PandoraPartyProject

シナリオ詳細

星空を手に

完了

参加者 : 1 人

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オープニング

●煌めきの先へ
 キラキラ、光る夜。両手を伸ばした。
 どんなに寒くても。どんなに暑くても。
 私は手を伸ばした。突き出した。
 遠い約束は、今でも生きている。

 びょうびょうと強い風が来る者を拒み続ける山。
 人はなく、巨木の間から野生の生き物たちが息を潜める。故に作られた道は当然ない。
 その頂上、煌々と光る月に従っていたはずの星々がミルクを注ぐように山肌へ流れていく。
 生活の場を星空にされた動物たちの嘆きが、響く。
 その山を見つめる少女がいた。松葉杖を付いた少女だ。
 少女は悲しげに山を見つめ、やがて涙を流した。
「ごめんなさい、みんな」

●煌めきを捕まえて
 あなたたちが境界図書館に踏み入れるとラプンツェルと背の高い、黒ずくめの青年が待っていた。
 彼は誰だと聞けば、気にしないでと答えられる。
「今日は新人くんが見学してるけど気にしないで。静かにしててってお願いしたから大丈夫だよ」
 青年はニタリと笑みを見せると、顎にしていた黒いマスクを鼻まであげて奥へ下がった。
 それを見届けてからラプンツェルはあなたたちに向き合う。
「改めて今日みんなにお願いするのは、登山だよ!」
 そう言って掲げられた本は児童書だった。
 話を聞くところによると、遠い昔に神様と約束した地で暮らす物語だという。
 その世界では太陽と月は双子の神様で地上を愛し守っている。
 地上の住人たちはそんな神様たちを愛し敬い、なるべく仲良く暮らす。そんな約束をしていた。
 今回の依頼人はその中で生きる星地屋の少女。
「彼女は寿命が尽きた星たちを鍋で煮込んで染料にするっていう仕事をしてるんだ」
 ひいひいおばあちゃん、もしかしたらもっと昔から彼女の家に伝わる仕事。
 彼女がこの仕事をしないと、その場所が星たちの墓場になって生きて行けなくなってしまうのだ。
「でも彼女、怪我をしちゃって。だから、代わりに星たちを回収して染料にして欲しいんだって」
 亡くなってしまった星が流れ込むのは山の頂上。夜までに登らないと星は山を墓場にしてしまう。
 山には野生の生き物たちが暮らしている。
「あと彼女がお礼の代わりに小物の染め体験をさせてくれるよ。楽しんできて!」
 頼んだよ、と言ってラプンツェルはあなたたちを見送った。
 部屋の奥にはいつの間にか、背の高い黒い木が生えていた。

NMコメント

ごきげんよう、桜蝶です。
ちょっと身動きが取れなくて久しぶりになりました。

●世界説明
太陽と月が双子神のファンタジーな世界
一般的な村を想像してください

●目標
前半:登山して染料作ります
作り方と星を入れる物はアンミリアが教えてくれます。
後半:お喋りしながら染め体験しましょう。
どんな物にも染められますので、お好きな物をどうぞ。

●依頼人
アンミリア・リリィ
三つ編みの少女。
元はキャラメル色の髪でしたが星を染めている内に毛先から銀色へなりつつあります

●サンプルプレイング
前半
登山かー、装備はしっかりしていこう。
カッパと携帯食とちゃんとした靴とー色々!
あ、これに星を入れるんだね。OKだよ!

後半
僕はやっぱり、下敷きに染めようかな!
学生だからいっぱい使うんだよね!!

  • 星空を手に完了
  • NM名桜蝶 京嵐
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年11月07日 22時06分
  • 参加人数1/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 1 人

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参加者一覧(1人)

灰羽 ミラ(p3p009980)
儚い運命のガラス職人

リプレイ


 森のふもとの村に降り立った『儚い運命のガラス職人』灰羽 ミラ(p3p009980)
とラプンツェルの周囲は村人に囲まれた。
 森の中にあるために訪問者が珍しいのもあるが、一番はやはり星空回収の代行だった。
「ありがとう、ありがとう。あれは村の生命線なんだ」
「でもあの森に入るにはちゃんとした装備が必要だから……」
 あっという間に取り囲まれ、まだ山にも登っていないのにお礼を言われてしまい、思わず二人は顔を見合わせる。
 わざとらしい咳払いをしたラプンツェルがその身体に合わない大声を張り上げる。
「依頼人のアンミリア・リリィさんはいるかしら?!」
 すると人混みの中から三つ編みを揺らす少女が気弱そうな女性に支えられて現れた。


「はじめまして、あたくしがアンミリア・リリィよ。アンミリアで良いわ」
「あたしは従姉妹のチロル……普段は町の印刷所で働いてます…………」
 チロルの手によって車椅子へ移動したアンミリアが星生地屋の小屋を目指しながら話し出す。
 さっきの村人の歓迎ぶりから分かる通り、この村の資金源は星生地と神様の山がメインだ。
 細々とした商店もあるが、商品のほとんどは村人向け。
 星生地屋以外でちゃんとした装備を持つ村人はほぼいない。
 しかし神様の山は限られた時期に、ちゃんとした装備を持つ許可された観光客しか登れないもの。
「そんな山に僕が登っても良いのかい?」
 神様に怒られてしまうのではないのかとミラが聞けば、アンミリアとラプンツェルは大丈夫よと答える。
 ラプンツェルたち境界図書館に助けを求める前に神様たちへ許可を得たのだという。
「星生地屋の関係者はいつ登っても良いのよ。そしてあなた方は、今日限り関係者だわ」
 あなたはちゃんと持ってきてくれたのでしょう、とアンミリアは車椅子からミラとラプンツェルを振り返って勝ち気に微笑む。


 山へ向かう前にミラの装備をアンミリアが確認していよいよ登山が始まった。
 もとから車椅子のラプンツェルは小屋で待つことに。
「それじゃあ、いってきます!」
 ミラが一同に手を振り、頂上を目指す。背の低い草が生い茂った、ふかふかの歩きやすい道だった。
 見慣れぬ顔だからか、鹿やリスが遠巻きにミラを見つめる。
 全体の一割を登った頃だろうか、ミラの存在に慣れてきた動物たちは日常そうであるかのように、草を食んでは遊ぶ姿を見せるようになった。
 ミラはその姿に和みつつ、時折は好奇心旺盛な小鹿と並んで歩いた。
「ふふ、登山なんて何年ぶりだろう。前の世界で学校に通っている時、遠足で行って以来かな」
 その時は学校から程近い山の整えられた道をぞろぞろと歩くだけだったと、苦笑いする。
 この山は最初のうちは歩きやすい、柔らかで穏やかな直線だったが、だんだんと岩が多くなってきていた。
 地面が硬く、小さいがゴロゴロとした岩が転がる道はどうしても姿勢が不安定になりがちで、転びやすい。
 ミラは栄養補給用のタブレットを水で流し込み、休み休み行くことした。
 これはミラが登山に慣れておらず、体力もないほうだと自己申告したためにアンミリアが提案してくれた作戦だった。
 いわく、昼過ぎに出てゆっくり進めば星が流れ込む時間には間に合うはずだという。
 あとはアンミリアから預かった専用の大鍋をシルシのついた場所へおけばミッションクリアだ。
 そのあとは普段はアンミリアたちが使っている山小屋でチロルが持たせてくれた夕飯を食べて寝るだけ。
 次の日になれば町から山岳警備隊たちが来る手筈で大鍋を降ろしてくれるから、彼らと入れ違いで下山する予定だ。
 つまり満天の星空を独り占めしながら、夕飯を食べて良いのだ。
 混沌の世界でもなかなか出来ない贅沢だ。
「さて、と。そろそろ再開しようか」
 山の景色はまた変わって、木々の高さがそれまでのものより低いものに変わっているようだった。
 動物の様子も変わって大人が多いようでシルエットばかり。
 鳥の声だけが聞こえるようになって、いよいよ頂上が近いことを知る。
「確か頂上には十字架があるって……あ」
 頂上碑の代わりに差し込まれた十字架は木製でややボロボロだった。
 ミラはその付近にあるはずのシルシを見つけ、大鍋を置く。それから少し下がった所にある山小屋に荷物を降ろしに向かった。
 時刻は夕暮れの真っ最中で、何とか間に合ったのだ。
 山小屋の中の物は何でも使って良いと言われているので、ミラは紅茶を淹れて夕飯の準備をした。
 やがて夜になり、星が瞬くようになるとミラは慌てて大鍋を観に行く。
 それは何とも美しい光景だった。
 夜空に生きる光る星がすーっと道を開け、流れ行く死した星が淡く光をこぼしながら鍋へ収まっていく。
 それは一分ともつかない、ほんの短い時間だったが。ミラには尊いほど長い時間だった。


 明くる朝、山を降りたミラをラプンツェルとアンミリアが待っていてくれていた。
「おはよう、ただいま。無事にできたよ」
「おはよう、おかえり。ありがとう」
 まずは朝ごはんよ、とアンミリアが小屋に迎えてくれる。小屋の中ではチロルが朝ごはんの準備をしていた。
 食べ終わっていよいよ、染料作りだ。どうやって作るのか興味津々だったミラとラプンツェルは身を乗り出す勢いで見学する。
「鍋で沸かしたお湯に糊を溶かすの。それで充分水と混ざったら温度をさげる」
 星は繊細だから低温で糊と混ぜるのだと言い、かき混ぜる作業を手伝わせてくれた。
 混ぜて冷えたものが染料となる。
「ここからは染め作業よ! 好きにやってみて」
 アンミリアが明るく言って作業用のテーブルにミラとラプンツェルを案内する。
 テーブルの上には色々なサイズの筆や刷毛が並べてある。
「染料が付けすぎたら水で調整すると良いわ」
 それぞれ説明を聞いてから、ミラは一枚のハンカチを取り出した。
 もう会うことが出来ないかもしれない、前の世界にいる片想いの彼女の誕生日プレゼントになるはずだったハンカチ。
「渡せないまま混沌世界へ召喚されてしまったから……デザインを変えるだけでも、少しは未練がなくなるかなって」
 苦しげな笑みを浮かべるミラにラプンツェルが手を握る。そんな大切なもの、良いのかと。アンミリアも切なそうだ。
「……こうやって未練を消そうと、彼女のことを忘れようとするたびに、強烈な寂しさに包まれるんだ。男のくせに女々しいよね」
 アンミリアがそれならと、またいつかのためにデザインを変えれば良いと言う。
 またいつか、きっと会えると信じてみるのも、きっと素敵なことだと明るく言う。
「あたくしにあなた方の世界は分からないけれど。素敵な明日を夢見たって良いじゃない」
 優しい言葉にミラもそっと微笑みを返して星の染料へ手を伸ばす。
 それを見届けたラプンツェルも持ってきていたヘアアクセサリーに染料を塗っていく。
 染めつけ作業を終えると、工房の奥にある部屋に案内される。
 星の染料は冷やして乾燥することで定着させるのだとアンミリアが説明しながら、冷凍室に入っていく。
 ミラとラプンツェルが染めたものを丁寧に棚へ置き、冷やしては乾燥させることを三回繰り返す。
 やがて出来上がったものはキラキラと光る銀色が美しい染模様を魅せた。
「すごい、キレイだ。キラキラしてて、僕が作るガラス細工みたいだ」
 ミラはデザインを変えたハンカチを陽の光に透かしてその美しさに目を奪われた。
 ラプンツェルもさっそく染めたリボンでサイドの髪を結んで満足そうだ。

 やがて夕暮れとなり、別れの時。アンミリアがお土産として星染めの雑貨を持たせてくれた。
「本当にありがとう、二人とも。とても助かったわ」
「こちらこそ、アンミリア。星染め、楽しかった!」
 ミラとアンミリア、チロルが握手して別れ、ラプンツェルが元気よく声を張り上げる。
「今回もまた、めでたし、めでたし! 次の本に行こう!」

成否

成功

状態異常

なし

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