめて、
「悪いが、使用済みの注射器は直ちに廃棄だ」
前足の先で、器用に挑発のジェスチャーを見せる。
ワールドイーターは注射器型の頭をわずかに傾けたかと思うと、瞬時に後方へと飛び退き、イレギュラーズと距離を取る。その瞬間、家屋の影、壁や屋根を這う複数の影が現れる。それらはワールドイーターの下に集う赤黒いスライムだった。小型犬並みの大きさで、高速で這い回るナメクジのような動きを見せる。
「気持ち悪いワールドイーターですね……!」
そう言って『虎帝』夢見・マリ家(p3x006685)は、後ろ手にゼファーをかばうように行動し、スライムたちの動きを警戒する。
シラスは口腔から紫電を迸らせ、まずワールドイーターの注意を自身に引きつけようと電撃を放った。
イレギュラーズは続々と攻撃を開始し、迫り来るスライムに対処する。
シラスはワールドイーターの進路を阻むようにして張り付き、ゼファーらとの分断を図る。そのシラスと共に、ニアサーも果敢にワールドイーターへと挑む。
鋭く刀を振り下ろしたニアサーの太刀筋は、空間を裂くような勢いでワールドイーターへと迫った。ニアサーの斬撃によって、巨大な注射器を構えていたワールドイーターは弾き飛ばされる。更に連続で斬撃を放つニアサーの勢いは、荒れ狂うつむじ風と化していた。
ワールドイーターを押し込みつつ、同時にニアサーはスライムの排除に臨む者の戦況を気にかけていた。
ホワイトタイガーを彷彿とさせるメカニカルなスーツに身を包んだマリ家は、スーツに搭載された2門のバルカン砲で、スライムの一掃を試みる。マリ家の連続射撃により、スライムはすばしこく逃げ惑う。すべての射撃をかわし切ることはできず、あちこちにスライムの体液らしきシミが飛び散った。
スライムは足元をすり抜けながら攻撃を展開しようとするが、隙のない動きを見せるイレギュラーズに翻弄される。
二振りの剣を構えるドウは、接近しようとするスライムAに向けてその刃を振り向ける。機敏に動くスライムも、蒼い閃光を発現させるドウの太刀筋は正確に捉えた。弾力のある体で刃を受け止めたスライムAは、家屋の壁にべチッと打ちつけられる。イレギュラーズに接近しようとした他のスライムも同様にはね除けられ、ベチベチと地面や家屋に体を叩きつけられる。
イレギュラーズとの距離を保ち始めるスライムは、光沢を帯びたゼリー状の体をやたらと震わせる。決して怯えているとは限らない怪しい動きに対し、スライムと対峙する者らは警戒を強めた。
一見ゼリーのような弾力のスライムだったが、自在にその体を硬化させることでイレギュラーズに対抗する。
主に刀剣を扱うドウらに対し、攻撃を受け止めたスライムBの体は刃を通さず、わずかにへこんだ体は粘土状に変化していた。また、スライムCは体の一部をブーメラン状にして射出することで、モモカリバーを狙った。軽快な身のこなしでその攻撃をかわしたモモカリバーは、木の幹に突き刺さるスライムの一部を認めた。
スライムDはゴムボールのように弾む体で頻りにモモカリバーらの間を跳ね回り、次第に加速する体でかく乱を狙う。何十キロという球速にまで加速したスライムは、激しい体当たりを繰り返す。イレギュラーズを翻弄するスライムDはマリ家に向かって突っ込んだが、マリ家はスーツに備えられたアームでその体をしっかり受け止める。目の前に対象を捉えたマリ家は、電磁加速を利用した高速の一撃を放ち、串状の武器で貫いたスライムDの体を地面に叩きつけた。スライムDはそのまま力尽きたのか、しぼんだ風船のような状態で動きを止めた。
体を弾ませながら接近するスライムAとEに対し、スティアは流れるような体さばきでその間をすり抜けていく。体当たりを繰り返すスライムに対し、スティアはその行動パターンを把握しようとスライムの攻撃を受け流し続けた。
スティアが刃を翻した瞬間、桜の花弁がスティアの動きと連動するように、どこからともなく吹き散らされた。スライムEの周囲に花弁が舞う間にも、スティアの刀の切っ先が間近に迫る。その切っ先が触れた瞬間、スティアの両刀は連続でスライムEを切り刻む。まるで破裂する水風船のように、スライムEの体は飛び散った。
ゼファーを守るためにも、スティアらがスライムの対処を続ける一方で、シラスはワールドイーターと正面からかち合う。
シラスと攻撃の応酬を続けるワールドイーターは、巨大な注射器を巧みにさばき、変則的な動きでシラスに攻めかかる。
注射針を突き立てる構えのままシラスの前に踏み込んだが、ワールドイーターは瞬時に注射器を回転させる。腹部を狙うと見せかけて、ワールドイーターはシラスの顎を強打しようとした。しかし、シラスは冷静な判断でワールドイーターの動きに反応し、注射器の部分を片手で受け止めた。
シラスの口腔から漏れ出る雷にも動じず、ワールドイーターは更に力を加えてシラスが握った注射器を突き当て、シラスの手を弾き飛ばす。シラスの前から飛び退くワールドイーターは、更に攻撃を仕掛けようとするニアサーにも反応した。瞬時に至近距離へ迫ったニアサーの太刀筋は、吹き荒れるつむじ風のような勢いでワールドイーターを押し込む。
注射器を振り回してニアサーの追撃を阻止したワールドイーターは、白衣の袖口からクモのように糸を飛ばし、瞬く間に屋根の上に飛び移る。ワールドイーターは屋根から屋根へと糸を伝って移動し、自在に糸を伸縮させては飛び蹴りを放つ動きを見せた。
ニアサーとシラスが飛びかかるワールドイーターの相手を務める間にも、スライムに刃を向ける者らの状況は変化し続ける。その黒光りする体に切れ目を生じさせ、分裂を始めたスライムにセフィーロは斬りかかる。スライムの一部は泡のように弾けて消えたが、残る体が分裂するスピードは加速していく。
「分裂だと……!? 厄介な敵だが、背を向ける訳にはゆかぬ!」
そう言い放つモモカリバーは、小石並みのサイズにまで分裂したスライムを自らの間合いに引きつける。豪快に振り抜いた大剣の一薙ぎで、モモカリバーは一挙にスライムのせん滅を図った。20数体に分かれたスライムCの体は吹き飛ばされ、グミのようにコロコロと転がりながら寄せ集まった体を再構築していく。
分裂を繰り返して現れた無数の小粒のスライムたちは、イレギュラーズの足元にいくつもまとわりついてくる。
「気持ちわるっ!」と鋭く声をあげたリアナルは、足元から這い上がろうとするスライムをいくつも踏みつけていく。
踏みつけても散らしても、スライムはしつこくイレギュラーズを蹂躙しようとする。極小とはいえ、数十以上の数で圧倒するスライムは、少しずつ足元から攻めあがる。
上半身にナメクジのように張り付くわずかな数のスライムだったが、より顔付近に近づいたスライムは、瞬時にその体を風船のようにふくらませる。膨張した状態から、至近距離で破裂したスライムの体液が飛び散った。あちこちでスライムが弾け飛び、否応なしに粘膜を侵される。
スライムの体液によって侵された体は明らかな異変に苛まれ、悲鳴を上げ始めていた。ドウも異様な喉の渇きを感じていたが、それでもなおその太刀筋に狂いはない。スライムBの体に鋭く刃を突き立て、更に分裂しようとする体を残らず潰そうと絶えず刀をさばく。
リアナルは自らの能力を封筒の形に現し、光り輝く封筒の中から、癒しの力となる源を周囲の者に振りまいた。リアナルが発揮した能力により、次第に症状が和らいでいく。
リアナルはスライムの脅威から仲間を守ろうと、癒しの力を注ぎ続けた。支援能力を行き届かせるリアナルに後押しされ、セフィーロはスライムへの攻撃に集中する。
セフィーロを取り囲もうとするスライムの群れから距離を取り、セフィーロは構え直した刀から炎を立ち昇らせた。立ち昇る炎と共に、セフィーロはスライムの群れを斬り払う。セフィーロの勢いに圧倒され、体の一部を切り崩されるスライムは、慌てて分裂した体を寄せ集める。
ゼファーの身を守るためにも、イレギュラーズはワールドイーターらを追い詰めるために奮戦する。
一方で、屋根伝いに張り巡らされた糸――黒い縫合糸の上を綱渡りのように行き来するワールドイーター。ニアサーやシラスの攻撃によって張られた糸は突き破られ、ワールドイーターは宙で体をひねりながら着地する構えを見せた。その間にも、ワールドイーターは接近しようとするニアサーに向けて糸を放つ。
ニアサーは頭上を過る糸から身をそらし、着地直後のワールドイーターに迫ろうとした。しかし、ワールドイーターが仕掛けた糸は足元からニアサーを捉える。ニアサーの片足を地面に縫いつけるように絡みついた糸は、ニアサーの動きを阻んだ。ニアサーに向けて注射器を突き立てようとするワールドイーターに向けて、シラスは雷の奔流を吹き出す。その攻撃をわずかな差でかわすワールドイーターは、ニアサーへと突撃する。
ニアサーは全力でワールドイーターの攻撃を阻止しようと動いた。構えた刀で突き出された注射針を真横へとそらし、ニアサーはほぼ同時に足首に食い込むほどの糸を力任せに引きちぎった。なおも食い下がろうとするワールドイーターの注射器を蹴りつけた直後、
「その白衣姿、気に入らないんだ!」
ニアサーは自らの能力を発揮して宙へと飛び上がる。
ニアサーはワールドイーターの注射器を狙い、その針の先端を歪ませる。更に自在に身を翻すニアサーは、勢いをつけた一太刀でワールドイーターを突き飛ばした。
ワールドイーターとの接戦に2人が全力を傾ける一方で、スライムたちを相手に奮闘を続けるドウも攻勢を強めていく。
影を操るドウは、スライムCを取り囲むようにして、実体を持つ複数の影を展開する。ドウと同じシルエットで両刀を構える影は、ドウとタイミングをそろえてスライムCへと斬りかかった。何十体にも分裂していたスライムCだったが、徹底的に対象を斬りつけるドウによって、スライムCの体は次々と弾け飛んだ。
スライムAとBも次第に追い詰められていくが、抵抗の勢いは衰えない。更にイレギュラーズの消耗を狙うように、分裂したスライムの一部の群れはゼファーに向かっていく。その動きを阻もうと、スティアはどこか気迫に満ちた眼差しで居合の構えを見せた。居合の一撃から瞬時に刀を翻し、スティアは飛びかかるスライムを連続で斬りつける。
スティアに集中し始めるスライムの群れを駆逐しようと、セフィーロも果敢に斬りかかる。 スティアと共に刀を振るセフィーロは、その巧みな刀さばきでスライムを寄せ付けようとしなかった。セフィーロの周囲にはスティアの能力によって氷の花弁がきらめき、セフィーロの動きに見入るゼファーの瞳にも、その輝きが反射していた。
ワールドイーターと応戦を続けるシラスは、
「お前の針がこの俺に通るか、試してみな」
シラスは不敵な面構えでワールドイーターを挑発する。
シラスの放つ雷撃に翻弄され続けたワールドイーターは、自制を失ったようにシラスへと突貫した。
突き出されたワールドイーターの注射針を、シラスは硬いウロコに覆われた前足首で受け止める。震えるほどの力を込め、ワールドイーターは無理矢理に歪んだ針をねじ込もうとしていた。
シラスは一気に勝負を決しようと、目の前のワールドイーターに瞬時にヘッドロックをかけた。注射器でもあるワールドイーターの頭部を、シラスは前足できつく締め上げる。
シリンジ部分がミシミシと音を立て、もがき続けるワールドイーターをシラスは唐突に突き放す。よろめいた先で視界に入ったのは、閃く紫電――。その瞬間に、マリ家の放った鋭い切っ先が、ワールドイーターの胸を刺し貫いた。
「拙者たちは負けない! お前には、何も奪わせない!」
胸を貫かれたまま静止するワールドイーターに向けて、マリ家は勝利を確信して言い放った。
ゆっくりとその場に膝をつくワールドイーターだったが、刀を構えたセフィーロは、注射器の頭を粉々に打ち砕いた。セフィーロの容赦のない仕打ちは、すこぶる腹の虫が治まらないように捉えられた。
イレギュラーズに窮地を救われたゼファーは、皆に向けて謝意を示した。すると、どこからかゼファーを呼ぶ男の声が聞こえてきた。
「あ……師匠!」
遠目に見える老人の姿を見つけたゼファーは言った。
セフィーロは師匠の下に向かうようにゼファーを促すが、ゼファーはどこか迷う素振りを見せ、頻りにセフィーロたちを顧みる。
――あくまでこれは仮想現実。
セフィーロはゼファーの下に踏み出しながら、心中でつぶやく。
――私であって、私ではない私なのだから。……だから其処に思いを通わせる気は無いけれど。
ゼファーに手を伸ばしたセフィーロは、その頬を軽くつねって言った。
「精々、大きくなりなさいな」
冷たい印象に見えていたセフィーロから微笑を向けられ、ゼファーは目を丸くして固まっていた。
セフィーロはその一言を残して、過去の幼い自分――ゼファーの前から去って行った。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
ご参加ありがとうございました。
過去の自分との邂逅というのは、R.O.Oならではでしたね。
GMコメント
●R.O.Oとは
https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
●『死に戻り』について
戦線復帰には、5ターン程度かかります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●シナリオ導入
あなたたちは正義からの要請を受け、未来予測に従ってワールドイーターが現れる村へと訪れた。そこで異様な姿のワールドイーターに襲われかけていた少女、ゼファーと邂逅することになる。
ワールドイーターが奪うデータは『血液』のようだ。村人たちはミイラと化しているが、ワールドイーターを倒すことですべて元通りになる。
ワールドイーターを倒し、村の平和を取り戻しましょう。
●成功条件
ワールドイーターのせん滅。
●敵について
注射器頭(ワールドイーター)1体と、血の塊のような赤黒いスライム5体。
ワールドイーターによって召喚されたスライムは、自らの体を分裂させて攻撃する。分裂するほど体は縮み、虫のような大きさになるまで無数に分裂したスライムは、対象の体に侵入を試みる(神近範【失血】or【苦鳴】)。分裂以外にも、自らの体を変形、硬化させることで攻撃(物至単、物遠単)を行う。
ワールドイーターは等身大の注射器(物近単)で血液を吸い取ることに執着している。また、袖口から縫合糸を蜘蛛の糸のように射出すること(神中単【体勢不利】)で対象を絡め取ろうとする。
個性豊かなイレギュラーズの皆さんの参加をお待ちしています。
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