PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Closed Emerald>樹に擬態する盗賊

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 翡翠、迷宮森林。
 まるで生きているかのように木々や草花が生育するこの地帯は、外部者を拒むまさに天然の要塞といった印象も抱かせる。
 それもあって、静かなこの地はさわやかな風が吹き、小鳥がさえずり、動物達が楽しげに声を上げる。

 しかし、このところの翡翠はそれらが一変し、木々が嘆き、悲しみ、怒りの感情に包まれている。
「大樹の嘆き、か。この力はいい」
 その大柄な男は下卑た笑いを浮かべる。
 大斧を担いだルボルという名の男は、かつては砂蠍に所属していたが、下っ端であった為に大規模な戦いには出番もなく、かといって砂嵐にも居場所のない彼はコソ泥のような真似をして過ごしていた。
 ただ、そこに転機が訪れる。彼は何らかのきっかけによってバグNPCとしての力を得たのだ。
「今なら、スコルピオにだって勝てるかもしれねぇ」
 その半身は人外と化し、樹と同化したような姿となっている。
 彼の従える子分達もまた同様に半身が樹となっており、並々ならぬ力を感じさせた。
 そんな彼らは、完全に人に擬態する能力も持っているのだが、人型となったルボルらが行っていたのは、パサジール・ルメスを自称しての翡翠へと侵入。
 翡翠の民も流浪の民ならばと受け入れてくれていたが、ルボルらが暴行し、森の中で激しく暴れれば、それだけで翡翠の不信を買う。
「力があれば何でもできる。……最高の気分だぜ」
 彼は木々に擬態して迷宮森林内に潜み、新たな手を打つべく子分に指示を出すのである。


 ネクスト、翡翠。
 サクラメントが一斉に停止した原因を調べていたイレギュラーズ達。
 その最中、自然を荒らしている『余所者』がいるが為に、翡翠は排他主義を強めているのだということが分かってきた。
「捕まっていたあたしの仲間が色々教えてくれたっすよ」
 パサジール・ルメスのリヴィエール・ルメス……といっても、彼女は本物ではなく、ネクストにいるR.O.Oでのリヴィエールである。
 先日は彼女の依頼により、翡翠の森林警備隊に捕らえられたパサジール・ルメスの一隊を救出している。
「どうやら、あたし達の偽物が悪さしているみたいっす」
 そこで頷いたのがじぇい君(p3x001103)と砂嵐所属のアッシラだ。
「僕達もそれについて調査していたんだよ」
「どうやら、元砂蠍が一枚噛んでいるらしい」
 2人の話によれば、元砂嵐所属のルボルという小悪党がパサジール・ルメスに扮して翡翠の民を騙し、襲撃したというのだ。
「大樹の嘆きっす」
 リヴィエールが発した『大樹の嘆き』とは、翡翠の防衛機能のようなもの。
 大樹の嘆き、悲しみ、怒りといった感情を元に生まれた魔物のような存在が森林迷宮内で動き回っている。
「そこで、ルボルという元砂蠍とその一味が大樹の嘆きに出くわしたんだ」
 ルボルはたまたまこの地へと足を踏み入れて遭遇し、撃退したのだろう。ただ、そこでバグNPC化した彼や子分達は大樹の嘆きの力をも合わせてその身に取り込んでしまった。
「ルボルは元々大したことのない小悪党だったが、何かをきっかけに大きな力を得たのは間違いない」
 アッシラは一度対したようだが、まるで歯が立たなかったという。
「パサジール・ルメスを装ったのも許せないね。翡翠の混乱を楽しんでいるように見えるよ」
「全くっす」
 じぇい君の指摘にリヴィエールが頷く。
 翡翠の幻想種達は頻発する事件に疑心暗鬼となってしまい、何を信じればいいのかわからない状態となっている。バグNPC化したルボルもそうだが、そうした存在がさらなる疑念を幻想種達へと植え付けているのだろう。
 ともあれ、ルボル一味をどうにかせねば、パサジール・ルメスの潔白は晴れぬままだ。
「先の一件で仲間を捕まえていた森林警備隊に、自分達と対する勢力があることを示すといいと思うっす」
 リヴィエールが提案したのは、森林警備隊の巡回コースでルボル一味と交戦。彼らに助力を仰いで一緒に撃退するというものだ。
 ただ、アッシラが言う様に、ルボル一味の力は相当なもの。共闘しても取り逃がす可能性も高い。
「まあ、そこは僕達の腕の見せ所ってね」
 腕を鳴らすじぇい君に、リヴィエールは期待の視線を向ける。
「このままでは、あたしらは商売あがったりっす」
 だから、翡翠の人々に自分達が無害であると証明してほしいと彼女はイレギュラーズ達へと切に願うのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <Closed Emerald>のシナリオをお届けします。

●目的
 バグNPC化した盗賊一団の撃退

●敵……バグNPC
 パサジール・ルメスを語り、翡翠の民に疑心を生み出す一因として暗躍しているようです。
 大樹の嘆きの力を取り込んでおり、完全な人形態になれる他、樹に擬態する能力もあるようです。

〇ルボル
 大柄でガタイのよい40歳前後の大男。大斧を担ぐ脳筋……と思いきや、バグNPCとなり、『大樹の嘆き』の力も得て人外となり果てており、半身が樹と融合したような姿となっています。
 力任せに大斧を叩きつけてくる他、伸びる樹の腕、木の葉乱舞、草絡めといった攻撃も行います。
 なお、現実世界でも拙作砂蠍関連シナリオに登場し、イレギュラーズに討たれています。

〇子分×25体
 ベースはチンピラ風の青年達ですが、やはり大樹の嘆きによる力で半身が樹と融合してモンスター化してしまっています。
 半数がナイフでの攻撃、半数が弓を使いますが、全員が土ミサイルや風の刃を操る術を持っています。

●不明
〇迷宮森林警備隊×10体
 隊長、弓の名手であるラウルをメインに、弓、風魔法、風精霊を操る幻想種で構成された警備隊です。後方、樹上からの攻撃を得意としています。
 基本的に、翡翠以外の者に対する排他主義の考えを持っており、外部の者全てに攻撃を仕掛けようとします。
 大樹の嘆きに関しては彼らも知識がありますが、バグNPCについて理解させるのは極めて難しいでしょう。

●NPC
〇リヴィエール・ルメス
 ROOでのリヴィエールです。
 自分達を名乗る盗賊にかなり怒っている様子です。
 今回はOPのみの登場です。

〇アッシラ
 「<大樹の嘆き>毒をもがれた蠍達」で交戦した砂嵐の一隊のリーダーです。現実の彼は敵対勢力のまま死亡していますが、じぇい君らの説得もあって停戦状態にあります。
 今回はパサジール・ルメスの民を通して報酬を渡すことで、翡翠の状況やバグNPCについて調査してくれていました。
 すでに翡翠に警戒されていることもあってか、今回は参戦しません。

●状況
 翡翠の迷宮森林に、パサジール・ルメスの民が捕らえられる事件()「<大樹の嘆き>森に捕らわれた流浪の民」が起こった後、じぇい君はアッシラと共に翡翠の状況について調べていました。
 その一因として、バグNPCの暗躍がありました。
 大樹の嘆きによって力を得た彼らがパサジール・ルメスを語り、翡翠で暴れていたようです。
 パサジール・ルメスの潔白を証明する為。そして、これ以上翡翠での暗躍を阻止する為、バグNPCの一団の討伐に取り出します。
 戦場は迷宮森林内。バグNPCらは木々に擬態していずこかに潜伏しています。ある程度の場所はリヴィエールやアッシラによって教えてもらっていますが、細かい場所は不明です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
●重要な備考
 <Closed Emerald>には敵側から『トロフィー』の救出チャンスが与えられています。
 <Closed Emerald>ではその達成度に応じて一定数のキャラクターが『デスカウントの少ない順』から解放されます。
 但し、<Closed Emerald>ではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。
●『パラディーゾ』イベント
 <Closed Emerald>でパラディーゾが介入してきている事により、全体で特殊イベントが発生しています。
 <Closed Emerald>で『トロフィー』の救出チャンスとしてMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
 MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
 指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
 但し、当シナリオではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。

 それでは、よろしくお願いします。

  • <Closed Emerald>樹に擬態する盗賊完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年11月09日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

じぇい君(p3x001103)
オオカミ少年
アンドレイ(p3x001619)
わーるどいずまいん♂
コル(p3x007025)
双ツ星
かぐや(p3x008344)
なよ竹の
壱狐(p3x008364)
神刀付喪
スイッチ(p3x008566)
機翼疾駆
黒子(p3x008597)
書類作業缶詰用
ミミサキ(p3x009818)
うわキツ

リプレイ


 ネクスト、翡翠の迷宮森林内。
 依頼を受けたイレギュラーズは、周囲を警戒しながら固まって歩く。
「俺様の守備範囲に近い男がいるって聞いてきたぜ!」
 全身筋肉隆々の大男、『わーるどいずまいん♂』アンドレイ(p3x001619)が豪快に笑う。
 今回討伐対象であるルボルなる男は、情報によると彼にとっては守備範囲内のことだが、さておき。
「なんスか? イレギュラーズやその関係者を名乗るのがブームなんスか?」
 寄生型ミミックである『ステルスタンク』ミミサキ(p3x009818)は、この一連の事件にパラディーゾの影がないとしながらも、他人を語る盗賊という点を指摘する。
「他者の名を騙った上に翡翠の人達を騙すような真似をして不信を煽る……許せないよね」
 今回は、パサジール・ルメスを語ったというその一団に、赤銅の髪に青と金のオッドアイを持つ『可能性の分岐点』スイッチ(p3x008566)が憤る。
 だが、それだけではなく、その実力も本物である様だ。
「アッシラさんをあそこまで追い詰めたのだから、ルボル達が強いのは予測が尽くよ」
 小柄な旅芸人『オオカミ少年』じぇい君(p3x001103)は、元仲間が撃退された事実を受け止め、今回の敵の強さを推し量っていた。
「バグだけでなく砂嵐の賊まで来ているなんてな。いや、一体化したのか」
 長い黒髪女性の姿をとる刀の付喪神『妖刀付喪』壱狐(p3x008364)がいう様に、今回の相手はバグNPC。しかも、大樹の嘆きの力をもその身に取り込んでしまったという。
「しかし、バグの力を誇るというのもおかしいな感覚だが……バグだから自覚出来ないのか?」
 その力をひけらかすようにして元仲間であるアッシラを倒したという話に、壱狐は疑問を抱く。
「大樹の嘆きの力を取り込んでるっていうのは厄介だけど、仕留めさせてもらうよ」
「バグNPCどもをブチ転がして差し上げますわ」
 そこで、そもそもバグNPCという存在なだけでイレギュラーズにとって敵でしかないと、スイッチが毅然と告げる。ぱっつん黒髪の『なよ竹の』かぐや(p3x008344)も、すでにやる気十分といった様子だ。
「何はともあれ翡翠の異変も放って置けない、賊は追い払わなくてはな」
「極悪非道の盗賊にはきついお仕置きをくれてやる」
 この事件ですらも、翡翠の異変の一端でしかない。問題を起こす賊の討伐に壱狐が意欲を見せると、仲間達の話を聞いていたアンドレイも腕を鳴らしていたのだった。


「まずは擬態している盗賊団の一味を見つけるところからだね」
 まずは、問題のバグNPCを見つけたいところ。
 スイッチは索敵系の能力を持たない為、仲間の情報を元にして捜索を行う。
「真正面からのガチンコ勝負なら余裕のよっちゃんいかでしょうが……」
 かぐやは捜索範囲が迷宮森林内であることと、賊が樹木へと擬態能力を有する点が面倒臭い要因だと指摘する。
「重要なのはわたくしたちが狩られず、逆に追い詰めるための索敵能力にあると心得ます」
 そう告げるかぐやはエネミーサーチを働かせ、敵の所在感知に努める。
「敵は樹に時擬態したり、人の姿に化けるのだから、注意も必要だね」
 索敵を行うじぇい君が言うには、樹だけでなく自分達にまで擬態の可能性すらあると踏む。このため、一行は距離を離さずある程度纏まって移動する。
「居所を丸裸にしねぇとな」
 それならと、アンドレイは定期的に「ラブティメットワールド」を展開する。
 一定範囲にいる40代以上の男性の居場所を把握するという自らの趣味によるアクセスファンタズムだが、刺さるときには刺さるとアンドレイは豪語する。
「盗賊団の捜索、撃破は優先したいですが、森林警備隊と接触することも想定すべきですね」
「警備隊を味方につけないとね」
「もし遭遇したら、両手を挙げて交戦の意志がないことを示さないとね」
 錬の言葉はもっともだ。スイッチの呼びかけを受け、周辺警戒を行うミミサキが視線を向けたじぇい君がメインでの交渉、説得を請け負う手はずに。
「バグNPCのことをいきなり信じてもらうのは難しそうなのです」
 狼の耳と尻尾を備える『双ツ星』コル(p3x007025)は警備隊との遭遇前に、盗賊団を1体でも倒しておきたいと主張する。
 においで相手を分析、区別できると胸を張るコルは警備隊を避けるように、かつ悪人のものを優先して接触できるよう鼻を引くつかせる。
「樹化した人間の怪物を見せれば、私たちの言葉にも説得力が出てくるはず」
 ルボル一味の発見は急務。
 ただ、子分が大きく散開している可能性は低いとかぐやは見る。
 彼女はサバイバル技術を併用し、盗賊団が人型時に残す足跡、野営の痕跡なども探り、最初の1人の捕捉に当たる。
 そこは、黒づくめの衣装を纏う『書類作業缶詰用』黒子(p3x008597)も物体通過による自然荒廃……木々の折損や地表の傷等をチェックし、移動経路を推測することで、協力する。
「どうやら、遠くはないようです」
 野営の後はここ数日のもの。敵は普段、人型をベースにして生活しているのは間違いないと黒子は速考で判断し、行き先に辺りをつける。

 ルボル一味の捜索を続けるイレギュラーズ一行。
「臭います、イヤな感じです。私の鼻は誤魔化せないのですよ」
 見た目は樹に見せかけても、半分は人間。コルは鼻をひくつかせ、人の臭いをかぎ分ける。
「俺様の守備範囲なら逃げられねぇぜ」
 さらに、アンドレイもまた自身の守備範囲内である存在を感じ取り、前方を注視していた。
「…………」
 黒子は森に吹く風とは明らかに違う動きをした樹に目をつける。
 敵の擬態についての情報を神秘知識で得た壱狐は、それを匠の智慧で識別仕様と務める。
「この樹……!」
 彼女は即座に本体である刀で切りかかると、擬態を解いた子分が姿を現す。
 かぐやもまたこの近辺に大半が潜んでいると当たりをつけ、目を付けた樹目掛けて竹槍を投げつける。
「ぐああっ!!」
「バカが、何やってやがる!」
 大声で叫ぶルボルの子分の擬態が解けると、一斉に子分が人型の姿をさらす。
「見つけましたよ悪者たち、覚悟するのです!」
 コルが戦闘態勢をとって叫びかけると、一際大きな樹が人型をとる。
「まあいい、全部ぶっ潰せば済む話だ……」
 人型となったルボルは異様な威圧感を漂わせ、木々の根を踏み砕くのだった。


 パサジール・ルメスを名乗って翡翠を混乱させていたバグNPC、ルボル一味。
 交戦を始めようとするイレギュラーズだが、ルボルらが現れる瞬間を同じく探知していた者達がいた。
「なんて禍々しい……」
 森林警備隊を率いる弓の名手ラウルはルボルが放つ威圧感に怯みかけるが、強く足を踏みしめて森の異物である一味と対する。
 そして、彼らにとって、イレギュラーズもまた森の異物という認識だ。
「余所者は去れ。でなくば、強引にでも排除させてもらう」
 両者へと言い放ち、弓を引くラウルと風魔法や風精霊を解き放てるよう構える部下達。
 彼らへと、じぇい君が大きく前へと進み出て、アクセスファンタズムを使ってにこやかに笑う。
「僕達は敵ではありません。今翡翠内部を荒らしている砂蠍残党を退治にきました」
「私たちは悪い賊を追って来たのです」
 コルもまた訴えかけるものの、警備隊は自分達の忠告に耳を貸さないと判断したらしい。
 一斉に放たれる矢や風。じぇい君はコルや仲間を庇ってそれらにさらされて。
「翡翠を荒らすつもりはありません。木々にも傷はつけません」
 コルもこの場はじぇい君に任せ、警備隊の攻撃に耐える。
 その間、他メンバー達はルボル隊の出方を窺う。
 相手は動かずにいたが、顔を見合わせて何か画策していたのは間違いない。
「敵が奇襲して同士討ちしてくる可能性があります」
 敢えて、黒子は声を上げてイレギュラーズや警備隊に警戒を促し、状況を混乱させる行いに釘を刺す。
 じぇい君の呼びかけが続く中、数体手下の姿が消えており、森の木々の並びにも変化が起こっている。
 そして、そこから放たれる土ミサイルや風の刃。
 イレギュラーズ側に意識を向けていた警備隊が気づく様子はなかったが、すでにそちらに向かっていたスイッチが警備隊を庇う。
(不意打ちで警備隊の人達に何かあったら、こちらも疑われそうだからね……)
 舌打ちし、木々に擬態してやり過ごそうとするルボル一味だが、黒子もまた肉盾となり、別の手下が飛ばす弓矢を受け止める。
(いずれ手を取り合う仲間となるはずの方々ですからね)
 あくまで、自分達は「翡翠の迷惑にある前に取り逃がした敵を討ちに来た」体。警備隊には有効な姿勢を崩さない。
「…………」
 これまで、幾度も翡翠の民はパラディーゾなどによって情報攪乱させられている。もちろん、ルボルらも同じはずだ。
 それだけに難しいと分かっていながらも、黒子は彼らの被害軽減を図ることで信頼獲得を狙う。
 警備隊に背を向けていたミミサキもまた肉の盾となり、時折飛んでくるルボルらの攻撃を受け止める。
 警備隊からの攻撃も想定内ではあったが、さすがにすぐ落ちることはないだろうとミミサキは踏んでいたようだ。
「また来まス!」
 とはいえ、今は手前側からの奇襲が問題。ミミサキはレアドロップの予感を働かせ、攻撃を引き受けようとする。
 その間に、アンドレイは敵将ルボルへと肉薄していて。
「正直他に浮気して抑えられると思わねえからな。だからお前も浮気してくれるなよ?」
 本気でやらなければ、やられるのは自身だとアンドレイは全力で殴り掛かる。電撃を伴う一打は、強くルボルの気を引く。
「てめえ……」
 不意をつかれたルボルだが白い歯を見せて、樹となった半身の腕を伸ばしてアンドレイの体を縛り付けていた。
「相手も多少は木々の力を使いこなせるようですが、竹のもつパワーこそ至高」
 乱戦状態となってしまったが、かぐやは警備隊から狙撃されぬように木々を遮蔽としつつ、さらに強く手下へと竹槍を投げつける。
 しばし、イレギュラーズは両者からの攻撃を同時に浴びる形となってしまう。
 それでも、彼らは信念をもって警備隊を守り、彼らを説得する。
「大樹に攻撃を仕掛けた害虫……バグを退治しようという思いは一緒です。協力とまでは言わないまでも停戦できないでしょうか?」
 警備隊へと呼びかけを続ける壱狐。
 乱戦の最中とあり、呼びかける警備隊が盗賊団に奇襲されぬようにだけは注意を払う。いつの間にか樹に擬態していた手下に攻撃されては、この後の戦いにも支障が出てしまうからだ。
「残党が翡翠に潜り込んでいては被害が大きくなるばかりです。どうか僕達を信じてください」
 じぇい君はというと、警備隊やルボルの手下からの攻撃にも笑顔で呼びかけを続けて。
「貴方達が騙されたと判断したら、僕達を後ろから撃つなり好きにしてください」
 じぇい君の体はかなり傷が深まってきている。
 彼が諦めるまではと、コルも傷つき、警備隊の飛ばす渦巻く風や風精霊の切りかかりにも耐える。
「真の敵は此奴等だよ! 翡翠を守る為にも僕達に力を貸して下さい!」
 願いを込め、じぇい君は警備隊へと熱く共闘を申し出る。
 攻撃を続けていたラウルだったが、一度手を止めてから部下達へとこう告げる。
「真実を見極める。その為に……全力で奴らを排除するぞ」
「「了解」」
 まずは、自分達にもイレギュラーズにも攻撃を行うルボル一味へと彼らはターゲットを切り替え、攻撃を再開したのだった。


 森林警備隊を説得したイレギュラーズ一行はそのまま、ルボルらバグNPCらの討伐に動く。
「この偽者共! 翡翠を荒らす貴様達を僕は許さない!」
 じぇい君は自身の傷も厭わず、子分らの使うナイフや風の刃をその身で受け止める。
 ミミサキもまた子分をメインに引きつけを行っていた。
 ある程度敵を引き寄せたミミサキはミミックとしての容器で子分を捕食することで体力の回復も図る。
「チッ、余計なことしやがって……」
 露骨に嫌悪感を示すルボル。こうした形で思ったように自らの力が発揮できぬ状況に苛立っていたのだろう。
 絡まってくる枝に拘束されるアンドレイはきつく締め付ける枝に耐え、できる限り仲間から距離を離す。相手は木の葉乱舞で広範囲を切り刻む力もある。
(生かして捕まえられれば、パサジール・ルメスの潔白の証明に役立つかもしれねえ)
 ともあれ、今は不屈の闘士で己の肉体に活力を与え、強敵であるルボルの斧の猛攻に耐えるのみ。
 また、壱狐もルボルへと攻撃を優先させ、相手の延ばす枝を切り払いながら敵の能力を見極める。
「金克木!」
 五行思想では、金属製の武器が木を傷つけ、切り倒すとされ、壱狐も果敢にルボルに切りかかって傷を増やす。
 森林警備隊もまた、ルボルらにも攻撃を行ってくれている。
 ただ、攻撃のみで、支援を行ってくれるわけではない当たりはまだ壁を感じる翡翠の民である。
(極力森を傷つけないようにしないと)
 彼らの不信を買わぬようにと、スイッチは森の木々まで傷つける範囲攻撃は封印し、木々の隙間を縫ってスラスターを起動、狙った子分目掛けて特攻する。
 手応えは十分。だが、敵の数が多いこともあり、スイッチはすぐさまその場から距離をとるヒット&アウェイ戦法で戦いを進める。
 黒子もまた森や警備隊への悪影響を懸念し、単体への攻撃を中心に行っていた。
 仲間や警備隊の攻撃が集まる子分の中にはそろそろ限界が近い者も増えてきている。
 そいつ目掛け、黒子は凝縮した魔力を子分へとぶつけて倒してしまう。
 先程まで前線で盾となっていたコルも手数を活かして攻撃を繰り返す。
(巨体であっても、敵が地中深くに根を張っているわけではありません)
 先程の野営の後から、動いているのは明らか。コルは敵の重心を見極めて拳による打撃を叩き込んで相手のバランスを崩す。
 倒れる敵へと不敵に微笑んだかぐやは竹槍を打ち込み、とどめを刺したのだった。

 イレギュラーズは万全を尽くして交戦に当たるが、能力設定がデタラメなROOではそれでも戦いでは運が絡む。
 ルボルを抑えていたアンドレイや壱狐などは非常に厳しく、大きく息をついていた。
「おおおおおおっ!」
「さすが、だな……」
 強力な敵の大斧の一撃を叩き込まれ、アンドレイが倒れる。
 壱狐も追い込まれ、自身最大の一撃を相手の脳天へと撃ち込んだが、ルボルはビクともしない。
「生憎、土も力も使えるもんでなあ」
「……不覚」
 次の瞬間、草に絡まれた壱狐は一気に体力を削がれて力尽きてしまう。
 次々、仲間達がデスペナルティによって姿を消す中、ミミサキはルボルの抑えがいなくなると考えて接敵し、注意を引き始める。
 友軍……というにはやや中立寄りにも感じられる森林警備隊。
 彼らへと黒子は癒しの霧を展開して回復にも当たるが、逆側からの支援はない。追い返せたならそれで構わないとの判断からだろう。
 その警備隊から受けた傷は浅くない。
 スイッチはできるだけ相手に行動させぬよう子分達の力を封じていく。
 そして、コルが素早く動いて子分達を1体、また1体と重い一撃で地面へと沈めていた。 
 ただ、敵将ルボルが止まらない。
「真の強者であれば何かに擬態などすることなく、ありのままで全てを蹂躙すれば良かったハズ」
 そこで、かぐやが真っ向勝負をと竹槍を打ち込んでいく。
「コソコソと半端な動きをしている時点で、根っこのところはちーーーっとも変わってはいないのですわ」
「俺は……俺の道を歩むのみ!」
 だが、バグNPCとなったルボルは大声て吠えて。木の葉でかぐやの体を切り刻む。
 かぐやが消え去ってしまった直後、森林隊による攻撃もあって手近にいた子分を倒したじぇい君が迫る。
「これはアッシラさんの分だ!」
 仕込み刃で敵の首を狙うじぇい君。
 だが、ルボルはそんな彼を真上から振り下ろす大斧で叩き潰してしまう。
「…………!」
 森林隊が体を引きつらせる中、ルボルの首にも深く刃が突き入れられたことで、その身を揺らがせる。
「覚えていろ……!」
 首から血を流しつつ、ルボルは倒れる子分を引き連れる形で引いていく。
 残るイレギュラーズは警備隊が再度奇襲されることも警戒し、深追いを避けたのだった。


 その後、イレギュラーズは一度森林警備隊と共に迷宮森林の入り口付近にまで戻り、サクラメントに戻されたメンバーやパサジール・ルメスの民、アッシラらと合流する。
「共闘をありがとう。外の世界の人間は決して悪い人達だけじゃありません!」
 そこで、じぇい君が改めてラウルら森林警備隊へと事情を説明する。
「…………」
 しかしながら、余所者に抱いた不信感は簡単に消えるものではないのだろう。
「僕は貴方達ともお友達になりたいです」
 真摯なじぇい君の訴えにも、ラウルは背を向けて。
「今回は世話になった。一応礼は言っておく」
 そうして、部下を引き連れて迷宮森林内へと戻っていく。
 同タイミングで、パラディーゾによる事件も起こっている。それらの話が別所から上がってくれば、イレギュラーズの行いが認められるようになるはずだ。
 彼らが自分達のことを理解してくれるよう願いつつ、一行はその場を後にすることにしたのだった。

成否

成功

MVP

じぇい君(p3x001103)
オオカミ少年

状態異常

じぇい君(p3x001103)[死亡]
オオカミ少年
アンドレイ(p3x001619)[死亡]
わーるどいずまいん♂
かぐや(p3x008344)[死亡]
なよ竹の
壱狐(p3x008364)[死亡]
神刀付喪

あとがき

 リプレイ公開です。
 MVPは身を張って森林警備隊を説得した貴方へ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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