PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ウィッカー・マンの造り方、いとしき来世

完了

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オープニング

●哀れみの悪魔は器に火を与えた
 悪戯が嫌ならば甘い甘いお菓子をちょうだい。お菓子が無いならば甘んじて悪戯を受け入れてね。そんな騒々しさが蔓延る中、誰かさんが不意に藁を編んだ。アッと謂う間に藁は派手派手しい衣装に変化し、住民達を抱擁していく。吸血鬼に木乃伊にフランケンシュタインの怪物、遠目から眺めたってこれでは悪霊の行進だ。げらげらと哄笑する貌は煉獄の集い、最早この世を真に視る事は出来なかった。
 彼等もしくは彼女等を巡らせるには燃やすしかない。最後の一人までもが生きる屍と化したなら、嗚呼、救う手を有すのは外部だろう。伽藍洞に詰め込まれた、煩わしいパーティ・タイムを終わらせるしかない。いない、いない、ばぁ、のお遊びにお片付けを教えるべきだ。唯一、生まれ変わるには火刑へ跪け――カブとカボチャを被った連中が投地していた。
 肉の焦げる臭いと血が蒸発する音、それを感じなければサヨウナラも言えないのだ。

●正気でいる事ほど恐ろしいものはない
 ジャック・オー・ランタンを片手に境界案内人、コズミック・コスモスは微笑して魅せた。吸い込まれそうな瞳は普段通り闇を宿らせ、一種の狂気へと落っこちていくのだろう。きらめいた衣が銀河を模倣していた。
「イレギュラーズの皆、たいへんよ。とある世界から天国と地獄の概念がなくなっちゃったの。いいえ、正解に謂うなら『総ての生命が輪廻転生から省かれた』かしら? つまり煉獄ってことね。何もかもが絶望の狭間、正気を維持したまんま蔓延っているのよ」
 どこぞの世界からやってきたウォーカーならばわかるだろうか。もうすぐファントムナイトでもある。それに沿っての内容なのだろう。カボチャの輝きが一瞬、失せた気がした。
「それでね、全部の命を『巡らせる』為に『燃やして』ほしいの。世界の住民まるまると、ね。ちょっと愉しそうじゃないかしら? ほら、仮装して火葬パーティ。お菓子も悪戯も要らないわ。これは救済なんだから」
 頁が開かれる。

NMコメント

 にゃあらです。
 トリックオアトリート。悪戯にしては恐ろしく、お菓子にしては甘くない。
 このシナリオはラリーです。一章完結。

●ウィリアムがいっぱい
 現世をさまよう死者だけの世界です。本来、彼等は輪廻に帰するべき魂です。
 燃やす事で転生させましょう。

●目標
 さまよえる魂を燃やし尽くし、彼等もしくは彼女等を救済する。

●特殊ルール(必要であれば)
 皆さんは必ずなんらかの『燃やす』手段を持っている事になります。

●サンプルプレイング
「楽しいハロウィンだって聞いてきたんだけど。ぜんぜんそうじゃないね」
 永遠に苦しんでいる魂たちを燃やして救済しましょう。
 マッチでもライターでもなんでも、手当たり次第に放火していきます。
「悲鳴もなんにもないなんておかしな世界。お菓子がないのも残念だわ」
 今度は天国や地獄に行けるように、生まれ変わってね。

  • ウィッカー・マンの造り方、いとしき来世完了
  • NM名にゃあら
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年11月03日 20時15分
  • 章数1章
  • 総採用数4人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

ブラッド・バートレット(p3p008661)
0℃の博愛

 生と死の狭間に、ただ緩慢と青色の群れが流れていくのは何故か。尽くが当然で在れとブラッドの如く染まり、ボコボコと魂が溢れ巡っていた。世の中には火・炎を崇拝、神格化する宗教もあると聞きます。うっすらと浮かんだ赤は儀式に使われること多く、くるくると失せて往く煙はある種の縁だろうか。絆されて、擽られて、燻られる――ある国ではヒトが意図をもって使用する火は聖なるもの、不始末の火は穢れたものと考えられるそうです。オマエが手にした燭台には何が供っている、死者を送る灯りか世界に蔓延る癌細胞か――絡みついていた平和、指で舐る。
 男と女が隣り合って天国を見つめている。上位の世界の話をする事は多いですが――眼下に茫するのは地獄でしかなく、忌諱の家畜小屋とも言えるだろうか。膨れ上がる感情を殺して全体像、見回りしている気分に陥った――鐘が啼いている、ひとつの鳥が十字架をついばんでいた。
 彷徨える魂に灯して進めばキッチリと並べられた蝋燭、固められた底部はナントも言い難い香りを放っていた。煙と蝶がお互いを認識しているとは思えない、様々な地域で魂を運んでいるのだ。期待されている彼等の貌にも成ってはくれないか。
 頭上のぬくもりを手放してはいけない、冷たい冷たい、凍えるような門を歩むのは罪人だけで十分なのだ。目に見えなければ不確かですが、希望だけは自由ですよね。理解出来る筈もない火炎どもの音色が知りたい、識りたい。

成否

成功


第1章 第2節

釈提院 沙弥(p3p009634)
破戒求道者

 手繰られた袈裟を加工するのに、適していた今朝はもう在り得ない。掴む事も出来ない今世と来世の狭間、善悪の二元論も無く魂は遊泳していた。決して巡る事がないようにと嘲っていた神様は、どうして佛心を抱けなかったのか。ただ沙弥の目の前で悲壮、行進を為す貌はまるでコーカス・レース。永久に乾かない羽が渇いていた――せめて祈りが届くように――ファントム・ナイト、迷子どもの後始末は誰がつけるのか。
 憑かれた獣の群れが幾度も数字を嘔吐している、アストラル達の悪戯は愈々終へと向かい、厄災の焔は扇を描くと謳うのか。どんな相手でも三文払えばお救い致せ、廻る々る今は累々に積もっていった――ぎゃあてい・ぎゃあてい――彼等もしくは彼女等に涅槃は似合わない、人間道を二足で歩めば好いのだ。ささやかに鮮やかに華やかに、燃えても得ぬ煉獄に終わりを……寂静の火達磨は起き上がれるのか?
 永久の憂いが息絶える中で造られた墓、窖におさめる死體など最早ないがお気持ちだけで良好だ。左様ならサヨウナラ。意識無意識関係なく、ただウィッカー・マンは窒息するのみ――満たされた藁に乾杯だ、肴は酸漿が悦ばれる。
 横たわった巨人が腕枕の縫い方を教えてくれた、満ち干きを導いた輪郭は空でしかない。坐を苦めよ蠱惑的なオマエ、灰と化した魂が煙と共に上昇して逝った――どんなものにでもなれる、ならば、胎に還る事も容易だろう。厭世の擽りに耐え切れず旋回へと。

成否

成功


第1章 第3節

古木・文(p3p001262)
文具屋

 ニグレドと見做された肉体が如何に酷使されたのか、文で理解しようにも塗料が足りない。磨かれ、削られ、燃やされた鉱石の滓は可哀想に、贈物の戯れと出遭えなかったのだ。ファントムナイトの魔法は果たして物語の内でも続くのだろうか。結婚は人生の墓場だと言うけれど、ゴーストの花婿は何重の意味で墓に入っているんだろうね? 冗談に聞こえないではないか、ウィリアムの大群がオマエに訴えていた。ふふ――笑いと嗤いが混じる底でトリート、甘味類の人工さが際立っていた――燭台の炎で燃やしにいこうか。ロマン・チックな渦巻に煉獄。
 川へと流された小船、それよりも苛烈に、贄として焔が貪っていく。全ては既に終を得たものだ。悉くを導かなければ回転に戻れない、遠慮なく躊躇なく――鏡を覗き込んだならば放火魔の僕、沈まなければ逝けない今世がのたうった――殺人犯はオマエだと登場人物に指差され、なんという誤解、此処には悪魔だけが存在している。気が滅入りそうな儘におつとめ、品々は死肉なのだろう。
 おっと。此方を燃やし忘れていた。たらふくと青白い種を呑み、白魂が昇っていく。新しい人生への門出、アルベドとでも表現すべきか。笑顔で見送ろう――頷きを返した浄化の貌、しゅうと失せていった煙たげな宙。
 大行進を始めたキャンディを足場にウィッカー・マン、天を観察していた。嗚々、大いなる業、容易い事だろう。
 がらんどうに嵌めた金属片は機能しない。

成否

成功


第1章 第4節

暒夜 カルタ(p3p009345)
花合わせ

 玉の輿に乗り込んだたくさんのアストラル、彼女等が真に罪人で在るならば地獄が開く筈だった。暒夜と両手を天に晒したとしてもジャック・ランタンは飛び立てない。こんなのぜんぜん輝いてないですぅ――八百万の一に抱擁されていたのはパリオンとダークマター、あわいに煌めく貌は有象無象からの憧れだろうか。兎にも角にも本質は煮え滾る恒星のもので極域プルームの迸り、猪突猛進と記すべき乙女チックなのだ。描けば描くほどに膨らんでいく尾の如く、生まれつきに死に向かって燃えている――だから、こんな暗くて陰気なところで終知らぬ生は嫌なのか。のたうつ惰性が絡み遭ってお互いを理解出来ていない、もう少しで自分も判断不可能と陥るのか。カルタならぜーったい、ごめんですぅ!
 白色矮星にだって超新星爆発への道が赦されているのだ、如何してただの肉の塊の中、鬼火が漂わなければならない。生きている限り、命は燃え続けなければなりません。それじゃあ、狭間で狂っているウィリアムは? 悉く反応を殺されている。
 怖いですか。泣きそうですか。そんな脳味噌も無いと謂うのに唯一、転生の焔だけが応えてくれている。紅色に染まった感情が命と称されるエネルギーを孕んで魅せた――身を薪と見做せるならば現、投げるべきだと花が告げた。
 カルタもいずれ、同じ終わりを迎えますから。
 阿鼻へと堕した者の滓が頬を撫でている、八方美人を連れて逝く欲深さはなかったらしい。

成否

成功


第1章 第5節

 アストラルの行き先を考えるのは悪魔だけで十分だ。
 渡された片道切符、その熱量に死者達は縋るのだろう。
 ウィッカー・マンの悲鳴と共にいとしき来世が訪れている。
 トリックオアトリート、甘くてとろける悪戯が渦に呑まれた。

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