PandoraPartyProject

シナリオ詳細

マッチョ、影となりて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ネクストの強国、鋼鉄。
 ベースとなっているのが混沌の鉄帝であることから、力自慢の者達が多く集まるのはこのネクストでも変わらない。
 ただ、ROOにおける鋼鉄では、何者かに皇帝の命が奪われたことを契機として内乱が勃発するなど、明らかな異変が起こっている。

 ある日のこと――。
「ハーッハッハッハッ!!」
 首都スチールグラードの街中にて、露出の大きな鉄騎種達が笑いながら自らの肉体美を主張しつつ、破壊活動を行っている。
「どうだ、俺達の筋肉は!?」
「そうよ、力を伴ってこその肉体美。破壊するこの力強くもしなやかな筋肉こそ、美しいのよ!」
 いずれも若い鉄騎種の男女だが、彼らは鍛え上げた肉体を周囲に見せつけ、あちらこちらの建物の壁を己の拳で、蹴りで粉砕していく。
 そして、それを主導していたのは、ブーメランパンツ一丁の男、『鉄壁のマッチョ』の二つ名を持つラボー・ジョンその人だった。
「どうだ。素晴らしいだろう。この俺の力は!」
 表面上は以前と同じように見えるが、ラボーは明らかに残忍性を高めており、建物の破壊だけでなくそれを阻止しようとする人々にまで手をかけ、徹底的に痛めつけようとしていた。
 ラボーの力もさることながら、鋼鉄の肉体自慢達がこぞって破壊活動をしているからたまらない。その数もあって、彼らは簡単に鎮圧できぬ暴徒と化していた。
「「ハッハッハッハッ……」」
 笑う彼らだが、以前、正義の者達が名付けたシャドーレギオンと同じ状態となっているのは間違いない。
 彼らを止めることのできる者はいないかと、鋼鉄の民は右往左往してしまうのだった。


 『Rapid Origin Online』……略称『R.O.O』。
 この仮想空間では、さらなるアップデートが起こり、各地で新たな問題が発生している。
「鋼鉄は内乱が起きていて、未だ収まらない様子ですね」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は鋼鉄の情勢について簡単に触れる。
 『聖頌姫』ディアナ・K・リリエンルージュが一時鋼鉄の首都スチールグラードを占領していたが、イレギュラーズの介入もあって首都は元の形を取り戻しつつある。
 そのディアナが作り出したとされるのが邪しき軍団『シャドーレギオン』である。
「その人が持つ本来の願い『WISH』が歪められ、『DARK†WISH』……いわゆる闇落ち状態となるのだそうです」
 また、先の首都占領時はシャドーレギオン化した人々から抽出した『DARK†WISH』によって、本人とそっくりな別の存在まで具現化したこともあり、それらもシャドーレギオンと呼ばれている。
 そのシャドーレギオンだが、今なお一部が鋼鉄内に残されているという。
「『鉄壁のマッチョ』と呼ばれるラボー・ジョンなる男性を筆頭とした肉体自慢の鉄騎種達が散発的に暴れているそうです」
「やはり、あのマッスル君、懲りずに賑やかしてくれたようじゃの」
 『きつねうどん』天狐(p3x009798)は予想通りと頷くが、楽観的に捉えることもできぬ状況だ。
 未だ混乱するスチールグラードにあって、彼らを止めようと動く者はいない。ラボー達は自分達の肉体の美しさを主張するべく、破壊活動を続けるはずだ。
「力の伴う自分の肉体こそ美しい……そんな『WISH』は、破壊をもって美しさを主張すべきと歪んでしまっています」
 散発的に破壊行動を起こすこの一団を発見するのは比較的容易だろう。アクアベルも弱視だが予知の力を持っており、ある程度の区画はメンバーへと伝えている。早期に発見し、彼らを倒し、自我を取り戻してあげたい。
「お騒がせ集団……なのですが、彼らもまたディアナの被害者なのは間違いありません」
 自我を取り戻した彼らは己の弱さに屈したと自身を責めるかもしれない。余裕があれば、彼らにフォローの言葉を入れてあげたい。
 それでは、よろしくお願いしますと、アクアベルは彼らのデータをメンバーへと送りつつ、その討伐を託すのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 こちらは天狐(p3x009798)さんのアフターアクションによって発生したシナリオです。
 ひとまず、落ち着きを取り戻した鋼鉄ですが、まだ残っているシャドーレギオンが確認されておりますので、討伐を願います。

●目的
 シャドーレギオン一隊の討伐

●敵……シャドーレギオン×16体
『WISH』……力の伴う自分の肉体こそ美しい
『DARK†WISH』……破壊をもって美しさを主張すべき

 いずれも屈強な鉄器種達。
 見事に鍛え上げられた体を誇示する者がほとんどでしたが、シャドーレギオンとなった彼らはその筋肉が全てをねじ伏せるべきと、ある意味で鋼鉄らしい考えを持ち、人々を襲おうとしています。

○鉄壁のマッチョ:ラボー・ジョン
 身長3m弱もある鉄騎種。首や腕回り、脛辺りが機械となっています。
 街を騒がす噂のマッチョがシャドーレギオンとなってしまいました。
 己の硬さを、強さを見せつけることを『WISH』としていた彼ですが、『DARK†WISH』に転じてその筋肉で全てを屈服させるべきだと願いが歪んでしまったようです。
 下手な刃や銃弾をはじき返すという肉体の強靭さは健在。重い拳や蹴りだけでなく、旋回からの竜巻、衝撃波を伴う打撃には注意が必要です。
 なお、ブーメランパンツは絶対に破れませんし、脱がせることはできません。

〇肉体自慢の鉄器種達×15体
 見事に鍛え上げられた美しい肉体を持つ若い鉄騎種男女。全員が露出度高めで、己の肉体美を主張しています。
 皆格闘戦を得意としていますが、機械となった体から銃弾を放ったり、放電を行ったりと近距離戦だけを行うわけではないので注意も必要です。

●状況
 鋼鉄首都、スチールグラードで、シャドーレギオンの一団が自らの体の美しさを見せつけようと暴れる事件が起こっています。
 彼らが現れるのは街中、武具店や鍛冶屋などラド・バウの闘士達ご用達の店が連なる通りであることが確認されています。
 討伐して彼らの『WISH』を正し、目を覚まさせてあげてくださいませ。
 また、事後は彼らが自分を責めぬようフォローの言葉も入れていただければ幸いです。

※WISH&DARK†WISHに関して
 オープニングに記載された『WISH』および『DARK†WISH』へ、プレイングにて心情的アプローチを加えた場合、判定が有利になることがあります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

 それでは、よろしくお願いします。

  • マッチョ、影となりて完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年10月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

樹里(p3x000692)
ようじょ整備士
ヴラノス・イグナシオ(p3x007840)
逧 蛻コ蟷サのアバター
きうりん(p3x008356)
雑草魂
カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者
壱狐(p3x008364)
神刀付喪
アズハ(p3x009471)
青き調和
天狐(p3x009798)
うどんの神
フローレス・ロンズデーライト(p3x009875)
憧れ焦がれる輝きに

リプレイ


 ネクスト、鋼鉄。
 首都スチールグラードは少しずつ<グランドウォークライ>の一件から、落ち着きを取り戻しつつある。
「DARK†WISH……厄介な物が残っているな」
 しかし、足まで届くほどの長い黒髪の『妖刀付喪』壱狐(p3x008364)が言う様に、新たな事件が予見されている。
「マッチョ……やってくれたなマッチョ!」
 植物の因子を持つ『雑草魂』きうりん(p3x008356)が声を荒げる。
「良くないよ自分勝手に筋肉しちゃ! 筋肉は人を陥れる為にあるものじゃないでしょうが!」
「筋肉は多くは解決しますが、この状況ではきっと泣いていますね……」
 きうりんに続き、長い金髪を2つに分けて手前へと垂らす『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)が今回の事態に表情が陰る。
「鉄騎種っていうか鋼鉄らしさの暴走だな、これは」
 両目を閉じた『アルコ空団“路を聴く者”』アズハ(p3x009471)だが、シャドーレギオンの抱える闇が見えているのだろうか。
「早くなんとかしてあげないとね!」
 皆に促すきうりんを先頭に、皆現場へと急行する。

「どうだ、俺達の筋肉は!?」
「素晴らしいだろう。この俺の力は!」
 機械混じりの強靭な肉体をこれでもかとさらけ出す筋肉隆々の男女だった。
「マッチョがこんなに……まぁ、まぁっ! 女性までもあの様な格好ですのね!?」
 気品を漂わせる『最高硬度の輝き』フローレス・ロンズデーライト(p3x009875)は、これでもかと鍛えた肉体を主張するマッチョらに驚きの声を上げる。
 男がトップレスなのは珍しくない。女性もさながらビキニのようなスポーツウェアで街を歩いていたのだ。
「ふむ……魔式ふっきんが15かいもできるわたしからみましてもなかなかのきんにく……」
 小柄な聖職者の少女、『ようじょ整備士』樹里(p3x000692)はまじまじと彼らの体に見入っていた様子。
「脳筋相手に技を使うのは癪だが、これもまた鍛錬よな」 
 こちらも引き締まった体を持つ『逧 蛻コ蟷サのアバター』ヴラノス・イグナシオ(p3x007840)だが、この後の戦いも考えて『ジャッジアイズ・クリティカル』を起動する。
「やはり、あのマッスル君で間違いないの」
「……天狐、あの筋肉は知り合いなんのか?」
 リヤカー屋台を引く小柄な麺職人巫女、『きつねうどん』天狐(p3x009798)がマッチョを率いる一際大きな巨体を持つ大男「鉄壁のマッチョ」ラボー・ジョンの姿を認めると、彼女が依頼説明の最中に反応したことを思い出して問いかける。
 単に以前の依頼で交戦した相手であるのだが……。
「素晴らしいだろう。この俺の力は!」
 ただ、自らの肉体を見せつけるなら、害も少なかったろう。
 だが、シャドーレギオンに堕ちた彼らは己の力を見せつけようと、建物の壁を殴り、或いは蹴りつけて破壊していく。
「えぇい、頭の中までぎっしり筋肉詰まっとるんけ!?」
 そんなラボーに、天狐は呆れを隠さない。
「格好が不適切なだけならばともかく、破壊活動まで……」
「職人である俺たちの前で破壊活動とは良い度胸だ、全員正座させてやる」
 やや引いた目でフローレスが見ていると、壱狐が我慢できずに飛び出す。
「そこのマッチョたち! 肉体美を否定はしませんが、力を発揮する場所を間違えています!」
 すると、マッチョ達は破壊の手を止め、壱狐へと視線を向ける。
「反撃しない物に八つ当たりしている貴方たちを見て美しいと思う人はいません。力を示したければここは鋼鉄、ラド・バウに行くのが筋というものでしょう!」
「鍛えるのは結構だし、力を発揮してこそ美しいってのも否定しないけど……単なる破壊行為じゃ見せ方がよくないのでは?」
 壱狐に続き、アズハもマッチョらへと訴えかける。
 ただ、彼らもそれを自分達へと挑戦と取ったようだ。
「どうやら我らの筋肉に嫉妬しているらしい」
「ならば、筋肉が全てを凌駕することを示さねばなるまい」
 腕を鳴らし、振るうマッチョ達は筋肉を躍らせつつ、交戦の為の構えをとる。
「中までマッスルたっぷり入ってるんか、そうかそうかよーわかった」
 天狐がやむを得ないと考えている間に、他メンバーが臨戦態勢に入って。
「……そんなに見せつけたいなら、私が力くらべに付き合ってやろう」
「筋肉より果肉の方が圧倒的に優れていることを教えてやるぜ!! ……あ、やばい本音が」
 ヴラノス、きうりんも、マッチョらへと逆に戦いを挑む.
「美しさをアピールしたいなら、俺達と戦ってみないか? ただ無機物を壊すより、動く生き物を壊す方が力を示せるぞ」
 アズハも改めて、街を壊されぬよう抵抗すべくマッチョらに挑戦状を叩きつけた。
「手合わせなら、ラド・バウでやりますよ」
周囲の被害を抑えるべく壱狐がそう誘導するが、マッチョも全員が闘士というわけではない。
 その為、できるだけ広い場所へとマッチョ達を誘導する。
「いいだろう。我らは筋肉こそ力だと示せればいい」
 同意してイレギュラーズに続くマッチョ達だが、移動の最中でも街中をあちこち破壊しようとしてしまう。
 その為、できるだけ近場でスペースのある街の交差点で、戦いを始めることに。
「どんな力でも、どれ程の力でも、何事も使い方次第……だなんて月並みな台詞ですが」
 カノンは宝珠のついた杖を手にして、魔力を籠める。
「まずはそれを真正面から分からせてあげなければ、ですね!」
「かなしきはかいを是とするきんにくはきんにくにあらず……それを、おもいださせてあげましょう」
 樹里もまた頷いてからロザリオを握り、聖句を紡ぎ始める。
「ハッハッハ、いいだろう!」
「「うおおおおおおおお!!」」
 ラボーらマッチョ達は叫び、吠える。
 熱気漂わせ、暴走する彼らを天狐やフローレスが見据えて。
「火照った身体にはクールダウンが必要じゃのう!!! ちょっと大人しくしてもらうぞい!!」
「ええ、その目を覚まさせてあげましょう!」
 イレギュラーズ達はマッチョ達を影から引きずり出すべく、攻撃を始めるのである。


 おおおおおおおおおおおおおお!!
 怒号を発して迫るマッチョどもに対し、ヴラノスはさらにその能力を覗き見る。
 自らをひけらかすマッチョ達だ。その全てのデータを、ヴラノスはしっかりと把握することができた。
「WISHを取り戻させないと……」
 スキルにより力を高めたアズハが真っ先に狙うのは鉄壁のマッチョ、ラボー。
 そいつ目掛け、目を見開いたアズハはガンタイプとした巨大並走で弾丸を叩きこみ、相手の力を封じようとする。
「ハッハッハッ!」
 多少力を封じられたところで、ラボーの拳圧はすさまじい。
 その攻撃を、アズハは飛行して回避に当たっていた。
 他のマッチョ達は、きうりんがタンク役となって引きつける。
「私の方が硬い!ㅤそしてみずみずしい!ㅤ更に美味しい!!ㅤだから私の方が上!!ㅤ圧倒的に上位存在!!」
 自らに生命エネルギーを叩き込んだきうりんはパンチ、蹴り、タックルと筋肉の猛攻に耐え始める。
 その間に、倒すようきうりんが促したことで、皆マッチョ集団に攻撃を仕掛ける。
 己の肉体を主張すべく一部放電するマッチョに対抗して、天狐も無駄に発光してみせた。
「そーれ、纏めてトカンじゃ!」
 リヤカーうどん屋台『麺狐亭』から大口径のカノン砲を展開した天狐は、一度空中に炸裂させたうどんの雨をマッチョどもへと降らす。
 それらは呪縛と狂気が付け合わせとなったハッピーセットだ。
「互いの筋肉を張り合ってペチペチいい音を奏でるが良いぞ!」
 次第に、互いを殴り始めるマッチョ達に、天狐は大声で叫びかける。
「はかいしょーどーのなにするものぞ。その虚無をうめつくすむすうのもじすうを目にも見よ、というやつですね」
 そこで、天狐の攻撃から漏れたマッチョへと樹里は聖句を告げる。
「かずがおおければ、かずをへらす。かいすうがたりないのならかいてんすうをふやす。せんじゅつの基本です」
 束縛され、惑うマッチョを目の当たりにし、樹里は頷いていた。
 ただ、樹里達のスキルを食らってなお、正気を保とうとするマッチョも少なくない。
「数で押されてしまうと厳しいですから……」
 フローレスも、ラボーに多数のマッチョ……肉体自慢の鉄騎種らを見回し、仲間を巻き込まぬよう位置取って強い光を放つ。
 第一の光「威光のグランディオーソ」は、多数のマッチョの気を引き、無防備にさせる。
 そうして、フローレスは続けて第二、第三の光を発し、マッチョを各個追い込んでいく。
「相手は強烈なストレングスを保有する強敵、油断はできません……!」
 自らが神秘系術師であるカノンは敵陣が混乱していても、正気を保つ敵に寄られるとかなり不味い展開になると察する。
「距離を保ち、視界と射線が十分にとれるように……」
 その為、カノンは後方のポジションを維持した上で、アナザーリバースアクセラレーションで自己強化してから阻害・妨害の魔法を敵陣へと撃ち込む。
 相手の動きが止まればこちらのもの。
 陽光の如き攻撃を重視した構えを取る壱狐は周囲を見回し、通行人が近寄ってこないことと近場に建物がないことを視認する。
(後の為に被害は少ない方がいいですからね)
 壱狐はラボー含む肉体自慢の鉄騎種達複数を捉え、自身の本体である刀で切りかかる。
 ただ攻撃するだけでなく、機械部分に動作不良も起こせないかと考えた壱狐だが、さすがに敵もそう簡単にトラブルを起こさなかったようだ。
 ただ、追撃をかけるヴラノスが磨きすぎた爪を振るう。
「……なぁ、この中に筋肉ドーピングしてる奴何人か混ざってねえか?」
 攻撃を繰り返すヴラノスは問いかけながらも敵から気力を奪い、パワフルな技を使えぬよう弱体化させるのである。


 荒ぶるマッチョらは混乱しながらも、その力をまざまざとイレギュラーズへと見せつける。
「自己顕示ウィークネス!ㅤ湧いてでろ筋肉共!!」
 タンク役となるきうりんは翡翠の恵みを噛みしめて自身と周囲の仲間達に癒しをもたらす。
 ただ、やはりマッチョ達の力は侮れない。
「これが、ワタクシの肉体の輝き! アナタ方の筋肉の闇を晴らしますわよ!」
 合間合間に閃光を発して相手の怒りを買うフローレスがマッチョ達へと告げる。
「筋肉の美しさ、それはワタクシも認めるところですわ。そしてそれが飾りでなく力を伴うからこそということも!」
 周囲では、壱狐が切りかかったマッチョの機械部に動作不良を引き起こさせようとする。
「その肉体は飾りか? 本物ってやつを見せてやる、来い」
 動きが鈍ったところでヴラノスが煽り、向かい来る相手に重い一撃を叩きこむ。
 それで卒倒する者もいたが、やはり強者は多い。
「……だからといって、力の使い方は破壊に限りませんわ!!! 創造の為に使えるマッチョもありますもの!!!」
 思いの丈をぶち撒けるフローレスに、マッチョらの注意が集まる。
「美しさとは、それを見る相手の心に芽生えるもの。今のあなた方は………醜い!」
 それに憤るマッチョが彼女目掛けてタックルを仕掛ける。
 近距離戦では、恐ろしいまでの破壊力を見せる彼らは、フローレスを殴り伏してしまった。
「一度頭を冷やして貰いましょう! まずはそれからです!」
 フローレスが倒れ、消える様子を見ながら、カノンが魔弾の弾幕を浴びせかける。
(文字通り鋼の肉体であっても、限界はあります)
 攻撃の暇も与えず、カノンはマッチョを倒していく。
 ラボーを巻き込むように壱狐がさらに切りかかり、同士討ちするマッチョらを倒していく。
 敵の数が少しずつ減ってきたことを受け、樹里は仲間達の押さえるラボーの妨害へと動く。
「じゅりセンサーがうまくはたらいているようですね」
 残っているマッチョの放電や銃弾を避けつつ、樹里は甘言という毒を囁き続ける。
 天狐もラボーを中心に、強引に振り回す屋台を叩きつけて。
「体力も気力も空にしてやるけぇの」
 アクセスファンタズムで食材適性までつけ、マッチョどもを美味しく頂けるようにしていた天狐。
 ただ、瞳を煌めかせたラボーは衝撃波を伴う打撃を直接天狐へと叩き込み、彼女を卒倒させてしまう。
「はっはっはっ!」
 気を抜かずとも、実力あるメンバーを倒すラボー・ジョンはやはり恐るべき相手だ。
 そんな敵を含め、アズハは前方へと振動を与えて敵の動きを止め、意識を奪う。
 ラボーも無力化を狙っていた彼だが、さすがに手強く、なかなかその巨躯は揺るがない。
「はっはっはっ」
 笑うラボーは高速回転して竜巻を巻き起こす。
「筋肉は誇示するものではないよ!!ㅤ主張なんてしなくても隠しきれない圧倒的存在感とぱわーで嫌でも目につくんだからね!!」
 きうりんがそれに耐えつつ、雑草の一撃をとパンチ、キック、ビンタと連撃を繰り出す。
 仲間達の攻撃も重なり、ようやくその巨躯がぐらついたのをきうりんは見逃さない。
「筋肉を自分の力を見せつける手段として使うな!!ㅤ筋肉はもっと尊くて優しいものでしょうが!!!!」
 その想いが届くようにと、きうりんは強く願う。
「自分で自分の筋肉を悪くして行くな!!」
「ううっ……」
 呻くラボーの全身から黒い靄が沸き立つ。
 それが消え去ると、ラボーは意識を失って崩れ落ちたのだった。


 我を取り戻したマッチョ達は自分達が件のシャドーレギオンへと落ちていたことに気付いて。
「俺達の筋肉は……」
「これしきの事にも負けてしまうのか……」
 愕然とするマッチョ達は膝をつき、外部からの干渉に屈した己の弱さを嘆く。
「どうしたものかのう……」
 戻ってきた天狐はとりあえず彼らにうどんの美味しさを布教し、その逞しい体で踏み抜いた生地はさぞコシのある逸品に仕上がるのに勿体ないと諭す。
「破壊なぞやめておくがよい、その育て上げた筋肉を自ら否定する事になるぞい?」
 筋肉は力を伴ってこそと考える彼らは、天狐の説得もあって破壊に走ったことを悔いる。
「破壊するのは手段だよな。目的じゃない」
 物体を破壊すれば、壊せるだけの蛮力はあると示せるが、それが片して美しいかとアズハがマッチョらに問う。
 壊すだけなら、重火器や爆弾にだってできる。ただ、鍛え上げた肉体はその程度ではないはずだ。
「肉体の美しさを見せたいなら、壊した瓦礫に埋もれるな!」
 アズハの叱咤に、大の男や女が委縮してしまう。
 そこで、アズハは、歪んでしまったのはきっと本気だったからだと語る。
 願いの本質は失っていないし、努力も無にはならない。だから、取り戻すことができると。
 そこで、樹里が彼らへと近づいて。
「きんにくはただきんにくであるというだけでうつくしいはずです」
 それを忘れてしまったからこそ、闇に堕ちてしまったのではないかと樹里は話す。
「ならばもう一度。みずからのきんにくとはなしあうことをお勧めしますよ?」
 樹里に続き、天狐もコツコツ増やした筋肉マッチョは創造の体現者であるべきだと説く。
「もう一度、上腕二頭筋と真正面から語り合うのが良かろう」
 彼らの持つ余人を圧倒的に上回る膂力、剛力、怪力、筋力。それらは破滅的な行いをするために鍛えられたものではないはずだとカノンも指摘する。
「それをもう一度思い出して貰いましょう……まずは、この破壊活動の後始末でしょうか」
 周囲もそうだが、ここに来るまでに暴れた彼らはかなりの家屋、壁などを破壊してしまっている。ならばこそ、それを直すべきだとカノンはマッチョらに促す。
「みんなでチャリティー筋肉しようか!」
 きうりんは、マッチョ達へと街の皆にごめんなさいしながら、世の為人の為にその筋肉を役立てるよう促す。
 建物の修繕には、力仕事は必須。他にもやることは多いはずだ。
「そうですね、償いの為の仕事に力を尽くしたら如何かしら」
 マッチョ達を手当てするフローレスもまた提案する。
 それによって得られるのは、心の美しさでないか。
「それがあってこそ、ご自慢の筋肉達も輝きを増すのではなくて?」
「私も手伝うからね!ㅤ私の方がすぐれてるもんね!」
 フローレスに続き、一緒に奉仕活動しようと促すきうりんは、植物になる自分の体を食べるといいと誘うが、マッチョらも食品管理はしっかりしたいと辞退していたようだ。
「戦闘前にも言いましたがここは鋼鉄、力自慢ならラド・バウに挑戦してみるのもいいのではないですか?」
 壱狐も職人魂とサイバー錬成術で救急箱を鋼鉄式救急箱こと工具箱として、マッチョらの機械部位と周囲の被害を修理していた。
「今ならファン一号もついてくるかもしれませんよ?」
 さすがはエクスギアの改造修理も担当したエンジニア。そんな壱狐の言葉に、力を試す場としてラド・バウへの参加に意識を向ける者もいたようだ。
「本当の願いを大事にして、これから行動で示せばいい」
「――健全な精神は健全なる身体に宿ると言います」
 そんなマッチョ達をアズハが諭すと、カノンも沙汰を待つことにはなるだろうと前置きしてからこう話す。
「目を覚まして前向きに歩める様になったのならそう酷い事にはならないでしょう。……多分」
 これから、マッチョ達がいかなる道を歩むかは自分達次第。
 目を覚ました彼らは今度こそ道を踏み外さぬよう、己の道を突き進むことだろうとカノンは思うのだった。

成否

成功

MVP

きうりん(p3x008356)
雑草魂

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPはマッチョの猛攻に耐え、仲間達に攻撃の機を与えたあなたへ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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