PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<lost fragment>絆の味と分たれた心

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●死ぬときは常に1人だから
 街を歩く恋人達。家族連れ。友人グループ。人々は彩り豊かな絆を纏い、街を歩く。街の住人である者も、そうでない者も、ここでは等しく『絆深き者の園』である。
 ――縁結びと絆を深める街『ウィーン・クルム』。この街の教会で愛を誓い合うことが永らく続く絆の証であり、街のいたる所に絆を深める為の催しや施設が所狭しと存在する。
 正義の歴史に大々的に記されるような話ではないが、嘗てこの地に現れた聖人が神の奇跡でもって離れ離れになった家族を再会へと導いたことに由来する。諸説あるが、人の関係、およそ『絆』と呼べる汎ゆるものを、或いはそのきっかけを求める者すらも受け入れる地なのである。
 ゆえに、この地には人々の絆が溢れている。
 だからこそ、絆(それ)を求めるものを、悪意を以て奪おうとするものにとって最高の土壌であることは間違いない。
 その日は風が強い日だった。人々は風に抗うように身を寄せ、あるいは風に後押しされるように想い人との距離を詰めようとする。
 そんな人々の間をすり抜けるのは、円筒形の胴に尾のついただけの浮遊体。例えるなら目のないウツボ、カイロウドウケツの内側にノコギリ状の歯がびっしりと巡らされたようなものがそこかしこを飛び回っていると言えばいいだろうか?
 それらは意識してか、人々の間を飛び回る。そして――
「あら、貴方は誰かしら……?」
「なんでくっついてるんだ、近付かないで貰えるかい?」
「フヤァァァァア……ッ!!」
「なんで私は知らない赤ん坊を抱いてるのかしら?」
「おばちゃん誰?」
 先程まで仲睦まじく歩いていたカップル、家族連れなどが突如として仲違いを始めたではないか。
 まるで最初から他人同士であったかのように、親子ですらも他人であるかのように振る舞っている。
 もう少し時間を待てば、各所で諍いが始まるに違いない。他人同士が身を寄せ合っている事実とは、各々の感情一つでほころび、崩れていくものなのである。
「ヒッヒ、美味しい、美味しいねェ……人の絆というのはなんでこんなに美味しいんだろうねェ? 人間たちには過ぎた感情なんだろうけどそれがイイ! もっともっと絆を、もっともっと崩壊(カタストロフ)を!」
 混乱が続くウィーン・クルムの街を見下ろす高台で笑う影は、率直に言って『異形』としか言いようがなかった。馬の下半身に人間、というのもおぞましき鬼のような上半身を据えたそれは、右腕の先が切り取られ砲身のような変貌を見せている。さきほどまで街を飛び回っていた異形はその腕に収束し、更に飛び出していく。
 その異形は未だ食い飽くことなく、街の絆を食い散らかすに違いない。その次は、象徴たる大聖堂を。それを奪われれば間違いなくウィーン・クルムはその街として形を保てなくなるだろう。恐らくは人々の諍いが加速し、混乱が始まるに違いない。
 この状況に猶予はない。これが、『起きるべき未来』でさえなければ。


「妾は人々が幸せになることも、絆を育み、そのなかで新たな絆を得る事も素晴らしき事と思うておる。だからこの未来だけは看過出来んのじゃ。ウィーン・クルムはなんとしても防衛せねばならぬ」
 『【偽・星読星域】(イミテイション・カレイドスコープ)』が映し出した未来を背景に、大司教アストリアは額にうっすらと、本当に薄っすらと青筋を走らせながらイレギュラーズへと向き直る。
 この未来通りにことが進めば、麗しきウィーン・クルムはバグに蝕まれ、バグNPCが闊歩する異界と化すだろう。現状の華やかさを思えば、その後の揺り返しなど考える必要もあるまい。
「『ワールドイーター』、世界を食らう此奴がまっさきに潰すべき敵じゃ。腕から吐き出す雑魚は無尽蔵であろうから、深追いはならん。……此奴らを逃して、いっとき絆が失われようと大元を潰せば疾く戻ろうよ。今から赴けば街から離れた森の中で迎撃が叶う。逆に言えば、配下共を入り組んだ森の中で撃ち落とすには遮蔽が多く不意打ちを喰らいやすくなろうな」
 右腕の異形もさることながら、頭部の鬼人種めいた大角、胴を覆う硬質化した皮膚の鎧、左腕に持つ大鎌の鋭さは何れも油断ならぬものだろう。
 配下の異形達は口腔部の形状を考えれば傷が残ることは必至、それ以上の悪意が備えられている可能性もある。
 何につけても油断出来ぬ相手だということは明らか。早々に撃破し、人々の絆を守らねばなるまい。
 ――正義国を舞台にした新イベント、『lost fragment』が始まります! ふるってご参加ください!
 この不愉快なジングルを叩き潰すほどの正当性を、今は拳に籠めて。

GMコメント

 新機軸と聞いて我慢できずに飛び出してきた、じゃなくてなんとかなりそうなので現れたのが私ってワケ。

●成功条件
 ワールドイーター『イドラカノン』撃破

●イドラカノン
 馬の下半身(胴)に鬼のような肉体、右腕は配下『イドラアモー』を吐き出す砲身、左腕は大鎌を備えた存在。体躯はかなり大きい。
 馬の肉体に違わず三次元機動力にすぐれ、森の中でも木を駆け上って落下攻撃を行うなど臨機応変に戦う。
 上半身の防技は高く、機動力と反応もそれなりにある。そこそこ強敵なので油断はできない。
 鎌による攻撃のほか、イドラアモーの直接射撃、配下としての召喚、蹄を用いたケリ攻撃など。比較的中距離までの攻撃に偏っているが、全員で距離を取ればイドラアモーに包囲ブロックさせて一気に接近するなどもあるので十分警戒すること。

●イドラアモー
 イドラカノンから射出される、円筒形の肉体に内側にずらりと牙を備えた怪生物。宙を飛び回り、絆を食ってイドラカノンに還元する。
 初期数20、ターンごとランダムだが10~15程度増え続ける。取り逃した分(出現3ターン後)はウィーン・クルムへと直行する。
 イドラカノン撃破時にまとめて消滅する。
 攻撃の威力は世辞にも高くないが【防無】【必殺】を備え、一部の攻撃にはHP減少系BSを伴う。
 また、参加者間に相互感情を持つ者が居た場合、攻撃を重ねて受け続けることで当事者間の連携が取りづらくなる場合がある。

●戦場 ウィーン・クルム近郊森林
 一般的な森林。
 遮蔽物が多く射線が通りにくい。イドラアモーは自由軌道を取るため、イドラカノンの射撃攻撃はこの不利を被らない。ズルい。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <lost fragment>絆の味と分たれた心完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年11月06日 23時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

Gone(p3x000438)
遍在する風
プロメッサ(p3x000614)
屋上の約束
ハルツフィーネ(p3x001701)
闘神
リアナル(p3x002906)
音速の配膳係
スキャット・セプテット(p3x002941)
切れぬ絆と拭えぬ声音
玲(p3x006862)
雪風
ミミサキ(p3x009818)
うわキツ
霧江詠蓮(p3x009844)
エーレン・キリエのアバター

リプレイ


「おーおーおー、しろいのがうじゃうじゃおるのう。まさかゲームの世界ではうどんが空を飛んでおるとはのう……え? 違う?」
 『雪風』玲(p3x006862)は森のなかを漂うイドラアモーの姿をちらりと見て、冗談めかした言葉を吐いた。うどんが空を飛ぶのなら、飛んできそうな者がいようものだが。
「ま、私はあいつの存在全部が駄目とは思いませんけどね。人とのつながりはすべてが素晴らしいとは限りません。現実に、そこから私のいた世界に行ってくれるなら見逃しても……無理ですよねー」
「これはクエストであり、周りには同じ敵を狙う者が居る……私はこの”事実”だけで十分だ」
 『ステルスタンク』ミミサキ(p3x009818)には強い主張や拘りというものは(この件に限っては)無い。イドラカノンが奪うものも、部分的には肯定するほど。だが、それも利害が一致する限り、という但し書きがつく。『UNKNOWN』プロメッサ(p3x000614)はもっと単純に、目の前に並べられた状況を勘案した結果、自分が戦うに足ると判断したらしい。表情らしいものを見せないが、声もまた、平坦なものだ。
「コノ世界二、然程興味ハ無かっタが……アノ少年騎士とアストリアの夢、位は守っテやってモ良イ」
 『遍在する風』Gone(p3x000438)は『その姿』になってから、然程『ネクスト』という世界に興味が薄かった、らしい。だが、アストリア達が前を向いて国を守ろうとする姿に思うところあったか、単純に『ワールドイーター』への義憤か、この依頼へ向ける感情はそこそこ強いように思えた。
「ワールドイーターなんてたいそうな名前で…実際食ってるのは絆か。名前負けというか何というか」
「死ぬ時は常に1人でも、死者の想いは絆を結んだ相手へと受け継がれてゆくものだ。他人が横取りする権利なんて、ありはしない!」
「許せぬことだ。まったく許せぬことだ。R.O.O……仮想の中だと分かっていても許せん。民同士の絆を損ね、糧として嗤うなど」
「疑似世界であれ、無辜の人々が紡ぎ、育んできた絆を一方的に奪うとは……。なんて暴力的で傲慢なことでしょうか」
「……いや、大変な能力なのは私も分かってるんだけどね……」
 『音速の配膳係』リアナル(p3x002906)からすれば、大層な名前の相手が世界そのものではなく概念を食って成長するというのは、いかにもゲーム的で、且つ事態を矮小化しているように見えたのだろう。果たして、絆を奪われただけで世界に危機が訪れますよ、といわれて何人がその異常性を認識できるだろうか? 彼女の感想は、『ネクスト』を仮想のものとして割り切っているタイプなら当然持つであろう思想だ。なんら不思議なものではない。
 だが、『蒼穹画家』スキャット・セプテット(p3x002941)や『エーレン・キリエのアバター』霧江詠蓮(p3x009844)、『魔法人形使い』ハルツフィーネ(p3x001701)らはこの状況が仮想のものであるとはいえ、絆というものを、更に言えば正義国の『あるべきだった未来』を穢されることに我慢ならない様子であるようだった。
 仮想世界ならば人の心を蹂躙していいわけではない。国家が侵されていいわけがない。彼ら彼女らは、Goneに生まれた想い以上のものが生まれているのだろう。リアナルが仲間達の気合に気圧されるのも已む無しである。
「バグ共の好きにはさせぬぞ! 妾がやることはただ一つ! 叛逆じゃあ! ひっくり返すぞ皆の者!!!」
 玲の掛け声に(漸く)イドラアモー達が反応したのか、はたまたイレギュラーズ各自が持つ『ここに居ない誰かとの絆』に反応したのかは定かではない。が、彼女の言葉を契機としてイドラアモー達の口が一斉にイレギュラーズ一同を向いたのは間違いない。
「ヒヒッ、街を襲おうって時にニンゲンと遭うなんてねぇ。まったく数奇で、しかし都合がいい。なんたってニンゲンは絆に縛られる存在……この国を壊すのにもってこいの相手だからなァ?!」
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。――お前の如き外道が街に入れると思うな」
「さぁ、倒れるまで戦い合おうではないか!」
 イドラアモー達の反応を察知し、樹上から声が降ってくる――イドラカノンのものだ。サイズの大振りな一撃をいち早く察知したプロメッサのメイスが振り上げられ、得物越しにイドラカノンへと衝撃を叩き込む。ライトエフェクトが暗い森に光をもたらし、詠蓮の抜いた刀にそれを反射させた。抜刀の瞬間を悟らせず、納刀に於いて初めて刀身を魅せる程度には、疾い。
「真正面に出てきてくれたなら好都合です。クマさんの力を思い知るがいいです」
 光り輝くクマさんのオーラを背負い、ハルツフィーネが咆哮を放つ。イドラカノンは全力で身を捻るが避け得ない。冗談のような精度と威力。それをしてなお、それは倒れることはなかった。
 ……尤も、イドラカノンが吐き出したアモーは出るなり蹴散らされる格好になったが……。


「そっちの人ばっかり見ていて大丈夫でスか? 私、そちらのほしそうなものを持ってるかもしれませんよ」
「さー、お主! この妾が盛大に遊んでやろうではないか!」
「ヒヒヒ……あっちこっちから声がかかるのは楽しくて仕方がないねェ。街に行かなくてもオマエ達と遊んでいるだけで満腹になりそうだよォ……」
 ミミサキと玲が挑発的な言葉と共に攻め、周囲のイドラアモーをGoneとスキャットが纏め、切り崩そうとする。ミミサキの言葉に一瞬だけ反応を見せたイドラカノンはしかし、何を思ったのか彼女から視線を切り、玲やハルツフィーネに……さらにはスキャットにもちらりと視線を送った。男性である詠蓮や性別も定かではないプロメッサに比べ、情の深そうな女性に反応したのか……或いは。
「悪いが、死ぬまで私のコンサートに付き合ってもらおう」
「適当ナ場所に屯しテいタ自分達を恨メ。ソレトモ『主人』と間違エたか?」
「ソイツらは情の深い相手、絆が濃い相手が大好物だ! 大方、他人に興味がないように振る舞ってるくせに情と懐が深いんじゃあないか!?」
 Goneの言葉に何を思ったのか、イドラカノンは心から嬉しそうな声をあげた。かすれて消えそうな声も聞き取れる地獄耳だと罵るべきか、他者の感情を勝手に定義してこねくり回す邪道と謗るべきか。その無法とともに見る間に空間を覆うイドラアモーを視認した一同は、そのあまりの厄介さに吐き気すら覚えた。
「あんだけ皆に滅多打ちにされておいて、よくあんな軽口が叩けるな……ギャグか?」
「クマさんの全力で叩いている分、こっちも結構叩かれているのです。ここまでやって倒せないなんてなにかバグでも……いえ……」
 ハルツフィーネは、イドラカノンから極力離れず戦うことで、全力でイドラカノンを叩くことに成功していた。攻撃を捌く為に振るわれた相手の鎌はすり抜けるようにその用をなさず、間違いなく相手にあたっている。それでなお、だ。リアナルは仲間たちの治療に奔走していることで、戦局を俯瞰できる立場にある。その彼女ですらも異常と感じ……それと同じくらい、イドラアモーが仲間達にまとわり付いては消されていく姿に眉根を寄せた。
 倒された、というより。『イドラカノンの近くで倒した』数がとみに多い。それはGoneであり、ハルツフィーネであり、詠蓮の戦果でもある。
「……なあ、事前情報であいつに治癒能力なんてあったか?」
「なかったと思いまス。リアナル氏、なにか思い当たりでも?」
「ああ、なんとなくな……冗談みたいな話だが」
 リアナルは異常を察知し、仲間達に問う。クエストを受理した際の前情報を指折り思い出そうとしたミミサキは、しかしそんな情報を一片も仕入れていない。他の仲間も同様だ。
「こいつは守りが堅く、動きが素早い……それだけの敵じゃなかったのか?! この絆喰らい共が邪魔なのは間違いないが!」
「此奴の攻撃がやったら痛いのと関係あるのか? 後ろ蹴りすっごく痛かったのじゃが! なんなれば妾そろそろ死に戻りしそうなんじゃがリアナルおぬし手が回りきっておらんか?」
 詠蓮は飛び回るイドラカノンに追従しながら叫び、玲もまた、相手に貼り付きながら足元に果敢に攻撃を仕掛ける。その代償が後ろ蹴りなのは些か冗談がキツい。
「この羽虫共はいくらでも湧いて出るというのに……! 体力も無尽蔵だなどとまるで羽虫と……おな、じ……?」
「……スキャット?」
 自らに集めたイドラアモーを次々と蹴散らすスキャットが苛立ち紛れに叫びかけ、然しその言葉は尻切れトンボになっていく。まるで、何かに感づいたかのような反応だ。その様子に異常性を覚えたGoneは、聞こえぬだろうと思ってもなお声をかけた。

 ――ああ、なんて愚鈍なのかしら! 愛おしいほどに! あれは、今まさに貴女達と絆を繋いでいるじゃない……!

 忌まわしいほどうつくしく、不気味なほどに若々しい声が、スキャットの耳元に響いた。


「クハハハハ! この拳が朽ちるのが先か、貴様が果てるのが先か、勝負といこうではないか!」
「そういう勝負はお断りだけど、その熱意は大歓迎だよゥ! ヒヒヒ、殺し合おう殺し合おう!」
 プロメッサとイドラカノンは正面切って激しく切り結ぶ。敵が強いこと上等なプロメッサにとって、より長く殴り合えることは、ひいてはより興奮を高めることでもある。それはプロメッサという人物にとっての喜びを意味する。……そして、その興奮こそがイドラカノンの求めるものだ。
「Gone、ハルツフィーネ、ミミサキ、そして詠蓮! 『奴の近くで羽虫を落とすな!』奴は……イドラカノンは『自分と敵に生まれた絆を今まさに食っている』!」
「な……」
「クマさんの強さを利用するなんて、とんでもない奴なのです……この世界を喰う悪辣さに磨きがかかっているのです!」
 詠蓮は、あまりの異常さに絶句し、ハルツフィーネは、磨き上げたクマさんの力がとんでもない利用をされたことに怒りを露わにする。
 そう、尋常ならざる耐久力、その正体は『無尽蔵』ではなく『無制限』。
 そして、その解決策に値する銀の弾丸を手にしているのは……誰あろう、ミミサキとスキャットだ。
(味方との連携は今は忘れろ、イドラカノンを引きつけるタンクになれないなら……弾丸の方を自分に向ける!)
「にゃーっはっはっは! 種が割れてしまったようじゃなうどん職人! おとなしくパスタ派に……あれ、そういう話じゃったっけ?」
 瞬時に思考を切り替え、味方との連携を度外視して動き出したミミサキと別に、玲はイドラカノンに貼り付きながら冗談ついでに打撃を叩き込む。相手の名前を認識せず、なんなれば存在すらも誤謬のもとに送り込む彼女の挙動が、絆を生まぬ意味で奏功していたなどとは誰も思うまい。……というか、彼女が実はサラッと死に戻って板などとも誰も気付くまい。
「まさカ、使わなイと思っていタ方針に切り替えルとハナ。冗談にモ程ガアル」
『あれもこれもと考えてると事態は最悪に振るモンなんだなぁ』
 Goneはイドラカノンから距離を取り、ミミサキやスキャットへと向かっていくアモー達に攻めかかる。腰につっていた人形が何事か喋ったが、つまんだ途端に言葉を止めた。
「多少の犠牲があれどイドラカノンを撃破したら何とかなるのじゃ、ってアストリアも言ってた……いや玲の方だったか?」
「妾じゃないもん!」
「じゃあアストリアか。回復できなくなったならもうあいつに勝ち目ないよな」
「……最後の最後で、彼女と私を断ち切れなかったのが敗因だよ、イドラカノン」
 リアナルは玲の方を見て、ことのきっかけ、そこで聞いた話を思い返そうとした。人違いだと憤慨する玲は、冗談めかして口を膨らませつつもその手を止めることはない。
 近づいてくるイドラアモーが不気味に口腔を見せつける姿を見るスキャットは、しかし心から嘲るような笑みを向け、ピアノに指を這わせた。かき鳴らされる旋律は、レクイエムか、プレリュードか。
「横合いから斬りつけることで雑魚を巻き込むなら、お前より上をとって斬りつけるまでだ!」
 詠蓮は一撃目の斬撃で跳躍し、イドラカノンの上を取る。もう一歩を、と望んだ彼の脚は、有り得べからざる力強さで宙を蹴り、『一瞬における二度目の斬撃』を彼に齎す。
 まるで落雷。直上から振り下ろされた抜刀による一閃は、イドラカノンの腕を根本から絶ち、衝撃でその脚を地面に縫い付けた。四方から迫るイレギュラーズの攻撃を、イドラカノンが避けるすべはもう、ない。


 麗しきウィーン・クルムは今日も笑い声と恋人達や家族が仲睦まじくやり取りする声がたえない。
 街の外からその歓声を眺めた一同は、『なにもない一日』を街に齎したことに安堵し、ウィーン・クルムをあとにした。

成否

成功

MVP

スキャット・セプテット(p3x002941)
切れぬ絆と拭えぬ声音

状態異常

玲(p3x006862)[死亡×2]
雪風

あとがき

 全く想定し得ないところに落とし穴がある時、全くの偶然でそれに対するメタがあったりするものです。
 そんなメタに乾杯。

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