月詠奇譚【月乃宮】

オープニング

●月と餅と鼬と姫と。
「ぺったん」
「ぺったん」
「ぺったんたん！」
　軽やかなリズムを刻んでぴょんぴょん跳ねている毛玉が二匹。
　毛玉からは耳が、くりくりとした愛らしい瞳。
　丸っこいモフモフの身体は着地する度にぽふっとファンシーな音を立てている。
　長々と語ったが、とどのつまり『かわいい』という事である。
　さて、その二匹の間には木臼が置かれ、一匹は短くぽってりした手で杵を持ち、もう一匹は掛け声に合わせて餅を反している。
「むぅ、やっぱりお餅が少ないの～」
「お米が足りないの～」
「かぐや様が悲しんじゃうの～」
　臼の仲のこじんまりした餅をみて二匹はしょんぼり落ち込んでしまっている様だ。
　ここ月乃宮はとある世界の空に浮かぶ月に建てられた都である。
　その歴史は古く、代々『かぐや様』と呼ばれる女王が収めておりその女王の加護により住人達……先ほどの兎たち『月兎』は護られ『満月餅』という餅を作ってはかぐや様に納めているという訳だ。ところが今年は米が例年より少なく、それに比例し作る餅の量も減少してしまっている。
　その原因もはっきりしていた。
　さっと一陣の風が吹いたかと思うと、月兎の背後にあった稲がごっそり刈り取られている。
　見事に実り収穫を控えていた稲だった。それを腕に抱えてにししと笑うのは月鼬。
　彼らもまた月乃宮の住人なのだが如何せん悪戯心が強く、時々月兎達に悪戯をしているのだが今年は寄りにもよって満月餅の為の糯米を盗むという暴挙に出たのだ。
「あーっ！」
「お米返してなの～！」
「悔しかったらオイラ達を捕まえてみなー！」
　短い脚で月兎達がぽてぽて追いかけるが到底追いつけず、月鼬に米を奪われてしまった。
　あっと短く声をあげて転ぶ二匹。

「ひどいの～」
「ぐすっぐすっ、かぐや様ぁ～」
　ぴぃぴぃと泣きじゃくる二匹を優しく抱えるすらりと伸びた腕。
　床に着きそうなほど伸びた射干玉の黒髪に吸い込まれそうな黒曜石の様な瞳。
　二匹を優しく撫でる表情が慈愛に満ちたこの女性こそがかぐや様である。
「あらあら、そんなに泣いてしまって。どうされたのですか？　可愛い我が子たち」
「月鼬にお米をとられてしまいましたの～」
「ごめんなさいなの～」
「うふふ、良いのですよ。怪我がなくてよかった」
　一向に泣き止まぬ二匹をあやしながら、かぐやは憂いを帯びた目で月鼬が消えていった森を見ていた。

●月詠奇譚『月乃宮』
「よっ、もうすぐ十五夜……もとい月が綺麗な季節だなあ」
　薄を飾り付けながら黒衣の境界案内人朧があなた方に話しかける。
　意外と凝り性な男は「もうちょっと、こっちか？　いやこう……」などと呟いていたが、やがて依頼の話をし始めた。
「今回は月乃宮っていう月の都に行ってもらう。息はちゃんとできるから安心しな。そこに住んでる月兎達の手伝いをしてやってくれ」
　内容を纏めるとこうだ。
　月乃宮ではかぐや様という美しい女性の為に満月餅というものを作っている。
　しかし今年は月鼬の悪戯により米が奪われ餅がまともに作れていないのだという。
「お前さん達はこの月鼬を懲らしめてやってくれ、命までは奪わなくていい。その後は満月餅を一緒にくってきたらいいさね」
　それじゃよろしくなと朧はあなた方を送り出した。

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第2章

第2章 第1節

　かなりゆったりですが二章突入しました。
　月鼬達は反省したようで糯米を返してくれましたが、この騒動で作業が止まっていたため月兎達は大忙しです。月鼬もお詫びという事で手伝ってくれますが、皆さんも満月餅造りを手つあってあげてください。
同行者さんや、複数で行動する際はお手数ですがグループタグの表記をお願いします。
　なお、プレイングは何度送っていただいても大丈夫です。
　一回のプレイングに付き探索できる場所は一箇所でお願いいたします。

●第二章目標
　満月餅作りを手伝う。


●第二章フィールド
　以下の中からおひとつお選びください
・川
　綺麗な水が流れています。ここではお水を汲めます。
・田
　月鼬達と一緒にお米を狩り取るお手伝いをします。　
・集落
　月兎達と満月餅を作ります。
　杵でお餅をつくのも良し、丸めてあげるのもいいですね。
・その他
　月兎、月鼬とじゃれあいたいというのも大歓迎です。

●舞台
　月詠奇譚『月乃宮』という月の都が舞台の物語です。
　月の真ん中にかぐやが住む宮殿、その周囲を月兎達が住むす集落と田んぼが囲んでいます。
　その周囲をくるっと取り囲むように森があります。
　なお酸素や、水、土、光などの要素はかぐやに加護より実現されています。

●NPC
　かぐや
　月兎達からは『かぐや様』と呼ばれている慈悲深い美しい女性です。
　寿命という物が無いらしくずっと月乃宮を見守ってきました。
　彼女の存在のおかげで地球とほとんど変わらない生活が月でも出来ています。
　月兎と月鼬を我が子のように可愛がっています。

　月兎
　月の住民である兎さんです。白や茶色、黒といろんなカラーリングと模様があります。
　モッフモフの身体に短い手足、そしてうさ耳が付いてます（ロップイヤーの子もいます）
　かぐや様が大好きですが戦闘能力は皆無で月鼬に悪戯されてはメソメソしてます。
　人懐こく甘えん坊な性格です。あなた方にも興味津々です。

　月鼬
　月の住民である鼬さんです。白や茶色、黒といろんなカラーリングと模様があります。
　悪戯が大好きで月兎達に悪戯するのが趣味というか習性です。
　根は悪い子たちではないのですが今回は糯米を盗んでしまいましたがしっかり反省した模様。
　嗅覚と聴覚が優れ素早い動きが特徴です。美味しい物にホイホイつられてしまう可愛いところも。

●境界案内人
　朧
　ご指定がなければ登場しません。ご指名があればホイホイついていきます。
　ちなみに可愛い動物は人並みに好きらしいです。
●プレイング例
【田】
　ま、こいつらも反省したみたいだが一緒に米刈り取るの手伝うとするかね。
　俺もあんまり若くは無いんだがね……ま、体力には自信がある。屈んで鎌で稲を刈り取っていくさ。

　こんな感じです。
　貴方にとって良き旅路になります様に。それではいってらっしゃい！

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第2章 第2節

くるくる、くる、くるくる、くる………ぴたっ。
　すぅっと一呼吸ついて武器商人はぼそりと呟いた。
「んー……ツマンナイ」
　単純作業自体は嫌いじゃない。商売なんて単純作業の積み重ねだ。慣れてはいる、慣れてはいるが目の前に延々積まれていくのはなんの面白みもない白い丸。流石にコレでは飽きが来るというものだ。そんな武器商人の隣で飽きなど知らぬのか懸命に餅を丸める月兎に呼びかける。
「鋏を貸しておくれ。いいモノ作ってあげる」
「鋏ですの〜？　いいですのー！」
　渡された鋏はなんとも可愛いらしいサイズで、やや我が扱うには小さ過ぎる気がしないでもないが器用さには自信がある、と笑み零し武器商人は白い丸に鋏を入れていく。
　くるくる、ちょきん、くる、ちょきん……。
　刃の擦れる小気味良い音に集まってきた月兎と月鼬を軽く撫でてやっては作業に戻る。
「どぉ？　愛らしかろ？」
　板の上には兎にお花、ハリネズミを模した可愛い餅がずらりと並んでいた。白く丸い餅しか知らない月兎達は手品を始めた子供の様に目を輝かせている。
「かわいいですのー！」
「これぼくたち？　ぼくたちですの？」
　こっくり頷いた武器商人に側で見ていた月鼬達は「オイラも作って！」と大興奮の様子で細長い身体を武器商人に巻きつけては強請っている。
　無垢で無邪気な存在とはなんとも愛くるしいものだ。ずずっと出されたお茶で喉を潤して、銀糸の奥の目が優しげに細められた。

成否

成功

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第2章 第3節

　田で囲 飛呂は月鼬を手伝っていた。
　なんだかんだ月鼬は飛呂が気に入ったらしくちょこまかと足元にじゃれ付いていた。踏んじまうぞと声を掛けてやりつつ飛呂は目の前の黄金色に実った稲に向き直る。

「つっても米収穫やったこと無いから、月鼬達に教えてもらわないと。よろしくな、先生」
「しょうがねぇなぁオイラ先生だもんなー。しっかり教えてやらなきゃなー」
　先生という響きにドヤ顔かましている月鼬の尻尾がぶんぶんすごい勢いで左右に揺れているのに目を瞑ってやることにした。
「んじゃーオイラがお手本見せるからしっかりみとくんだぞ！」
「おう」
「こう鎌を構えて―」
「こうか？」
「シュパーってしてパパパってしてドーンだ！！」
「待って」
　そうだこいつ鼬だったわ。
　さあやってみろと目をキラキラさせられても困る。こちとら生まれも育ちも再現性東京、希望ヶ浜学園高等部一年生のバリバリ現代っ子なのだ。ちょっと蛇神の血は入ってるけど。
　はぁ、と大きい溜息をついて飛呂は稲の根に鎌を当てる。これが想像よりも結構難しい。コツを教わりつつ時間をかけると段々慣れてきたのか先程よりはスムーズに収穫できる様にはなった。とはいえ中腰の姿勢での農作業はかなり腰に来る。

　お米に限らずだけど、ほんと農作物とかって大切にしないとな……痛みを訴える腰を擦りながら飛呂は心から思った。

「ちょっと疲れたからモフらせて欲しい……」
「いいけどモフってなんだ？」
　

成否

成功

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第2章 第4節

「綺麗な水は大事だもんな。木桶を2つかりてきたぞ。満タンにして両手で持てば一気に運べるな」
　とはいえ川までそこそこの道程が在った。
　水を満タンに入れた木桶は重い。疲労感を訴える体をソロアは一旦休ませることにした。
　清らかな水を掬い口付けるとひんやりとした冷たく澄んだ水が渇きをいやしてくれる。思わずほう、と息が漏れた。隣では月鼬もんくんくと水を飲んでいる。
「さて、この後運ぶの疲れるからな。しっかり休んでおくんだぞ」
「へっへーん、オイラに任せておけ！」
　ふふんと胸を張る姿は幼子の様に可愛らしい。
「さ、休憩もしたし水を運ぼう。えっと……集落まで持っていけばいいんだよな」
　ソロアが腰を上げると慌てて月鼬も立ち上がり木桶の真下に潜り込むと、木桶を持ち上げてそっとソロアをアシストする。少しばかり軽くなった木桶にふふ、と小さく笑みを零しソロアは集落への道を歩く。
「んむむ……」
　呻き声が聞こえて、ソロアが目線を下に向けると小さな身体にはやはり負担がかかるのか、むぎゅっとなっている月鼬に気づく。
　そっと木桶を持ち上げてやり、モフモフとした毛並みを撫でてやると月鼬は気持ちよさそうに目を細めた。
「たまに持ち上げてくれれば体力は持つから、月鼬も無理はしちゃだめだぞ」
「おう！　任せとけ！」
　妙に嚙み合っていない返事に苦笑しつつ、ちゃぽんと揺れる水の音を楽しみながらソロアは集落の入り口を潜った。

成否

成功