PandoraPartyProject

シナリオ詳細

夢見鳥華の一時

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「わーい! わーい!!」
「やったー! やった――!!」
 豊穣。その北側に、とある森林が存在する――
 そこは『基本的には』何の変哲もない場所だ。
 特に危険な妖怪の類が出る事もなく、動物たちも穏やかに暮らしている。穏やかな陽光と優しき風が頬を撫ぜれば、散歩に出かける場所としても最適だろうかと思う程だ。
 ただしたった一つだけ気を付けねばならぬ要素が存在している。
 それは、この森の一角に存在している『花』の事だ。
 『夢見鳥華』と称されし、その花を抜く事なかれ――そうでなければ――
「わーいわーい!!」
「やったっす! やったっす!! わーい!!」
 その者。陽気なる精神に支配されてしまう事であろう……!!
 具体的に言うと何故か『わーい!』とか『やったー!』とかしか言えなくなるのだ。しかも頭の上に花が生える。おっきな一輪の花が生える。そしてご覧の有り様になる。
 ランドウェラ=ロード=ロウス (p3p000788)が――
 辻岡 真 (p3p004665)が――
 レッド・ミハリル・アストルフォーン (p3p000395)が――
 大きな声で騒ぐ程の陽気なる心に支配されているのだ……!!

「えええ~~!? なにこれどういう事~~!!?」

 思わずタイム (p3p007854)もオロオロしてしまうものである。
 ――整理しよう。何故ここにイレギュラーズがいるのかとなれば、それは依頼だ。実はこの森、薬草の素となる植物も多いらしく近くに住まう薬師が時折訪れる事もあるのだ――が、しかしその薬師が怪我をしてしまい暫く歩けないのだとか。
 故に代わりにイレギュラーズに必要な物を採ってきてほしいと頼まれ、て。

『よろしいですね? あの森には絶対に刺激しちゃいけない花があるんですよ。
 いいですね? 抜くはおろか踏んでもいけませんよ。大変な事になりますからね。
 絶対ですからね? 分かりましたね? 絶対ですよ!!』

 そう言われていたというのにッ――!
 うっかり間違えたか、うっかり踏んじゃったか……さてもう分からないが真やレッド達がご覧の有り様となっている。タイムは幸いにして被害にあわなかったようだが――他の者はこちらの声が届いているのかいないかすら定かではなく、更には。
「ワーイ……ワーイ……」
「やったねー! やったね――!!」
「わーいです! わーい、わーい! ちょうちょです、ちょうちょ――!」
 いつの間にやらフリークライ (p3p008595)とティスル ティル (p3p006151)、クロエ・ブランシェット (p3p008486)らにも被害が広がっていた――!! どうして。これだけの数が皆ミスるとは考えづらい……まさか実際に踏んだか否かだけでなく、近くにいたかどうかでも効果の対象になるのだろうか――!?
 よく分からないが皆『何か』を追うように周囲を駆けている――
 零れた言葉から推察するに『蝶々』らしきモノが見えていると推察されるが……しかしタイムの眼にはそのようなモノ見えてすらいない。幻覚作用まで起こすとは、もしかしてあの花ってやべー奴なのでは……
「あ~ん! 皆、正気にもどって~~!!」
 ともあれ事態の収拾が見えぬタイム。
 故、涙ながらに(或いはヤケで)ブチッと花を千切り取ってみた――ら。
「わーい! わー……はっ! 俺は今、一体何を……!?」
 直後。正気に戻ったのは――エーミール・アーベントロート (p3p009344)だ! 成程――どうやら花の影響で色々おかしくなってもどうやらブチッ! と行けば正気に戻る様である! ブチッ!!
「ううっ、蝶々……蝶々が見えて、追わないと……いや違う、アレは幻覚か……!」
 頭を振るエーミール。なんだかちょっと花の影響が後を引いているようだが、しかし暫くすれば完全に解消される事だろう。それよりも他のメンバーだ他のメンバー!!
 幸いというべきか周囲に危険な地帯――例えば崖が有ったりなど――はしないらしい。だからどこまで駆けてもそうそう危険な事はないだろう……が。奥まで行ってしまえば見つけるのも帰るのも一苦労になってしまう! 転んでしまったり木々にゴッツンとぶつかったりしない保証などもないし……
「わ~い、やった~!!」
「やった! やった~! わ~い!!」
「あ! 皆どこかに行っちまう!!」
「ぴえ~! 早く、早くお花を千切りましょう! そうしたら解決するから――!」
 唐突に始まる鬼ごっこ。
 見えぬ蝶々を追い求めてどこまでも走る者――
 故にまるで自分たちから遠ざかり、逃げんとする(様に見える)者らを追う者――
 まるで傍から見れば鬼ごっこ。手を伸ばしてさぁ捕まえよう。

 今ここに『ブチッと花を抜いて皆を救え大作戦~蝶々になんか負けるな!~』が始動するのであった……!!

 えっ、作戦名が安直すぎる? そんなー(´・ω・`)

GMコメント

 リクエストありがとうございます!! 以下詳細ですッ!

●依頼達成条件
 頭に生えているお花を全部引っこ抜く事!!
 つまり鬼ごっこを制してください!!

●フィールド
 豊穣に存在する結構広い森林地帯です。
 時刻は昼頃。特に視界に問題はなさそうです。
 周囲の地形などにそう危険な場所(例えば崖とか)はないです……が、無暗に奥にいくと帰り辛くなっちゃうかも。その前にお花を引っこ抜いてかえりましょー! ブチッと行きましょう!!

 あ、ちなみにクマぐらいはいたりするんですが。でも見えないちょうちょを追いかけているイレギュラーズの様子を見ると向こうから逃げます。やべぇって感じに逃げます。鳥とか兎とかももしかしたら逃げるかも……? なのでご安心(?)ください。

●特殊花『夢見鳥華』
 この辺りにだけ生えているらしい特殊な花です。
 なんとなーく花弁が蝶々に似てる気がします。
 見てる分には無害らしいですが、ちょっとでも刺激があるとこれまた特殊な花粉(魔力? 妖力?)を生じさせ――直撃した者の頭に、なぜか似たような花を生えさせることが出来るのです!!
 頭にお花が生えてしまった人物は『わーい!』とか『やったー!』などとしか言えなくなります。そしてなんか蝶々が見えるらしい(被害者談)のか、稀に『ちょうちょ! ちょうちょ!』と叫ぶこともあります。わーあのちょうちょきれいだなー!

 ……幻覚が見えるとかなんかやべー代物な気がしますが、しかしそれ以外で身体に悪い影響を及ぼす事は無いようです。例えばなんらか後遺症が残るとかそういう事は…………きっとないのでご安心ください。あ、ちょうちょ。

 あ、でも無理やりその動きを押し留めようとすると『通常攻撃』で反撃してくる事はあるかもしれません! ちょうちょを追いかける事を邪魔する事は許されないのです。全ての障害を排除してちょうちょを追いかけねばならない使命感があるのですから。
 でもその花を引っこ抜く事自体は容易で、無理やり引っこ抜いても怪我も何もありません。正気を取り戻したメンバーが増えれば協力して他のメンバーを追いかけていくことが出来るでしょう……! ブチッと行こうね!

●シチュエーション
 シナリオ初期段階で花の影響下に落ちてしまったのは以下のメンバーです。
 皆さんには不思議な蝶々が見えています。それはなんだか綺麗に見えたり、可愛く見えたり、懐かしい想いがしたり、不思議な気分が生じる事もあるでしゅう……あの蝶々は何処に行くんだろうなー
・ランドウェラ
・フリークライ
・真
・ティスル
・レッド
・クロエ

 無事だったのは以下のメンバーです。
・タイム
・エーミール

 花の影響下にある人物は、存在しない蝶々を追い求めてどこまでも駆けだしてしまう気分に駆られてしまいます……! タイムちゃんやエーミールさんはなんとか彼らを救ってあげてください! ブチッと!

 なお花の影響下にある時間が長いと「わーい! やったー!」の効果がとんでもない更にハイテンションになるとか……?

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 夢見鳥華の一時完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年09月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費---RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レッド(p3p000395)
赤々靴
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
辻岡 真(p3p004665)
旅慣れた
ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
クロエ・ブランシェット(p3p008486)
奉唱のウィスプ
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
エーミール・アーベントロート(p3p009344)
夕焼けに立つヒト

リプレイ


「わーいっす……わーいっ! やったーっす……!」
「やったー! おはなもいっぱい! ちょうちょもいっぱーい!
 ちょうちょー! まってー! まってって――! わーいわーい!」
「あぁ~だめそっちは危ないよぉ! もうっ!
 どうして走っていっちゃうの! バラバラに動かないでぇ~!」
 さぁ始まりました。『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)に『幻耀双撃』ティスル ティル(p3p006151)は既にお花により最高のテンションに仕上がっております。それを追いかけるは『優光紡ぐ』タイム(p3p007854)さんです――
 気分は園児の引率先生。あちこちに走って行ってしまう彼女らを追わねば!
「わーい! やったー! ちょうちょだー! ばんざーい!」
「ああ! ランドウェラさんもあの調子だし……あ、待って~! みんな待って~! ていうかちょうちょって何~!? 何が見えてるの~!?」
「ひとまず――これはもう手分けしてなんとかしないと、アウトですね!」
 ご覧ください、あの『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)さんでさえ『わーい! やったー!』と喜びに溢れている状態ですよ。これは辛うじて無事な状態に戻った『夕焼けに立つヒト』エーミール・アーベントロート(p3p009344)さんと一緒に狩らねば!
「ですがここからは私のターン! 皆さんを元に戻してみせましょう!
 ……鬼ごっこならねぇ負けるつもりはないんですよ!
 私が一体どれぐらいの鬼ごっこをしてきたと――思ってるんですか!」
「流石! お願いねエーミールさん! 私、向こうの人達を追うから!」
「ええお任せあれ!」
 だがなんと! 幸いにして一番最初に解放されたエーミールは――なんとなんと! 兄弟との鬼ごっこ『20戦0勝20敗』記録更新中の、期待の新人株なんですよ! うーん、これはダメっぽいですね! 解散!
 まぁその兄というのはいない存在なのですが……ともあれタイムはレッド、ティスル、ランドウェラを追い、エーミールは――
「わーい、わーい! やったー!
 ふふふ。ちょうちょです、わーい! しあわせの、ちょうちょでーす!」
「うふふふふっ、ちょうちょ……ちょうちょ……ヤハッ!」
 穏やかな表情でこれまたどこぞへとふらふら歩いている『夜空見上げて』クロエ・ブランシェット(p3p008486)と、どこかで聞いたことがある様な特徴的な笑みを漏らすちぃか……じゃなくて『旅慣れた』辻岡 真(p3p004665)らの方を追うのであった。
 あ、あともう一人というかもう一体というか……

「ワーイ。ワーイ。蝶々 可愛イ。待ッテ。待ッテ」

 その巨躯ながら駆け抜けている『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)もだ――!
 実はテンションと言語選択以外は割といつも通りなのが彼だ。
 だって……蝶々とか普通にくるし……戯れてるし……ていうか今も本物いるし……
 ある意味フリークライだけは本当に『見えている蝶々』を追いかけてるのかもしれないが。
「落ち着きましょう……ええ、クールに。一人ずつ捕まえて……
 そうしてまた一人と人手を増やしていけばOKの筈です。落ち着けば大丈夫。よしっ!」
 とにかくエーミールは追う。彼ら三人を、どれかに絞ってなんとかクゥールに。
 豊穣の森の中。ちょうちょと叫ぶ者らを追う――謎の鬼ごっこが今、始まった!


 浮遊するクロエは至高の中に包まれていた。
「ふふふちょうちょ~ちょうちょ待ってください、待って~わーい!」
 精神耐性とは一体……あらゆるを突破するこの夢見鳥華、こわない?
 ――だが誤解しないで欲しい。こんな事態になっているクロエだが、お話を聞いてそもそも気を付けようとしていたのは確かなのだ。普段からほわほわしていてお花畑であるのは確かだが、でも注意ぐらい出来るんです! まぁご覧の有り様ではあるんですけど!
「待ってくださ~い! やったー! やっ、ふべっ!」
 と、直後。地上に盛り上がっていた木の根に引っかかったクロエが盛大に転ぶ!
 お鼻の先からゴッツンと。
 ああ、頭の上にちょうちょ所かヒヨコとお星様まで見える様に~

「隙あり! でやッ――!」

 が、だからこそ追っていたエーミールにとってはチャンスであった。
 気を窺っていた彼はクロエの動きが鈍ったのを冷静に見極め、跳躍ッ――! さすればクロエが引っ掛かった木の根に引っかかって転倒。が、勢いそのままにクロエの花をもぐことには成功したッ――! 鼻の痛みと引き換えに。
「ううっ、こう、クールに組技で足を止めて頭の花をぶちっと抜く計画が……」
「あ、あれ? 蝶々は? というか何をしていたのでしょう?
 あれ? エーミールさん……そこで何をされて?」
 ともあれクロエ奪還だぜ! 事情を説明してさぁ他を追おう。まだまだいるのだから――!
「やったー! おはなもいっぱい! ちょうちょもいっぱーい! ちょうちょー! まってー! わーい! わたしも、がんばってとべばおいつけるよね!」
「だめ~! そっちは奥の方だし、段差が激しくて……飛んじゃ駄目~!」
 一方でタイムが追っているティスルのおめめはぐるぐるしてた。どれぐらいぐるぐるしてたかというと、今なら飛べる。絶対飛べると確信してるぐらいであった。もしもこの近くに崖とかあったら飛んでたかもしれない。
「わーい! おいつい……あれ? ひも? はしれないしとべない……?
 やった! けんがあれば……あれ? わたし、なんでうでわをもってるの?
 ちょうちょ! ひもがきれないよー! ちょうちょ、まってー! どこいくのー!
 うわ――ん! まってよ、ちょうちょ~~!」
 ――が。そんなティスルを襲うは数々のトラップ。
 足元にはロープが。急いでたので単純な罠なのだが……幻覚症状に苛まれし者の判断能力など! タイムが走り回って必死に仕掛けた罠が功を奏したかッ――!
「怖くないよ~怖くないからね~……えいっ! てい! やっー!」
 そして蝶々(見えない)に追いつけず遂に泣いてしまったティスルの背後から近づき――虫取り網一閃! 頭にスポッ! ずるずる引いて、頭のお花をぶちっ――!
「…………はっ!? 私は一体、今までなにを……!?」
「やった~! ティスルさんも元に戻った~~!」
「えっと、あれ? タイムさん……? ごめん。助けてくれてありがとうね?」
 困惑顔のティスル。先程までの事――? どうか忘れてくださいと伝えながら。
「ちょうちょって何? 私なに追いかけてたの……? 怖っ!?
 なにこれ幻覚って言うか、見えちゃいけないモノが見えてる感じ?」
「わかんない……もういっそのこと気にしない方がいいかも……
 あっ、そうだ! まだ元に戻ってない人がいるの。手伝って!」
 こうしてエーミールはクロエを。
 タイムはティスルを新たな仲間とし――急いで残りの仲間の下へ。
 さすればクロエらが見据えたのは。
「うふふふふ! ヤハハハハッ! わーい、わーい! わぁ……ぁッ……!」
「……なんかさっきよりも大分ちょっとヤバくなってる気が」
「というか速くないですか真さん! なんですかあの速度、ううっ~!」
 真だ。しかし――なんというか、こう――ヤバない?
「ちょうちょ……ちょうちょ、わーい!」
 ちょうちょを追いかけなきゃ!
 姉さんと見た思い出のちょうちょ。
 ROOで見た青いちょうちょ。
 友人が使う式紙のちょうちょ。
 幼馴染みが好きなちょうちょ。
 僕のかわいい、きれいなちょうちょ。
 捕まえなくちゃ、大事な蒼いちょうちょ!
 捕まえて、仲間に見せるんだ!
 だから僕が捕まっちゃだめなんだ!
 鬼ごっこ、楽しいな! あはははは!
 逃走ならお手の物! 負けないよ! うふふふふ! ヤハハハハッ!
「あれ? 今一瞬こっちを見て……あ、また逃げた!」
「く、くそう! 魔眼の力で寝てくれれば楽なのに……先回りも容易じゃない!」
 真の全力疾走。旅で鍛えた健脚が、彼をどこまでも運んでいく――
 己を追う存在を認識してるのか、より闘志を燃やして。
 横たわっている木々を乗り越え跳躍し。全力全開でああ――
 『ちょうちょ』を追いかけて行こう、と。


 レッドは頭ぽやぽやしてた。レッドの眼には全てがちょうちょに見えている――
 幸せな気分になれるかもと、特に大きなちょうちょを求めて駆けずり。
「ちょうちょ……あっー! ちょうちょー……! まてまてまて待てー……っす!」
 そんな彼女は可愛い熊ちゃんすら愛しむべき愛の一つであった。
 ドタドタ追いかけていく。あまりの雰囲気に、熊ちゃんもビックリ。
 ――逃走を開始する。さすればより強く追うレッド! と、直後には熊を追いかけていれば――広い花畑が見つかった。色々な花が咲いている風光明媚な光景だ……思わずフラフラと近寄り、また花を摘まんとして――
「わーい! わーい! ……ヘブッ!?」
 がッ! つい足元に躓いて盛大にスッ転んだッ。
 ちょっと坂になっていたのかゴロゴロと勢いよく転がっていく。止まらぬ勢い。しかしそれすら今のレッドには面白い事この上なく、心は広く愉快な気持ちに包まれて――
「今だッ――! てぇいい!」
 瞬間。その隙を見逃さなかったのはティスルであった。
 数瞬の集中、加速。全霊をもってして転がるレッドに追いすがり、頭に手を伸ばす。
 掴む茎。勢いよく引っ張るティスル。
 ――さすれば。
「わーい、ちょうち……ちょ……ッハ!?
 ボクはいったい、今まで何をしてたんっすか……? あ、ちょうちょ……?
 ヒッ!? ちょうちょ!?」
「はぁ、はぁ、大丈夫よレッドさん~もう『ちょうちょ』はいないからね~!」
「うう……なんだか『ちょうちょ』の幻覚が、見える気がするよね……」
 レッドもまた、正気を取り戻したッ! 息を切らしながら追いついてきたタイムが事情を説明。勢いあまって彼方まで転がっちゃったティスルも再度合流し、謎の『ちょうちょ』に互いに怯えるものであった……いやマジであのちょうちょ、なんなん?
「なんか綺麗な様にみえるんすけど、全然そんな感じない気もして……
 と、とにかく今は他にも感染したメンバーがまだいるんすかね!? そっちすか!」
 まぁともあれ。今はランドウェラをちょうちょから救出せんと駆けるものだ。呆れ果てていた陸鮫を口笛で呼び、恐らくランドウェラが向かったであろう方角へと赴け、ば。
「わぁい! やったー! タイムチャンクァイイ」
「わぁ。武器構えてるっすよ、なんすかアレ」
 彼は――何故か大弓構えて迎撃の構えを見せていた。
 同時。彼の思考は目まぐるしく高速化している……混沌言語に意訳すると、以下の様だ。
「わぁい!(いやぁこんな素敵な場所に出れるとは花がたくさんあるしちょうちょもたくさんいる。なかなか幻想的な場所じゃあないか)やったー!(ちょうちょがいる!追いかけ、追いかけなければ! あぁ! 同じくちょうちょを追いかけている人が!)やったったー!(キラキラしてたりひらひらしてたりきっとあれもあれもちょうちょ)タイムチャンカワイイ(…………???)」
「あれ? ウェラさんちょっとおぉ! そんなキャラだったっけ~!?」
 ニッコニコのランドウェラから紡がれる感情の数々。
 しかしこれはある意味チャンスかもしれない。
「タイムさん、今っす! 注意を引いてほしいっす! その間にティスルさんとボクでランドウェラさんの背後に回るっすから!」
「え、わた……わたし!? ええと、ええと!
 わ、わたしですよ~タイムですよ~ひら~ひらひら~、ぽえぽえ~」
 レッドの提案。弓構えるランドウェラ攻略の為に一寸の猶予もなく。
 故にタイムは舞う――蝶の様に舞い――人を魅了する――
 うーんちょっとまぬけな気がするコレ……そんな感じの事を想ったタイムだった、が。
「って、あっいけそう……!? ど、どう!? あっ今の内行って、行って!」
「やったー! やっ……わぁああああ!? わぁぁぁぁあ゛あ゛?!
 あああ、あ、ああ、あああ――!?」
「ああもうウルサイっす! えーい!」
 ぶちっとな。身長高めなことをあって油断してたっぽいランドウェラの背後より接近したレッドとティスルが――任務を果たす! 危ない所だった……彼の一撃はBS盛り沢山だ。当たっていれば洒落では済まなかったかもしれない……
「……んんっ? なんだ、頭がズキズキする……これは痛みを和らげるためにこんぺいとうを食べなけわぁちょうちょとこんぺいとうがとんでるぅ。うふふふふ、やったー!」
「あの、これ、ホントに抜けたよね? 根が残ってない……?」
 まだなんか狂ってる気がしたのでティスルらでランドウェラの頭を調べた、ら。(一応)大丈夫そうなので時間がランドウェラを癒してくれるだろう……で、あれば。向こうの方はとすぐに向かってみれば。
「はぁ、はぁ、はぁ――! よ、ようやく! ようやく捕まえられた……!」
「ふぅ、ふぅ、ふぅ……真さん、手強い相手でしたね……!」
 エーミールとクロエが必死に追いついたのか、二人の中央部分で真が倒れていた――
 追う際の助力になればと勇壮なる響きを奏で、地上をエーミールが。空からクロエが追ってようやく捕らえられた――ヤハ……ヤハハ……というまだ症状が残ってるっぽい呻き声が聞こえる気がするが、気のせいという事にしておこう。
 それよりもこれで――後はフリークライのみで――
「……んっ? あれ? 幾つものお花が……いっぱいの様な……」
 その時、クロエが気づいた。
 森林を駆けるフリークライ……その体には、大量の植物が存在している。
 つまり――え、どれが本物のお花ですかね!?
 フリークライとの相性が良すぎる。これが……相性抜群最凶コンボ……!
 数だけでも抜くのは至難。そして彼のギフトにより抜く以外では散らず。
 ばか! どうしてこんなフリークライにくっ付いちゃったの! もう! この夢見鳥華、実は知恵か何かがあってフリークライにとりつこうとしてるでしょ! なんだかソレが真実だと怖いので、この話はここまでだな!
「ワーイ。ワーイ。チョウチョ、チョウチョ~待ッテ、待ッテ。ワーイ。
 ワーイ。ワーイ。ワーイ。ワーイ……(山に響く綺麗なエコー)」
「これは……とんだラスボスがいたものだね……だけど全員で掛かれば!」
「大丈夫だと思います。とりあえず――木と木の間にロープを張って動きを制限できないか試してみますね。後はそこに追い込むことさえ出来れば……」
 なんとかなるかもしれないと、ランドウェラにクロエは互いに頷く。
 そう、これが最後の戦いだ。
 なんだかフリークライのテンションが挙がっているのか目がピカピカ明滅している気がするが……えっ。そういう機能あったの? それとも『ちょうちょ』の影響?
「ピピッ! ピーピー!」
「んんっ? なんでしょうこの鳥は……はっ。もしやフリークライさんの!」
「ピピピ!」
 であれば直後。そんなフリークライを救わんと彼に懐いている(というよりも住処にしている)青い鳥も援軍に。普段から勝手に歩き回るお家に大慌てな鳥さんたちだけど、今日は一際動き回ってて、さあ大変。
 彼の居場所を常に教え、花を抜くのも手伝えるかもしれない――と。

「さぁあとちょっとなんだから……なんとかなれー!」

 タイム、渾身の叫び。
 その後フリークライに生えていた花を見つけるまで――やたら時間がかかったとか。


 その後、ようやく全員『ちょうちょ』から解放されたイレギュラーズ。
 全員ある意味死屍累々……ああ、薬草を取りに来ただけの筈が、どうして……
「ミンナ オ手数オカケシマシタ ペコリ」
「ふぅ、ちょっと大変でしたね……皆さんお水飲まれますか? 私も飛び回って疲れました」
「ふえぇ、つかれた~! いる~~~!」
 フリークライが青い鳥たちと共にお辞儀し、クロエが皆に声を掛ければタイムが率先して水を飲むものだ。ああ本当に喉が渇いた……どれだけの時間鬼ごっこしていただろうかと。
「ま、とにかく後はちゃんと薬草探して帰ろうか――
 あれ、あそこにいるちょうちょは……本物の『蝶々』……?」
「ふふっ。どっちだろうねぇ……あゝ、綺麗だなあ」
 思わず彼方を見据えたティスルが疑心暗鬼状態に。
 あれは真か虚か。それとも己だけに見える幻覚か……
 真は口端を緩くし、眼を細めて――微笑む様に。
 さて。彼の脳裏にはまだ『ちょうちょ』が残っているか、それとも……
「……しかし、この花ってなんであるんでしょうね。ホント。頭に花を咲かせるというメカニズムもよくわからないですし……皆さんの健康も様子見した方がいいのかどうか」
「ま、とにかく一度帰るっすかね! 日も暮れそうっすし。
 ……あれ? なんかポケットに入ってる気が……」
 ともあれ。エーミールもクロエから貰った水を飲み干せば、夕方に差し掛かろうとしている事に気付いて――帰還の途につかんとする。さればその時。偶々レッドがポケットの中を手探る。
 なんだか違和感があった気がして。ゴミでも混じっていたかなと思えば。
 そこになにやら『ちょうちょなお花』が紛れていた事に気付くまであと二秒……

 やったー!

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 やったー! わーい、わーい!!
 ……はっ! 私は何を……ほのぼの鬼ごっことして書いたつもりなんですが、妙にちょっと怖い所もある花っぽくなった気もしますね。恐ろしや夢見鳥華……!

 ともあれ、ありがとうございました!!

PAGETOPPAGEBOTTOM