PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Dream to Reverse

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●いつものローレット
 多くの冒険者が集うローレットのロビー。
 普段なら依頼書が張り出される掲示板の前に人が集まるのだが、今日は違う場所に人が集まっていた。
「お、君達もどうだい? 今ならこれを付けて寝るだけで報酬が出るっていう超お買い得な依頼があるんだけど」
 掲示板から離れたテーブルで『黒猫の』ショウ(p3n000005)が妙なアイマスクを片手に説明書を広げていた。
 可愛いワンポイントの花のマークがしるされた、なんとも言えないアイマスク。
 説明書には『夢見のアイマスク』と言う名前の記されており、内容もなんとも胡散臭い。
「いやいや、まぁこれテスト品だからね。いわゆるテスターになって欲しいって奴なんだけど」
 説明書を片手にショウはアイマスクの説明を続けてくれた。
 まず一つ、自分が見たいと思う夢を念じながら眠ると思った通りの夢が見られるという。
 見た夢の中で身体は自由に動く、いわゆる明晰夢が見られるという事。
 そして最後、夢はしっかりと記憶に残り、まるで体験したように経験に残るという事だった。
「凄いだろう? これ、普段から持ってたらなんか精神力が強くなりそうな気もするよね」
 確かに話を聞けば凄いが、やっぱり都合がよすぎじゃないかと思う者たちもいた。
「まぁ、そうだよね。これ、練達で作られたもので、そこの"旅人"が持ってきたっていうものなんだ。そのせいで原理はよくわかんないんだけど」
 だからこそ、出回る前にチェックしてほしい。という意図も込めてショウは依頼をイレギュラーズに回していたようだ。
 ともあれ、アイマスクは全部で8つ。
 運よくか、運悪くか。手渡された彼らはどんな夢を見るべきかと考え出すだろう。
 少しばかりゆっくり落ち着いて、お茶でも飲みながら考える事にしよう。


「いやはや、どんな感想が来るんでしょーねぇ?」
 幻想の外れ、その小さな小屋の一角。
 今回の仕掛け人は愉しそうに微笑んでいた。
 見たい夢が見れなかった時の感想、その結果はどうなるのか。
 小さな悪意と愉しみを胸に、感想が届くのを今か今かと待っている。

GMコメント

 不思議な薬飲まされてないですけど、テスターになっていただきます。GMのトビネコです。
 今回のシナリオは特徴的な内容となっており、相談はほとんど必要ありません。
 その為もあり、相談期間は短めに用意させて頂いておりますので、書き忘れにご注意ください。

 さて、依頼について簡単に説明しますと、アイマスクを付けて見た夢を報告するというだけです。
 特に何の技術も必要なく、思うままの間奏を頂ければと思います。

 そして、ここからが注意点であり、またこれはPL情報である為PCは一切知る由もありません。
 このアイマスクは見たい夢は見れず、見たいと思っていた夢とほとんど正反対の悪夢を見てしまうというとんでもない品物です。

 依頼の詳細は以下となります。

●アイマスクについて
 見たいと思った夢と正反対の夢を見るとんでもない代物です。
 夢の中で皆さんは自由に行動することができ、思い思いに夢に対処することができるでしょう。
 
 上記に記載した通り、アイマスクの真相について皆様が知ることが出来るのは夢を見た後になります。
 真相を知った上でのプレイングは出来ないものとして扱わせていただきますので、ご注意ください。

●依頼人について
 ローレットに依頼を持ってきた依頼人。
 練達からやってきた人物であり、彼女もまた【旅人】であり、自称医者を名乗る人物です。
 眼鏡と金髪、赤い外套が特徴的な女性で、アイマスクの開発に関わっていた人物のようです。
 性格や口調が特徴的で、割と印象に残りますが現時点では悪事などを働いているわけでもありません。
 面白い反応や人をおちょくることが好きなタイプのような為、今回もただの悪戯である可能性が高いでしょう。
 
 夢を見た後、結果を報告氏に会いに行くこともでき、関わることもできます。
 しかし、その場合は夢の中での描写がやや軽いものとなりますので、どちらに比重を置くかはお任せとなります。

 
 相談については特に相談することはないと思いますが、どんな夢を見るのか、見たいのか。というロールプレイの場としてご利用いただければと思います。
 夢についてはトビネコの方でアレンジを大いに利かせる場合もございますので、こちら必要ない場合は記載いただけると幸いです。

 以上が依頼の説明となります。
 今回を通じて、この世界でのロールをより深く楽しんでいただければなぁと思っています。
 それではよい夢を!

  • Dream to Reverse完了
  • GM名トビネコ
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年07月18日 21時35分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

オーカー・C・ウォーカー(p3p000125)
ナンセンス
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
蒼銀一閃
ゲッカ(p3p000475)
特異運命座標
ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)
ノベルギャザラー
灰塚 冥利(p3p002213)
眠り羊
ジョセフ・ハイマン(p3p002258)
異端審問官
フルート(p3p005162)
壊れた楽器
成亥 狛(p3p005436)
自称探偵

リプレイ

●『ナンセンス』オーカー・C・ウォーカー(p3p000125)の夢
「……っ」
 こんなに楽しいことがあっただろうか。
 手にした剣で自らが守ろうとしたものを刺し、斬り、捨てていく。
 こんなに楽しい事があるものか。
「ははっ、はははははははっ!!」
 笑いたいのだ、こんなに面白い事があるのだ。また一人、人を殺す。
「……あ?」
 だが、動きは止まった。
 腹部を見れば、錆びた剣が自身の腹から突き出されている。
 視界には仮面の人物が自分に剣を突き立てているのが目に入った。
 そして、その傍にはフードマントの人物、どこか透き通ったような琥珀色の目が、揺らいだ。


●『特異運命座標』ゲッカ(p3p000475)の夢
 寒い、冷たい。
 ゲッカは慣れ親しんだ感覚を身に感じ、ここがどこかという事を思い出した。
 今の居場所に来るよりも前の事。奴隷だった時の夢。
「………」
 辺りを見回せば、似たような境遇の人々の姿もあった。
 けれど、自分自身に指示を与えてくれる存在の姿はない。
 あの時は……そうだ、自分の主人が来てくれた。
 ちゃんと家に帰るように指示を出してくれたのだ。
「………」
 だが。
 待っても。
 いくら待っても。
 どれだけ、どれほど待っても。
 寒空の下、他の奴隷が飢え、苦しみ、倒れても来ない。
 がくり、と身体から力が抜けていく。
 これは捨てられたのだ。
 気づいたときにはもう遅かった。
 歩くほどの力も気力も残っていない。
 ここでただ、打ち捨てられた小さな生命として、寒空の下でただ朽ちていくだけなのだ。
 結局、不安を解きほぐしてくれる人はいない。
 眠い……そういえば、どうしてこんなところでまた苦しんでいるのだろう。
 そんなことを思いながら目を閉じた。


「………夢」
 見たい夢を見ようとして、そしてみたのは悪夢。
「………はぁ」
 ともあれ報告書をまとめよう。
 ゲッカはアイマスクを外し、報告書を書き始めた。
 
 
●『駆け出し冒険者』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)の夢
 燃え上がる家々、シャルレイスはフードを顔も定かではない化け物を相手に立ち回っていた。
「く、あっ」
 剣はあっさりと弾かれ、胴に鋭い斬撃が叩き込まれシャルレイスはその場に倒れ伏す。
「だ、め……」
 力なく手を伸ばすが、手は届かない。
 対峙していた化け物は悠々とシャルレイスの横を通り抜け、街へと入っていく。
「やめ……」
「助けて、あの人は何をしていたの!」
 悲鳴に次ぐ、悲鳴。
「あ、あ……」
 視線だけが向きなおる。
 化け物が守るべき人を殺す、殺す。
 シャルレイスは動けない。動きたくても体が言う事を聞かない。

―――お前のせいだ

 真っ赤に染まった死体の口が動き出す。
 はっきりと喋ったわけじゃないのにそう言われたように感じた。

―――弱い癖に願ったからだ

「ち、違う……」
 絞り出すように、声を出す。
「この気持ちは……嘘じゃないんだ……!」

 物語のような主人公みたいになりたいというただの憧れ。
 そんな素晴らしい力がないのは知っている。
「誰かを守りたい気持ちは……嘘じゃないんだ……っ!」
 何かが割れる音が聞こえた。


「あれ?」
 気が付けばシャルレイスは自分の部屋のベットの上で天井を見上げていた。
「……巴」
 少し不安になり、いつも身に着けている眼帯に手を伸ばす。
「あれ?」
 気が付けばアイマスクはシャルレィスの顔から外れていた。


●『ノベルギャザラー』ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)の夢
 夢の世界へ飛び込んだジョゼは空中庭園に立っていた。
 目の前には新たな世界へとつながる扉が一つ。
 ドアの向こうには青空が広がってる。
「こりゃあもう行くしかねぇ、新しい世界にレッツゴーだ!」
 勢いよく飛び出したジョゼ。
 だが、扉を抜けた先に広がっていたのは。
「あれ?」
 空中庭園だ。
「おっかしーな。さっきまで広がっていた世界は……ん?」
 空中庭園から広がる空。
 しかし、それ以外のものが見つからない。
「おいおい、これじゃあどこにも……嘘だろ!?」
 振り向いたジョゼの視界の中に、扉はない。
 誰もいない、何もない空中庭園に取り残され、戻る為の道も見つからない。
「これじゃどこにも行けないって……!」
 ただただ、無為に時間だけが過ぎていく。
 せめて翼があれば飛べたかもしれないが、ジョゼはどこからどう見ても山猫の獣種。
「ううん……」
 せめて何かないかと空中庭園の端に立ち、眼下を覗き込む。
 とんっ、と。背中が押された感覚。
「お、おい誰……誰もいねぇ!? うわあああっ!?」
 宙に放り出されたジョゼは真っ直ぐ真っ直ぐ落ちていく。
 目の前に近づく海面。いったいどれだけの高さから落ちたのか、このまま叩きつけられたら。
「やばいやばいやばい!」
 必死に手足をばたつかせても体が浮く様子も飛べる気もしない。
「嘘だろぉぉぉぉぉ!?」
 全身に激しい痛みを覚えながら、ジョゼの意識は暗闇に沈んだ。


「い、ってぇ!?」
 激しい痛みを覚えながら、ジョゼは飛び起きた。
 慌ててアイマスクを外せば、そこは自分の寝室。
「は、はぁー……びっくりした」
 自分の見たい夢を見られるというアイマスク。
 ジョゼは自分の瞳でそれをしっかりと見る。
「……はぁぁ」
 同時に深いため息。
 読み取れたのは望む夢と違う夢を見させる用途で作られたもの。
「幻想になれ過ぎちまったかね」
 アイマスクを見て、ジョゼはそんなことを呟いた。
 

●『眠り羊』灰塚 冥利(p3p002213)の夢
 石でできた四角形の建物が建て並ぶ都市の一角、その建物の部屋の中。
「ふぅ……」
 コーヒーを一杯傾けながら、プレイヤーから流れるお気に入りの曲。
 ゆっくりと煙草を吸うのが毎朝の日課。
 もう少し待てば眠りから覚めた彼女がやってくる。
 それもいつも通りの事で、なんて声をかけようか考えてしまう。
「……おかしいな」
 けれども彼女は来ない。
 ふと、不安になり冥利は椅子から飛び上がり、寝室へと走った。
 そして見た、ベットの中に横たわる彼女の姿を。
 もう二度と動かない彼女の姿を。
「………僕のせいだ」
 人ではない悪魔であった自分が彼女の傍にいたから彼女を死に至らしめた。
 見たいのはひと時の幸せの時間だったが、見れた夢は異なるもの。
「…なーんて」
「え?」
 突如として、彼女が起きあがった。
「ふふ、ほら、煙草は体に悪いよ」
「あ、ああ……」
 彼女は煙草を冥利の口から奪い取り意地の悪そうな笑顔を浮かべた。
「ねぇ、こうやって毎日が続くといいよね」
「ああ、そうだね」
 心にぽっかりと飽いた空虚が埋められていくような感覚がする。
 しばらくの間、心地よいひと時を冥利は味わい、幾ばくかの時間が流れた。
「でもさ」
「なんだい?」
 ふと、悲しい顔で彼女が顔を浮かべた。
「こうやって、永遠と永遠と夢に出続けてあげる」
「……何を」
「どうでも良いになんてさせてあげない」
 がしりと冥利の型を彼女が掴む。
 とてつもない力だ、どうあがこうと引き離せない。
「忘れるなんて許さない」
 あまりの力に型から血が滲む。
「夢のように消えてなくなる事なんて許さない」
 彼女の顔が歪む。


 同時に、目が覚めた。
「……ああ、全く」
 起きあがった冥利は、アイマスクを外し一息ついた。
「こんなものを作るなんてねぇ……」
 はぁ、と深いため息をついた。
 どちらにせよ見たい夢ではなかったと、報告書をまとめる事とした。

●『異端審問官』ジョセフ・ハイマン(p3p002258)の夢
「ほぉ……」
 ジョセフの目の前にはひらひらと舞い落ちる白い物があった。
 パラパラと降り注ぐ、白い粉。
「これが雪というものか……」
 雪。季節としては冬の時期に降り注ぐ、冷たく柔らかいもの。
 今まで見てきたものと違う物を見ながらチリチリと肌が焼け付く。
「なわけあるかぁ!」
 つい、勢いで突っ込んでしまった。
 それと同時に、目の前で大きな山から灼熱の溶岩が吹き上がる。
「確かに真っ白だ! だがこれは火山灰ではないかね!? って、うおおお!?」
 勢いよく起きた噴火で周囲が凄まじい熱気に包まれ灰が一気に吹き上がる。
 最悪なことに、火山から砕けた岩石群が降り注いでくるではないか。
 必死になって走り、身の安全の確保を図り、岩陰に隠れる。
「ぐおおおおお!?
 だが、それもダメだ。
 灼熱の溶岩地帯、ただの岩でさえすさまじい熱を持っている。
 身を隠しただけで身体が一気に溶けてしまいそうだ。
「むっ!?」
 ふと、足元からじゅうじゅうという嫌な音が聞こえた。
 硫黄の香り、周囲を見回せば溶岩がどろどろと流れている。
「く、靴がぁ!?」
 気が付けば、自分がはいていた靴の足底が溶け始め、次第に直に足が岩盤に接する。
 凄まじい熱に激痛が走りだす。
「くそっ、夢じゃ無ければ……いやこれほんとに夢か!?」
 死の香りが目の前に近づいてさえいるような気さえする。
 同時に、足元が割れた。
「なぁ……っ!?」
 突然の事に反応が遅れ、地盤沈下に飲まれていくジョセフ。
 目の前に広がったのは、紅蓮の溶岩。そして抗えず落ちていく自分。


 目が覚めた。
 慌ててアイマスクを外す。
 そこは自分の部屋。火山も溶岩もどこにもない。
「一体どうなっているのだ。自分が見たい夢が見られるのではなかったのか……不具合か?」
 改めて説明書を見直すも、見たい夢が見られるとしか書いていない
「まぁ、火山は火山で初めて見れたのでいいのだが、あんまりだぞ……!」
 これはこれで、と思いつつもジョセフもまた報告書をまとめ始めた。


●『壊れた楽器』フルート(p3p005162)の夢
「ぐふふ、ついに来ましたよ夢の世界」
 夢の世界へと飛び込んだフルートはいま、一つの扉の前にいた。
 自分が望んだのは数多の可愛い子達が存在し、自分がモテモテになって仲良く楽しくきゃっきゃうふふする夢。
「さぁ、いざいざぁ!」
 ばぁんと勢いよく扉を開ける。
「おふぁー! いましたぁ!!」
 フルートの目の前には沢山の可愛い子達。男の子から始まり女の子。
 それを見たフルートは迷わず部屋の中へ飛び込む。
「いやー、待ってました……あれ?」
 だが、目の前の子達は、フルートを怯えた目で見ている。
「やだ……こないで……」
「あ、あれ、モテモテのはずじゃ……」
 明らかにフルートを見て怯え、距離を取っている。
 困ったな、と悩むフルートだったが、直ぐに異変に気が付く。
「こないでぇぇぇぇぇ!!!」
 目の前の子達の悲鳴。そう、悲鳴が突如むさくるしい雄たけびに代わる。
 めきめきと変容していく。盛り上がる筋肉。
「は? は!?!?」
 男女関係なしに全員が凄まじい筋肉質な肉体へと変容していく。
「うわあああああああっ!!」
 可愛ければまだよかったのに!
 目の前の存在は全て筋肉ダルマに変容したかと思えば、フルートを追い出そうと追いかけ始めてくる。
「ぎゃああああっ!? 待ってやめて暑苦し……あああああ」
 抵抗空しく、囲まれたフルートは彼らに捕まり、もみくちゃにされていく。
 目が覚めたのは捕まって部屋を追い出される直前だったという。


●『自称探偵』成亥 狛(p3p005436)の夢
「わぁー……!」
 狛の目がキラキラと光る。
 目の前には大量のフライドチキンが盛り付けられた大皿。
 数はもはや数えきれない、山盛りといっていいほどたくさん盛り付けられたフライドチキン。
 特有の油と衣の揚げ上がった香りが空間に満ち、狛の鼻をくすぐる。
「それじゃあ、いっただっきまーす!」
 フライドチキンを手に取り、がぶり。
 じゅわりとした味わいが口の中に広がる。
「ふわあああ、美味しい!」
 今までとは比べ物にならない美味しさ。
 口の中に広がる生臭い香り。
 素晴らしい味わいが狛の口の中で満ち溢れる。
「……あれ?」
 今食べたのはフライドチキンだったはず。
「え?」
 滴るのは血。衣の内側にはぎっしりと詰まった肉。
 鶏肉でもない、豚肉でもない。もはやなんの肉かもわからない何か。
「え、ちょっと……」
 自分の身体がブクブクと太りだす。
 座っていた椅子がべきりと音を立ててひしゃげ、潰れ落ちる。
「ど、どうなって……!?」
 気味の悪い肉、自分に起きた異変。それらの出来事が狛を完全にパニックに陥らせた。
「だ、誰か……!」
「呼びましたか」
 この声は聞き覚えがある。
 『調理場』のコックの声だ。
「よ、よかっ……ひっ」
 助けを求めて振り向いたコックは真っ赤な衣装に身を包んでいた。
 顔すら定かではないコックは、手に持った巨大な鉈を振りかぶる。
 もがいても太った体では動けない、逃げきれない。
「それでは、代金を頂きます」
 勢いよく、鉈が振り下ろされる。


「うわあああっ!?」
 勢いよく飛び起きた狛はベットから転げ落ちた。
「ゆ、夢……」
 ほっと胸をなでおろし、アイマスクを外す。
 気が付けば朝、そして目の前には依頼のための報告書が目に入った。
「み、見たい夢、見れてないじゃないですか……」
 一体どういうことだと怒りかねない気持ちを抑え、狛は報告書にありのままを書き始めた。


●報告会
「おー、皆さん夢見はどうでした?」
 依頼人の家にたどり着いたイレギュラーズを迎え入れた彼女は開口一番そう言い放つ。
 が、あまりいい顔をする者はいなかった。
「死ぬかと思ったんだぞ! ……あれ、案外可愛いじゃん?」
 報告に来たフルートの目の前にいたのはやや低身長で小柄な女性。
 体格は少女に近いだろうか、見た目も意外と可愛い。
「もふもふさせろーーー!」
「うぬおあー!?
 鬱憤が溜まっていたフルートが彼女に飛びつきじたばたとしているが、とりあえず話は進められていく。
「結論は見たい夢は見れなかった、だな」
「おや、そうですか?」
 フルートにもみくちゃにされながらも、彼女は興味ありげにオーカーを見据えた。
「けど、夢の中とはいえ本当に現実だと錯覚しちまうくらいだった。胡蝶の夢だったか……あんな感じだったな」
 ほほう、ほほうと彼女は実に愉しそうに頷く。
「この前見た夢よりも質が悪いな」
「まぁ、夢ってそう言うもんですからねぇ。案外この現実も夢かもしれませんよ?」
「だったら、今頃死んでるだろうよ。それともあれか? 地獄はこんな生臭い場所だとアンタは思っているのかよ?」
「ふふ、夢は良いものですから地獄だなんてそーんなまた」
 結局ははぐらかされてしまった。食えない奴だとこの場にいた面々は思う。
「というか……それ、失敗作じゃないかな。全然、望む夢なんか見られなかったよ」
「おおっと、そういや全員そうですねぇ。失敗しちまってましたかねぇ」
 シャルレイスの問いにけたけたと彼女は笑う。とても楽しそうに。
「随分楽しそうだけど……もしかして、わざと?」
 じとり、とシャルレイスが彼女を睨む。
「いやはや、そんなことはねーですよ。でも、経験を積めたってのは良い感じですねぇ。助かりましたよーう」
 事実ワザとだろう。実際そういう用途で作っているのだから。
 とはいえ特に追及をする者はいなかった。
「……あんた確か医者って言ってたな。コマツバラ エンメイ、イデア、この言葉に聞き覚えはあるか?」
「ん、ああー。医者はやってますが、あまり人との繋がりはないもんで。生憎わかりませんねぇ」
 ふと、思いだしたようにオーカーは問うが、彼女には関係ないようだった。
「でもまぁ、おかげでもうちょっと色々できそうなんで。また進展があったら皆さんに頼みますかねぇ」
 けらけら笑いながら彼女はそう宣言した。
 次はもっと完成度を高めてからにしろ、と思わなくもなかった。
「でも、まぁ……やっぱ面白いですよねぇ、ふふ」
 彼らが去った後、報告書を眺めて彼女は一人微笑んでいた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

おはようございます。
夢はいかがだったでしょうか、トビネコです。

不可思議なアイマスク、不可思議な依頼人、そして悪夢ばかり。
報酬は出ましたが、アイマスクさえつけなければ再びいつも通りの夢が見れるでしょう。
実際の所、アイマスクは不具合(実際は不具合じゃないのですが)が多かったという事で販売停止、幻想の平和な夢は守られました。
とはいえ依頼人の彼女、もしかしたらまた何か変なものを提供するかもしれません。

その時はまた生暖かく見守ってあげてください。

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