PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<グランドウォークライ>フレイム・ダウン

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●決戦・スチールグラード
「あぁ? 俺のニセモノだとぉ~~~~~!?」
 スチールグラード。突如としてシャドーレギオンに占拠され、ピンク色のクリスタルの象る街へと変貌したその地へと侵入していたのは、『ランチタイムの』アッティを首魁とする軍閥達だ。あくまで目的は鋼鉄の皇帝。であるならば、その首都に異変があってはそもそもの野望とて立ち行かない。よそに覇権を取られるのは面白くはないが、今は陣営同士で相争っているわけにもいかない。その程度の仁義と戦略眼は、このアッティと言う男にも存在した。
 かくして全軍を以て進行したアッティ達だったが、ここで意外な敵に阻まれることになる。それは、自分たちと全く同じ顔をしながら、凶悪性と凶暴性を増した存在だった。
「んっ、んっ~~~~~~いいねぇその驚き! 飯が三倍は美味く食えそうだッ!」
 もう一人のアッティがそう告げる。途端、巻き起こるは強烈な黒き炎! アッティの数倍の威力を感じさせるほどに燃え盛る炎は、爆風を呼び、アッティの部下たちをその炎の内へと飲み込む。
「くそっ! うちの精鋭が……全滅しやがっただと!?
 生きてる奴は退け! 手を貸せる奴は貸してやれ! こいつは……ヤバいッ!」
 アッティは叫ぶと、すぐさま全軍撤退の指示を出す。アッティ達が敗走するのをもう一人のアッティ率いる軍閥は、あざ笑うかのように見送っていた。

「なんと。貴方がそこまでやられるとは」
 ファン・ドルド(p3x005073)が嘆息する。此処はゼシュテリウスのギアバジリカ医務室。進軍するギアバジリカは、前方より敗走を続けるアッティの軍閥を発見。その様子にたまらず救助の手を差し伸べたというわけだ。
「なんつうかよぉ、容赦無って感じだぜッ! それに俺よりはるかに強烈……何だってんだありゃぁ?」
 治療を受けながらアッティが言うのへ、答えたのはスティア(p3x001034)だ。
「シャドーレギオン、だね。って言うか、あなたDARK†WISHに染まってなかったんだね」
「ダークなんちゃらっての分からねぇけど、俺は清廉潔白だからなぁ~~~~。
 それは良いッ! お前ら、あんなのに喧嘩を売るってのかよぉ~~~~?
 やめとけ! 今度はマジで死ぬッ!」
 アッティが言うのへ、しかし桜(p3x005004)は頭を振った。
「そう言うわけにはいかないよ。今回の異変は、世界を蝕む脅威(バグ)の影響だからね。私達がやらないと、この世界自体が危ないんだ」
「とは言え、アッティさんの言うことももっともです。彼がなすすべもなくやられたとなれば、敵は強大であることは確か。
 なるべく消耗を抑えつつ接近したい所ですが……敵の規模は?」
「反応を見る限り、およそ500って所だね。シャドーレギオンはどんどん増産できるのかなぁ」
 スティアが言う。
「となると、雑魚との遭遇は免れません。ですが、そうなるとボスであるアッティに遭遇する前に徒に消耗することになる……こちらが出せる戦力は?」
 ファン・ドルドが尋ねる。
「残念だけど、ほとんど出払っていて、そう数はだせないかな。元々、ゼシュテリウスは人手が足りないから……」
 桜の言葉に、アッティが言う。
「アンタらは確かに一騎当千って奴らなのは確かだぜッ! けど流石に今回は分が悪いッ!
 このルートは避けた方がいいんじゃねぇかなぁ~~~~~~?」
「そうはいかないよ。それに、避けたところで、敵が消えるわけじゃないからね。どうにかして戦力は削っておきたいな」
 スティアがそう言った瞬間、医務室の扉が開いた。
「ではその件、私達が請け負おう」
 そう言って入ってきたのは、
「れ、レオパル様!?」
 桜が叫ぶ。その言葉の通り、医務室へとやってきたのは『正義』の聖騎士、レオパル・ド・ティゲールだった。
「遅れてすまない。正義聖騎士団、300の兵力にて援軍に参った。数は少ないが……すまない、我々としても、これが遠征できる精一杯なのだ」
「いえ、助かります! すごく助かります!」
 頭を下げるレオパルに、桜がわたわたと手を振る。
「請け負う……と言う事は、此度聖騎士団の戦力を貸していただけると?」
 ファン・ドルドが言うのへ、レオパルは力強く頷いた。
「君達の力を借りて、我が国は無用な衝突を避け、国民と難民の保護に全力を注ぐことができた。
 そして、力を貸す、と約束したこともある。
 故に今、君達に、我が剣を託そう」
「……なら、早速、手を貸してほしいな」
 スティアがそう言うのへ、レオパルは頷いた。

●決戦の途へ
「作戦はシンプルです。正義騎士300名と共に、選出された10名の特異運命座標が、シャドーレギオン・アッティの軍へと攻撃を仕掛けます」
 ファン・ドルドがそう説明するのへ、特異運命座標たちは頷いた。
「一般雑兵は正義騎士300名に任せ、レオパルさん、そして特異運命座標たちが前方より突撃。
 最短距離と最短接敵を旨とし、進軍。
 道が開け次第、特異運命座標たちはシャドーレギオン・アッティに接敵。レオパルさんはその場に残り、増援としてくる一般兵を相手取ってもらいます」
「レオパル様には負担をおかけする作戦になりますが……」
 桜がそう言うのへ、レオパルはゆっくりと頷いた。
「先日は、貴殿らに護ってもらった立場だ。此度は存分に力を振るおう。
 だが、気をつけろ。確かにアッティ殿の力は脅威であった。それを上回るとなれば、死闘は必至」
「まぁ~~~俺がいうのもなんだけど俺って強いからなぁ~~~~!
 ま、気を付けてくれよ、ほんと。特にファン・ドルドっつったっけ? なんかアンタとはうまいランチが食えそうだぜッ!
 生きて帰ってきたら驕るわ!」
「楽しみにしておきます」
 ファン・ドルドが頷く。
「じゃあ、早速始めようか。……こういう時、作戦名とかつけるんだっけ?」
 スティアが首をかしげるのへ、レオパルは頷いた。
「では、外様の身分で僭越ではあるが……炎の悪魔を墜とす作戦だ。『フレイム・ダウン作戦』としよう」
「良いですね。では、フレイム・ダウン。開始します」
 かくして、特異運命座標たちは戦場へと向かうのであった。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 正義の騎士達ともに、炎の悪魔を討伐してください。

●成功条件
 シャドーレギオン・アッティの討伐

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●状況
 この度、ROOで発生していたイベント、『フルメタルバトルロア』。その元凶は、『聖頌姫』ディアナ・K・リリエンルージュなるものでした。ディアナの仕業により変貌した帝都スチールグラードへ向かっていた特異運命座標たちは、道中でシャドーレギオンとして生み出されたアッティとその軍閥に足止めを喰らいます。
 敵との戦力差は圧倒的。しかし、そこにレオパル率いる正義の騎士団が援軍に訪れます。これにて戦況は何とか五分程度には持ち直せるでしょう。後は、特異運命座標たちの働きにかかっています。
 本作戦は二段構えです。まずは、レオパルと共に敵群へと突入。可能な限りの最小の戦闘と最短距離で突っ切り、これを突破してください。
 その後はレオパルと分かれ、シャドーレギオン・アッティとの一騎打ちになります。第一段階で可能な限り消耗を抑え、なるべく万全の状態でアッティとの戦闘に入りましょう。
 クエスト発生時刻は昼。フィールドはスチールグラード市街地。街中なので、物陰からの不意打ちなどには注意してください。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考『デスカウント』
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

●エネミーデータ
 アッティ軍閥兵士 ×???
  作戦第一段階で遭遇するアッティ軍閥の兵士です。
  特筆すべき能力はありませんが、とにかく数が多いのが厄介。
  最小限の戦闘と遭遇で切り抜け、アッティとの戦闘に注力してください。

 シャドーレギオン・アッティ ×1
  作戦第二段階で遭遇する、シャドーレギオンのアッティです。
  オリジナルのアッティより数段強く、その残虐性、暴虐性は、さながら魔種のごとし、です。ボスフラグも設定されているため、非常に強力。
  主に炎を使用した範囲攻撃などを行ってきます。炎の爆風は敵を吹き飛ばし、火炎をまとわりつかせるほか高いEXAで複数回の行動も行ってくるでしょう。

●味方NPC
 レオパル・ド・ティゲール
  正義国の聖騎士。今回は作戦第一段階までは同行し、その後は雑魚の足止めを行ってくれます。
  非常に強力なユニットのため、道中はかなり頼っても大丈夫です。
  が、アッティ戦には参戦しませんので、そこのところはご注意を。

●フラグメントについて
 あります。が、復活しても戦闘復帰には少し時間(ターン)がかかるでしょう。
 なるべく死なないようにした方がスムーズです。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングをお待ちしております。

  • <グランドウォークライ>フレイム・ダウン完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別EX
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年09月25日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費150RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ルチアナ(p3x000291)
聖女
スティア(p3x001034)
天真爛漫
エイル・サカヅキ(p3x004400)
???のアバター
桜(p3x005004)
華義の刀
リセリア(p3x005056)
紫の閃光
ファン・ドルド(p3x005073)
仮想ファンドマネージャ
イデア(p3x008017)
人形遣い
現場・ネイコ(p3x008689)
ご安全に!プリンセス
みゃーこ(p3x009529)
野良猫
ミミサキ(p3x009818)
うわキツ

リプレイ

●作戦・開始
 ゼシュテリウスのギア・バジリカ。その足元に、今正義国の聖騎士300名と、それを率いる聖騎士、レオパル・ド・ディーゲルの姿があった。レオパルが、現れた特異運命座標たちに頷く。レオパルが剣を掲げると、聖騎士たちも同様に、高らかに剣を掲げた。
「我ら正義聖騎士団300名、およびレオパル・ド・ティーゲル!
 世界の危機にはせ参じ、救世主樽特異運命座標と共に戦う事を神に誓う!」
『God Save!(神の加護を!)』
「うわー、すごい迫力でスね。まさに見本みたいな聖騎士団ってかんじっス」
 『開けてください』ミミサキ(p3x009818)がそう言う。隣にいたアッティが、松葉づえなんぞをつきつつ頷いた。
「わかるわぁ~~~~すげぇよな! 一糸乱れぬって言うの? そこんところはソンケーできるねッ!」
 当然のようにいるアッティに、ミミサキは胡乱気な顔を見せた。
「えーと。私は良く知らないんでスけど。皆さんはこの人と因縁ある系っスか?」
「うん。少し前に、レオパルさんを護衛した時の敵の人。あと、現実の方でもあったことある人もいるのかな?」
 と、『ご安全に!プリンセス』現場・ネイコ(p3x008689)が頬に手をやりつつそう言うのへ、アッティは満足げに頷いた。
「現実ってのよ―わからんけどなッ! まぁ、戦い合うなんざ鋼鉄国じゃよくある事よ!
 と言うわけで、あの時のことは水に流してほしいねぇ~~~俺も別に、世界が滅ぶのを望んじゃいないからなッ!」
「まぁ、それは良いけどね」
 ネイコは苦笑する。
(やれやれ、現実でのアッティが世界の破滅を目論む魔種だったことを考えると、些か奇妙な感覚を覚えますね)
 『仮想ファンドマネージャ』ファン・ドルド(p3x005073)が胸中でぼやく。このアッティに言っても意味のない事だろう。現実でのアッティに比べて、R.O.Oのアッティは些かいい加減な印象を受けるが、これが魔に反転しなかった本来の性格なのかもしれない。
「アッティさん。生きて帰れば、ランチにご招待いただける、との事でしたね」
 ファン・ドルドがそう言うのへ、アッティは頷いた!
「おう! なんかアンタには妙な因縁めいたものを感じるんだよなぁ~~~~~縁って言うかなッ!」
「謹んでお誘いお受けしましょう。ですが、そのスーツの着こなしは相変わらずいただけない。ドレスコードは私の方に従っていただきますけれどね」
 ファン・ドルドが言う。アッティは肩を落とした。
「この着方、そんなにおかしい? 洒落てると思うんだけどさァ~~~~~」
「かなりイケてないですね。
 さて、皆さん。準備はよろしいですか? このアッティと言う男、こう見えてもそれなりの実力者です。彼が倒れたとなれば、シャドーレギオンもまた相当の強敵と言う事」
「でも、あの時に比べて、私達も強くなったんだ」
 ネイコが言うのへ、『天真爛漫』スティア(p3x001034)、そして『サクラのアバター』桜(p3x005004)が頷く。
「それに、あの時は潜入と離脱が優先だったからね。
 今回は、全力討伐。今度こそ負けたりしないよ!」
 スティアの言葉に、桜が続ける。
「うん。それに、レオパル様も力を貸してくれる。
 絶対に、無様な姿を見せたりなんかできないからね」
「貴殿らが全力を尽くせるよう、私も全力を尽くそう」
 レオパルが静かに微笑んだ。
「貴殿らの実力は、前回の戦いでしっかりとみせてもらった。
 今度は、私が貴殿らを守り、先に行かせる番だ。
 この身体、如何様にも使ってもらいたい」
「お、恐れ多いですっ!」
 わたわたと桜が慌てるのへ、スティアがくすりと笑う。
「さて、事前準備……サメちゃん、おいで!」
 スティアが精霊=サメを召喚する。妙に可愛らしく身を震わせるサメは、きゅう、と鳴き声をあげるとスティアの指示に従い、ゆっくりと上空に浮かんでいった。
「前回はサメ殿の目にも世話になったな。今回もその力をお借りしよう」
 レオパルが言うのに返事をするように、サメちゃんがくるりと空を周回する。
「それから、駆け付けてくれた騎士の皆さん。
 異国の地なのに駆けつけてくれてありがとう。
 厳しい戦いだと思うけど力を貸して下さい。
 民達の安寧を守るためにも!」
『ハッ!』
 さながら神に捧げる剣を現すように、騎士たちが剣を掲げる。その迫力に、少しだけスティアは驚いたが、すぐに頼もしさを感じるようになった。
「成程。今回は多対多のぶつかり合い。集団戦なわけね」
 『聖女』ルチアナ(p3x000291)が呟いた。
(聖騎士団長レオパル……いいえ、こちらだと副団長だったわね。『ルアナを通して』知ってはいるわ。
 みんなの様子を見ると、人柄や実力は、現実と相違ないようね。
 ……というか、精霊? サメ? レオパルも当然みたいに頷いてたけど、サメ?)
 ルチアナの視線に、レオパルが気づく。レオパルは力強く頷く。ルチアナも、とりあえず頷いて返した。考えても、らちはあくまい。
「準備は良いかしら。時間もないし、そろそろ始めるとしましょう」
「うーし! アタシもテンアゲでいくぞー!」
 ぱしっ、と手を打ち鳴らす『???のアバター』エイル・サカヅキ(p3x004400)。景気づけに、可愛くデコられたスキットルからお酒を一口。酔えば酔うほど強くなる、それがエイルと言う酔拳の使い手だ。
「エイルっち、マジでやるんだ。すごくね」
 と、そう言うのは、地元のダチであるギャル仲間である。鉄機種であるらしいギャルが、周辺の地図を手渡す。
「これー、地元で使ってる裏道とかメモったんでヨロ。エイルっち、今度タピろーぜー。
 佐藤とか山田とか洗井とか呼んでもいーよ」
「マジ? じゃあ今度声かけとくわ。ありがとね、イリっち」
 エイルがイリっちに手を振って別れるのを見やりつつ、
「これで準備は万全と言う事ですね」
 『人形遣い』イデア(p3x008017)が静かに一礼をする。
「では……参りましょう、皆様。フレイム・ダウン。その作戦の第一段階です」
 イデアの言葉に、仲間達は頷く。
「悪い事に炎を燃やす奴だ。遠慮はいらないね」
 『野良猫』みゃーこ(p3x009529)が言う。
「レオパル君は、ボク達の指示を聞いてくれると嬉しいな」
「もちろんだ。全面的に貴殿らに従おう」
「騎士団の皆さんも、準備はよろしいですね?」
 リセリア(p3x005056)がそう言うのへ、騎士団員たちが一糸乱れずに返事を返す。リセリアは頷くと、
「では……作戦を始めましょう」
 その言葉に、一同は鋼鉄の街の中へと進軍を開始した。

●進行・第一段階
「来たぞ! ゼシュテリウスの連中だ!」
「敵シャドーレギオンを確認!」
 シャドーレギオン、そして聖騎士団員たちが、同時にお互いの姿を認める。もろともに武器を構え、
『突撃!』
 両陣営が同時に叫ぶとともに、突撃を敢行する。果たして両軍は真正面から衝突し、激しい剣戟と魔術の音が鳴り響く。
 そんな街中を、特異運命座標たち、そしてレオパルが走っていた。上空にはサメが飛んでおり、時折道を示すようにくるりと回る。
「前方、敵です! 数は4!」
 リセリアがそう言うのへ、レオパルが頷く。
「私が蹴散らそう!」
「手伝います、レオパル様!」
 桜が、
「私もっ!」
 スティアがをあげ、同時にかける。いや、レオパルの方が速い。大剣を苦も無く翻し、正面から接敵と同時に振り下ろす。鋭い斬撃がシャドーレギオンの一人を切り裂き、返す刀で隣にいた二人目を斬撃。
「左の二人を頼む!」
「はいっ! スティアちゃん!」
「おっけー、だよ!」
 桜が叫び、スティアが頷く。同時に振るわれた二振りの刃が、左に布陣していたシャドーレギオンを切り裂いた。黒い霧のようになって消えていくシャドーレギオン。見事な連携には、レオパルも思わず称賛の声をあげる。
「やはり、見事な連携だ。味方として頼もしく思う」
「い、いえ! まだまだです。ですが、ありがとうございます」
 桜がぺこぺこと頭を下げるのへ、スティアが嬉しそうに笑いかけた。そんな光景を見ながら、エイルは胸中にて呟く。
(……それにしても、私がサクラちゃんとスティアちゃんって天義のすごいお家の二人と、本人じゃないとはいえレオパル様と一緒に戦うなんてねぇ)
 三人の戦いぶりは、見惚れんばかりのものだ。その隣に、自分もいる……なんだか不思議な感覚だ。
「ふふ、テンアゲじゃん!」
 エイルは微笑む。
「さ、先行くよ! 戦いはこれからこれから!」
 エイルの言葉に、三人は頷く。果たして戦火躍る街中を、一行は進む。行く末に敵の一群があれば、
「この先に敵の群がありますね。騎士団の派遣を願えますか?」
 ファン・ドルドが作戦を立案し、レオパルが騎士たちに命を下す。派遣された騎士たちが足止めを始めるのを確認し、さらに一行は街の奥へ、奥へと進んでいく。どうしても避けられぬ戦闘はあったが、可能な限り接敵を避けたが故に、多勢に囲まれるようなことは無い。それに、仮にそうであってもレオパルと言う強力な手札を有している一同が、この段階において窮地に陥ることはなかった。
「さぁ、仕事の時間ですよ」
 イデアが黒騎士人形を操り、敵群に突撃させる。放たれた黒騎士人形は手にした刃を暴風のごとく振り回し、周囲の敵兵を切り刻んだ。次々とシャドーレギオンがその姿を消していく中、ネイコが戦場へと飛び込み、残る敵を一掃する。
「おっけー、進路クリア!」
 ネイコの言葉に、仲間達は頷く。
「ここまでは順調っスね……」
 ミミサキが呟く。
「流石は重要NPCでスね。戦力としては充分。でも、ちょっと順調すぎて怖いっスかね」
「良い事ではあるのだけれどね」
 ルチアナが言った。
「気を抜かないで行きましょう? 力は温存しておくにこしたことは無いわ。ボスの出現飲備えて、ね。
 人海をかき分けてアッティの許へ。あいつを落としてさっさと戦いを終わらせましょう」
 その言葉に、ミミサキは頷く。道中は順調。だが、まだ道のりは長いのだろうか――そう思った刹那。
「……! 止まって!」
 みゃーこが声をあげる。同時、特異運命座標たちの眼前に、強烈な爆発が巻き起こった。思わず身構える――直撃はしていない。それでも、近くに着弾しただけでも肌を焼くように錯覚するほどの、強烈な熱!
「この炎……ボスに間違いないね!」
 みゃーこの声に応じるみたいに、甲高い笑い声が響いた。
「はいはいはいはい、おつかれちゃーーーん?」
 ぱん、ぱん、と煽る様なゆっくりとした拍手が響く。現れたのは、先ほど別れたはずのアッティ……いや、よく見れば、スーツのデザインや、髪の色などは微妙に異なっている。それに、アッティとは随分と違う、まるで魔の者のような、異様な雰囲気……。
「シャドーレギオン、ですね」
 リセリアが言う。
「新種のシャドーレギオンはコピー体……なるほど。
 ビッツ・ビネガーだけでは無い、という事ね」
「いや、なに勝手に納得してくれちゃってんの? もっとこう、驚きとか無いわけぇ?」
「悪いけど、アッティのコピーがいるなんて言うのは本人から聞いていたからね」
 みゃーこが言うのに、アッティはゲラゲラと笑った。
「そりゃそうか! オリジナルを逃がしちゃったからナァ~~~~~~俺様一生の不覚ッ!
 まぁいいか。此処でお前らを皆殺しにして、オリジナルも消せば問題なしッ!」
「皆様、お気を付けください」
 イデアが言う。
「ふざけてはいますが……確かに、その気配は得体が知れません」
 イデアがその手でひそやかに印を組む。同時、発動したスキルが光のエフェクトを放ち、仲間達を包み込んだ。
「仕込みは済みました。あとはやるべきことをやるだけですね」
「おっとぉ? そっちには部下も大勢いるじゃんかよぉ~~~~大勢に無勢! って事でぇ、テメェら、出てこい!」
 と、アッティが指を鳴らした瞬間、あちこちから配下のシャドーレギオンの姿が現れる。だが、ここでザコを相手にしている時間も余裕もない!
「レオパル様! ここはお任せします! 私達はアッティさんの偽物を倒してきます!」
 桜が叫ぶのへ、レオパルは力強く頷いた。
「此度の戦、命運を貴殿らに任せる……神の加護を!」
 レオパルは剣を掲げて、特異運命座標たちへ頷いた。すぐに配下の兵士を率いて、シャドーレギオンへと斬り込んでいく。その様子を見ながら、特異運命座標たちはアッティへ向かって走り出した。アッティは余裕の表情を崩さないまま、特異運命座標たちの姿を見つめている。
「俺はさぁ~~~~~~~~美味いランチが食いたいわけッ!
 でさぁ、ランチを美味くするコツって知ってるかぁ?
 血のアロマ! 悲鳴のミュージック! そう言うのが、心豊かなランチを演出するわけよッ!
 お前らにわかるかぁ?」
「分かりませんね、贋作(シャドーレギオン)の言うことは」
 ファン・ドルドが声をあげた。
「ごきげんよう。シャドーレギオンになっても、スーツの着こなしはイケてませんね。レディをランチに誘う甲斐性がある分、オリジナルの方がまだマシでしょうか。
 ええ、私、人生で生まれて初めて、ナンパを受けたのですよ。これは面白い。是非ランチをご一緒したいと思いましてね。
 さっさとあなたを倒さなければ、お昼時に間に合いません」
「そうかい! あの世で飯でも食いなぁ!」
 アッティの身体に、爆発的な闘気が巻き起こる! それは、さながらさく裂する炎のごとく燃え盛り、世界を焦土と変えた。明らかに、オリジナルのそれよりも強力な炎。むしろその性質は、以前イレギュラーズ達が遭遇した、現実での魔種のそれに近い!
 アッティが、その腕を振るう。途端! 巻き起こる炎が一気に解き放たれ、特異運命座標たちを一息に飲み込んだ――!

●決戦・炎の悪魔
 燃え盛る炎が、特異運命座標たちの姿をかき消した。あざ笑う、アッティの声が響く。
「おいおいおいおいおいおいおいおい! まさかこれで終わり!? 作戦完了!? 冗談だろぉ~~~~~?!」
「そうだね、笑えない冗談だよっ!」
 が、くすぶる噴煙の中から、蒼の影が飛び出す。銀の髪の乙女。剣士、スティア。上段から振るわれるスティアの刃を、アッティは手甲で受け止めた。
「スティア――推して参るよっ!」
 スティアは刃を引くと、身を翻して横なぎに切りつける。アッティは後方に跳躍してそれを回避。
「いいぜぇ、そうこなくっちゃなぁ!」
 拳を突き出すと、爆炎が巻き起こりスティアを狙う。スティアは横跳びにステップ、爆炎を寸前で回避してみせる。
「桜ちゃん!」
「桜! 推して参る!」
 入れ替わる様に突貫する赤の影、赤の乙女剣士、桜。横なぎに振るわれる一撃、間髪入れずに返す刀での二撃。
「とおぉっ!?」
 アッティは悲鳴をあげながら体をひねる。くたびれたスーツが、桜の斬撃によって切り裂かれる――避けられた? いや、体勢を崩すことが目的だ!
「エイルちゃん、お願い」
「かしこまっ!」
 後方より飛び込む影=エイル・サカヅキ。ヒールのかかとを利用した鋭い蹴りの一撃! 体勢を崩したアッティは、それをよけきれない!
「うげっ、嘘だろおい!」
 突き刺さった蹴りの一撃を受けて、アッティが後方へと飛ぶ。闘気を後方に吹きだして姿勢制御。にやにやとした笑み=致命打には遠い。
「もしかして、さっきの一撃、みんなあんまりダメージなかったりぃ~~~?」
「とーぜんじゃん! だいたい、炎上対策はパーペキなんだなこれが!」
 特異運命座標たちの姿をみれば、少々のダメージは受けていたモノの、周囲に燃え盛る炎のダメージを受けた様子はない。それは、エイル、そしてイデアによる、火炎無効付与スキルの効果であった。
「コスメはギャルの三種の仁義なの! ギャル舐めんなって!」
「うっそ、コスメで炎無効化したの!? あと漢字違うぜギャル!」
 けらけらと笑うアッティ。炎のつばさめいた闘気を纏い着地。すぐさま炎を巻き上げ、周囲を吹き飛ばすように解き放つ! 熱風が、延焼を無効化しているとはいえ、特異運命座標たちの体力を奪う。
「なるほど、確かに、敵は強力……。
 ですが、燃えるばかりで能がないですね。その歳になってまだ火遊びがやめられないのでしょうか?」
 イデアが、その指先から糸を解き放つ。きゅるきゅると音を立てて舞う極細の糸。
「裁縫がアンタの武器かよ!? まとめて燃やされちまえよな!」
 アッティの炎が解き放たれる! だが、イデアの放つ糸は、その炎を切り裂いてアッティに向けて飛翔! 無数の糸が連弾となってアッティを叩き、その身を切り裂いた!
「残念ながらその炎は対策させていただきました。貴方はもうなにも燃やせませんよ。
 そして、私の糸からは逃れられません――リセリア様!」
「了解しました」
 合わせるように駆けるリセリアが、ダイヤモンドダストの細剣を振るう。連撃を受けて体勢を崩しているアッティは、その斬撃を避けることができない。斜めに振り下ろされた細剣が、アッティのスーツと肉体を切りつけた。ぺき、と音を立てて、傷口が氷結していく。
「おいおいおいおい、炎使いに氷か!? 嫌がらせだぜ、お嬢ちゃん!」
「それ以上無駄口を叩くようでしたら、その口を氷で縫い合わせましょうか?」
 再度振るわれる細剣を、アッティは必死の形相で回避した。そうでなければ、本当に口元を縫い合わせられかねなかったからだ。
「痛ぇーーっ! なんだよこの氷はよぉ!」
 アッティが炎の闘気を巻き起こすと、少し時間をかけて氷が融ける。が、傷口はふさがらない。血の代わりに黒い粒子のようなものを噴出しながら、アッティは苛立たし気に特異運命座標たちを睨みつける。
「アッティ? この面倒な戦いをやめる気はない?」
 ルチアナがそう言うのへ、アッティは吐き捨てるように答えた
「正直に言うぜッ! お前らの実力をちょっと舐めてた……此処からが本気だッ! テメェら、消し炭一つのこさねぇッ!」
 先ほどよりもさらに強烈、かつ苛烈な炎が巻き起こる! 近づくだけで肌を焼くような圧倒的な熱!
「あら、残念。でも、暑いだけっで大したことないのね、あなたの炎」
「ほざけよッ!!」
 アッティが再び炎を解き放つ。ルチアナは鏡の楯をかざして炎を受け止める! 爆炎が、ルチアナの肌を焼く――致命傷にはいたらなかったが、しかしダメージは大きい。だがルチアナは優雅に笑ってみせた。
「あなたの炎がどれだけ強烈であろうとも、私の意思は燃やせないわ――」
 同時、放たれた魔術の弾丸が、アッティの肩口を貫く。「ちぃっ!」アッティは舌打ち一つ、走り出す。
「ぶっとばすッ!」
 アッティが巻き起こす炎が、拳にまとわりつく。強烈な打撃を、しかし、
「残念っスね!」
 ミミサキが立ちはだかる。ミミサキたちはかわるがわる防御者を交代して、可能な限り脱落を防ぐ。その戦法を功を奏し、『死亡』者を出さずに五分五分の戦いを繰り広げている。話を戻そう。とにかくアッティの前に立ちはだかったミミサキは、自身の入っていた宝箱のふたを閉めて、その蓋でアッティの一撃を受け止めて見せる! が、流石に衝撃は殺せず、炎と共にミミサキの箱は後方へと転がっていく。しばし転がった所で蓋を開けて、
「うわっ、炎のおかげで内部は蒸し風呂じゃないスか!」
 ぶはあっ、と強く息を吐いて見せた。
「その箱ごと燃やしてやるってんだよッ!!」
 打ち放たれる、炎の嵐。ミミサキに迫るそれを、
「ミミサキさん、交代っ!」
 ネイコが叫び、代わりにひきつける!
「おねがいっス!」
 ミミサキの声を受けながら、ネイコは迫る炎の弾丸を妖刀にて斬り捨てた。直撃は避けても、強烈な衝撃が身体を駆け巡る。ネイコは痛みに顔をしかめつつ、アッティへ向けて刃を構えた!
「確かに、あの時のアッティさんよりずっと強い……! けれど、私だって、あの時よりずっと強くなってる!
 それに、皆もいる……今度は負けない、絶対に!」
 ネイコが刃を振るう。途端、巻き起こるオーラが、明るく派手なエフェクトを巻き上げて、飛翔する斬撃となってアッティへと迫る!
「君のハートを舗装しちゃうぞ! プリンセスストライクッ!」
 技名を叫んだ瞬間、エフェクトはさらに派手さを増し、アッティを切り裂いた! 舞い踊る花びらの様なエフェクトがアッティを包み、アッティに隙を晒す。
「隙ありだねぇ! くらえーっ!」
 間髪入れずにみゃーこが飛び込んだ。シンプルな猫パンチ! それ故に強烈な一撃が、アッティの顔面を張り飛ばす!
「いぎゃっ!?」
 アッティが悲鳴をあげて転がる。みゃーこはしゅたっ、と着地。毛を逆立てながら、フーッ、と威嚇をして見せた。
「炎を使うのは悪くないよ、うんうん。アタシ……おっと、ボクも炎は嫌いじゃないんだ。
 でもいけないなぁ、悪い事に使うのは頂けないよ。使い方はイマイチだねぇ?
 熱い血潮は、やっぱり正義のために燃やさないと……ね?」
「言うねぇ、ネコチャン!」
 ゆっくりと、アッティが立ち上がる。
「強烈な一撃だったぁ……目が覚めたぜぇ。お前らは殺す。絶対に殺す。全力! 全開の俺が! ここで皆殺しにする!」
「つくづく、語彙と言うものが足りませんね。ユーモアなら、やはりオリジナルの方がありましたよ」
 ファン・ドルドが静かに言った。
「あなたは確かに強い。オリジナルよりも。ですが、あなたは勝てません。
 もう一度言います。あなたでは、私たちには、勝てません」
 ファン・ドルドが静かに刃を構える。アッティが、ひきつった笑みを浮かべた。
「殺すぞ」
「それしか言えないのですか?」
「殺すッ!」
 巻き起こる炎――放たれる炎弾。それを切り裂いて放たれる、長曽祢虎徹の斬撃。拡張した刃が間合いを超絶に伸ばし、遠距離のアッティの腕を切り裂く――傷口から、影が吹き出した。
「トドメと行きましょう、みなさん」
 ファン・ドルドの言葉に、特異運命座標たちの猛攻が始まった。

●決着
 瀕死の状態に陥って、なおアッティの攻撃力は衰えることは無い。むしろ、すべての性能が引きあがったかのような錯覚すら覚える。これもボスフラグのようなものの付与によるのだろうか? だが、敵の体力はもう残ってはいまい。残り僅かな時間で、すべてが決まる!
「ルチアナさん、魔術弾を! ボクがもう一発猫パンチするよ!」
「わかったわ!」
 みゃーこの言葉にルチアナが頷き、放つ魔術弾が、高速でアッティに飛来する! ずどん、と言う音を立てて、アッティの胸を抉る術弾――だが、アッティは足を止めることなく走り出す!
「させない――」
 みゃーこが叫び、飛び掛かる――爆発的な炎が巻き起こり、みゃーこを吹き飛ばす!
「――ッ!」
 みゃーこは空中で体勢を整えながら叫ぶ!
「隙を作らないで! 一気に畳みかけて!」
「しゃらくせぇっ!」
 アッティの叫びと共に放たれた爆発――その爆風を切り裂いて、スティアとエイルが飛び掛かる!
「これ以上は、させないっ!!」
 スティアが叫び、斬撃を繰り出す! アッティは腕を振るい、手甲ではじく! 間髪入れずエイルが飛び込み、
「意地汚く食ってばっかなんしょ! 下っ腹やばない?」
 スキルで生み出したビールジョッキでぶん殴る! がん、と音を立てて頭部に直撃。が、アッティは凄絶な笑みを浮かべて見せた!
「まだ死なないんだな、これがぁっ!」
 アッティはエイルを殴りつける。エイルは腕で受け止めながら後方へ跳躍して威力を殺した。一方、アッティも、距離を取るべく跳躍――しようとして、その足元に細糸が絡みつく!
「逃がしは致しません!」
 イデアだ!
「このメイドが――!」
 アッティが叫ぶ。同時、リセリアの細剣が、氷と共にアッティの心臓を抉った。
「その心臓、もらい受けます……!」
「うげっ」
 アッティが断末魔の悲鳴をあげる。その瞳から、光が失われる――刹那、再び光がともり、体勢を立て直す!
「死ぬかと思ったぜ!? 細剣のお嬢ちゃん!」
 カウンター気味に放たれた炎の拳が、リセリアを殴りつける。リセリアは吹き飛ばされつつ体勢を立て直し、着地。
「くっ……ですが、もう少しのはずです!」
「いいや、終わりだね! これで仕舞いだ!」
 叫び、解き放たれた巨大な火炎弾――それが着弾するかと思われた瞬間、ミミサキが飛び出し、その進路の前に立ちはだかった!
「うーん、こういうの、キャラじゃないスけど……すみません、お先っス!」
 ミミサキが、炎の中へと消える――途端、ミミサキを中心として火炎弾は爆発! ミミサキの身体が粒子に消える=『死亡(ログアウト)』――!
 呆然としたのはアッティだ。改心の反撃を、ミミサキに吸われた――その焦りから生じた隙。それを、特異運命座標たちは逃がさない!
「これでお終いだよ、炎の悪魔――!」
 ネイコが、桜が、一気に接敵する。
「確かにあなたは、前に戦ったアッティさんより強い。
 威力も、正確さも、数段上かも知れない!
 でも、貴様の拳には信念がない!!」
 桜が吠えた。その気迫に、アッティは思わずたじろぐ。
「アッティさんには国を守ると言う気概があった!
 いくら威力が優れていても! 何度攻撃を受けようと!!
 そんな軽い拳で! 私を倒せると思うなぁ!!」
 桜の刃が、アッティの身体を切り裂いた。同時、カウンターで放たれた拳が、桜の胸を穿つ。狙った一撃ではない。恐怖のあまり、桜に対する恐怖のあまり、本能的に出た手だった。
 だが、桜は倒れない。言葉通りに、宣言通りに。桜の決意のこもった眼が、アッティをさらに恐怖させた。一方、間髪入れず、ネイコが横なぎに刃を振るった。周囲を刈り取る広範囲の斬撃。災厄の一撃に逃げ場なし。だが、アッティは最後まで抵抗した。その掌に、炎を産む――刹那、伸びた虎徹の刃が、その炎を刈り取った。
 アッティが、刃の主に視線を向ける。
 ファン・ドルド。
「くそっ」
 アッティが呻いた。同時、ネイコの斬撃が、アッティの胴をないだ。
「ご安全に」
 ネイコが呟く。途端、巻き起こった黒いエフェクトが、アッティの身体を飲み込む――その黒の中に潰えて、アッティの姿は見えなくなった。
 疲労に、ネイコが思わず膝をつく。仲間達も、激しく荒い息を整えた。
 あたりに、敵の姿は無し。
「フレイム・ダウン――完遂ですね」
 ファン・ドルドがそう言った。
 炎の悪魔は、潰えた。

「貴殿ら、皆無事か!?」
 レオパルが走ってくるのを、特異運命座標たちは確認した。その後ろには、騎士団員たちのすたがも見える。ケガをしているものもいたが、死者は出なかったらしい。
「はい! 皆、無事で……レオパルさんも無事そうですね!」
 サメちゃんによっかかって体力を回復しながら、スティアが言う。サメがいたわる様に、きゅい、とないた。
「戦いの趨勢は、こちらかも確認させてもらっていた……よくぞ、あれだけの実力者を討伐できたものだ。
 流石は特異運命座標……いいや、違うな。名声や、役割の力ではない。これが、貴殿らの実力なのだろう」
 心底感心するように、レオパルが言った。
「ありがとうございます……!」
 それが心からの称賛の言葉だと知っていたから、桜は謙遜することなく、その言葉を素直に受け取り、そして素直に礼を言った。レオパルも力強く頷く。
「いや、結構きつかったっスね……」
 ミミサキがそう言って、ぐで、と倒れるのへ、
「お疲れ様。皆が攻撃を引き付けてくれたおかげだよ」
 ネイコが微笑んで見せる。
「アッティの率いていたシャドーレギオンは、アッティが消滅したと同時に消えてしまったようですね」
 リセリアの言葉に、ルチアナは頷く。
「ええ。掃討戦をやらなくて済んだのは幸運ね。流石に、体力の限界よ」
「ギア・バジリカがこっちに向っているよ」
 みゃーこがいった。
「到着したら、回収してもらおうか。というか、さすがに疲れたね。ちょっと眠たいよ」
 くあー、とあくびなどをして見せる。
「お疲れさまでした、皆様。レオパル様に、騎士団の皆様も。とても戦いやすかったです」
 イデアが労うように、一礼した。騎士団のメンバーも、応じるように手を振って返す。
「ほんと、皆おつだよー。
 それに、ぱるぱるに騎士団の人達も、助けに来てくれてまじサンキュだよ。
 ねーねーぱるぱる? 正義ってさ、いい国だよね……なんて、ね」
「うむ」
 と、レオパルは頷いて……小首をかしげた。
「ぱるぱるとは、その私か?」
 むむ、とうなるレオパルに、エイルはケタケタと笑ってみせる。
「さて……業務終了。これより余暇時間です」
 ファン・ドルドは笑った。
「これより昼食会ですので。一張羅を要しなければなりませんね。なにせ、人生初めて受けたナンパなのですから」
 その言葉に、仲間達は笑ってみせる。
 特異運命座標たちの決死の活躍により、炎の悪魔は地に墜ちた。
 今は静かな街の様子が、特異運命座標たちの活躍を、その静寂で以って称えるかのようであった。

成否

成功

MVP

ミミサキ(p3x009818)
うわキツ

状態異常

スティア(p3x001034)[死亡]
天真爛漫
ミミサキ(p3x009818)[死亡]
うわキツ

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様の活躍により、炎の悪魔は討伐。
 ギア・バジリカ進路は確保されました。

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