シナリオ詳細
<グランドウォークライ>膨れ上がる大きな影
オープニング
●
鋼鉄帝国首都スチール・グラード某所。
ザッザッザッザッ……。
足並みを揃えて歩くのは、多くは屈強なる若達。
その服装は大きく2種に分かれる。
片方は軍服を纏う者達は鋼鉄の軍人であり、多くは鉄騎種の若い男女である。
もう片方は様々な体格、衣装で統一性がほとんどない集団。彼らは強者を中心に武器種に応じて隊を編成したラド・バウの闘士達だ。こちらは若者が多めではあるが、手練れの子供や老人の姿も見受けられた。
彼らが向かっているのは、スチール・グラード内にある役所だ。
いくら力が全てという鋼鉄であっても、事務作業などを行うスタッフは存在する。彼らも鉄騎種としてそれなりの力を持ってはいるが、さすがに軍人や闘技場の強者と比べるべくもない。
――平和の為、争いの種となるものは破壊すべし。
――強者は全て倒さねばならぬ……!
雄叫びを上げて狂ったように己の武力を誇示する彼らは、シャドーレギオンと呼ばれる。
しかしながら、彼らはこれまで現れたそれとは明らかに毛並みが違った。
――ディアナどのに勝利を!
――ディアナ姫に栄光あれ!!
口々にディアナという名を口にする者達は一斉に役所を攻め落とす。
事務スタッフ達はなすすべなくシャドーレギオンに囚われる形となり、役所内に囚われる形となってしまう。
「そこまでだ、偽物ども!」
駆けつけたのは、イレギュラーズに引き連れられた鉄騎の軍勢だ。
その中には、かつてシャドーレギオンとなった中年男性、ステイラー・ルダッシュの姿もあった。
「まさか、俺の偽物が部隊を率いているなんてな」
彼は部隊の中央戦闘にいる、自身と同じ姿をした陰へとショットガンを突き付ける。
――ディアナどのに勝利を、邪魔する者に鉄槌を。
一部、シャドーレギオンと同じ姿の鉄騎種も存在していたが、彼らもまた異様な姿の自分の姿に嫌悪感すら抱いていたようだ。
「こんなのは俺じゃない」
ステイラーは大きく首を振り、小隊を率いるイレギュラーズへと呼び掛ける。
「すまない。改めて手を貸してほしい」
前回は自分の目を覚ましてくれたイレギュラーズ。
今回は自分に協力してくれる仲間と共に、影の討伐を。
ステイラーの願いに応じたイレギュラーズは、それぞれの小隊へと呼び掛けて散開し、役所を制圧したシャドーレギオンの部隊と対していくのである。
●
ROO、鋼鉄はその見た目が一変していた。
首都にある城はピンク色の水晶で飾られ、街に詰めていた戦士達はほとんどがシャドーレギオンに置き換わっている。
しかも、それらは皆姿形を模した偽物に過ぎない。
「彼らはDARK†WISHだけを抽出されて分裂した個体にすぎません」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)はログインして鋼鉄へとやってきたイレギュラーズのアバター達へと告げる。
まず、現状、鋼鉄の地に何が起きているのか。
アクアベルはそこから説明を始める。
「ROOにて、『聖頌姫』ディアナ・K・リリエンルージュなる人物がシャドーレギオンを使って自分の王国をこの鋼鉄に興そうとしていたようですね」
しかしながら、その目論見はイレギュラーズがDARK†WISHを次々に晴らしていった結果、崩れ去ることとなる。
この為、ディアナは実力行使に出て、首都であるスチール・グラードをシャドーレギオンの都市に変えてしまったのだ。
イレギュラーズとしてはこの事態を黙って見ているわけにはいかず、ディアナ討伐の為に動き出すこととなる。
その作戦の一つとして、スチールグラードにある役所の解放がある。
役所は現状シャドーレギオンの部隊が制圧しており、内部にスタッフを捕えた状態で建物外部にシャドーレギオン達が守りについているという。
「彼らは人質を取らず、自らの力で敵対するものを撃破する構えです」
そのリーダーとなっているのは、ステイラー・ルダッシュのシャドーレギオン。ステイラー本人もシャドーレギオンとなった過去を持つが、今回首謀者となっているのはディアナによって作られた偽物だ。
しかしながら、ディアナキャッスルに捕えられていたと思われた本物のステイラーは一部の鉄騎種の若者を引き連れ、役所の解放にと駆けつけていたのだ。
「皆さんは彼らと協力し、小隊を編成してシャドーレギオンの部隊と対していただきますよう願います」
駆けつけたステイラー達を数に入れても、シャドーレギオンの部隊の方が多い。単純な戦力差では向こうに分があるが、そこは戦略性でカバーし、シャドーレギオンを倒していきたい。
また、敵は偽物であり、倒せば消え去ってしまう。特に気にすることなく撃破に専念していいだろう。
一通り説明したアクアベルは最後に、アバター達へと握手を交わして。
「相手は強者であることに加え、凶暴性を高めた危険な存在です。くれぐれもお気をつけてください」
例え、仮想世界のROOであっても、皆が傷つき、倒れる状況となるのは心苦しいと本音を漏らすアクアベル。
そんな彼女の言葉を受けつつ、イレギュラーズは思い思いの言葉を告げ、シャドーレギオンの巣となり果てた役所へと向かうのである。
- <グランドウォークライ>膨れ上がる大きな影完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年09月24日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
R.O.O……ネクスト、鋼鉄で起こる内乱。
その最中に現れていたのは、シャドーレギオンなる存在。彼らは内に抱く願い『WISH』を歪められて『DARK†WISH』とされ、凶暴性を高めてしまうという。
「あれが役所を占拠しているという部隊であるが……」
現地に到着したイレギュラーズアバターの中、小柄な戦闘サイボーグ、『ルーチェ=B=アッロガーンスのアバター』BelethR(p3x008156)は占拠された役所を見やる。
――平和の為、争いの種となるものは破壊すべし。
――ディアナ姫に栄光あれ!!
その役所を囲むように、唱和するシャドーレギオンの部隊が展開している。
中央先頭にはディアナキャッスルに捕えられていたステイラー・ルダッシュのコピーとも言える存在がいる。こちら側にいた本物のステイラーは苦々しい顔でそれを見つめていた。
「シャドーレギオン、皆の『WITH』を歪めた『DARK†WISH』を抽出して作られた存在……」
猫耳と尻尾のショタっ子、『星の魔法少年☆ナハトスター』ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)としては、『DARK†WISH』を元の『WISH』へと戻してあげたいと考えるが……。
「自分のコピーが相手……」
小柄な猫の少年、『ツナ缶海賊団見習い』エクシル(p3x000649)はこの状況そのものが機械で作られた仮想現実ならではだとしながらも。
「それが悪い事をしてるなら、止めないとって気持ちもひとしおだよね」
「このまま放っておけば、鋼鉄全部がこんな状態になってしまうってことだよね? そんなことはさせない!」
自らの強い思いを語るエクシルに続き、茶髪をポニーテールとした幻想種女性、アレクシア(p3x004630)も力強く意気込みをみせた。
「うーん、普段見る鉄帝から比べたらありえない様な事」
全身黒い肌を思わせる姿をした人外を思わせる姿をした『ハンドルネームは』グレイ(p3x000395)は、この鉄帝を模した鋼鉄の有様に率直な感想を口する。
ピンクの水晶に覆われ、シャドーレギオンに支配された国。とても現実の強国鉄帝とは思えぬ有様だ。
「ひっそりやって失敗したから堂々正面から奪取に来る……ってのは、中々気持ち良さすらある開き直りっぷりね」
神々しさを感じさせる雰囲気を纏う『R.O.Oの』神様(p3x000808)は今回の敵について若干の呆れながらも、人質を取らずにいる『DARK†WISH』が元々そういう性質なのかと考えて。
「まぁ、本物クンが立派なんだろう事は察するよ」
そして、神として、民草の祈りに応える必要があると、神様も依頼解決に乗り出す構えだ。
「若干戸惑いを覚えるが……、今はとにかく目の前の野蛮人どもを倒そう」
「たとえ偽物だろうかなんであろうか、余の前に立ちふさがる輩は蹴散らすのみであるぞ」
いずれにせよ、グレイが言う様に今いる『DARK†WISH』は殲滅せねばならない。それに、BelethRが同調する。
『WITH』を歪めた奴に言いたいことはあるが、ナハトスターはそれを一旦抑えて。
「奴等を倒して、スタッフさん達も役所も解放しよう☆」
「仮想世界かもしれないけど、みんなを守ることには変わりないんだ!」
ナハトスターと共に、アレクシアが捕えられたままの人々の救出をと強い気概をみせた。
この場の仲間達がやる気になっていることもあり、エクシルもまた声を荒げて。
「鋼鉄で起きてる大規模な事件のひとつ、がんばって止めようね!」
頷き合うメンバー達は改めて前方の役所を見据え、手早く準備を進めていく。
この場にはステイラー以下、100名弱の鉄騎種の手練れがいる。
イレギュラーズとステイラーが小隊長となり、9小隊を即席で編成して役所を制圧する1.5倍ほどの数がいるシャドーレギオン一団の攻略に当たる。
編成を行う間、アレクシアはデジタルファミリアーを上空へと飛ばし、上空から状況を確認していた。
アレクシアの得た情報と合わせ、白い軍服姿の『マルク・シリングのアバター』マーク(p3x001309)はアクセスファンタズム「予習」を使って得た周辺の地図情報と合わせ、敵の配置と罠がありそうな場所などについて共有する。
なにせ、敵後方にはトラップ隊が存在している。彼らは役所の敷地内にブービートラップを仕掛けているはずなのだ。
さて、部隊を編成しながら、『竜空』シラス(p3x004421)が全体と自小隊での作戦を告げる。
「マーク隊が左、神様隊が正面、俺達シラス隊が右側に位置して、まずは3小隊で突進する」
全体としては、左右の小隊が敵を引き付け、薄くなった中央を神様隊で突進。他小隊が敵奥にいる遠距離隊、術師隊を一斉に狩る作戦だ。
なお、役割もあり、シラス隊は防御重視で屈強なメンバーを選んでいた。
「勇敢なる鋼鉄の戦士達よ! スチールグラードを取り戻すぞ!」
その傍で、マークが同様の編成である小隊員へと喝を入れていた。
鉄騎種達は皆それに合わせた部隊へと移動、もしくは合わせた装備を行ってくれる。
「鋼鉄軍人がいかにして『軍』であるかという意思と威厳を奴らに叩き込んでやれ」
そう自隊員に告げていたグレイは、近接武器の扱いに長けた歩兵を集めていて。
「特定の誰かを崇めるような野蛮な奴らの蛮行に異を唱えるモノは?」
自隊に組み込まれた鉄騎種達から異論が出なかったことで、グレイはさらに語気を強めて。
「もし居るなら、奴らに思い知らせてやれ」
「「おお!!」」
気合を入れた隊員達は、グレイの言葉で士気を高めていたようだ。
また、エクシルは今だけ、ツナ缶海賊団だと伝えて。
「名こそ海賊だけど本来は冒険を求め弱きを助け強きをくじく……」
エクシルが脳内で思い浮かべていたのは、伝承の「黒雪の騎士」フロスト・グラム・スロウスのこと。
R.O.O内で見かけた彼の言動を思い浮かべて参考にし、そうあろうと振舞っていたのだ。
「つまりこう……ひとつのチームってことだよ!」
「お、おう……!」
子猫の獣人で大丈夫かと顔を見合わせる鉄騎種達だったが、一丸となって戦うことに協力姿勢を見せてくれた。
囚われの人々のことを考えれば、準備に時間ばかりかけてはいられない。
「まずは陣形を整えろ!! 余の砲撃を合図に砲撃を開始だ!」
砲兵を集めたBelethRの意向に沿い、配属された者達が銃砲を構える。
「いつも統率ってるけど、R.O.Oじゃどうかなぁ~?」
神様は混沌での自身の立ち回りが仮想空間であるネクストでも通用するかどうかと思案していたが、神だし、士気アド爆上がりとポジティブシンキング。
「神だよ 諸君の願いを叶える為 満を持して顕現した 虚実を晴らし 雪辱を注げ」
こちらはイレギュラーズ含め100名程度の大所帯。加えて敵も入れればこれからの戦いは乱戦必至だ。
そう考えた神様は神光で自らを輝かせ、目印となる。
「この輝きが道標だ!」
その光に、シャドーレギオンらも迎撃態勢を強めていたようだ。
「行くぞ、皆! スティールグラードを取り戻そう!」
マークの指示を受けた3小隊が飛び出し、役所前での戦いが火蓋を切ったのである。
●
――強者は全て倒さねばならぬ……!
――ディアナどのに勝利を!
迎え撃つシャドーレギオンは布陣を整えたまま、ほとんど動かない。
その理由は2つ。まず、役所内へと突破されぬようにすること。
自分達の力を過信している彼らは負けないと考えており、突入する者全てを排除する気でいるのだ。
そして、もう一つ。トラップの影響だろう。
誤って、仲間のトラップにかかってしまえば世話ない。ある程度、動ける範囲は決まっているはずだ。
そんなシャドーレギオンの布陣を、イレギュラーズ達はまず崩しにかかる。
「僕が先頭に立って敵を引きつけて倒す! 撃ち漏らしを逃さないよう抑えてくれ!」
「おう!」
前に出たマークは10m以上距離を置いて隊を引き連れ、前方左側から接敵する。
「所詮、お前たちは偽物の戦士に過ぎない!」
そして、剣を掲げたマークは高らかに宣言して。
「偽物の勇気に僕の剣は折られない!」
すると、向かって左側から中央付近にいた手前の敵がマークへと武器を突き付け、振るっていく。
同じく、シラス。彼は体が大きく、身体を輝かせる神様同様非常に目立つ。
大きく翼を広げたシラスはより大きく自らを敵へと見せつけ、空に向けて咆哮する。
アオオオオオオオオオオオォォォォ!!
空気を震わせ、腹にビリビリと響くような吠え声。
それに、シャドーレギオン達が些か怯む間、シラスが後方に続く仲間達に呼びかける。
「大丈夫だ、ヤバくなったら俺が守ってやる」
事前に、シラスは小隊員へと2人1組になって背中合わせになる用指示を出しており、死角を補うようにして互いのピンチを凌ぐ。
2人とも厳しい状況となれば、撤退するよう言い聞かせておくが、それは最後の手段。
「俺について来い!」
危険な役目を負わせることになる小隊員に負わせることとなると考えていたシラスは皆を強く勇気づける。
ディアナキャッスルに捕えられていた彼らを、生きて帰してやりたい。
だからこそ、シラスは敵の及ぼす異常攻撃を緩和できるよう自分についてくる鉄騎種達を鼓舞する。
前方に防御を固めた小隊員を配備し、突進するシラスは敵陣へと電撃ブレスを吐き、全体作戦に従って右側へと展開する敵を引き付ける。
その中央を神様が突っ込み、周囲に荒れ狂う猛風と衝撃を巻き起こして敵を左右へと吹っ飛ばす。
「神は嬉しく思う! 諸君等の様な勇者に呼ばれ! 並び戦える事を!」
ゴリゴリに道を切り開く神様の後を、歩兵メインの小隊が続く。
咄嗟に動く敵がブービートラップを自ら潰してくれるのはありがたいところ。
「さあ、みんないくよ!」
ファミリアーで戦況を把握していたアレクシアが自小隊へと叫び、前進する。
アレクシアは横一列になって向かってくるシャドーレギオンめがけて斬撃を見舞うと、敵は衝撃と共に体を凍らせてしまう。
「少し危険かもしれないけれど……もしもの時は必ず私がみんなを守るから! 絶対に誰も見捨てない! 必ずみんなで勝つよ!」
「おお!」
その間にアレクシアがさらに鼓舞すると、彼女についてくる速度重視の戦闘スタイルの鉄騎種達も声を上げる。
ただ、そこに頭上から発砲してくるジェットパック装備の空兵部隊が厄介な相手。
そこを目掛け、ブースターを起動させたBelethRは役所に当たらぬよう照準を定め、二門のビームカノンを構え……同時に放射する。
「星猫魔法奥義……WSランチャー! ばんばん撃っちゃうよー☆」
ほぼ同時に、ナハトスターが敵前衛目掛けて前方へと一直線に超火力の必殺ビームを発射する。
「味方の援護射撃来るよ、回避!」
それを察したアレクシアは小隊員に避けるよう呼び掛ける。
「「ぐああああああっ!!」」
アレクシア隊らがサイドに避けて開けた射線上を、素早く3本のビームが駆け抜け、敵陣を焼き払う。
BelethRの2本は角度をつけて空中へ。ナハトスターの1本はキラキラと星を瞬かせて敵陣を薙ぎ払う様に放たれる。これによって多数の空兵が地に墜ち、後方部隊もかなりの消耗を強いられたようだ。
「……無事突破したようであるな。対空砲撃用意! 前衛を狙撃している飛兵を撃ち落とせ!」
BelethRは戦場の頭上付近に展開する敵に対し、小隊員へと発砲の指示を出す。
ナハトスターもまた初撃で止まらず、さらにビームを放射する。
「小隊の皆も届くなら撃って撃って! お願いねー☆」
ナハトスターの合図もあり、小隊員がそれぞれ強弓、バリスタ、ライフル銃やバズーカなどを発射して敵を狙い撃ち、攻勢を削いでいく。
敵陣に大きな風穴を穿てたならば、こちらのもの。
「一気にいくよ!」
小隊員を率い、エクシルは機動力を生かして一気に攻め込み、躍るような足捌きで手練れの姿を模した影へと薙ぎ倒す。
エクシルは猫らしく、ガタイのいい敵の肩や頭に飛び乗り、刃を見舞っていく。
「いい感じだよ! そのまま進軍を!」
勇敢な振舞いでエクシルは小隊員を激励し、さらに指揮する。
いつしか、エクシルに導かれる者達も彼を小隊長として認め、果敢に敵へと切りかかってくれていた。
グレイも負けてはいない。
「前に進む勇士を見ろ、俺もお前達もその勇気を見て前に突き進め!」
高らかに叫ぶグレイの呼び掛けで士気を高め、鉄騎種達は豪快に武器を振り回し、自分達を模した影へと叩き付ける。
ただ、戦いに夢中となれば、役所を巻き込まぬようにとグレイは考えずにいられない。
すでに前衛が薄くなった敵陣の遠距離隊が直接捕えられたことで、グレイ隊は一気に攻め込み、鉄騎の武力をもって叩き潰す。
「我らも続け!」
鉄騎種らを先導していたステイラーも銃撃で攻め込みながらも、直接相手の後衛部隊を捕えたところで肉弾戦に切り替えていた。
トラップ隊がこちらのメンバーを捕縛し、術師隊が炎、氷、雷といった術を叩き込もうとするのが敵後方部隊の基本戦術だが、トラップも布陣が乱されたことで最大限に効力が発揮できない。
それもあり、イレギュラーズ、鉄騎混成部隊は一気にシャドーレギオン部隊を攻め落とすのである。
シャドーレギオン側にはA~Bランクのラドバウ強者や、手練れの軍人らが存在する上、数も多い。
戦闘開始時こそイレギュラーズが不利ではあったが、初手での攻めが大きく、シャドーレギオンらは総崩れとなっている印象だ。
「こいつがトラップ張り巡らす、見た目に騙されるな!」
とりわけ、女子供、老人といった見た目でも、強者である者もいた為、グレイは皆に油断せぬよう注意喚起する。
「強者の相手は俺達に任せろ」
その上でグレイはエネミーサーチで敵の強さを見定め、明らかに抜きんでた強さの相手へと率先して冷凍カジキマグロを叩きつける。
小隊の仲間は1人たりとも倒させはしない。それは士気の低下に繋がるし、何よりグレイにとっても心が痛むと考えて粘り強く武器を叩き込んでいく。
「得物がヘンテコな魚と侮ったまま斃れるといい、逝き散らせ!」
グレイのその一撃が敵1体の全身を打ち砕く。
「貴君等の鋼が如き守備を思い知らせれば、思い知らせただけ敵は挫け! 砕けていく!」
敵陣深くへと小隊を攻め込ませた神様はトラップ隊や術師隊を強風で吹き飛ばし、さらに閃光を放って敵を滅する。
「見よ! 勝利は我等の為に!」
影は所詮、影。歪められて形を成した者達が尽き果てれば、その姿は影も形も残らない。
「シャドーレギオンに、これ以上誰も殺させはしないからねー!」
砲撃を続けるナハトスターは猫や子猫を出現させ、周囲に癒しをもたらし、鼓舞する。
「……あの一団の行動を制限しろ、余の攻撃で吹き飛ばす」
こちらも遠距離攻撃を続けるBelethR小隊。小隊員が空兵をひとところに纏めるよう誘導したところで、BelethRがビームカノンを発射して敵を消し飛ばしていた。
一方で、負担が大きいのは地上の小隊。
やはり手練れの鉄騎種ベースとあって、近距離戦を得意とする敵が多い状況もあり、シラス隊やマーク隊は苦しんでいた。
「まだまだァ!」
それでも、シラスは苦しいときこそ元気なアピールを忘れず、踏み止まり、電撃ブレスを放つ。
「絶対に倒れてやらないからな!」
だが、彼の元へとラドバウ強者が集まり、斬撃や打撃を浴びせかけてくる。
(死ぬのは、サクラメントを使える俺だけで良いんだ)
巨体のシラスは小隊員を守りながらも、ついには膝をついて。
「俺が死んだら……、飛んで……戻って……くる」
「う、うおおおおおおっ!!」
崩れ落ちる巨体に、鉄騎の男達が吠える。
自分達の影を相手する鉄騎種は格上の相手がいても、シラスが体力を削ってくれていたことで一気に叩き潰していた。
マークはなんとか持ち堪えていたが、罠がほとんど起動しない状況となっていたこともあり、誓いの言葉で再度敵の注意を集める。
「僕の剣を恐れぬと言うなら、戦うのなら掛かってこい!」
それでも、敵の数の多さもあり、彼は小隊員と協力して少しずつ敵を攻め崩していたようだ。
「これでは、ディアナ様に顔向けできぬ……」
歯噛みするシャドーレギオンを率いるステイラーへと、本物が近づく。
「これ以上、同じ顔で好き勝手させぬぞ」
鉄の拳で殴り掛かるステイラー。ただ、そこに強者の闘士や軍人が襲い来る。
そこにアレクシアがサポートへと駆けつけて。
「偽物に……歪んだ願いに、負けるわけにはいかないんだから!」
牽制を仕掛け、アレクシアは仲間達へと癒しをもたらす。
自身の相手にしていた敵を倒したマーク、道を切り開く神様、そして、エクシルが猛然と邪魔な敵を蹴散らし、ステイラーの影と対峙する。
一時、交戦しながらも、攻撃の効き具合をみたエクシル。
防御技術の高い相手だと瞬時に判断した彼は相手を撹乱し、防御の合間を縫うように刃を突き出す。
その刃は確実に、ステイラーの影を穿つ。
「ディアナ様に、えいこう、を……」
爆ぜ飛ぶその姿に、本物のステイラーは小さく首を振っていたのだった。
●
先導するステイラーを倒しても、しばらく抵抗を続けていたシャドーレギオン達だったが、さすがにリーダーが落ち、戦力差が逆転すれば敵の数は一気に減っていく。
「勝利するのは何時だって 明確な意思ある者達だ」
最後の一体を相手にしていた神様が眩い雷で敵を滅すると、鉄騎種達が勝利を確信して。
「「うおおおおおおおおおおおおおお!!」」
その咆哮は周囲を揺らぐ程のものだったが、それが役所のスタッフ達にとっては非常に心地の良いものに感じたようだった。
「鋼鉄の皆も、役所等の建物も。鋼鉄の大事な要だよ☆」
この場の全ての人々をナハトスターは労い、癒やす。ステイラーもまんざらでない表情をしていたようだった。
そして、サクラメントから駆け付けたシラスの姿に、彼の小隊員が目を丸くしながらも駆け寄る。
「皆ならやるって信じてたぜ!」
言葉通り、全て片が付いていたことを確認して笑うシラス。
そんな彼の背中が、屈強な男達でさえも非常に大きく感じていたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは即席である自らの小隊を信じて捨て石となった貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
R.O.O、<グランドウォークライ>のシナリオをお届けします。
●目的
『シャドーレギオン』部隊の鎮圧。
●状況
鋼鉄首都スチール・グラード某所にある役所がシャドーレギオンの部隊に制圧されています。
彼らはスタッフを中に監禁してはいるものの人質には取らず、全て己の武力で撃退しようと動きます。
下記の通り、イレギュラーズはNPCステイラー達の協力の元、彼と共に行動していた鉄騎の若者達を従えて役所の攻略に当たります。
役所前方は広場となっており、交戦には問題ありませんが、役所建物への攻撃だけは気に掛けるべきでしょう。
●敵……シャドーレギオン×150名弱
ラド・バウの闘士や鋼鉄の軍人など、ROO鋼鉄において、人が変わったように残忍性、凶暴性を高めた手練れの者達です。
その実態はかつてシャドーレギオンとされた者達からDARK†WISHだけを抽出された個体で、『聖頌姫』ディアナ・K・リリエンルージュに心酔した態度を示しているのが特徴的です。
〇ラド・バウ闘士×80人ほど
肉弾戦をメインに戦う者達で、屈強な男性が多めですが、女性や子供、老人の姿も一部あります。
5つの隊が存在しており、格闘隊、近接(剣、槍、斧など)隊、遠距離隊(弓、銃など)、トラップ隊と術師隊(女性、子供、老人多め)です。
基本、C~Dランク相当の者ばかりですが、5名ほどA~Bランクの手練れがおり、彼らがそれぞれ15名程度の隊を率いております。
なお、格闘隊を率いているのがこの部隊の長であり、ステイラーの偽物個体です。
〇鋼鉄軍人×60人ほど
こちらも隊長格が15名程度の隊を率いています。
剣術や関節技を得意とする歩兵隊が2つ、ジェットパックを使って狙撃銃を使う空兵隊が1つ、大砲、機関銃など重火器を使って攻撃を行う砲兵隊が1つ編成されています。
●NPC
隙を見て、ディアナキャッスルより脱出できた者達です。
○ステイラー・ルダッシュ
45歳、鉄騎種。左頬の切り傷が特徴。
ショットガンや散弾銃を使って交戦する他、機械となった四肢での肉弾戦もこなす手練れの戦士です。
「<フルメタルバトルロア>歪んだ停戦の願い」にてシャドーレギオンとなっていた男性で、今回は自分を含めた偽物が多く現れたと聞き、同じくシャドーレギオンとなった経験のある者達を多数引き連れて駆けつけてくれました。
〇鉄騎種の若者達×80~90名
ステイラーの機転によって、なんとかディアナキャッスルより脱出し、イレギュラーズの救援に駆け付けてくれた者達です。以前、シャドーレギオンのなった者も一部含まれています。
小隊長となるイレギュラーズの作戦に合わせ、大まかに歩兵、空兵、砲兵に特化した装備を行ってくれます(指示が複雑になる為、複数を合わせた編成はお勧めしません)。
自分の戦法に合わせてサポートさせたり、逆に若者達を主戦力として自身がカバーに回ったりと戦略に幅を持たせて戦うことができます。
●小隊指揮について
・このシナリオには小隊指揮ルールが適用されます。
PCは全員小隊長扱いとなり、10名前後の配下を率いて敵部隊と戦うことができます。
・兵のスキルや装備といった構成内容はおおまかになら決めることができます。
防御重視、回復重視、機動力重視、遠距離砲撃重視、特定系統の非戦スキル重視……といった感じです。細かいオーダーは避けましょう(プレイング圧迫リスク回避のため)
・使用スキルや戦闘パターンの指定は不要です。(プレイング圧迫リスク回避のため)
・部下の戦意を向上させるプレイングをかけることで、小隊の戦力が上昇します。
先陣をきって勇敢に戦って見せたり、笑顔で元気づけたり、料理を振る舞ってみたり、歌って踊ったり、格好いい演説を聴かせたり、効率的な戦術を指示したりとやり方は様々です。キャラにあった隊長プレイをお楽しみくださいませ。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
※重要な備考
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
それでは、よろしくお願いします。
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