PandoraPartyProject

シナリオ詳細

本に憑りつかれた男の目を覚ませ!

完了

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●本しかない人生 
 ある一人の男がいました。
 友達もいず、親にも先立たれ、ひとり本の世界にすがるしかなかった人。
 彼は書物へ没頭し、ありとあらゆる本を集め、本に埋もれた生活を送りました。本に囲まれる他、彼が生きる道はなかったのです。
 いつしか、彼の家は小さな図書館になっていました。図書館といっても立派なものではなく、孤独な彼が生きていく、ただ一つの生きる手段だったのです。
 生計を立てることもままならない彼は、集めた本を人に貸すことによって対価を貰っていました。
 ……牛乳、パン、あらゆる農産物。なかば、同情で読みもしない本を借りては寄付をしていく村人も中にはいました。
 でも、大半の村人たちは彼のことを変人扱いしていました。

「お兄さん、この本貸してね!」
 
 小さな女の子が、丘でつんだ花を片手に童話集を借りに来たこともありました。
 しかし、彼はほとんど本から顔をあげません。

●魔が集まる
 彼にとっては、本の世界が全てでした。
 そんな彼のもとには、管理出来ないほどのあらゆる本が集まりました。
 村人たちが次第に図書館をゴミ箱のように扱い始めたからです。
 要らない本なら喜んで引き取ってくれる彼に、村人は捨てにくい物まで押し付け始めました。
 本以外にもいわくつきの人形や、年代物と言っても邪魔な古道具です。
 そこに本さえ付けておけば、彼は何も言わず引き取りました。
 意にも介さず彼は本に没頭し続けたのです。
 
 すると、そこに邪な気配が発生しました。
 整理されていない書物たちや種々の年代品に、魔の気配が押し寄せたのです。

●生きた本
 彼はある日、「ドクン」と書物が脈を打つ音を聴きました。
 只人なら、それを恐れた事でしょう。しかし、彼は歓喜の涙を流しました。
 自分の世界であった本は虚構ではなく、生きて彼に寄り添う物語だったのだと……。
 「ドクンドクン」と波打つ本はこの世ならざるもの。
 彼は、ついに一番手に入れたい本を手にしたのです。
 もう孤独で村人に馬鹿にされる彼ではありません。
 彼は歓喜に満ちた手で、書物を開きました。
 脈打つ書物を開くと、恐ろしい牙がのぞいていました。
 彼は迷うことなく腕を差し出し、その血を与えました。
 そこに魔の力が集中し、時空が歪みました。

●境界図書館
 そして、ここは村の小さな図書館ではなく、「境界図書館」として、人界と魔界を繋ぐ奇妙な図書館になったのです。
 生きた本を手に入れた彼は、さらに本にのめり込みました。すると、様々な物語から人外のものたちがやってきたのです。彼一人で境界図書館を管理出来るはずもなく、様々な物語から飛び出した生き物に村人たちは大騒ぎ。
 物語から飛び出した登場人物たちをどうにかしてくれ、と村人たちは願っています。本に未だ夢中な彼を中傷する人もいます。
 彼の本を慕っていた少女は、いつの間にか大人になっていました。彼女は彼を救いたいと思っているようです。

●境界案内人
 境界案内人のポルックスです。 
 ここは不思議な本が集まる境界図書館。あなたは本がお好きでしょうか?
 本は美味しい「お菓子」のようなもの。だけど、毒リンゴのように危ない書物もあるのはご存知でしょうか?
 境界図書館では面白いお菓子のような美味しい本もあるのです。そして……世にも恐ろしい本も……。
 そんな本に生涯を捧げた男によってこの場所は生まれました。
 男はこの図書館の管理人ですが、例のごとく、読書にずっと夢中です。
 どうか、境界図書館にかかっている魔の呪いを解いて、男の目を覚ましてください。
 彼は今一度、本から目を上げて現実を直視すべきです。
 本が生きているのは全て彼がみている幻術です。
 邪なものを押し付けた村人たちにも原因です。よって、村人たちも本から飛び出た魔物に惑わされています。
 この村の呪いを解きましょう。
 そして、境界図書館の呪いを解き放ち、ただの本の山に戻してください。
 生きているのは本ではなく、それを書いた人間なのだと彼は気づくことでしょう。
 村人の中には彼の理解者もいます。
 

NMコメント

 初めまして。きりんぼしと申します。
 皆さま、どうかよろしくお願いいたします。

●世界説明
 登場人物や境界案内人の視点を排した、プレイヤー視点による説明を行います。

●目標
・本に憑りつかれた男の目を覚まそう

●他に出来る事
・本から飛び出した生き物を捕まえ、村人の幻覚を解こう

●敵
・生きている本を退治しよう

●味方
・小さい頃から本を借りていた女性

●特殊ルール
・生きている本の正体は、味方の女性が書いた本だった。そのことが分かることによって、
 本の呪い(生きている呪い)は解ける。

●サンプルプレイング
・サンプルA
生きている本を捕まえて村人たちを救いだそう。
本の妖怪を退治するうちに「境界図書館」の魔力も弱っていきます。
本に没頭する男の集中力も削がれていくことでしょう。

・サンプルB
本にしか関心のなかった男に恋心を抱いた少女がいます。
彼女は素敵なラブストーリーを書きます。
しかし、その本に込められた魂の力が強すぎて、
本に魂を与えるきっかけになってしまいました。
彼女が男にそれを告白することによって、
「境界図書館」を元の本の山に戻してあげましょう。

  • 本に憑りつかれた男の目を覚ませ!完了
  • NM名きりんぼし
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年11月18日 22時35分
  • 参加人数3/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(3人)

ルネ=エクス=アグニス(p3p008385)
書の静寂
不死話・blue・碧(p3p010171)
プラハ・ユズハ・ハッセルバッハ(p3p010206)
想い、花ひらく

リプレイ

「──チェインライトニング!」
幾重にも連なった雷撃が、魔物を素早く焼き払う。
「村で暴れまわっている魔物は、これで大体片付いたかな?」
青い髪を風になびかせ、『書の静寂』ルネ=エクス=アグニス(p3p008385)は優雅に微笑んだ。

「ありがとう!あの魔物のせいで村は滅茶苦茶だったんだ!」
「そうだ!あの魔物は図書館から現れたんだ!」

好き勝手に言う村人たちに、ルネは呆れたようにため息をついた。
「何を言うんだ。元はといえば気の弱い彼に不要でよこしまな物を押し付けたのは君たち、
 村人じゃないかい?」
村人たちはそうルネにいさめられると、お互い顔を見合わせて気まずい表情をした。
ルネは、村人たちの中傷に呆れてそう言い放った。
「今回の騒動は、君たちがあれもこれも彼に押し付けるから起こったんだから……。
 あんまり文句を言うなら、見捨てるよ?」
村人たちは大慌てでルネを引き留めた。

その時、ひときわ美しい女性が村人たちの間から姿を現した。
「青い髪のお方、この方々に代わって謝罪を申し上げます。
 どうかこの村を見捨てないでください」


ルネは持ち前の資料検索の能力を使って、彼女が何者であるかを見抜いた。
「これからその彼の所に行くつもりなんだけど」
「私も、連れて行ってもらえませんか?彼のことをとてもよく知っているので……」

道すがら、女性は図書館の男性の人物像、村での扱われ方などをルネに事細かく話した。
「...…そうか、了解したよ。君は幼い時から彼のことをよく知っていた、というわけだ。
 よし、図書館まで案内しておくれ」
ルネと女性は元に戻った本たちの間を小走りに図書館へ向かった。


プラハ・ユズハ・ハッセルバッハ(p3p010206)は、境界図書館の中で、クルクルと踊り回っていた。

本が生み出す世界にいることが大好きなプラハ。

本の世界は優しくて楽しくて、でも、それだけでは足りなかったのです。
わたしの周りの状況が大きく変わってしまったから。
でも、それで今は良かったと思います。
冒険の世界でわたしは生きることが出来るようになったのです。
あの、お兄さんにも自分の冒険の一歩を踏み出して欲しいですね。

【超聴力】と【超視力】の能力でプラハは図書館に潜む魔物の気配を探った。
魔物を見つけるとプラハは杖を一振り。本から飛び出した悪しきものを次々と捕まえて行った。
ドレスの裾をひるがえし、えいっと魔法を繰り出すプラハ。
プラハはまた魔物の気配を感じた。しかし、すぐには振り返らない。

気が付いていないふりをして、次の瞬間、振り向きざまに素早く杖を振るう。
「ピューピルシール!」
声高に封印の魔法を告げると、本を抱えこんでパタンと閉じた。
本の間から魔物がバタバタと暴れまくります。
「このぉ、大人しくしなさい!」
その時、ルネと村の女性が、本の魔物に手こずるプラハを発見した。
「チェインライトニング!」
ルネが聖杯をかざすと、雷撃が魔物に襲い掛かった。
魔物はポンっと元の本に戻った。
「助けてくれてありがとうございます!わたしはプラハ、あなたがたは?」
「僕はルネだよ。こちらの女性は……。」
「私は、この図書館の管理人をよく知る者です」
プラハは瞳を輝かせた。
「じゃあ、あのお兄さんの居場所も知っていますか?」
「...…はい。もちろんです。私は彼のことをずっと見ていましたから」
ルネとプラハは顔を見合わせた。
「どうやら、まだ協力者はいるようだし、僕も彼に興味が湧いたな」
「そうです、わたしはお兄さんの目を覚まさせてあげたいです」
口々にそう言うルネとプラハに女性はホッとした様子でようやく笑顔をみせた。



男性には、幼い頃からお気に入りの本があった。
それは天界の情景が描かれた、とてもうつくしい画集。
どのページを開いても、心が洗われるような光景がそこには広がっていた。
中でも男性が一番お気に入りだったのは、目を見張るようなうつくしい女性の天使。

やわらかな風に長い髪をなびかせ、柔和なほほえみを湛えた唇。
夢見るように閉ざされた瞼、真珠のようなやわらかな頬。
その精緻さと言ったら、まるで実際に息遣いが聞こえてくるかのようだった。
少年だった男は絵画の中の天使に、淡い恋心を抱いていた。

男性は、天使が絵から現れることを願うようになった。生きた彼女にどうしても会いたかった。
男性は来る日も来る日も絵の中の天使を見つめた。少年から大人になっても飽きもせず見つめた。
命を持つはずもない画集の天使を、熱い眼差しで見つめ続けた。

いつしか図書館には、ひとりの少女が毎日訪れるようになっていた。
……男性がほんの少しでも本から顔を上げていれば、きっと気が付けたであろう。
その少女の面影が、絵画の天使と瓜二つであったことに。

やがて少女は、うつくしい女性に成長した。
女性は密かに、自分が書いた本を図書館へと持ち込んだ。
その本を手にしたとき、男性はドクンと書物が鼓動を打つ音を聞いた。
男性は、幻を見た。ついに本に、命が宿ったのだと。
魔の生み出す理想に溺れた男性は、その果てに現実の世界を忘れてしまった。

管理人を失った図書館の時空は歪み、村人たちに魔物の幻を見せるようになった。
村に、呪いがかかったのだ。

ルネとプラハは女性を伴って図書館の最奥にやってきた。
境界図書館の最下層部。うず高く積まれた本の中心に男性は立て籠っていた。

「……誰だ。」

そう口では告げても、男性は本から顔を上げない。
ルネは嘆息する。

「やぁ、初めましてだね……。僕はルネだよ」

「わたしはプラハです。はじめまして」

ルネは柔和な笑みを浮かべた。
「僕たちも、君と同じとても本が好きな者なんだ。
 ……けど、ちょっと余り良くない状況になってるみたいだから立ち寄らせて貰ったよ。」

お節介焼きで申し訳ないね、とルネは肩をすくめる。

「でもダメだね、それじゃあ」

男性はゆっくりと顔を上げた。

「何が言いたい……?」

「わからないのですか?」

プラハは呆れ、ルネは一歩前に進み出た。
ルネは本がいかに素晴らしいかを述べた。男性も黙って聞いていた。

「だけどね」

ルネはそこでコホンと息を吐く。
そして次のように続けた。

……本とは過去、もしくは今を生きる人々の積み重ねと想像力の結晶で、
それを一人で黙々と読んでいるだけじゃいけない、と。

得た知識を役立てたり、感動した物語を誰かと語りあったりしてこそ、
本当に本を読んだということになる……と。
男性の心がわずかに動いたのを逃さず、不死話・blue・碧(p3p010171)は交渉術を使った。

「ここにいる女性はあなたが恋焦がれた絵画の天使なのです」

思わず、ハッと顔を上げた男性と前に進み出た女性の視線が合った。
「ここからは、彼女に説明してもらうとしようか」
ルネはやれやれとプラハと碧に目配せした。

「いつだってあなたは私を見てくれていた。私はあくまで書物のなかの存在でしかなかったのです。
 でも、あなたは、本に生命が宿ることを願ってくれた」

驚きに開かれた男性の目には彼女の姿がまさに映っていた。

「人間として生命を得た私は、あなたの元に通い詰めました。
 あなたとお話しがしたくて。
 でもあなたはいつだって本に夢中で、書物から顔を上げてくれなかった」

男性は信じられないといった顔をしていたが、女性の姿にあの天使の気配を見てとったのだろう。
周りの書物たちの魔の力は次々と解けていった。

「私は、生きた本を執筆しました。少しでもあなたに振り向いてほしくて。
 でもそれは大きな問題を起こしてしまいました。
 人間になってもわずかに天界の力が残っていたのでしょう、私の本はあなたの寂しさのトリガーとなって魔の力に変化してしまった……」

「そんな……どうして言ってくれなかったんだ。君が、いつも来てくれていたはずの君が……。
 そんな奇跡は本の中の物語でしか起こらないと思ってたんだ。……愚かな僕を許してくれ」

「許すもなにも、あなたの前に私はいます。やっと私に気づいてくれたのですね」

男性は震える手で女性の手に触れた。女性は涙を浮かべながら嬉しそうに、はにかんだ。

ルネは、愉快そうな口ぶりで口を挟む。

「本が生命を得て動き出すなんてことがあるのなら、天界からの使いだって存在してない筈がない よね。うん、実にロマンチックで劇的だ」

彼は、心の底からこの状況を楽しんでいるようだった。
プラハは惚けてる男の頭を本で小突いた。

「あなただけのストーリー、もう始まる準備はできてるみたいですよ」

碧は自分の役割が終わったとホッとした様子だ。
図書館は完全に魔の力から解放されていた。
村人たちも反省しながら荷物や本を片付けに来た。

どうやら無事に今回の件は終わるようだ。

しかし、全てが終わりではない。
男性と女性の物語は始まったばかりなのだから。

成否

成功

状態異常

なし

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