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シナリオ詳細

幻影花屋で会いましょう

完了

参加者 : 1 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ありえない再会
「今日のお客様の”再会の物語”は…… 美しかったな……」

 ここはレゾンデートルにある幻影花屋。宝石が散りばめられたフラワーアレンジメントが店内を埋め尽くさんばかりに並べられている。

「本来二度と会えない人に…… 会う…… そこから生まれる物語が…… 心と心の会話が…… 僕に新しい花をくれる……」

 幻影花屋の店主は、ときにブツブツと語りながら、ときにケタケタと笑いながら、今まで店内で起きた”ありえない再会の物語”に想いを巡らしていた。

●宝石の花束を贈ろう
 境界図書館の一角に、キラキラと煌めくフラワーアレンジメントが飾られていた。
「やあ、お待ちしておりました。きれいでしょう、この宝石のような花のフラワーアレンジメント…… こちら、レゾンデートルにある幻影花屋で手に入れたものです。今回皆さまにご依頼したいのは、こちらの店に行って皆さまが再会することの叶わない人との”再会の物語”を紡いできて欲しいのです」

 眼鏡の境界案内人の説明によると、幻影花屋で花束を造ることで、その花束を手に入れた者が現在会うことが叶わない人間の”心”と再会し、1時間の間会話をすることが可能になるのだという。
 花束を再会の叶わない人間の”心”に贈ることで、その心と1時間の時間制限付きで対話などのコミュニケーションが可能になる、ということらしい。

「幻影花屋は、再会の物語が紡がれるたびに新種の花が出現する特殊な花園の花を活用して運営されているんです。新種が生み出されるためには花束を造るだけでは不可。だから死別やさまざまな要因での永遠の別れを経験している人が”ありえない再会の物語”を紡ぐ必要があるらしいのです。店主は新種の花を生み出すために新しい再会の物語を欲していて、こちらに依頼が来たという次第です」

 エメラルドナイトは、自身が幻影花屋でもらってきた花束を手に取り見つめながら言った。

「この依頼、もう二度と会えない人との一時的な再会という大きなメリットを含んでいますが、相手はお互いに会いたいと思っている人物でなければならないという決まりはありません。たとえ確執のあった者と再会したとしても危険はありませんが、くれぐれも心に鞭打つような再会でご自分を必要以上に追い詰めたりはなさいませんように。それでは、いってらっしゃいませ」

NMコメント

●ご挨拶
 こんにちは、来栖彰です。
 今回は幻影花屋でフラワーアレンジメントを造って、もう会うことのできない人の”心”と再会してお花を贈るシナリオです。
 もう会えないあの人に会って、素敵なお花をプレゼントしてひとときの再会を楽しんできてください。
 あえて会いたくない人に会うのもありです。

●目的
 ・もう会えない人の”心”と再会して花束を贈る
 ・一時的な再会で言えなかったことを言ったりコミュニケーションをとったりする

●ルール
 ・再会できるのは”現時点で二度と会うことが叶わない人”
 ・宝石の散りばめられた花束を贈る
 ・花束の内容はお任せでもいいし、自分の希望を店主にリクエストしてもいい
 ・幻影花屋の特殊な部屋で会うため希望のシチュエーションでの再会が可能です(場所や時刻など)
 ・確執のあった相手と再会すると花束をどう扱われるかわからないので注意
 ・再会する相手についての情報も書いてもらえるとよりリアルな再会劇になります

●サンプルプレイングA
「死んだ僕の恋人のミカに会いたい…… 会って、守れなくてごめんねって謝って、ミカが好きだったピンクのチューリップの花束を贈りたい。ミカは優しいからきっと怒らないけど、それでも、怒って欲しい。僕の頬を思いっきりひっぱたいてって頼むんだ。……そんなことを言っても、ミカはきっと『困ったなあ』なんて笑ってるだけだろうけど。僕はそんなミカをみてぼろぼろ泣いてしまうだろうな。『どうして泣くの?』『怒ってないよ?』なんて無理して言って、慰めてくれる彼女の姿が目に浮かぶね。会いたいのも怒って欲しいのも、すべて僕の自己満足だ。それでも…… 彼女の顔が見たい、声が聞きたいんだ」

●サンプルプレイングB
「アイツに花束を贈るなんて不愉快極まりないが、会って決着をつけるためならば仕方がない。まあ、アイツと違って俺は気が利くからな、アイツが好きだったガーベラのフラワーアレンジメントでも贈ってやるか。きっと花束をはたきおとされるだろうが、それが開戦の合図だ…… 必ず俺がアイツに勝って、アイツが命を落としたあの勝負には何の価値もなかったことを証明してやる。アイツと俺は幼なじみで仲がいいなんて言われていたが、とんでもない。俺たちはライバルだ、戦いでしかコミュニケーションがとれない……」

  • 幻影花屋で会いましょう完了
  • NM名来栖彰
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年11月03日 22時05分
  • 参加人数1/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 1 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(1人)

金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸

リプレイ

「こちらへ…… どうぞ……」

 幻影花屋の店主は『陽色に沈む』金枝 繁茂(p3p008917)を店内へ招き入れる。
「この花びらにまぶされているキラキラしたものは宝石ですか? 照明が無いはずの店内が光り輝いていて、不思議な感じがする……」
「"花園"で入手できる花は、自ら発光する宝石が散りばめられているのです…… 蛍光塗料とかじゃないから…… とてもキレイでしょう……? ……これが、今まで、私の店で生まれた数多の"ありえない再会の物語"によって生まれた…… 新種の花なのです……」
「ありえない再会…… 死別した人間の心とも対話ができると聞きました。にわかには信じられないですが、まあにわかには信じられないことが毎度起こる世界で生きてますし、あるんでしょう、そういうことも」
「少し疑ってます……?」
「いえ…… ただ、その……」
「……ああ、なるほど。……死者に会うことを…… 躊躇う人は多いですから……」
「…………」

 店主は繁茂に好きな花を選ぶように促す。店内にはキラキラと輝く宝石のような花が、室内の空気を食い尽くさんばかりにたくさん並べられていた。
(あの人はどんな花を好むだろうか。いや、男はあんまり花束を贈られて喜ぶなんてことないからな、考えてもわからない)
 繁茂は自分が素敵だと直感した花をひとつひとつ手に取り、店主の力を借りながらブーケを造っていった。男が花束を贈られて果たして喜んでくれるのか、そんな疑問はどこへやら。リボンはあの人の着物の飾り紐と同じものをとか、赤い装飾を着けていたから赤い花も入れようとか、気が付けば"あの人"のためを思って造った花束が完成していた。
「ありゃ、なんだか随分欲張りな花束になってしまいましたね。まるで子供が作ったみたいな……」
「うちは良い花が多いですからね…… せっかくの再会だからと…… いろいろな花を選ぶ人は…… 多いですよ……」

 ではこちらへ、と繁茂は真っ黒な扉の前へ案内された。
「この扉から向こうは…… あなたが望んだ…… ありえない再会のための空間が用意されています…… この時点で会えない人の心との対話は可能ですが…… 花束を贈らないと新種の花が増えないので、必ず贈ってくださいね……」
「わかりました」

 繁茂はすうっと一呼吸して、心を整えた。
(この向こうに、いる。彼が……もう会えないあの人が)

 ギギ…… と、扉を開けた瞬間、繁茂の意識が飛ぶ。

 繁茂が目を開くと、そこは障子越しに陽光が注ぐ和室の中だった。あの障子の柄、壁の色、畳の香り、すべてが繁茂の記憶の断片に残されている心の欠片と一致した。ドクン、ドクン、と胸が強く鳴る。
(ああ、覚えてる、この部屋…… 私が…… 俺が…… ここに居た…… いや、はっきり思い出すことはできないけれど…… 記憶にはなくても心が…… 私と、俺と、そして…… あの人が………………)

「ううむ、目がかすんできたな。仕事のし過ぎか?」

 懐かしい声が、繁茂の心を大きく高鳴らせた。
 目の前には書生机で筆を執る男が、少し疲れたな、などと小さくつぶやいたり、書類とにらめっこをしながら唸ったりしていた。その声、その仕草、その背中…… 繁茂が恋をした彼で間違いない。
 そう認識した瞬間、彼の死がまるで嘘であったかのような感覚と、いやそれは現実だ受け止めねば正気に戻ったときに傷付くぞという冷静さとの間に板挟みになり、繁茂の心はぎゅっと痛くなる。
 しかし、せっかく取り戻した彼との"時間"を無駄にする手などなかった。昔の恋心を思い出した繁茂は、自分の心に喝を入れて、呼吸を整え、男に話しかける。

「新樹、そろそろ休憩にしないか?」
「ああ、繁茂。そうだな、少し休むか。根詰めてもいいことないからな」

 記憶にないはずの"懐かしい"という感覚、そして感情が繁茂の心を揺さぶり、胸を締め付ける。頭が痛い。唇が震え、目が霞むような感覚だ。この光景をいつも見ていたはずなのに……
「ん? お前、それどうしたんだ?」
「ああ、この花束は…… えーっと……」
 しまった、と繁茂は花束を贈る理由が無いことに気付く。特別なお祝いの日というわけでもないのだろうし、私が、俺が、彼に花束を贈る理由を記憶の断片から探そうにも見当たらない。
「どうかしたのか? 何か祝い事でもあったか?」

 優しい目が、繁茂を射抜く。この不自然に存在する花束を笑うでもなく、繁茂が持っているなら何か理由があるのだろうと、信頼を持って見つめる優しい目。
 繁茂は新樹の目をじっと見て言った。

「新樹に喜んでもらいたくて、作って来たんだ」
 素直な感想だった。誰だって、誰かに花束を贈るときは純粋に喜んでもらいたいと思って贈るものだ、別に祝い事がなくたって。初恋の相手に喜んで欲しいという想いを持ってこの花束を束ねたのも本当のことだ。
 不自然かな? 急に花束なんて変に思われるかな? という考えが、恋心からくる"新樹に喜ばれたい、変に思われたくない"という想いから来るものだったのだと気付き、繁茂は一人で赤面する。
 と、一瞬キョトンとした新樹が、にっこり笑って繁茂に近付いてくる。
(あ、この感じ…… 覚えてる…… 私が、俺が、好きだった、この人の"動き"……)

 新樹は繁茂の目の前に座って、花束を持つ繁茂の手の上にそっと自分の手を置いた。繁茂が戸惑っていると、新樹は口を開く。
「ありがとう。もらっていいのか?」
「あ、ああ。なんだか子供が作ったみたいな花束になっちゃったけどな。ほら、男は普段花束なんか作らないだろう?」
「綺麗だよ」
 ドクンと、また繁茂の胸が高鳴る。いやいや、別に自分に言った言葉ではない。手を置いたのだって、別に深い意味はない。だが、あれ? こんなに俺得状態になっていいのか? 幻影花屋の空間は、花束を造った者に対して都合がよくなるようにできてるのか? そんな考えを巡らせているうちに、新樹は繁茂の手から花束を受け取って少し離れる。
 その距離に少し寂しさを覚えた。ああ、やっぱり自分は繁茂でありハンモなのだと、この恋心が証明してくれる。
「実は、勉強に行き詰っていてな…… まあ、あんまり情けないこと言いたくないんだけど、ちょっと休む理由が欲しかったんだ。繁茂が休めと言ってくれて、救われた気分だよ」
 なるほど、と繁茂は納得する。どうやらこの時間軸は、新樹が式部省に入省する前のようだ。入省するための勉強で疲れていたのだろう。寺社の子供たちに気を遣わせまいと、新樹は必死で疲れを隠していたのだ。
 記憶が曖昧でもわかってしまうのは、彼が繁茂自身だからだろうか。繁茂はなんだか切ない気持ちになった。

「俺の前でくらい、少しは休んでくれよ。倒れたら元も子もないだろう?」と、言おうと思った。しかし、さっき触れた手のぬくもりがまだ残っていて、それが繁茂の思考を少しだけ狂わせた。

「新樹がつらいと、俺もつらいから。俺の前では少しは甘えろよ」

 口にした途端、何でこんなことを言ってしまったのかと繁茂は慌てた。まるで恋心を伝えているみたいではないか。新樹は気付いた? 気付いていない? 女同士ならまだしも、男が男に伝える言葉じゃないだろう! 繁茂の頭の中は、恋を覚えたての少女のようにめまぐるしい思考が回っていた。"俺"と"私"の断片が各々好き勝手繁茂の思考を支配しているようで、なんだか落ち着かない。自分の言葉が新樹に対して正解なのか分からず怖くなる。

 しかし、新樹の口からは繁茂にとって意外な言葉が発せられた。

「ありがとうな、繁茂。あ~~~~! ちょっと横になって休むか!」

 利発的な寺社のお兄さんは、子供のように繁茂の膝の横辺りにごろんと寝そべった。繁茂がくれた花束を、大事そうに抱えながら。
 どうやら本当に相当な疲れが溜まっていたらしく、繁茂の先ほどの言葉は普通に親切として響いただけだったようだ。繁茂はそれにホッとする。
 "私"がおかしなことを言ってしまわないか、そんな初心な恋心が妙な緊張を生んでいたようだ。しかし、気付いた。"俺"の心が、ちゃんとあの頃の自分と彼を覚えている。

(まったく、やっかいですね、初恋というものは。やっぱりあなたは私にとって、否、俺にとって特別な人だった。いつまでも、永遠に……)

 繁茂は1時間経つまで、花束を眺めながらうとうとする愛しい人の顔を眺めて過ごした。新樹には申し訳ないが、彼が疲れているおかげでじっと顔を見ていても気付かれずに済んだことが嬉しかった。

 休息の後、色とりどりの花を詰め込んだブーケが彼の書生机に飾られたのを確認し、繁茂はその場を後にした。

(また会ってくれてありがとう。今度は"今"あなたが眠る場所へ…… 会いに行きますからね)

成否

成功

状態異常

なし

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