シナリオ詳細
<神異>もう一つの警察より
オープニング
●
「忌々しいな……」
偉丈夫は1人呟いた。
見上げた空、『嫌に美しく感じる陽に食らわれようとする月』を眺めて、大薙刀を握り締める。
「アレは動かぬように言った。他の者共はどこにいるのか分からぬ者ばかり。
刑部の兵はほぼあれの思うまま……ふん、馬鹿馬鹿しい」
偉丈夫は鼻で笑うと、ぎらりと天守の方を睨む。
「神、神などと。そんなものはせいぜい呑気に見守っておるだけでいいのだ。
偶像(それ)が浮世に手を出すとは……貴様の時代は終わろうとしているとなぜわからぬ」
忌々しそうに舌打ちする。
「方針についてはまあ、仕方あるまいよ。だが――やはり気に食わんな。
神だなどというやからが上からのさばってくるのも……だが、今はまず――あれらか」
そういう男の視線の先には、慌ただしい様子の建物が見える。
「――高天京特務高等警察:月将七課。いかほどのものか」
「――長政様。お一人で行かれるのですか?」
今すぐに動こうとした偉丈夫――長政の隣、いつの間にか姿を見せた女が笑う。
「む――貴様、どこへいた?」
「いえ……少しばかり、異国へ。こちらはこちらで用事がありましたので。それで、この度は神使を討ちに?」
「貴様は客将、詮索はするまい。だが、その問いかけは肯定しておこう」
「そうしていただけると助かります――ただ、私もご一緒させてくださいね」
女が笑みを緩やかに変えてから、長政を見上げた。
「はっ――隙にせよ、梓紗」
挑発的に笑った長政が動き出す。
それに続くようにしながら、明らかに手を抜いているのが分かる梓紗が動き出した。
●
「……はー、先輩たちはいっつもこんなことしてるんっすか? えぐいっすね~」
高天京――ヒイズルの花の帝都へログインを果たした佐熊 凛桜(p3n000220)ことレア(p3y000220)に君は声をかけられた。
「いや、あたしは現実で一仕事、こっちでやっても一仕事なんで先輩たちに比べると随分と楽なお仕事なんっすけど」
頬をぽりぽりと掻いて言ったレアの言葉を横に、君は今回の依頼の内容を眺めみる。
『模倣された原罪』と『マザーと同格の超AI』からのダブルパンチを受けて機能を著しく低下させ防御に徹する『マザー』。
その隙を突くようにして『真性怪異』は現実世界――希望ヶ浜を侵食すると同時に虚構であるヒイズルでも牙を剥いた。
急速に侵食速度を上げた真性怪異により、神光は大きな影響を受け、侵食されていたNPCデータが一斉にイレギュラーズへの敵意を示した。
結果、神霊や朝廷、そのどちらもが『神使』と遮那をれっきとした逆賊として処刑を宣言したのだ。
連発するクエストの数々。現実世界の希望ヶ浜をも巻き込む大きな流れ。
次はこちらだと、画面を見る。
――その時だった。
門の方角から、光が放たれ、何かが砕ける音が響き渡った。
直後――クエスト欄に新クエストがポップする。
『――突発クエストが発生しました。
神咒曙光――刑部省・近衛長政が高天京特務高等警察詰め所の1つへ襲来しました。
迎撃を行なってください』
警告音が鳴り響く。侵入者を告げるアラートだ。
外を見れば、詰め所の門が粉砕され、2人分の影が見えた。
「おお、来たか……なるほど、貴様らが神使か」
詰め所の外に足を踏み出すと、そこに立っていた偉丈夫が笑っていた。
「――この国で、我らを差し置いて警察などというのだ。『気に食わん』のでな」
薙刀を構えたまま不意に自嘲気味な笑みを浮かべ、目を閉じる。
「まぁ――こちらに責任の一端が無いとは言わんが。
人の仕事を奪うのだから、どれほどか気になるというものだ。
――少しばかり、手合わせ貰おうか」
開かれた瞳と、長政からゾッとするほどの濃密さを以って闘志が立ちのぼる。
『――突発クエストを受注しました――
近衛長政を撃退してください。
――以上――』
画面に、ポップしたウインドウで、その文字が輝いていた。
「……あーちゃん?」
ウインドウを消したところで、傍にいたレアの口から声が漏れるのが聞こえた。
- <神異>もう一つの警察より完了
- GM名春野紅葉
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年11月02日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
「ん……ただ気に食わないじゃわからない、どこの何が気に食わないのか言ってほしい……」
臨戦態勢を取った『ハンドルネームは』グレイ(p3x000395)の言葉に、敵は片眉をあげて。
「ふむ? お前達が特務『警察』だから、だが。
警察、即ち治安維持は我ら刑部省の仕事。
よく知らぬ者に仕事を奪われてそれを好く者もおるまい。
この国の治安を守るというのなら、私を殺せるぐらいでいてくれねば叶わぬ」
極めて静かに告げた男の出力がぐんぐんと上がっていく。
「ん……手合わせして満足したらさっさと帰って」
結局、その返答はグレイの納得のできるものではなかったが。
「――はっ、元よりそのつもりよ、もう一度は言わぬ、見せてみろ、神使ども」
今なお自信に満ち溢れた声で、長政が笑った。
「気に入らない、と仰られましたか」
各部の装甲がエフェクトに揺られ音を出す。
エフェクト前回のフルスロットルで『人型戦車』WYA7371(p3x007371)は前へ出る。
「では、如何様に振る舞えばお気に召して頂けますでしょうか」
「如何様にでも」
「そうですか、なんにせよ。Step on it。さっさと終わらせましょう」
短い言葉を交わして、WYA7371は瞬く間に武器をv≠nightを発動し、機装と砲装をフルアクティベートする。
展開される制圧モードに、長政の眼は感心しているように見えた。
(なるほど、侵食の影響が少なくてこう……つまり思い込みが激……)
クエストの内容を見直していた『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)は、敵の事を改めて確認する。
(……もとい、強い信念を持って職務に当たる御仁という事だね。
こうして立ち塞がられると厄介ではあるけれど、法の運用者としては間違ってはいない。
事が済んだら是非、この国の為に尽くして頂きたいね)
考えつつ敵を見れば、初対面のはずだがどことなく見覚えがある。
ひとまず、そんな思考を振り払って、イズルは権能を行使する。
周囲にいる仲間達の身体を、包み込むようにして鳥のようなエフェクトが生じて、その翼が彼らを包み込む。
温かく、見守るような揺り篭に揺れる加護である。
「さて、聞いてくれるかどうか」
その勢いのまま、イズルは呪符のような物を取り出す。
扇状に広がるそれは、炸裂と同時に長政の身体に取り付き、縛り上げんと試みた。
「すぐ倒れたら『こんな未熟者が警察だというのか?』とかなんか言いそう……」
聖剣カサンドラを握り締めて、鮮やかに連撃を撃ち込んだグレイは、思わず口に漏らす。
「何もなく、ただ意味もなく直ぐにでも倒れるのであれば、未熟者ではあろうな」
剣の挙動は長政の守りの刹那の揺らぎを突くように繰り出された物。
炸裂した傷の痛みに、長政は静かなもの。
(近衛長政……今の事態が、本来この国の人間の手で解決すべきものであるという認識はあるのですか。
……正気を保っている。他の人達がおかしくなっているのを認識しているのね)
長政へと肉薄するリセリア(p3x005056)は静かに刀を振り抜いた。
美しき銀を帯びた愛刀は散らすように敵の肉体へと軌跡を引く。
残像は美しく、縫い付けるような斬撃が関節を刻む。
眼前に立つ長政の思考は明白なようでいて、うかがい知れぬ。
「そういう思考と行動は嫌いではありません! ですが、私達は私達で理由があって活動させてもらっているので――」
そう声を上げたのは『仮想世界の冒険者』カノン(p3x008357)だ。
「アナザーリバースアクセラレーション――!」
全身を包むは、ここではないどこかの自身をを疑似再現する強化魔術。
杖の切っ先に生み出されし魔力は禍々しくも黒く輝きを放つ。
「行きますよ、これが私の力――です!」
掛け声とともに放たれた魔力砲撃は文字通りの弾幕となって長政へと殺到する。
弾丸は長政がくるりと大薙刀を振り回すことで一部が打ち消されつつも、敵の身体へ炸裂していく。
「全く、事前に連絡を入れてくれればもっと盛大に歓迎してあげられるのですけどね!」
急ごしらえでひとまずの陣地構築を進めていた『妖刀付喪』壱狐(p3x008364)が声を上げる。
そのまま肉薄すると攻勢的な構えを取り、長政の隙を伺見た。
「奇襲を事前通告してやるほど甘くはなれぬな。
そも、普段から備えておくべきものだろう?」
事も無げに告げた長政の手に握られた大薙刀が炎を纏う。
振り払われた炎の刃は、扇状に広がって壱狐を中心とした射程内のイレギュラーズに傷をつける。
紅蓮の炎に包まれた壱狐はそれらを何とか退けると、構築された術式を神刀へと込める。
「なるほど、ではこちらがどんな手を使っても、まさか秘境とは言いませんね?」
己でもあるソレが、鮮やかに五行の輝きを纏ったのと同時、壱狐は思いっきり振り抜いた。
真っすぐに紡がれた剣閃は長政の身体を確かに斬りつけ、傷を増やしていく。
「ほう――!」
波紋の刻まれた傷口から、長政の生命力の一部が壱狐に流れ込んでいく。
楽し気に、長政が笑う。
●
(気に食わないで攻撃されるのもどうなのって思わなくもないけれど……)
アレクシア(p3x004630)はどことなく愉快そうにも見える長政から視線を外し、一気にもう1人の前に立ちふさがる。
「あなたの相手は私がさせてもらうよ!」
啖呵を切れば、目の前に立つ少女は薄く笑い。
「それでは、お手合わせお願いしますね」
先に動いたのはアレクシアだった。
術式を起こせば、術式は雲を呼ぶ。
アレクシアを包み込む優しき雲間を裂くようにして、それは放たれた。
天穿の弓より放たれた魔力の矢は質量を増して真っすぐに敵を撃ち抜いた。
つぶさに観察する敵の挙動、アレクシアが放った魔力の弾丸を見た後で的確に躱して最低限の傷を残す。
刹那、走り出アレクシアめがけて突撃。
その手に持っていたのは抜き身の短刀。
流れるような軌道を描いて、アレクシアの身体に傷が生まれる。
「ォォォオ!!」
それはただの咆哮である。
戦場に降り立ちしたのは青き竜。
悪食なる竜――『悪食竜』ヴァリフィルド(p3x000072)が、敵の耳を、身体を貫いた。
横からの一撃に敵がこちら側を見るのを見据えながら、口から零すのは毒性を帯びた炎。
アレクシアから離れた女に、同行者であるはずのレアはまだ反応がない。
「レア、何か言いたいことがあるのであれば、今のうちに言っておけ」
ヴァリフィルドの言葉に背中を押されるようにして、レアが前に出る。
「あーちゃん、久しぶり……」
「あら? 貴女とは初めてお会いしたと思うのですが?」
首をかしげる梓紗に、レアの手がギュッときつく握られる。
「――そうっすよね。私の知ってるあーちゃんを、夜妖から救うために殺したのは私っすから」
小さく呟いた言葉は、ただ悲しみだけをたたえていた。
「――あぁ、なるほど」
一瞬だけ、あーちゃんと呼ばれた女が目を細めた。
●
肉薄と同時、WYA7371は浮遊する小型ビットと頭部にあるビームライフルで一斉にゼロ距離から攻撃を叩き込む。
それはまさに『星に非ず天より来るもの』――圧倒的な質量を持つ砲撃が、敵の身体に打ち据えられる。
「ほぉ、速いな」
動きが出来なくなった長政が、少しばかり驚いたのを見ると、WYA7371は涼し気に。
「おや。我々を認めて下さいましたか?」
穏やかなYA7371がしれっと笑って見せる。
イレギュラーズから間合いを取ろうとした長政が後ろへ跳躍。
その足元には花壇のようなものが見える。
その瞬間、イズルは反射的に声を発していた。
「そこ、花! 踏まないで!」
それに、くるりと体の軸を回して長政が反応を見せる。
体格からは想像しがたいアクロバットな動きだった。
そのまま、取り出した癒しの薬液入りの試験管を壱狐へと投擲。
蓋の開いた薬液が降り注ぎ、触れた場所の傷が癒えていく。
「ふむ……」
何やら考え込むような様子を見せた長政へ向けて、グレイは一歩踏み出した。
そのまま踏み込み、次の一歩を前に出す瞬間に身を屈めて加速。
「……よそ見してる場合?」
一気に速度を上げて、撃ち込んだ斬撃が、がら空きの長政の胴部へと突き立つ。
グレイが突き立ったカサンドラを無理やり引き抜くと同時、もう一度声がする。
「ふむ……まあ、良いか」
呟いた瞬間、長政の周囲に揺らぐような濃密な闘気が薄れていく――否、一箇所へと集中していく。
「死んでくれるなよ、イレギュラーズ」
闘気が渦を巻き、刃を何層にも重ねていく。
各々が退避行動をとる中で、長政がゆるりお大薙刀を構えた。
「―― 天変 ――」
直後、放たれた斬撃は戦場を抉り取り、炸裂と同時に空へと柱を描く。
雲が吹き飛んでいた。
攻撃を直撃したWYA7371とリセリアには多くのBSが刻まれている。
だが、リセリアはその時を待っていた。
何度も受けたくはないその攻撃は、リセリアが待ち望んでいたその瞬間を生む。
「陰と陽よ、転じて廻れ――魔哭天焦『月閃』」
夜妖を纏い、その身から禍々しいオーラを迸らせたリセリアは、再び肉薄する。
禍々しいオーラを尾のように引きながら、剣を振るう。
美しささえ帯びた斬撃は、銀の上から漆黒を纏い、景色を塗り替えるように振りぬかれた。
「――月閃、か!」
「刑部の近衛長政。これだけの実力があって貴方は何をしているのですか。
正気を保っているのなら、せめて狂える神々の暴虐から人々を護ってあげてください」
剣戟を紡ぐリセリアの問いに、長政が僅かに表情を歪めた。
「残念だが、な。娘……『心がどうあれ、忌々しいことにこの身体が上手く動かぬ』のだよ」
自嘲気味な言葉を残しつつ、刃の応酬は長政が後退したことで終わる。
「流石に、言動に相応しい英傑ですが……こちらもそう簡単に負けられません!」
カノンが愛杖をしっかりと握り締めて立ち上がり。
「そうです、負けていられないのです」
壱狐もまた、太刀を握りなおす。
「戦闘続行――」
「――陰陽の崩れたこのヒイズルのためにも!
「「陰と陽よ、転じて廻れ――魔哭天焦『月閃』!」」
荒く呼吸を残し、カノンは全身を夜妖に浸す。
ほんのりと目のハイライトを失ったアバターが、セクシーな装束へと変質。
愛杖の先端に、禍々しいオーラが集まり、武骨な闇色の両刃を描く。
一方、壱狐のアバターもまた、変質を遂げる。
全身を夜妖に包まれた付喪の神は、禍々しいオーラを纏い、その本体の刃紋も形を変える。
五行全てを刃へ照らし。ハイライトの入らぬ目で壱狐は前を見た。
「――これが私の、全力攻撃です」
先に振り抜いた闇色の刃は、カノンのもの。
長政目掛けて伸びる斬撃は己の身にも裂傷を刻む諸刃の剣。
技巧を無視して、シンプルに振り下ろされた刃は長政の大薙刀をすり抜け、その身を直接切り刻む。
「私はいつか、星を越える。神にも届いてみせる」
刃に人差し指と中指を這わせて、そっと根元から切っ先へ。
刃紋が輝き、禍々しき闇に取り込まれていく。
「――ほう、神にも、と出るか!」
連撃によって刻まれた傷から血を流す長政が、愉快そうに笑った。
「であれば、うけてやらねば」
振り抜かれた斬撃。
邪道を描き、影を為す必殺の一刀は、鮮やかに長政の身体に刻み付けられた。
「良い一撃であった……」
「近衛長政。どうでしょう、我々は“役に立ちそう”でしょうか?」
WYA7371の言葉に、長政がゆるりと笑みを浮かべた。
「ふっ、どうであろうな。なんにせよ、私はこれで終わりだ。さっさとお暇するとしよう。良いか、梓紗」
長政がが視線をWYA7371から外してもう1人の方を向いた。
●
「レア。さきほど、うぬはやつを殺したと言ったな?」
ヴァリフィルドの問いかけに、レアが小さく頷く。
「……それが正しければROOで成立したNPCとしての梓紗がやつという事であろう」
「多分、そうっす」
「――なれば、あれは同じ顔、同じ声をした別人に過ぎぬ。
迷うことは悪くないが、それが続けばいずれ物事の本質を見失うぞ? 前を向くことだ」
ヴァリフィルドの言葉に、レアが再び頷く。
「オオオ!!!」
雄叫びを上げ、スキルを発動させる。
そのまま、吐き出すようにして投擲したのは、小さな1つの球。
爆ぜるように飛ぶそれは、しかしてただの球ではなく。
それにはヴァリフィルドがこれまでため込んできた数多のデータが圧縮されている。
炸裂の瞬間、空間諸共膨大なデータがあふれ、処理しきれなくなった分がクラッシュする。
「あなた……本気じゃないでしょう?」
アレクシアは目の前でゆるりと構える女へ問うた。
それは、あまりにも露骨な手加減だった。
それこそ、『手加減していることそのものにこちらが気づくように』していると言っても過言ではない。
そして、そうであるがゆえに、歯がゆくも悔しくもある。
手加減されているのが分かっているのになお、アレクシアとヴァリフィルドは、押されていた。
「ええ、まぁ。ですが、横紙破りというのは私もちょっと……と思うところですから。
多少は、やらないこともないですが、全力というのも……ね?」
緩やかに笑むその立ち姿には、余裕すら感じられる。
ちらりと長政の方を見れば、まだ戦闘が継続されているようだ。
(このままだと、持たない……)
暫しの黙考。決断してからは、早かった。
「負けられないんだ……陰と陽よ、転じて廻れ――魔哭天焦『月閃』!」
アレクシアの身体を、禍々しいオーラが包み込む。
華は落ち、雲は消えて、星が瞬く。
「月閃、でしたか? 良いですね」
目を細める彼女を振り払い、アレクシアは弓に魔力を集中させていく。
「あなたはここに何をしにきたの?」
「何と言われても……『どうなるかを見に』としか」
こちらに向かって走り出す梓紗に照準を合わせ、アレクシアは弦を手放した。
矢は真っすぐに、梓紗の方へと走り抜ける。
僅かに躱した梓紗の身体へ掠った矢は、それだけで大きな傷を生む。
振り抜かれる短刀、それとほぼ同時にアレクシアは後ろへ跳躍。
掠った刃が傷を生む。
「――月閃」
ヴァリフィルドの全身を、夜妖が取りこんでいく。
暴食の竜を飲み込んだ深い闇が、竜をより一層とその姿らしく作り変えた。
そのまま、ヴァリフィルドは今日幾度目かになる息吹を放つ。
放物線を描いた弾丸の如き息吹があーちゃん――もとい梓紗と呼ばれた少女に降り注ぐ。
それは、それまでの同じものとは比べ物にならぬ火力を以って、梓紗の身体を焼き付ける。
「月閃2人を相手取りは流石に面倒ではありますが……」
衣装の一部を消し飛ばされた梓紗が、ゆるりと呟く。
3人は構えを取る。月閃の効果が及ぶ時間の間に片を付けたかった。
――だが、そこで長政の声がして。
「……残念ですが、時間切れのようですね」
微笑んだ梓紗の姿はそこから掻き消えた。
「出来たならば、またお会いしましょう。
ええ、運が良ければ、またお会いすることになりますから」
貴族じみた所作でお辞儀をした梓紗が、その場から跳躍してどこかへと消えていった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
お疲れさまでしたイレギュラーズ
GMコメント
こんばんは、春野紅葉です。
実は出そうと思っていたけどタイミングが悪く登場させる暇のなかった神光版の近衛長政です。
●オーダー
【1】近衛長政の撃退
●フィールドデータ
特務高等警察の詰め所。レンガ造りの2階建ての建物。
皆さんはその詰め所を出ようとしたところで緊急クエストに巻き込まれる形になります。
戦場は花壇や植木などの並ぶ敷地内になります。
形式上は防衛戦となります。
●エネミーデータ
・『流離う武刃』近衛長政
神威神楽にてイレギュラーズと激闘を繰り広げて討ち取られた魔種、近衛長政の神光バージョンです。
性格は神威神楽に近しいようですが、魔種でない分、その思考は真っ当です。
豊底比売による侵食を受けてはいるようですが、後述の理由によりその影響は少ないです。
ただ、それはそれとしてシンプルに皆さんの立ち位置が気に食わないらしく、攻撃を仕掛けてきました。
トータルファイター型のオールラウンダーです。
【火炎】系、【痺れ】系、【凍気】系、【麻痺】系の闘気を大薙刀の刀身に纏わせて攻撃してきます。
<スキル>
雷刃(A):刀身に雷を纏わせ、一直線上を貫く斬撃を放ちます。
焔扇(A):扇状に炎を纏った刃を撃ち抜きます。
凍斬(A):中距離の横一列を凍気を纏った刀身で薙ぎ払います。
無双斬(A):瞬く間に3度におよぶ刺突を敵に打ち込みます。
天変(EX)自身の闘気全てを収束させて叩きつける超絶の一刀です。溜めが入ります。退避を推奨します。
《システムデータ》法の平等
芽吹き始めたいわゆる『裁判権の独立』と『法の平等性』が影響したもの。
『神や朝廷であろうと間違っているのであれば罰を受けるべき』であるとして、
『どちらが悪なのか明確なるまではどちらにも味方しない』精神性。
もとい、『民衆への忠誠心』です。豊底比売による侵食を多少なりとも減少させています。
・『???』梓紗
銀色の長髪を流す紅眼の少女です。
武器は短刀の二刀流。
長政の隣に寄り添うようにして立っています。
立ち位置、目論見、その他一切不明。少なくとも、現時点では敵です。
明らかに手を抜いていますが、それでも強いです。
長政が撤退する場合、一緒に撤退します。
どうやらレアは見覚えがあるようですが……?
強力な反応、物攻、EXAを持つスピードアタッカーです。
【痺れ】系、【凍結】系、【飛】、【変幻】などを用います。
●NPCデータ
・レア
オッドアイの女の子。希望ヶ浜学園の生徒です。一応イレギュラーズです。
物理近接バランス型。攻防ともにある程度なんでもやってくれます。
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
●情報精度なし
ヒイズル『帝都星読キネマ譚』には、情報精度が存在しません。
未来が予知されているからです。
●侵食度<神異>
<神異>の冠題を有するシナリオ全てとの結果連動になります。シナリオを成功することで侵食を遅らせることができますが失敗することで大幅に侵食度を上昇させます。
●重要な備考
<神異>には敵側から『トロフィー』の救出チャンスが与えられています。
<神異>ではその達成度に応じて一定数のキャラクターが『デスカウントの少ない順』から解放されます。
(達成度はR.O.Oと現実で共有されます)
又、『R.O.O側の<神異>』ではMVPを獲得したキャラクターに特殊な判定が生じます。
『R.O.O側の<神異>』で、MVPを獲得したキャラクターはR.O.O3.0においてログアウト不可能になったキャラクター一名を指定して開放する事が可能です。
指定は個別にメールを送付しますが、決定は相談の上でも独断でも構いません。(尚、自分でも構いません)
但し、<神異>ではデスカウント値(及びその他事由)等により、更なるログアウト不能が生じる可能性がありますのでご注意下さい。
●魔哭天焦『月閃』
当シナリオは『月閃』という能力を、一人につき一度だけ使用することが出来ます。
プレイングで月閃を宣言した際には、数ターンの間、戦闘能力がハネ上がります。
夜妖を纏うため、禍々しいオーラに包まれます。
またこの時『反転イラスト』などの姿になることも出来ます。
月閃はイレギュラーズに強大な力を与えますが、侵食度に微量の影響を与えます。
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