PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ぞんびはざーど

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「死んだねぇ」「死んだよ」「死んだかしら?」
 くらいくらいやみのなか、三言、繰り返す。
「そろそろかねぇ」「そろそろだよ」「そろそろかしら?」
 それらはまっくろなマントに身を包み、目深にしたフードで顔を覆い世界から隔絶していた。
「行こうかねぇ」「征こうよ」「逝くかしら?」
 それらは、自分達と世界を隔てていた境界を、越えようとしていた。
「死を繰り返して500年」「死を観察して500年」「死を蒐集して500年」
「もはや我等に知らぬ死は無し」「もはや我等に操れぬ死は無し」「もはや我等に及ぶ死は無し」
 ならば。
「殺そうかねぇ」「死ぬんだよ」「終わるのかしら?」
 終わり行く世界に、死を溢れさせよう。

●ゾンビハザード
 なんかすごいホラーが溢れますよ。だってほら、夏だし。
 幽霊とか、怨霊とか、そういう怖いのです。死んでたら殺せないし、抵抗出来ないと詰みですね?
「たたた、大変なのです!」
 そんな話題がたまに上がるローレットで、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)の叫びが木霊した。
 なにごとー? と集まる視線は、ゼェゼェと荒く呼吸を繰り返す彼女には気にならない。だってそれどころじゃないもん。
「ででででたー!」
「なにが? お通じ?」
 最低なのです!? とボケへ律儀にツッコミ、すぅ~っ、と息を吸い込んだユリーカは、
「ゾンビです!」
 と、そう叫んだ。

 喧騒と落ち着きを繰り返したローレットの中、ユリーカは改めて事態を説明する。
 そもそもが、とある地域で起きた噂を確かめに行ったのが始まりだったと、彼女は言う。
「皆さんは、身寄りもなく、孤独に亡くなった人がどうなるか、知っていますか?」
 普通は大体、火葬され家族が埋葬や供養、管理等をするものだ。だが、それを出来る人、頼める家族がいない人は、どうするのか。
「そのほとんどが、大体はその地域の一ヶ所に集められて埋葬されるのです。共同墓地、ですね」
 手間や費用などの問題で、その多くは土葬だったり一つの墓に詰め込みだったりだ。
「それらなんかはまだ良い方で、例えば戦争だったり、虐殺だったり。故意的に作られた死は、埋葬も無く風化を待つ、という事も珍しくはないのです」
 ただまあ、今はそういう行き場のない死を嘆いたり偲んだりする話ではない。
 それよりもっとやばい話があるのだ。
 それは、
「……ゾンビなのです」
「……はい?」
 重々しく、怖い顔を意識した全く怖くない顔で、ユリーカは言う。
「夥しい数のゾンビが今、幻想のとある地域にうにゃーっといるのです」
 うにゃーの単位はよくわからないが、ゾンビがいると言うのは単純に考えてもマズイ事態だろう。
 事は思ったより重大だ。そう理解したイレギュラーズに、ユリーカは頷きを一つ入れて言葉を再開させる。
「現場は、とある村を中心にしています。そこを円形に囲うように、ゾンビがたくさんいる、とイメージしてください。埋め尽くさんばかり、です。しかも、その数はゆっくりと、少しずつですが、増えているのです」
 数は多いが、ユリーカの調べではこのゾンビ群、かなり脆い。
「普通の人でも武器で数回殴ったら霧散しました。皆さんが攻撃すると、恐らくもっと簡単に消せると思うのです」
「つまり、すべてのゾンビを丁寧に一つ一つ潰していくのが今回の仕事?」
「いえ」
 イレギュラーズの問いに短く否定を答えたユリーカは、現場と思わしき地図を広げて、
「ここ。村の中心に、ゾンビを産み出している術者が三人います。恐らく、これを倒せばゾンビは自然とすべて消えるでしょう」
 そう説明をした。
 だが重要なのは、その術者について、だ。
「何者だよそいつら」
 ゾンビを産み出して何をするつもりなのか、そもそもなぜゾンビなのか。
 気になるところは色々ある。
「それも、調べはついています。というか、その筋では結構有名だったみたいですね」
 と、ユリーカが取り出したのは、分厚い紙の束だった。
 かなり年数が経っているのか、全体的に汚れや破れ、よれが目立つ。
 どうやら論文の様な標題が書かれた表紙には、【人の死について】と書いてある。
「この術者、実は三つ子の姉妹の様なのですが、三人が三人とも、人の死に魅入られています。そもそもこの論文、書かれたのは約500年前なのです。それから今まで、彼女たちはありとあらゆる生命の終わり、つまりは死ぬ瞬間を観察し続けたことになるのですね」
 尋常ではない、死という概念への執着。それが、今回の事を引き起こした、ということだろう。
 本当のところは本人達に聞いてみなければ何もわからないが、とにもかくにも、放置してはいられない。
「改めて言います」
 集まるイレギュラーズの顔を見回して、ユリーカは言う。
「周囲のゾンビを蹴散らして術者の元へ行き、彼女達を倒してきてください。被害が出る前に、よろしくお願いするのです」

GMコメント

 夏って言えばゾンビだと思うのですけれど。
 そんな感じで依頼です

●依頼達成条件
 術者三人の撃破。殺害推奨。

●敵
 ゾンビ群:
 めちゃくちゃ多いです。術者を中心に、半径約50Mを割りと埋め尽くしています。
 動きは緩慢で、耐久力は欠片もなく、吹けば飛ぶ様な脆さ。
 スキルとかバンバン使うとバンバン蹴散らせると思います。
 まあAPもバンバン消費されますけれど。

 三つ子:
 彼女たち、とユリーカは言いましたがババアです。
 長く生物の死に触れ、死を看取り、多岐に渡る終わりの瞬間を蒐集した。らしいです。
 攻撃手段はいくつかあります。

・ゾンビ召喚
 物近単
・焼死体験
 神遠単+火炎
・斬殺刑
 物中単+流血
・凍死体験
 神遠単+凍結
・自我発狂
 神至単+狂気

●ポイント
 ゾンビは前座、ババアが本番です。
 ババアの元に辿り着いた時点で、イレギュラーズ迎撃の為に周りのゾンビは大体消えます、ババアが大雑把に操作しているので。
 BS盛りだくさんなので回復無いと詰むかもしれません。というか多分、普通に詰みます。
 ゾンビで無双してババアでシリアスがちょうどいいかなって思いますがまあでもやっぱりいつも通り、やりたいようにやっちゃってください。
 今日まで大活躍しているイレギュラーズの皆さんならちょちょいのちょいでしょう、ええ。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしてます。

  • ぞんびはざーど完了
  • GM名ユズキ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年07月13日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧 (8人)

ロザリエル・インヘルト(p3p000015)
深海の薔薇
猫崎・桜(p3p000109)
魅せたがり・蛸賊の天敵
マナ・ニール(p3p000350)
まほろばは隣に
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
七鳥・天十里(p3p001668)
ロザーナ・ロリータ(p3p002348)
神を名乗った吸血鬼
桜咲 珠緒(p3p004426)
二人でひとつ
星影 霧玄(p3p004883)
二重旋律

リプレイ

 空に青、浮かぶ太陽。
 そして地にあるは有象無象の屍達。


「って死んどるではないか!」
 ウアァーと呻きのようなそうでないような微妙な音の大合唱を前に、『神を名乗った吸血鬼』ロザーナ・ロリータ(p3p002348)は声をあげた。
「この世界に飛ばされ早数ヵ月ーー腹は減ったし血も吸えない。だがようやく、下働きに身をやつしてまでここに来たというのに……」
 すぅ、と早口に吐き出した息を吸い、一拍。
「死んどるではないか! あんなもの吸えるかっ!?」
 わぁ、テンション高いなー。
 一人荒ぶる彼ーー今は彼女だがーーを、七鳥・天十里(p3p001668)はいつものように笑顔で見ていた。
 初めから敵への説明はあったわけで。ここに来てこの盛り上がり様を見るに、相当切羽詰まっていたのだろうな、と彼女は思う。
「まあでも、ゾンビ狩りは前座なんだよね」
 重要目標はその奥にいる、三人の魔女だ。死体だかなんだかわからないモノをポコポコ起こして、迷惑極まりない相手だ。
「ゾンビを召喚、か。色々と、気になる事が多いね」
 辺りを見回していた『二重旋律』星影 霧玄(p3p004883)が、魔女についての思うところを口にした。
 村の住人を含めた一般人が居ないことを確認し終えた彼は、
「動機はなんだろう。生きている人を同じようにして、死の国でも作るつもりなのかな……?」
 と、そんな事を思う。ユリーカの調べでもよく解らなかった事でもあるし、結局のところ、本人達しかその解答を持ち合わせてはいないのだろう。
「500年物の妄執ね」
 まあそれはいいのだけど、と、『暴食麗花』ロザリエル・インヘルト(p3p000015)は牙を剥き出しに笑っていた。
 それよりも、と。
「500年生きた人間の肉とはどんなものかしら」
 若く瑞々しい物は勿論美味しいだろう。ならば、年月と共に衰えていく肉は、必然として、不味いのかもしれない。でも、もしかしたら。
「そこまでいくと一周回って美味しいかもしれないわね!」
 と、その可能性があるのだ。
「って食べる気なの!?」
 目の前に溢れるゾンビを見て、言いようもなく顔をしかめていた『特異運命座標』猫崎・桜(p3p000109)は、ロザリエルのそんな考えにまた表情を変えた。
「食べるわ。だって人間は美味しいもの」
「当たり前みたいに言われた……」
 種も様々なら嗜好も様々、そういうことだと思うことにして。
「まあ、とにかく……大量のゾンビはいやんな感じだけども。この巫女衣装は邪を清め祓う人のらしいから今回はぴったり、だよね?」
 紅白に彩られた衣服に身を包んだ桜は、そう言って気合いを入れる。
 実際に何かしらの効果があるのかと言えば決してそんなことはないが、要は気持ちの問題ということもあるだろう。
「で、どう攻める? 弱いって言っても、あの数は問題だよ」
 そもそも生理的に近づきたくない。
 本音で言えば、『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)はゾンビが苦手だ。とはいえそんな事も言ってられない。
 ならばどうするのか、ということなのだが。
「やっぱり近づかないとどうにもならない、だよね」
「ぞ、ゾンビ……こ、こわい……です」
 そんな言葉に、『まほろばを求めて』マナ・ニール(p3p000350)の声が弱々しく響く。
 うんうん、見た目恐ろしいものね。と頷くイリスがその声に目を向けると、
「……ん?」
 恐怖を吐露したマナの体から、魔力の光が漏れているのが見えた。
 溢れるそれをそのままに、両手でワンドを前に構える彼女は、前面に魔方陣を展開する。
「ーー唱えませ」
 呼応するように、桜咲 珠緒(p3p004426)が一歩を踏み出す。
「い、いきます……!」
 そして、光が空気を焼き焦がした。


 マナが撃ち込んだ光の砲撃は、大量のゾンビを一直線に掻き消した。
 一部分だけ見通しが良くなった道の向こうに、黒いシルエットの人間が三人見える。が、その隙間を、左右から塞ぐようにゾンビが動いた。
 だから、
「それなら、もう一撃だよ」
 霧玄は追加の一撃を準備する。
 宙に表示された鍵盤に指を滑らせ、奏でる為に打鍵した。
 そうして鳴る音に乗せた歌が、魔力となって形を成し、広げたゾンビの幅を今一度押し拡げる。
「心は消え」
 そこへ、珠緒が飛び込む。
「魂は静まり」
 左右へ振った両手は自傷し、肉を広げて血が吹き出す。
「全ては此処にあり」
 彼女は、その鮮血を腕に纏う。
 真っ赤で大きな両爪へと変じたそれを、穴を埋める様に押し寄せるゾンビに向かって思いきり振り払う。
 大雑把に、純粋な腕力で吹き飛ばされるゾンビ達は、浮いた宙で霧散していく。
 だが、それでも数が多い。
 消滅する後を埋めに、敵は珠緒に殺到した。
「ばきゅーーん!」
 それを、天十里が撃ち抜く。
 左右の手に握った二丁銃。その引き金を交互に引いて、ゾンビを破砕する。
「前へ!」
 そうして、前へ進む。
「うむ、行くぞ!」
 歩みを進めながら、天十里の銃弾に合わせたロザーナのレールガンが、道を拓く。
 押し拡げ、群れの中に広がる空間へとイレギュラーズは侵入した。
「とても疲れました……けど、私も進みます」
 最初の一撃を放った後、倦怠感が襲う体に鞭打つマナを、イリスが守りながら進む。
 死者達の中に紛れ込む生者は、異物として認識され、排斥すべきと言う意思を持って押し寄せてくる。
「本当にゾンビだらけだし! 弱いけど多すぎだよ!」
 うじゃうじゃ、と言い表すに相応しいその群れを、桜が押し退けていく。両手で支えたガトリングを唸らせ、寄せ付けないように弾幕を張る。
「もっとこう、少しずつ出てきて欲しいんだけどな!?」
 その連続した弾丸は、ゾンビ集団の脚を狙って射出される。そうして、一撃で肉を破壊された体はバランスを崩し、地面に解ける様に消えていく。
「気持ちはわかるけど、言っても仕方ない、よ!」
 それでも抜けてくる群れを、イリスがカバーする形だ。
 緩く丸い線を描いた曲刀でゾンビの首を跳ね、体を切り裂き、突き刺した胴体を蹴り飛ばす。
「だけどこのままじゃ、ほんとにじり貧だ」
 もう一度、道を開けるべきか……?
 空中に精製した魔力の塊を、前方へ撃ち出しながら霧玄は思う。
 折角最初に開けた道も今は閉じ、わらわらとした死肉の塊だらけだ。
「……ん?」
 しかし、そこで気づく。
 腐敗し、薄汚い肉の中に、鮮やかな緑が生えている。
 それは、縦に伸びた太い蔦だ。
 先端が緩やかに前へ垂れ、その先には赤い蕾が見える。
「ほら、さっさとぶん殴りに行くわよ」
 その正体は、ロザリエルが送り込んだものだ。
 蕾は回る様に花弁を開き、そしておもむろに、真っ赤な光を爆裂させてゾンビを焼き払った。
「今だ!」
 誰かの声を合図に、八人は行く。
 行く手を遮るゾンビを蹴散らし殴り倒し撃ち抜いて、
「先を急ぎますので。あすた・ら・びすた。
 なのです」
 到達する。


 三つ子の婆を視界に捉えた瞬間。
 ロザリエルは自身の蔦を真っ先に伸ばした。
 それは、先にゾンビを焼き払った薔薇の一撃。婆を襲うべく伸ばした蕾の開花だ。
「あら」「まあ」「こわい」
 言う言葉とは裏腹にのんびりとした口調でそれを見ていた三つ子が取った行動は、動かない、だ。
 いや、正確に言えば、動かしたと言える。
 婆達はそれぞれに召喚したゾンビを蕾に突撃させ、肉体で覆い隠す事で爆裂の衝撃を最大限抑えたのだ。
「やるじゃない。まあでも、目的は一つ果たしたわ」
 ロザリエルの攻撃が狙ったのは、言わば阻害だ。
 集中力の阻害、つまりは群れのゾンビを制御させない事。
 辺りにひしめいていた屍達は糸が切れた人形の様に崩れ落ち、霧となって宙に溶ける。
「行きます」
 後は正面の敵を倒すだけ。
 だから、珠緒が行く。
「死、というものには、割りと頻繁に臨んできましたが……はて」
 そんなに良いものではないと思いますが。と、そう思いつつ、両爪の間合いへーー
「上だ!」
 入る直前。後を続いていたイリスの警告に、珠緒は考えるより先に爪で頭を庇う様に構えていた。
「お嬢ちゃんは……斬首かねぇ」
 そこへ、虚空から分厚い刃が落ちる。
 婆の放った魔術の刃だ。
 珠緒の爪を打ち砕き、露出する肌を千切る様に裂いて行く。
「……!」
 噴き出す鮮血は、自傷で出した血量とは比べるまでもない。
 が、珠緒はそれを利用する。
 飛び散る血液を引き戻す様に操り、腕に纏わせ再度爪を構築すると、開く様に思いきり横へと薙いだ。
「こわいお嬢ちゃんだねぇ」
 それを婆は、魔力の障壁で防御する。
 その間に他二人は左右へ広がり、魔術の詠唱をーー
「こらこら」
「無視するんじゃないわ」
 距離を詰めたイリスとロザリエルが阻んだ。
 握り込む拳が、縦に具現された障壁が、それぞれの相手へぶちこまれる。
 深く、捩じ込む様に行く攻撃に、婆は崩れる様に体を落とし、
「狂うよ」「狂うかしら」
 にたぁ。
 気色の悪い笑みで、二人の顔にそっと両手を添えた。
「ちょ、離れろー!」
 なにかやばい。そんな直感で、天十里はイリスに張り付く婆の頭部目掛けて射撃する。
「おっとぉ」
 体を覆う魔力の障壁を破壊され、バックステップで下がる婆へ桜が追撃。
「魔法少女……じゃない魔女ババア……もといおばあさん!」
 モーターの唸りを掻き消すガトリングの弾雨は、ほぼブレなく、天十里が障壁を砕いた頭部へ向かう。
 それを、両腕で庇いながら転がって逃げていく。
「ガトリングだって精密射撃出来るんだよ!」
「イリスちゃんは大丈夫?」
「っ、うん、私はなんとか……それより」
 と、見る先、自力で婆を振り払ったロザリエルがいる。
 見た目では問題が無さそうな彼女は、離れた敵へ向かうべく一歩を踏み出す。
 と、同時、
「……ぐっ!」
 蔦が、彼女の胴をぶっ叩いた。
 その自傷行動は、敵の精神攻撃の効果だ。動こうとすれば、今の様な事が起こるかもしれない。
 だから。
「治します、ね」
 ロザリエルの体を白い光が包み込む。
 マナが行使する回復用の術式だ。
 正気を奪おうとする敵の魔術残滓を打ち祓い、また戦える様にと傷を癒す。
「死を断るのかしら?」
 それを見た婆が、再度ロザリエルへ迫る。
 皺の走る両手を広げて、今一度、精神の蝕みを起こす魔術を仕掛けるつもりだ。
「……あら?」
 だが、その手を一条の光が焼く。
 空を走るその青白い光は、ロザーナの一撃だ。
「お嬢さん……お嬢さんかと思っておった……」
 ぶつぶつと、手にしたレールガンの照準を合わせながら彼ーーしつこいようだが今は彼女ーーは言う。
「ババァではないか……ババァではないか! 絵面的にも魔力的にもこんなもの吸えるか!」
 理不尽で自分勝手な怒りを放つ様に、ロザーナは連射する。
 空に走る幾筋もの光が、婆の張る防御障壁にぶつかっては消えていき、しかし今一つ攻撃力には欠けていた。
「とても無駄ね?」
 故に婆は、反撃の炎を呼び出した。
 空中に一度滞空した炎は肥大化し、一気にロザーナへと迫り、
「と、言うか」
 それを、霧玄の魔力砲撃が真っ向からぶち抜いた。
「情報で最初から婆って、言っていたじゃないか」
 冷静なツッコミを一つ入れ、彼は鍵盤を打鍵する。
 そうして、高く澄んだ一音が導く様にして行く砲撃は、婆の張った障壁を震わせて破壊した。


「死を」「死を」「死を」
 三つ子は歌う。
「焼こうかねぇ」
 空間そのものを焼失させるような炎を呼び。
「氷付けよ」
 時すら凍てつく極寒を作り出し。
「バラバラかしら?」
 ギロチンの如き刃を縦横無尽に飛び交わせた。
 その中を、イレギュラーズは行く。
「本当に厄介な婆どもじゃな!」
 血も吸えんしの!
 とは吸血鬼の談。敵の間合いの外から、レールガンをひたすら射撃するロザーナのぼやきだ。
「死を求めるかしら?」
 その攻撃をかわし、時に防ぎながら婆は、言葉と同時に魔術を使う。
「思うに死なんて二種類しかないのだわ」
 そこへ、正面から相対を選ぶロザリエルが飛び込んでいった。
 狂気に精神を揺さぶられ、炎に身を焼かれ、傷を負いながらも進む彼女は言う。
「その辺で土に還るか、他の生物に食べられるか、よ」
「じゃあ、土に還るのかしら、草のお嬢ちゃん?」
 問い掛けと一緒に放たれた炎が、ロザリエルを包み込む。すべてを灰に帰す様な一撃を、
「いいえ、私は補食側だもの」
 受けてなお、彼女は無理矢理に行った。
 距離の詰まる相手に危機感を覚えた婆は、即座にゾンビを一体呼び起こし、壁とする。が、それを許さない者がいた。
「もうゾンビは飽きたってば!」
 桜だ。
 ガトリングの弾幕がゾンビを破壊し、その後ろにいる婆までも撃ち抜く。
「あなた達は無に帰るべきだね、この世界の安寧の為にも!」
「いいえ食べられるべきよ」
 桜の声に異を唱えたロザリエルは、足を乗せた蔦を跳ね上げる。
 そうして体を空へ上げ、弾幕を飛び越え、鋭角に飛び込んで婆を蹴り飛ばした。
「ああ、この死は、視たことあるかしら……?」
 そんな声と共に、婆の体は爆発した。

「悲しいねぇ」
 響いた爆発音に、抑揚無く呟いた婆は、眼下に倒れ行く珠緒を見ていた。
「最期はいっつも、悲しいねぇ」
 片手を静かに上げ、作り出す刃は珠緒の体を切り裂く為に落ちていく。
 頭と胴を繋ぐ、その細い首を裁断すべく行き、そして、
「ーーふっ!」
 天十里がそれを防ぎに接近した。
 手にした銃を砲身の部分を握り、グリップの部分を刃に叩きつけて破壊すると、逆の手にある銃口を婆に向ける。
「悲しいね。何百年生きてるそうだけど、今日が命日になるわけだ!」
 そうして撃ち出されるのは銃弾ではなく、炎だ。噛みつく様に敵の体に絡み付くそれは、一層燃え上がっていく。
「あ、つ、い、ねぇ……!」
 払っても。払っても。
 燃え移る火は消えるどころかなお盛り、そして炎の中から婆は見た。
 死に体に近かった珠緒の体から、傷がみるみる治っていくのを、だ。
「怪我は、治します……だから、どうぞ」
 信じています。
 と、送り出す為の回復を為したマナの声に押され、彼女は行った。
「この程度の死では、桜咲にとって茶飯事の域を出ないのですよ、ええ」
 両の赤い爪を突き立て、左右へ開く様に切り裂いて。
「端的に申し上げて。周辺のぞんびと然程、変わり映えしなかったのです」
「うーん、けっこー危なかったけどね?」
「……それでもまだ、立っておりますので」
 そして倒れたのは、敵の方だった。

 クライマックスだ。
「結局のところ」
「よくわからないね」
 戦いの終わりを感じながら、イリスと霧玄はふとそんな事を考える。
 いや、余分な事を考えられるほどの余裕が、やっと生まれたと言った方が正しいかもしれない。
「数百年かけた研究に文句を言うのも悪い事だとは思うけど……」
 と、目の前のゾンビを斬り伏せ、距離を開けさせずに詰め寄りながらイリスは言う。
 ただ終わりにしか目を向けない、その頑なまでの姿勢は、どう言うことなのか。
「わかるまいよ」
 婆の言葉は、ある種の拒絶だ。
 対話の、理解の、拒絶。
「確かにね、わからない」
 だから霧玄は、追及をせずにただ攻撃の手を激しくする。
 鍵盤を滑る指は速く、紡ぐ言葉をリズムに乗せて戦いを歌う。
 そうして重ねた音を魔力として束ね、射出して婆の守りをぶち壊していく。
「今を生きるたくさんの人に迷惑だから」
 ここで止める。
 霧玄の一撃に合わせて、イリスは敵の胸部を打撃した。
 守りの剥がれた生身の体は脆く、そのダメージは内蔵まで到達し、致命と言える一撃となる。
 死に魅入られた者の騒動はこうして、静かに幕を閉じた。 

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ゾンビを無視してRTAするのが趣味です。
さておき依頼終了です、お疲れ様でした。
好き勝手に無双した気がします、楽しめたらいいなと思います、私は楽しかった。
ありがとうございました。

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