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シナリオ詳細

<狐の恋路お遍路>飛び散る汗に恋い焦がれて

完了

参加者 : 1 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●九月の雨は狐のせい
 九月。人間と妖怪の世界は雨続き、しとしとと降る雨が傘を叩いている。
「最近一気に寒くなってきたよねー」
「ほんとよねー、雨もすごく降ってるし」
 八月まではかなり蒸し暑かったのが、九月に入って一気に冷え込むようになった。半袖だと既に寒くて、長袖のカーディガンを羽織った人間の女性と烏天狗の女性が傘を指しながら歩いて話している。
「あ、そうそう。こないださー、竪川さん失恋したって知ってる?」
「え、また? 今度は誰にアタックしたの?」
 と、烏天狗の女性が話を切り出すと、人間の女性が目を見開いた。竪川稲荷神社の神使さんはこの街の人々とも親しいが、恋多きひととして有名だ。
 今回、また神使さんは失恋したらしい。烏天狗の女性が苦笑しながら指を立てる。
「うちの大学のさー、テニス部の結城くんいるでしょ? 彼にアタックしてしばらく付き合ってたみたい」
「あ……あー」
 その言葉に、人間の女性がため息を付いた。テニス部の結城・晴人は確かに、竪川・竜胆としばらく付き合っている様を見られていた。それなのに、別れてしまったのか。
 しかし人間の女性の方には、晴人が竜胆を振った理由に思い当たる節があるらしい。眉根を寄せながら軽く髪をはらった。
「結城くん、年下趣味じゃなかったっけ」
「そうそう。結城くん優しいからさ、しばらく付き合ってたんだけど居た堪れなくなったんだって」
 そう話しながら二人の女声は去っていく。そしてその通り過ぎたところの神社の中、境内で再び竪川・竜胆が涙に暮れていた。
「ふぇぇぇぇ……! あたしの本当の恋はどこにあるのぉぉぉぉぉ……!」

●事件に呼ばれるのももうそろそろ
「最近なんか寒いわよねー……雨もめっちゃ降ってるし。ふわぁぁぁ」
 境界案内人、『雑踏の黒猫又』稲森・千河は毎度のように派手にあくびを零しながら、その場の特異運命座標を見渡した。
 彼女がこうして姿を見せたということは、何かしらの依頼が舞い込んだということだ。そして雨について触れるということは。
「うん、雨って言うとね、竪川稲荷の神使さん、また失恋したんだって」
 その言葉を聞いて、何人かの特異運命座標が肩を落とした。竪川稲荷神社の神使がらみの案件はこれで三度目だ。まさかまたなのか。
 そんな事を言いたげな特異運命座標に、黒猫の境界案内人はコクリと頷いた。困った表情をしながら首を傾げる。
「だからごめんね、皆には神使さんを慰めに行って欲しいのよ。面倒だとは思うけれどさ……多分そろそろ、神使さんもなんとか収まってくれると思うし。多分」
 そう話す千河だが、どうも話しぶりには自信がなさそうだ。もしかしたら本当にこれで最後になるかもしれないし、ならないかもしれない。なることを願うばかりだ。
 苦笑を交わし合うと、千河はさらに説明を重ねていく。
「今回はね、大学生に惚れたんだって。テニス部のスポーツマンにね。なんか今回結構本気で、しばらく付き合ったらしいんだけどさ、振られちゃったのよ。その大学生の子が年上趣味じゃなかったからって」
 千河の言葉に、ますます肩を落とす特異運命座標だ。まさかの、付き合った末に趣味ではないと判明するなんて悲しい事態。これは竜胆の悲しみも深いというものだろう。
「うん、今回はね、しばらく付き合った末での失恋だから……ん、これまでのやつとはちょっとパターンが違うのよ。だからしばらく付き合った相手に振られたらどうするか、って話をしてもらえると助かるかな。くぁぁ……」
 そう離すと、千河は一つ大きな欠伸をした。彼女の話を聞くに、単純な失恋ではなさそうだ。そうしたことも踏まえて竜胆を慰める話ができるとよさそうだ。
 そこまで話した彼女が、あくびを噛み殺しながらポータルを開く。開いた先の世界はいつも通り自然も文明もごっちゃ混ぜ、しとしとと雨の降る音が聞こえてきて。
「じゃ、準備はいいかしらー? それじゃ、よろしく頼むわねー……ふあ」

NMコメント

 特異運命座標の皆様、こんにちは。
 屋守保英です。
 一年ぶりの「<狐の恋路お遍路>」第三弾。多分これが最後になると思います。なるといいな。
 またまた失恋しました竜胆さんの失恋を慰めてあげてください。

●目的
 ・『恋多き』堅川・竜胆の失恋を慰める。

●場面
 人間と妖怪が共存する世界のとある地方都市にある神社です。
 「堅川稲荷神社(たてかわいなりじんじゃ)」と呼ばれています。
 神社の境内で神使が恋に破れ、涙に暮れています。そのため天気は雨です。正しく夕立です。

●神使
 『恋多き』堅川・竜胆(たてかわ・りんどう)。
 性別女。年齢UNKNOWN(見た目は20代後半)。
 稲荷神に仕える神使の一人で、種族は妖狐。見た目は額と目元を朱で彩っている、胸の豊満な狐耳尻尾の女性。胸元を開けた服装が好み。
 性格は惚れっぽく押しが強い。普段は明るく快活だが、失恋は結構引きずるタイプ。
 今回は大学生に一目惚れをして、しばらく付き合った後に「年上はあんまり」と断られて泣き濡れている。

 それでは、皆さんの楽しいプレイングをお待ちしております。

  • <狐の恋路お遍路>飛び散る汗に恋い焦がれて完了
  • NM名屋守保英
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年09月21日 22時05分
  • 参加人数1/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 1 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(1人)

メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女

リプレイ

●雨打際
「いや、どうすりゃいいのよこんなん」
 『汚い魔法少女』メリー・フローラ・アベル(p3p007440)は傘をさしながら、しとしと雨の降る竪川稲荷神社の境内でぼやいた。
 ちなみにこの境内にいるのはメリー一人だ。同行者は誰もいない。だがだからこそ、メリーは彼女の思うように言葉を発していた。
 拝殿の階段に腰掛けて泣く竜胆にずかずか歩み寄り、メリーは傘を閉じながら告げる。
「どうしてそこまで人間一人に執着するわけ? 全くさっぱり分からないわ」
「ふえ」
 彼女の言葉に竜胆が顔を上げた。涙に濡れた目尻が赤く染まっている。化粧も落ちてでろでろだ。
 顔を巫女服の裾で拭いながら、竜胆はしばらく額に指を押し当てた後、言った。
「え、あ、えーとあれだ、去年の梅雨の時」
「あ、覚えてたの」
 その言葉にメリーが目を見開く。一年前の梅雨時の頃だ。覚えられているとは思っていなかった。
 しかし竜胆の方は、忘れようにも忘れられないでいたらしい。
「だって、あんな無茶苦茶言ってくる人、他にいなかったし」
「そりゃあね、わたしは我が侭だもの」
 傘を脇に置いて、メリーは竜胆の隣りに座った。ともすればそのまま優しく諭すかと思いきや、メリーはそんな優しい女ではない。
 険しい表情を隠そうともせずに、メリーは竜胆の鼻先に指を突きつけた。そのまま容赦もなしに言い放つ。
「いい? わたしは竜胆の悲しむ理由は分からない。分かるつもりもない」
 元より慰めようという気など毛頭ないのだ。メリーはただ、自分の感じた不条理を叩きつけるためだけにここにいる。
「だから、あなたを慰めるというより、自分が思ったことだけ言わせてもらうわ。いいわね?」
「ひえ……」
 その気迫すら感じる言葉に、竜胆は背筋がぞわりとするのを感じていた。

●窘雨
 メリーが自分の膝をぱしんと叩く。そして冷たく彼女は言い放った。
「前言ったこととは真逆のことを言うけどね、さっさと忘れて次の相手探せば?」
「うっ」
 その正論すぎる正論に、竜胆が言葉に詰まる。その詰まった隙きに突き刺すように、メリーは言葉を浴びせていった。
「大体、どのくらいの間付き合っていたのか知らないけど、恋人がいる状況に安穏としていたわけ? 今さらだけど、フラれる前から何人かキープして複数人と付き合っておけば良かったんじゃないの?」
「え、えぇー、そんな二股かけるみたいなこと」
 その倫理にもとるとも取れる言葉に、竜胆が若干引きながら答える。この世界は現代日本と同様、一対一で関係を持つのが原則の世界だ。誰かが特定の誰かだけ以外ともそういう関係になっていたら、容易に後ろ指を指される。
 しかしメリーは我関せずと言わんばかりに言った。
「そもそもわたしはパートナーが一人じゃなきゃいけないって風潮からして気に入らないのよね。わたしは好きになったら何人とでも同時に付き合いたいし、恋人に他の女が居ても気にしないわ。別に減るもんじゃないし」
 あっさりと言い放つメリーに、竜胆は開いた口が塞がらない。しかし目尻を困ったように下げながら、彼女は弱々しく反論した。
「いや……恋人がいいって言ったとしても、恋人の恋人がそういうのダメ、って言う人だったら減っちゃわない?」
「それで減るならその時よ」
 しかしメリーは意にも介さない。改めて指を竜胆に向けながら強い口調で問いかけた。
「そもそも竜胆、あなた神様の使いなわけでしょ? それなのに誰か一人と永遠に添い遂げなきゃならないの? 神様ってそんなに潔癖で薄情なわけ?」
「うっ、そこを突かれると弱いけどぉ……でも神使って言ったって私一人じゃないし、私個人の権限は一般の妖怪と変わらないし……」
 痛いところを突かれた、という表情で竜胆が表情を歪めた。雨がさぁっと強くなる。その強く降り出した雨を見ながらメリーが持論を展開する。
「一対一の交際だと、都合が合わなくてなかなかデートできない場合もあるけど、多対多なら大抵誰かとは都合つくでしょ? お互いにスペアが大勢居れば、飽きた相手はさっさと切り捨てれられるし、切られた方もダメージが少なくて済むでしょ?」
 その至極あっさりと言ってのけられる、この世界の常識を真っ向から否定するメリーの言葉に、竜胆はもはや言葉もない。
 ここまで常識はずれのことを言われると、理解するよりも何よりも脳の処理が追いつかない。事実竜胆は顎が外れっぱなし、目がもう白黒している。
 そんな彼女に向かって、メリーはさらに言葉を浴びせかけていった。
「パートナーが一人なのが当たり前の社会だと、父親が分からない子が差別されたりもするけど、そんな子供がゴロゴロ居る社会なら差別されなくて済むでしょ? いっそ全ての子供を社会全体で面倒見ればいいのよ。そうすれば普通に親を亡くした子も困らなくて済むし」
「いや……えぇ……」
 竜胆の恋愛の云々を通り越してこの世界の有り様の云々にまで話が及んだことに、竜胆の口から何とも言えない声が漏れた。
 確かにメリーの言うように、社会に存在する子供を社会全体で面倒を見よう、という動きはなかったわけではない。自治体内の町内会の中で、町内の子供を面倒を見るようなものと考えればイメージもできよう。
 問題はとっくの昔に、そんな社会体制が崩壊していて実現のしようがないことだが、この世界の外側からやって来たメリーにはそんな事情など知ったことではない。
「この世界はたしか一夫一妻制だったわね。明日から多夫多妻制にしなさい。以上!」
 暴論とも言えるその理論を並べ立てて、メリーは一言そう締めくくった。

●遣らずの雨
 それから暫くは沈黙が神社を支配していた。竜胆の思考が失恋云々から外れたからか、雨はだいぶ小降りになっている。結果オーライと言えばオーライだ。
 やがて、俯きっぱなしだった竜胆が口を開く。
「いや……この国の有り様を変えるとか、この世界のルールを変えるとか、そんなのどだい無理だし」
 力なくそう話す竜胆の顔を、メリーは静かに見ていた。竜胆の涙は止まっている。しかし意気消沈した心は、回復までかかりそうだ。
「私は忘れられないからこうしてるんだし。そんな無茶苦茶言われてどうしろってのもないし」
 そうやって言葉を零しながら、竜胆は巫女服の袴をギュッと握りしめる。再び泣き出すか、と思われたが、しかし。
「でも……あなたの言ったことで、一つだけ納得行く意見はあったわ」
「うん?」
 ギュッと握った袴に皺を寄せた竜胆が、両手を離して思い切り立ち上がった。
「この国のルールが一夫一妻制で変えられないんだったら、そうじゃないルールのところに自分で行けばいいんじゃん!」
「え」
 竜胆の言葉に、メリーは目を見開いた。
 そう来るか。
 そしてメリーが何を言うよりも早く、竜胆がすっかり雨の止んだ神社の外に指を向けた。
「というかこの町から外に出れば新たな出会いがあるじゃん! 神使のお役目なんて知るか!」
「えっ」
 続けざまの言葉にメリーがぽかんと口を開く。
 竜胆の言葉も尤もだ。この場所に出会いがないなら、新たな出会いを探しに旅立てばいい。今の環境から飛び出せばいい。
 しかし、今のこのやり取りでそこまで吹っ切れるとは、メリーも予想していなかった。
 呆気にとられるメリーを見下ろして、竜胆が拝殿の中へと駆け出していく。
「ちょっと神社に辞表叩きつけてくる! 待ってて!」
 そのままバタバタと足音を立て、竜胆は拝殿の中に消えていった。ぴしゃんと扉が閉じられるや、中から怒声がめっちゃ聞こえる。
 ぽかんとしたまま、拝殿を見ていたメリーだったが。やがて立ち上がって傍らに置きっぱなしの傘を手に取った。
「……ま、いいか。しーらない」
 その後、竜胆が巫女服を脱ぎ捨て、顔の朱もすっかり落として、竪川稲荷神社の境内を意気揚々と飛び出したとか、どうとか。

成否

成功

状態異常

なし

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