PandoraPartyProject

シナリオ詳細

砂漠の魔女と響く銃声。或いは、キャラバン護衛任務…。

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●砂漠の魔女
 渇いた風に、タンブルウィードが運ばれる。
 コロコロと転がっていく干し草の束を、なんとは無しに目で追って女はふぅと紫煙を吐いた。
 褐色の肌にサングラス、砂色の波打った髪を風に揺らす女である。
 歳のころは20も半ばに差し掛かった頃だろうか。
 たっぷりと布を使った長丈のパンツに、露出の多い水着のような上衣といった踊り子のような服装をしている。
 その上からファイアパターンのポンチョを羽織っているのは、砂塵や陽光で肌を不要に傷めないためか。
「まだですの? そろそろ日が暮れますけれど?」
 煙草の吸殻を宙へ弾いて捨てながら、砂色の髪の女は問うた。
 それから、ぼんやりと視線を西の空へと向ける。
 赤い太陽が、ゆっくりと地平へ落ちていく。
「そう焦んなよ。どっちにしたって、連中は絶対に此処を通るんだ」
「今日が駄目なら、明日まで待てばいいだけですよ。ルカイヤは少し気が短か過ぎます」
 砂色の髪の女、ルカイヤ・ファタールをたしなめたのは、カウガール然とした服装の2人の女だ。
 金の髪をした女性2人の顔立ち、背丈はほぼ同じ。
 双子なのだろう。唯一の違いをあげるとすれば、目つきが微妙に異なる程度か。
 鋭い目つきの姉の名はアン・バゼット。
 どこかじっとりとした目つきの妹は、メアリー・バゼットといった。
「……とは言いますけれどね。ここは砂漠の真ん中ですのよ? 私たちだって、そう何日も潜伏してはいられませんわ」
 そう言ってルカイヤは、砂地に落ちた煙草へ息を吹きかける。
 するとどうだろう。
 ぼっ、と空気の押しのけられる音がして、煙草の吸殻は炎に包まれ塵と化す。
「食料も水も、キャラバンから奪うのを前提として私たちは此処にいますの。この子はともかく、私たちは補給無しで生きられるほど頑丈にできていませんわ」
 視線を西日から逸らし、ルカイヤは背後を振り返った。
 そこにいたのは巨大な岩の塊だ。
 体長はおよそ3メートルほど。
 半人半蛇のゴーレムであろう。
 コブラのような広い襟で造った日陰の真下には、バゼット姉妹が寝ころんでいる。
「うまい話があるというから手を組んだのに……ねぇ、本当にキャラバンは来るのかしら?」
 なんて。
 不機嫌の滲む問いかけに、バゼット姉妹は悪辣な笑みを返すのだった。

●キャラバン
「砂漠の夕暮れはとても綺麗ね。貴方たちも、そう思うでしょう?」
 どこかうっとりとした様子で『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)はそう言った。
 今回の舞台はラサ近郊。
 砂漠の真ん中。
 周辺には、古い遺跡やサボテンの群生地がある区画である。
 時刻は夕暮れ。
 昼と夜の間の時間。
 気温は徐々に下がり始めた頃間だ。砂漠の夜は冷えるのである。
「今回、貴方たちに行ってもらうのはあるキャラバンの護衛よ」
 護衛期間は、キャラバンが遺跡を抜けて次の街に到着するまで。
 本来であれば、およその安全は担保された旅路であり、護衛など必要ないはずだった。
「ところが、つい最近、遺跡に盗賊が住みついたそうでね」
 盗賊の数は3名。
 “団”とも呼べぬ小規模なものだ。
 しかし、所属している3名の女性はどれもラサでは名の売れた悪党ばかりという。
「リーダー格は“砂漠の魔女”ことルカイヤ・ファタールね。【炎獄】【窒息】【飛】を伴う火炎の魔術と、ゴーレムの使役を得意とする悪党よ」
 彼女の操るゴーレムは、砂漠での活動に最適化された特別製だ。
 手に備えた爪でもって【必殺】の斬撃を放つほか、砂中に潜る能力を有する。
「それから、バゼット姉妹ね。双子の盗賊で拳銃の扱いに長けているほか、素早い連携には注意が必要と聞いているわ」
 たった3人の盗賊たちだが、これまで幾つかの旅団や商人を襲って食糧や財を奪い取っているらしい。
 大規模な盗賊団であれば足取りを追うのも簡単なのだが、今回の場合はたった3名とごく少数であることが災いした。
 これまで、存在を確認されつつも、潜伏場所の特定を出来ないでいたのだ。
「それがようやく、彼女たちの縄張りを絞り込めたらしくて。何も捕縛しろとは言わないわ。目的はキャラバンの護衛ですからね」
 多少の痛手を与えれば、彼女たちもどこかへ逃げ出すことだろう。
 そうすれば、今後、キャラバンの旅路は安全なものとなる。
「何より重要なのは依頼人の安全よ。積荷を奪われることが無いよう、注意してね」 
 そう言ってプルーは、イレギュラーズを砂漠へ送り出したのだった。

GMコメント

●ミッション
キャラバンの護衛を達成する
※遺跡を抜けて、次の街に辿り着くまでの護衛任務。

●ターゲット
・ルカイヤ・ファタール×1
踊り子のような服装に、ポンチョを羽織った“砂漠の魔女”
褐色の肌に砂色の髪、サングラスが特徴。
短期で短絡的。しかし、戦闘センスに優れている。

熱砂の魔炎:神遠単に大ダメージor神中範に中ダメージ、炎獄、窒息、飛
 砂粒を含んだ魔炎を操る。


・半人半蛇のゴーレム×1
体長3メートルほど。
上半身は人、下半身は蛇といった形状をしたゴーレム。
手には鋭い爪、首の辺りにはコブラのような装飾が備え付けられている。
砂上での活動に最適化されており、人を乗せたまま移動したり、砂中に潜ることも可能。
また、その攻撃には【必殺】が付与されている。


・アン・バゼット&メアリー・バゼット
双子の盗賊姉妹。
姉妹揃ってあまり良い性格はしていない模様。
武器として拳銃を使用する。

曲撃ち:物中範に中ダメージ
 リズミカルな連続射撃。狙いが非常に正確。

援護射撃:神遠貫に中ダメージ
 不意打ち気味に撃ち込まれる、命中、クリティカルの高い射撃。


●フィールド
ラサ近郊。
砂漠の真ん中にある遺跡。
付近には遺跡と、サボテンの群生地がある。
およそ1キロほどの遺跡を抜ければ、街まではすぐ。
盗賊たちは、遺跡を縄張りとしているようだ。
時刻は夕暮れ。昼と夜の境目。


●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。  

  • 砂漠の魔女と響く銃声。或いは、キャラバン護衛任務…。完了
  • GM名病み月
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年09月09日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ラダ・ジグリ(p3p000271)
天穿つ
レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)
赤々靴
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
エルス・ティーネ(p3p007325)
デザート・プリンセス
ルクト・ナード(p3p007354)
蒼空の眼
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)
砂漠の蛇
フィリーネ=ヴァレンティーヌ(p3p009867)
百合花の騎士

リプレイ

●渇いた風の吹く夕暮れ
 砂の混じった渇いた風が、女の髪を躍らせた。
 サングラス越しに砂漠の彼方を見やった女は、褐色の肌に張り付く砂粒を指先で払うと「さて」と一言呟いた。
「行きますわよ」
 ポツリ、と。
 何とはなしに吐いた言葉に、応じるは2人の女ガンマン。
「おう」
「えぇ」
 顔の横に褐色肌の女は両手を持ち上げる。
 2人のガンマンは、それを強くパシンと打った。
「「「仕事の時間だ」」」
 声を揃えて、そう告げて。
 瞬間、3人の背後で地面が揺れた。
 砂を押しのけ現れたのは、岩の体を持つ巨人。蛇に似た下半身を持つゴーレムだ。

「止まれ」
『剣砕きの』ラダ・ジグリ(p3p000271)は短く、けれど良く通る声でそう言った。
 彼女の声に従って、商隊の先頭を進む馬車が停止する。
 御者の女が不安気な視線をラダへ送った。ラダは女の視線をまっすぐ受け止めて、問題ない、と薄く笑った。
「ただ、絶対はない。命と荷を守るため交戦中は離れて様子を見ておくように」
「ボクたちが、荷物と行商人さん守るっすよ」
「食料や書籍を運ぶ君たちがいるから流通があるんだよな……その旅路は安全であってほしいものだ」
 商隊へ声をかけてから『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)と『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)はそれぞれ砂漠へ散っていく。
「可能な限りお守りしますが、いざという時は、自分の身を大事にして下さいね」
 2人を見送り、馬車の前へと歩み出たのは『砂漠の蛇』サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)だ。帯で瞳を隠した彼女は、顔を左右へ揺らしながら盗賊たちの居場所を探る。
「「盗賊達は奪って生きる事ばかり考えるわね。真っ当に生きる……と言う選択肢はなかなか難しいのかしら?」
 氷の鎌を手にした『竜首狩り』エルス・ティーネ(p3p007325)は、額に乗せた暗視ゴーグルを位置を直して、視線を右前方へと向けた。
 レッドが向かうその方向には、サボテンが群生している。
 さらにもう少し先へ進めば、そこには朽ちた遺跡があった。身を隠す場所は無数にある。
 今回、商隊を狙う盗賊……ルカイヤ・ファタールとバゼット姉妹が襲撃をかけるのなら此処だろう。
 空は茜色。
 もうじき、日が落ち黒に染まる。
 時間帯としても奇襲には最適か。
「あぁ……やっぱり」
 ガラリ、と。
 遺跡の一部が脆く崩れた。
 そうして現れたのは、全長3メートルはあろう岩の巨人。蛇に似た下半身をうねらせながら道を塞ぐゴーレムと、その肩に乗る褐色肌の女の姿。
 にぃ、と女は笑ったようだ。
 翳した手に魔力が渦巻く。
 ごう、とまるで開幕の合図とばかりに撃ち出された業火の魔弾は、しかし商隊へと至ることなく、何かに撃たれて飛散した。
「遅かったじゃないか」
 頭上へ視線を送ったラダはそう告げた。
「……雇われた以上、サボりはしないさ」
 そう応えたのは、白の髪を靡かせ飛翔する少女……『蒼空』ルクト・ナード(p3p007354)だ。体の前面に掲げたミサイルポッドからは白煙がたなびいている。
 ルカイヤの魔弾を相殺したのはルクトの射出したミサイルか。
「あら……ただ飛んでいるだけの小鳥と思っていたわ」
 くすり、と。
 わざとらしく笑みを零したルカイヤは、空を飛ぶルクトへ向けてそんな風な言葉をかける。挑発しているのだろう。遠距離攻撃の手段と飛行能力を持つルクトの存在は、ルカイヤ達、盗賊にとってある種の脅威となり得るからだ。
「まぁ、降りて来てくれたのなら……」
 そう言ってルカイヤは、ルクトへ向けて手を翳す。
 直後、まるで地震のような衝撃がルクトの乗ったゴーレムを揺らした。
 
「よぉ、ヤクザの俺が言うのもなんだが、カタギの皆様にご迷惑をかけちゃいけねぇ」
『仁義桜紋』亘理 義弘(p3p000398)。
 こことは異なる世界より来た“侠”の名である。
 その剛腕は、石で出来たゴーレムの腹に罅を走らせた。先ほど、ルカイヤを襲った衝撃の正体がそれだ。
 義弘を打ちのめすべく、ゴーレムはその巨腕を持ち上げる。
 大質量の岩の塊だ。
 直撃を受ければ、並みの人間なら圧死。義弘ほどの男であっても、大きな傷を負うだろう。
 だが、それは叶わない。
 馬の嘶きと、大地を蹄が叩く音。
 そして一条、地上を走る流星のごとき銀色が、持ち上げられたゴーレムの腕を後ろへ弾いた。
「人からものを奪うということはどういうことか…わからせてあげないといけませんわね」
 凛とした宣誓に込められた強い意思と矜持を持って、彼女は岩を貫いた。
 軍馬に跨るその姿はまさに騎士。『百合花の騎士』フィリーネ=ヴァレンティーヌ(p3p009867)の参戦に、ルカイヤは思わず舌打ちを零す。
「騎士って苦手なのですわ。私、悪党ですから」
 腕を広げ、ゴーレムは前へ。
 その肩から飛び降りたルカイヤは、遺跡の影へと退避する。

●茜色に染まる空
 ルカイヤを追い、ラダは遺跡へ駆け込んでいく。
 障害物が多く、前方の見通しは不十分。構えたライフルの引き金に指をかけっぱなしにしているのは、いつ、いかなるタイミングでもすぐに弾丸を放つためだ。
 そんなラダの耳に響く数発の銃声。
 遺跡の影から、転がり出て来たのは先行していたイズマであった。肩を抑え、呻き声をあげるイズマを追うように、さらに数発の銃弾が迫る。
「ちぃっ……やっぱり遮蔽物があると見通しが悪いな!」
 転がりながら、イズマは細剣を振るう。
 数度、金属の擦れる音が鳴り響き、地面に幾つかの弾丸が散った。
「っと、思ったより速いな」
「上手く致命傷を回避されましたね」
 軽口は二人の頭上、遺跡の屋根の上から聞こえた。
 そこに立つのは2人の女。
 手にした拳銃からは硝煙が立ち昇っている。
「久しぶりだな、バゼット姉妹。相変わらず誰かと組むのが好きだな」
 ライフルを構えたラダは言う。
 その狙いは、正しくバゼット姉妹の姉……アン・バゼットに向いていた。
 舌打ちを零し、アン・バゼット、そしてメアリー・バゼットは1歩後ろへと退避。それはラダがトリガーを引くのと同時であった。
 銃声が鳴って、それと同時にイズマが駆け出す。
 撤退を選んだバゼット姉妹へ追撃をかける心算だろうか。
 イズマとは逆の方向から遺跡の後ろへ回り込むべくラダも移動を開始した。拠点に選んでいるだけあって、地の利はバゼット姉妹にあるのは間違いない。
 だからといって、銃撃戦で遅れを取るつもりは毛頭ないが……。
「剣砕きぃ!! てめぇ、また逢ったな!」
「いつかの借り、ついでに返してあげますよ!」
 なんて、バゼット姉妹の声が響いたその直後……。
 イズマの放った不協和音が、空気を激しく震わせる。

 響く爆音。
 地面が揺れて、粉塵が舞う。
 土煙を突き破り、空へと登るルクトを追って蛇のように魔炎が踊る。
 ルクトは義肢を下方へ突き出し、魔炎へ向けて極小さな爆弾を射出。爆ぜたそれが、魔炎を一瞬、停滞させた。
 ごう、と熱波が吹き荒れる。
 魔炎と爆炎に煽られ、ルクトが姿勢を崩したその瞬間、彼女の眼前は紅蓮に染まった。
 爆炎を飲み込み、勢いを増したルカイヤの魔炎がルクトの右半身を焼く。
「ぐっ……だが、位置は分かったぞ」
 魔炎の操作は正確だ。
 つまり、ルカイヤはルクトの居場所が分かる位置にいるということだ。
 視線を素早く地面に走らせたルクトは、遺跡の一角、柱の陰へと手を翳す。
「生きる者にはよく効くだろう」
 白煙による軌跡を空に引きながら、柱へ着弾したそれは、弾けるように業火と毒とを撒き散らす。たまらず柱から飛び出したルカイヤへ、エルスが駆けていくのが見えた。
「滅茶苦茶するわね! 遺跡は大事にしなくては駄目よ!!」
 なんて、自分のことを棚に上げたルカイヤは砂色の髪を振り乱しながら腕を薙ぐ。
 瞬間、魔力が渦を巻き、形成された魔炎の蛇がルクトを飲み込む。

 業火の蛇が荷馬車へ迫る。
 先に車輪や馬を焼いて、移動を封じる魂胆だろう。
「む、無理だ! 逃げろ! 速く!」
 慌てふためく商人たちの悲鳴が響く。
「然り。商品も財宝も大事ですが、命あってこそです」
 そんな言葉とは裏腹に、サルヴェナーズは業火の前に歩み出た。
 1歩、彼女が前に進むと、その足元から黒く淀んだ汚泥が広がる。
 ぞわり。
 泥の内より這い出でるは蛇や蠍、羽虫の群れだ。それは迫る業火に焼かれながらも、ルカイヤへ向け行進していく。
「……っ!?」
 毒蟲の群れがルカイヤの元へ至るのと、サルヴェナーズの身体が業火に焼かれるのは同時。しかし、全身を焼かれながらもサルヴェナーズは倒れない。
「今のうちに商隊を進ませてください。広い場所では守り切れないかもしれません」
 商隊の盾になれる位置に立ったサルヴェナーズは、周囲の様子を確認した後、商人たちにそう言った。
 ゴーレムは義弘とフィリーネが、バゼット姉妹はラダとイズマが、そしてルカイヤにはエルスが向かった。
 今のうちなら、比較的安全に遺跡を抜けられると、サルヴェナーズは判断したのだ。

 エルスの振るう氷の鎌がルカイヤの腕を深く裂いた。
 飛び散った鮮血は、ルカイヤの纏う高熱によって蒸発する。
 鉄分を含んだ鼻の奥に纏わりつくみたいな臭いに、エルスは僅かに顔を顰めて見せた。
 1歩、大きく踏み込むと体を地面に這わせるように低く倒してルカイヤの足元へ鎌による一撃を放つ。
 魔術を行使しようとしていたルカイヤは、それを中断し後方へと跳躍。
「さ、早々に片付けさせてもらうわよ! これまで好き勝手に暴れてきた分、覚悟する事ねッ!」
 ルカイヤを追ってエルスが駆ける。
 元よりルカイヤは近距離戦を得意とはしていないのだ。本人もそれは自覚しており、そういった弱点をカバーするために彼女はゴーレムを引き連れている。
 もっとも、当のゴーレムはというと現在、義弘とフィリーネに抑えられてしまっているため、彼女の盾とはなり得ないのだが……。
「何しているの! 潰して! 速く!」
 エルスの顔へ魔炎を撃ち込み牽制しながら、ルカイヤはゴーレムへと指示を飛ばした。
 瞬間、ゴーレムの動きが僅かに速度と精度をあげた。
 大上段より叩きつけられた一撃は、フィリーネの剣を弾き、義弘を潰したことだろう。地面が大きく揺れるほどの一撃を受け、生身の人間が無事でいられるはずはないのだ。
 無事でいられる……はずは無かった。
 だというのに、義弘はゴーレムの巨腕を押しのけ立ち上がった。

「はぁ!? なんでぇ!?」
 思わず悲鳴をあげたルカイヤだが、すぐにその理由に気づく。
 見れば、義弘の身体を淡い燐光が覆っているのだ。それが、彼の受けたダメージを回復させているのだろう。
「義弘さん、フィリーネさん! ルカイヤが近くに来たっす! 要注意っす!」
 赤い旗を風に靡かせ、そう告げたのはレッドであった。
 彼女はさらに、ばさりと空気を打ち鳴らし、旗を大きく頭上で回す。瞬間、りぃん、と鈴のような音色が響き渡った。
「物盗みはさせないっす。悪行悔い改めるっすよ!」
 義弘、フィリーネ、エルスを対象とした広域治癒。
 魔力の流れからそれを察したルカイヤは、顔を顰めて舌打ちを零す。しかし、咄嗟に自身の壁とするように魔炎の壁を展開させた動きの速さは流石と言うべきか。
 頭で考えるよりも、身体が動く方が速いのは、それだけ彼女が場慣れしている証拠だろう。
 しかし、エルスは迷わず業火の中へ身体を投げ入れる。
 大上段に氷の鎌を振り上げて、身を焼かれながら一気にルカイヤとの距離を詰めた。

 頭が痛い。
 肩に罅が入っているのか、思うように腕が持ち上がらない。
 しかし、意識ははっきりしている。
 顔面から胸にかけてを血で濡らしながら、義弘は吠えた。
 1歩。
 力強く、前へと足を踏み出して放たれたのは正拳突き。
「こいつぁ俺が、しっかりと張り倒さなけりゃいけねぇよな!」
 ゴーレムの拳と真正面から打ち合った義弘の拳は、なんと巨岩で出来たそれを砕き割ってみせた。
「っ……!!」
 ミシ、と骨の軋む音。
 義弘の拳から血が噴き出した。
 よろけた義弘へ、ゴーレムは頭突きを放つ。しかし、それは咄嗟に割り込んだフィリーネによって受け流された。
「義弘さんはトドメに備えてください! さぁ、来なさい人形! わたくしが相手になりますわ!」
 後退する義弘へ、レッドは治癒の術式を行使。
 そうしながらも、視線はフィリーネへ向いている。
 どちらかと言えば華奢な彼女が、巨大なゴーレムを相手にしているという光景を不安に思っているのだろう。
 だが、フィリーネは巧みに馬を操って、ゴーレムを翻弄するように駆けまわっていた。両の腕を失ったゴーレムの動きは大振りかつ単調なものだ。
「こっちへいらっしゃいな!」
 無傷とはいかないが、致命傷は避けている。
 ゴーレムを引き付け、向かった先は遺跡の奥だ。狭い場所に誘い込んでしまえば、それだけでゴーレムは十全に動けなくなる。
 そして……。
「後はお任せしても?」
 背を壁に付けたフィリーネはゴーレムの攻撃を受け止めながら、そう問うた。
「あぁ、砂に潜られる前に決めてやるよ!」
 ゴーレムの背後には義弘の姿。
 腰を低く落とし、拳を固く握りしめ……渾身の殴打を、ゴーレムの背へと叩き込む。

●キャラバン、夜を行く
 サルヴェナーズが護衛を務める商隊へ、無数の弾丸が降りそそぐ。
「おや、どこかで見た顔ですね。どうしましたか。牢屋のご飯が恋しくなりましたか?」
 建物の影から銃を構えて半身を覗かせているのは、アン・バゼットかメアリー・バゼットか。サルヴェナーズにはどちらか区別できないが、その目的は予想できた。
 片方がラダとイズマを引き付けているうちに、もう1人が商隊の足止めを行うつもりなのだ。
 だが、それは悪手だ。
 バゼット姉妹の強みとは、つまり2人組による息の合った連携にある。
「しかし、こちらも攻撃の手が……」
「なら私が行く。残弾も少ないからな。撃ち尽くしてくるさ」
 そういって高度を上げたルクトは両手を下方へかざす。
 火薬の爆ぜる音がして、炸裂弾が射出された。

 ゴーレムが砕け散るのをその目で見て、ルカイヤは即座に撤退を決めた。
 盾であり、移動手段であるゴーレムを喪失したことによる不利を、彼女は正しく理解している。加えてルカイヤ自身もかなりの傷を負っているのだ。
 幸い、砕けたゴーレムが路を塞いでいるおかげで義弘やフィリーネはすぐに追っては来られない。
「一度退いて、別の獲物を……」
 そう言ってルカイヤは自分を覆い隠すように、業火の蛇を呼び出すが……。
「させないわ。しっかりとお仕置きを受けてもらわないとね!」
「大人しくお縄につくっすよ! えいやっ!」
 レッドの放った閃光が、業火の壁の一部を弾いて穴を穿った。その穴に、頭から飛び込んだのはエルスだ。
 氷の鎌が冷気を散らし、ルカイヤはぞくりと背を震わせる。
 回避も、防御も間に合わない。
「てめっ……その面、覚えたからなっ!!」
 一閃。
 黒い髪と、真白い鎌が夜闇に一筋、軌跡を描く。
 悔し紛れに怒声をあげるルカイヤの胸を、エルスの鎌が斬り裂いた。

 ルカイヤはエルスに倒された。
 瓦礫に埋もれるメアリーは、義弘とフィリーネに掘り起こされて拘束された。
 助けに行きたくとも、アンにはそれが出来ないでいる。接近を試みるイズマを、牽制するので精一杯だ。
 迂闊に遺跡の影から外へと姿を出すことも出来ない。今も、どこかで、ラダがこちらを狙っているからだ。
「どこを見ている? 俺が相手だ。うっかり狙いを外さないよう、気を付けるんだな」
「うるせぇぞ! お前が気を付けろ!! 弾き損ねりゃ、それで終わりだ、こんちくしょう!」
 そう叫ぶなり、アンは銃の引き金を引く。
 腹部に向かう弾丸を、イズマは細剣の柄で弾いた。
 最小の動きで得られる最大の成果がそれだ。
 けれど、アンは嗤っていた。
「はっ! そう弾くよな!」
 弾丸が地面に落ちるその直前、それは何かに弾かれた。
「弾いた弾に、別の弾丸を当てて……っ!?」
 ピンボールの要領で、軌道を変えた弾丸がイズマの鎖骨付近を抉る。
 衝撃に、イズマはたまらず剣を手放し姿勢を崩した。
 隙だらけになったイズマの眉間へ、アンは銃口を差し向ける。
「それじゃ、おやすみ!」
 火薬の弾ける音がした。
 弾丸はイズマの眉間へ向けて、まっすぐに疾駆し……。
「……は?」
 途中で180度、軌道を変えてアンの腹部を撃ち抜いた。

 止めていた呼吸を再開させる。
 構えていたライフルをゆっくりと降ろし、ラダはふんと鼻を鳴らした。
「潮時だ」
 空薬莢を排出し、念の為に次弾を装填するが撃つ機会はないだろう。
 先の一撃……先だってアンが見せた技と同じ、弾丸に別の弾丸をぶつけ軌道を無理やりねじ曲げるというものだ……によって、アンは重症を負った。
「盗賊がこれで懲りてくれればいいけどな」
「ふむ……なぁ、そろそろ足を洗わないか。行先に困るなら話も聞くから、とりあえずうちに来るか?」
 血を吐き、地に伏すアンへ近づき、ラダはそう問うたのだった。

成否

成功

MVP

ルクト・ナード(p3p007354)
蒼空の眼

状態異常

亘理 義弘(p3p000398)[重傷]
侠骨の拳
ルクト・ナード(p3p007354)[重傷]
蒼空の眼
イズマ・トーティス(p3p009471)[重傷]
青き鋼の音色

あとがき

お疲れ様です。
盗賊たちは無事に捕縛されました。
依頼は成功です。

役割分担がばっちりですね。エクセレント。

この度はご参加ありがとうございました。
縁があればまた別の依頼でお会いしましょう。

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