キレイなメクレオ（女体化）の正体を探れ！

オープニング

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「ちょっと具合悪くなった時に飲んで下さいね」
　悪の都と言ったら、ここのこと。
　砂嵐の王都・ネフェレスト。バザールの中心から噴き出す噴水は清浄だが、都市の悪徳を洗い流すにはささやかすぎる。
　その前で、一人の娘が道行く者たちに、小さな包みを渡そうと声をかけている。
　受け取りを拒否するもの。受け取った後すぐ投げ捨てるもの。とりあえず懐に入れるもの。人さまざまだ。
　何なら、捨てて踏みにじり、娘がどんな顔をするかわざわざ顔をのぞき込むものもいる。
「ちょっと具合が悪い時に飲んでくださいね」
　同じことを繰り返す。
　作り込まれていないNPCのようだが、それにしては実在の人物に似ている。
　いや、決して間違えたりはしないが、元ネタと並べれば唸るしかない仕上がりなのだ。

　そこが問題なのだ。
　娘の名を尋ねたら、彼女はこう言うだろう。
「アラギタ・メクレオと申します。薬師ですわ」

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「んン～。悪夢かな～」
『そこにいる』アラギタ メクレオ（p3n000084）は、唸っていた。
「今日は、俺からの依頼です。正確に言うと。俺が自腹で掛ける依頼です」
　なんですって。ケチでも守銭奴でもアコギでもないけれど、きちんとお商売するメクレオさんの自腹ですって？　まあ、前もやってたな、戦闘訓練。
「まあ、ぶっちゃけ調査してきてもらうだけのガキの使いなんですけれども」
　はいはい。
「R.O.Oに『アラギタ　メクレオ』っていうのがいるらしいんだよ。ちなみに俺は登録してない。俺じゃない」
　アラギタ　メクレオはウォーカーである。つまり、混沌世界で、たまたま同じ苗字ということはない。
「俺はこの世界に来てから、俺と同じとこ出身の奴に会ったことはない。ついでに、希少姓かつ珍名なので、両方たまたま同姓同名はあり得ない」
　自分で珍名とか言うなよ。親御さんは一生懸命考えたんだろ、多分。
「ちなみにそいつは、黒髪黒目の十代後半位の年周りで――」
　はいはい。大体誤差範囲な。
「おっとりとして人のよさそうな童顔。口元にほくろ。肌は出てないがボディラインがあらわな服着て薬をタダでばらまいている。女性体だ」
　――目の前にいるのは、黒髪黒目、童顔で胡散臭い笑顔でおなじみ。お代はしっかり頂く系薬屋。
「まあ、俺を知ってるやつがアバターを作ったのはほぼ確定」
　きれいなメクレオ(女体化）ときた。　若干の悪意を感じる造形だ。
「それがほんとにいるのか、PCなのか自動発生したNPCなのか、見てきてくんない？　ただ～し、今後のこともあるので、リアルの俺と面識があることがばれないようにね」
　つまり、「女体化メクレオ地雷です！」とかお気持ち表明してはいけないのだ。何たるこったー。
「つまり、俺がゲーム内にそいつがいることに気が付いているということを一切悟らせちゃだめだよ！？」
　んじゃなにして来いってんだよ。
「そいつがタダで配ってる薬を入手し、鑑定屋に――PCが使う奴――に持ち込んで、ゲーム上どういう性質があるのか確認してきてくれ」
　それってどういう――。
「いいか。普通に薬はどこの世界だろうが高価だ。材料費と技術費、人件費。薬草の取り扱いは難しいんだ。薬は生死にかかわる。お代は飲んだ人の命への責任だ。薬をタダで配るなんてろくなもんじゃない。まっとうじゃない薬かまっとうじゃない理由があると疑って疑いすぎることはない」
　お金は、最も普遍的な価値である。無料にはワケがある。
「つまり、配ってる薬がまっとうなものなのか、プラシーボなのか、毒なのか、依存性があるモノなのかによって、俺の打つ手が変わってくるってことだよ」
　女体化悪落ちなのか闇落ちなのかお花畑なのかゲームステータスで確認したいということですね。OK、OK。
「もちろん、鑑定できる奴に多角的に鑑定してもらえれば俺としては慮外の喜びよ」

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第2章

第2章 第1節

　各プレイヤーのインベントリには「薬？：ネフェレスト・バザールの噴水で取得」がある。
　複数持っている者もいるだろう。調査に使うには十分な量だ。調達できなかった者にも積極的に分けろ。と、メクレオは言った。
　これをゲーム内の鑑定屋に持ち込んで調べてほしいというのが、名前を勝手に使われてるっぽい『アラギタ・メクレオ』の依頼だ。
　噂にならないように、なるべく分散して。などと言っている。
　使えそうなスキルを所持しているなら、自分で調べてもらっても構わない。
「中身によって、今後を考える」
　と、現実で待っている胡散臭い方のメクレオは言っているが、さて？

＊この章から参加するイレギュラーズは、1章に参加したイレギュラーズと面識はなくとも「メクレオの仲介で、サクラメントで待ち合わせて分けてもらった」事になります。

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第2章 第2節

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「サクラメント利用すれば離れた場所にも行けるんだっけ？」
『囲 飛呂のアバター』ヒロ（p3x010030）は、うまく 行き先散らばるようにできたらいいな。と、言った。
「ともかく俺はネフェレストからなるべく離れた、でも砂嵐内のとこに行きたい」
　で、砂嵐の辺境の街だ。
（こういう『怪しい』ものの鑑定って、やっぱ裏路地とかにある若干怪しげな鑑定屋の方が良いのか？）
　いかがわしい雰囲気が抑えられない裏路地である。砂嵐、辺境、裏路地の役満。
「――その代わりお金があればなんとかなるって、めっちゃゲームっぽいよな」
『門番にいくらか握らせますか？』『はい』　で、入れちゃうのだ。
「何の用じゃ。つまらないものを持ち込んだらただでは済まさんぞ」
　干からびた白髭のじいさんが、垂れ下がった肩まぶたをこじ開けるようにして凝視してくる
（これちょっと高めの鑑定コースじゃなきゃ、情報全部は開示されないとかならないか？）
　経費と報酬の葛藤。コストパフォーマンス。
（あ～、いやちゃんと高めの鑑定に出す、下手にケチって薬無駄にしたくない。後で経費請求しよう、落ちるかわかんねーけど）
　情報の精度を上げることを選択。積まれた金額に、爺はふんと鼻を鳴らした。
「良かろう。この薬は――」
　ゲームなので、鑑定は一瞬だ。
「薬：爽快粒。飲むと痛みや苦しみが引き、しばらく爽やかになる。くせになりそう」

成否

成功

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第2章 第3節

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「そんなにR.O.Oに行きたくないんだな、メクレオさん」
　『アルコ空団“路を聴く者”』アズハ（p3x009471）は察しがいい。
「それにしても…… 」
　アズハは日が暮れるまで、他のイレギュラーズや通行人に薬を配る『メクレオ』を見ていた。
「ずっとあそこにいたなんて、暇人か？」
　それこそ仕事でなければやってられないだろうに。

　なるたけバラして。と、ヒロが念を押していったことだし。
「なら航海に持ってくか」
　色々なモノが集まる国ならコレを調べられる人もいるんじゃないかという訳で、航海のごく普通の鑑定屋。受付の子がちょっとかわいい。
「薬だと聞いたんだけど、飲んでも大丈夫なのかと気になってな」
「少々お待ちくださいね」
　ゲームなので、鑑定は一瞬だ。
「該当商品なし　類似製品　サプリメント：スットスル。若干の高揚作用のある物質が入っています。飲用に問題はありません」
「――飲んでも大丈夫みたいですね」
「ありがとう」
　またどうぞ。と、送り出される街角。
「――飲んでみるか」
　問題ないなら、人体治験。いや、アバター治験。
「最近依頼で忙しいから体調は絶好調ってわけでもないし、まぁ味見……毒見？　だな」
　聞いていた通り、さらさらした細かい丸薬を水で流し込む。
　ほどなく、すっきりした気がする。自然に姿勢がよくなって歩幅が広くなるような感じだ。心なしか視界が広い。
「なるほど」
　言っていた通りの効能はあるようだ。

成否

成功

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第2章 第4節

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「怪しい薬……ですか」
『ヒーラー』フィーネ（p3x009867） は、むむむ。と、薬包と向き合っていた。
「私も薬師……自分で鑑定を試みて何とか成分を調査したいです！」
　現実とは違う職業を極める。ゲームの醍醐味である。
　フィーネのギフト・薬草鑑定は、一般的ではない植物だったり、妙な製法でない限り、植物を使っていればたちどころに分かる。
「――植物は使ってるんですが――」
　使われている植物はごく一般的な清涼剤だ。健胃作用があったり、いい香りで高ぶった神経を休める作用があったりする植物が複数使われている。
　治すというより一時しのぎの薬だ。街頭でタダならそんなものだろう。
「――でも」
　フィーネは街頭に出た。手には売り物にする花を。手に入れるべきは、成分についての手掛かりと信頼できる鑑定屋の情報だ。

「薬の鑑定ね？　それぞれ包みごとに鑑定するんだね？」
　一番評判がよかった鑑定屋は妖艶な美女だった。
　情報を精査した上でフィーネは薬包をいくつか持ち込んだ。その内の何個かは自分で見当を付けた成分から作った薬だ。見た目も同じように仕上げた。
「これとこれは、痛み止めだね。特に胸のつかえに効くよ」
　フィーネが作った物はそう評された。自分の鑑定と合っている。
「これとこれは、痛み止めにほんの少し惚れ薬だね。これを作ったヒトをほんの少し――気のせい程度に好きになる薬さ。ただし、効果は蓄積されるよ」

成否

成功