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シナリオ詳細

jewel of tears ―悲しみの宝石―

完了

参加者 : 1 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●宝石の島
 キラキラ ギラギラ

 ここは宝石でできた島。
 陸は鉱石、家も宝石、海の中には宝石の鱗を纏った魚が優雅に泳いでいる。

「見せて、見せて、見せて、あなた達の宝石を」

 宝石の島に住むプリンセスは、手から砂のようにサラサラと零れ落ちる小さな宝石の群れを見つめて、呟いた。

「涙を見せて、宝石に変わる涙を。あなた達の悲しみを、私に教えて――」

●後悔の宝石
「お越しいただきありがとうございます。本日皆さまにご依頼したいのは、宝石島に住むプリンセスへの”悲しみの告白”です」

 境界案内人によれば、宝石島という宝石だけで作られた島には一人の姫が住んでおり、島を存続させるために新たな”宝石”を求めているという。
 それが悲しみの告白とどう関係があるのか?
 そう尋ねるイレギュラーズに、エメラルドナイトは答える。

「プリンセスにはある特殊能力があるのです。それは、人の涙を宝石に変える力―― 悲しみを、辛さを、心残りを、後悔を語り、涙を流す人間の涙を宝石に変えることで、宝石島はその形を失うことなく存続し続けたのです。」

 宝石島は波の強い地域に位置するため、常に島が荒波によって削られその形を保ち続けるのが大変に難しいのだと言う。

「プリンセスは大変に人が出来ており、皆さまの後悔、懺悔、悲しみ、屈辱……それら語った言葉すべてを丁寧に扱い、決して外部に漏らすことはなく、また余計な言葉をかけて来ることもありません。ここに来られた方は、きっと吐き出してしまいたい暗い過去をお持ちなのでしょう。プリンセスの前に全てを吐き出して、少しだけでもスッキリして来てはいかがでしょうか?」

 どこか悲哀の込められた面持ちのイレギュラーズ達を見つめ、境界案内人は続けた。

「プリンセスは島の中心にあるダイヤモンドキャッスルにいます。海岸沿いは常に波が荒れているので、注意して行って来てください。皆さまにとって、よい旅となるよう祈っております――」

NMコメント

●挨拶
 こんにちは、来栖彰です。
 本日皆さまにご依頼したいのは、プリンセスの住む島を形作る宝石を生み出すために、悲しみを吐き出して涙を流して欲しいと言う、少し悲しいお仕事です。
 過去の悲しみや後悔を思いっきり吐き出して、思いっきり宝石の涙を流してスッキリしませんか?

●舞台
 島全体が宝石で作られた、宝石島のダイヤモンドキャッスル。
 島は鉱石でできており、どこもかしこも磨けば宝石に変わります。
 今まで幾人もの涙の宝石が流され、それによって島の形を保ち続けています。

●目的
 ・とにかく語っているうちに涙が流れてくるような悲しいことや辛いことを吐き出して、たくさんの涙を流してください
 ・涙は宝石となって零れ落ち、島の一部となります
 ・プリンセスは吐き出した内容を絶対に外部に漏らしたりせず、また口出しもしません

●特殊ルール
 特にありません。
 悲しみを吐き出して涙を流すだけです。

●サンプルプレイングについて
 過去の悲しいできごとや辛いできごとについてと、それに対する心情についてをできるだけ詳細にかいていただけると嬉しいです。
 
【例】
「憎くて憎くて、心の底から憎んでいた婚約者を、敵になったのを機に容赦なく殺した。彼が私へ送るための結婚指輪を手作りしていたことや、結婚を楽しみにしていて浮足立っていたことを知ったのは、それからしばらくしてのことだった。どうして? 愛してるなんて滅多に言ってくれなかったのに。敵に魂を売ったのに。それでも私が付いてくると思ってたの? そんな都合のいい女だと思われていたなんて許せない…… 許せないのに、あなたに会いたいの。会って謝りたいの。この行き場のない感情を、私は一生持ち続けなければならないなんて……」

  • jewel of tears ―悲しみの宝石―完了
  • NM名来栖彰
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年09月11日 22時05分
  • 参加人数1/4人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 1 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(1人)

星影 向日葵(p3p008750)
遠い約束

リプレイ

 鉱石でできた島に、一人の黒髪のゼノポルタが降り立つ。

「ここが、宝石島…… キラキラ輝いていて、すごくきれい……」

 『真意の選択』隠岐奈 朝顔(p3p008750)は、宝石島一帯を見渡したのち、中心にあるダイヤモンドキャッスルを目指す。
 途中、シャラシャラと宝石が砕けたような砂が足をすくった。

「砕けそうな、私の心みたいですね…… なんて、決してそんなキレイな感情ではありませんが」

 無色透明の宝石でできた小さな城に到着すると、ポツンとたたずむ小さな影に声を掛けられた。
 それは少女のような、女性のような、優しい目つきをした宝石島のプリンセスだった。

「来てくれてありがとう。聞かせてください、あなたの嘆きを…… 美しい宝石の涙を私にください。私は、何を聞いても何も口に出さず、口外もいたしません……」
「……あの、適当に相槌をうってもらっても大丈夫です。私の場合、その方が気持ちが楽かもしれないから――――」
「まあ、そうでしたの。私、お話しを聞くのが大好きなので、そう言われるとお返事をしてしまうかもしれません。しかし、最低限のお返事にしておきましょう。――――さあ、聞かせてください。」

 朝顔はうつむいた。
 いざ話そうとすると、心が引けるものだ。

 口に出してよいものかと思わず考えてしまうような感情を吐き出すため、勇気を出して、少しずつ言葉を紡ぎ始める。

「私には、好きな人がいるんです。その人は、眩しい、眩しい笑顔を浮かべる人―――― 獄人の差別が激しい豊穣の中でも、誰に対しても平等に接してくれる、優しい人――――」
「素敵な方なのですね」
「はい、とても…… とても素敵な人です。……そんな素敵な人を、私一人が好きになるはずもなくて。当然、他にも彼を愛している人はいました」

 プリンセスの声に安心したためか、朝顔は少しだけ顔を上に上げた。

「そんな彼が、あるとき豊穣のゴタゴタに巻き込まれたことがあったのです。そして敵の手中に落ちて、彼は敵になりました」
「それは…… とても悲しい出来事でしたね」
「……そうですね」

 朝顔は、またうつむいた。
 少し、重苦しい間がダイヤモンドキャッスルを包む。

「……彼とともに戦ったときに、ある一人の少女が連れ去られたんです。その人は遮那君を助けるために命を張って戦って、その少女を助けるためにたくさんの人が命を削って戦って…… そして、奇跡が起きて、誰も死なずに済んだんです。……素敵な、奇跡の話です。喜ぶべき話なんです。でも、だけど……!」

 朝顔は再び顔を上げる。
 すると、朝顔の顔からラピスラズリの蒼い光がポロリと落ちた。

「美しい、涙の宝石―――― 続けてください、あなたの悲しみが、この島を守る。あなたの悲しみは、私が受け止めます」

「みんながっ…… 遮那君の命を助けた彼女と、その前から遮那君の心を射止めている少女…… 彼女たちと遮那君が結ばれて欲しいと願っているような気がして、怖いんです……! ふふ…… 汚いですよね、こんな感情…… 私、何考えてるんだろう…… 自分でもわかんなくなりそう……」

朝顔の顔から零れ落ちるラピスラズリは、少しずつ大きくなっていった。

「汚くなんかない…… あなたは、ただ、恋をしているだけだもの。汚いなんて言わないで……」

プリンセスの声に再び安堵を覚えた朝顔は、なりふり構わず感情をあらわにした。

「私は…… 私は! 遮那君の最愛の人になりたい! 遮那君にとって誰よりも大切な存在になりたい! 遮那君に1番に想っていて欲しい! 彼の心を、私が独り占めしたい……! 遮那君を他の女の子にとられちゃうのが…… 怖い……!」

 大粒のラピスラズリを零し続ける朝顔の顔は、宝石のしぶきで煌めいていた。
「あなたの心は、美しいですね…… この宝石の涙は、心の美しさに比例して輝きを増していきます。あなたのその感情は汚くなんかない。あなたは、ただ、恋をしているだけ。……さあ、もっと…… もっとあなたの宝石を魅せて……」

「こわくてこわくて、早く何とかしなきゃって思ってるんです。でも、私は他の誰よりも何もできていないんです…… 何とかしなきゃ、早く遮那君を振り向かせなきゃ、そう思って焦って、から回って失敗して…… 寧ろ、私がこんなことをしている間に2人の方がどんどん仲良くなっている気がして……」

 朝顔は、自分の目から零れたラピスラズリを拾い上げ、見つめながら言った。
「惨めになるんです…… あの2人はどんどん親密になっていくのに、私はどんどん真っ黒な感情に支配されて行ってしまって、何でこんな風になっちゃったんだろうって……」

 潮風が、ふわっとダイヤモンドキャッスルの開いた門から吹き込んで、朝顔の髪を撫でた。
 最初の方にサラサラと零れ落ちていた小さな砂のようなラピスラズリが、潮風と一緒に巻き上げられて、朝顔を慰めるように光に反射しながら彼女の前を舞った。

「……本当に、キレイな島ですね。……ここから先の感情を口に出したら、もう私は、本当に最低の存在になってしまう気が……し……て……う、ううっ……」
「吐き出して良いのです。大丈夫、ここには私しかいません。絶対に口外しませんし、何より、あなたの宝石は美しい。黒ではなく、煌めく深い蒼をしている…… 怖がらないで、涙を流して――――」

 朝顔の顔から再び宝石があふれ出した。

「私……! あのとき連れ去られたのが私だったら良かったのになんて思ってしまうんです! きっと奇跡なんて起きずに死んでしまうだろうけど、それでも良かった。死んでしまえば、きっと彼の心に永遠に私が残っていただろうから! こんなに恋い慕い続けて生きることが苦しいんだっったら、いっそ死んだ方が幸せになれただろうって……!! っ……!! もう、本当に最低……!! 私……どうしてこんな風になっちゃったの……?」

 大粒のラピスラズリが次々あふれ出してくる。
 朝顔は、切羽詰まったような、切ない声を出した。

「……そう思ってしまう、私が嫌い……! 何でこんなことに…… 好きなだけなのに…… ただ好きなだけなのに……」


 本当はね、もっと優しい女の子でいたいの。
 本当はね、もっと穏やかな気持ちでい続けたいの。
 本当はね、あの子にも優しい気持ちだけで接したいの。

 だけど、心が、ついていかない。
 もう知ってしまったから、本当の恋を――――


「こんな独占欲のかたまりみたいな女の子…… 好きになってもらえるはずないですよね……? ふふふ、バカみたい、私……」
「決して、決してそんなことはありません。本当の恋ってそういうものですもの。独占したくて、愛している人の1番になりたくて、他の誰かにとられるのが怖くて……それが普通。大丈夫、あなたは恋をしているだけ。あなたの涙はとてもキレイ…… 心がキレイでなければ、こんな宝石は生まれない……」
「キレイ……か。不思議ですね、この心の持ち主である私にはどす黒い感情に思えるのに、こんなにキレイな宝石になってあふれ出して来るなんて…… ああ、でも、少しスッキリしました。泣くって必要なことなんですね。」

 零れ落ちた蒼い宝石たちが、少しずつ島の中に溶けていくのが視認できた。

「ああ、本当に涙がこの島を作っていくんですね…… 私の嘆き、決して無駄にはならないようでよかった……」
「ありがとう、想いを聞かせてくれて。美しい宝石の涙を流してくれて……」
「こちらこそ、聞いてくれてありがとうございました。宝石島…… ずっと守られていくといいですね。また泣きたい人がいたら、この島に来て欲しい……」

立ち去ろうとする朝顔を、プリンセスは呼び止めた。

「こちら、一粒だけ持って帰ってください。あなたが流した、ラピスラズリを……」
「いいんですか?」
「ラピスラズリの石言葉は『成功の保証』―――― 迷いを断ち切って正しい道に導く力があります。辛い恋路に迷いそうになったとき、あなたを導いてくれるでしょう。お守りにしてください」
「……ありがとうございます」

 一人の少女の切迫した恋心が、宝石島の一部となってとけていった。
 朝顔の手の中で煌めく一粒のラピスラズリは、彼女をどこへ連れて行くのだろうか。

成否

成功

状態異常

なし

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