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シナリオ詳細

<濃々淡々>夏祭響宴

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ちんどんしゃららん。
 ちんどんしゃららん。
 祭の音は軽々に。それはぼんやりと淡い桜色だけで照った街をてらす光。
 妖怪と人間とが暮らすこの濃々淡々の世界にも夏がやって来た。迫害されいまだ蟠りは残るものの、害がある妖怪だけではないと気付かせたのは、妖怪たちの行いのほとんどは善意であると人間が気付いたからか。
 生活にも根差したところにある雑貨屋を始めとした、ちょっぴり不思議な店々の一部は妖怪たちが、長い歴史の果てから担って来た部分でもある。街の大部分が人間に支配され、表を支配していた妖怪たちが裏へ裏へ追いやられようとも、それは変わらぬ事実であり真実だ。
 夏の熱気を孕んだ風が人々の間をすり抜け、木造建築の街並みを撫ぜた。
 宵が滲む空にはぽっかりと赤い月が輝き、祭りの時期が近付いたことを告げる。人として暮らしている妖怪が祭りの時期に変わらず参加するのも珍しくはないから、「久しぶり」「表に出たのは何年ぶりだ」「ざっとひいふうみい……三百だ」なんて軽口も混ざって聞こえて。
 ずらっと並んだ屋台が、夏の訪れを告げる。それはまるで陽光に向かい咲いた向日葵のように。
 そんな夏祭への招待状。同封された便箋には向日葵の色滲み。
 あなたが来るのを、待っている。


「はぁ、祭も連日続くとつらいものだね」
 ひいひいと口から漏れんほどにはぐったりと。ただしそんな疲れも愛おしいようで、ご機嫌にしっぽはゆらゆらり。境界案内人であり、一同が今回訪れる世界出身の妖怪たる絢はひらひらと手を振り、疲れを振り切り立ち上がる。
「見苦しいところを見せて済まないね。よし、今回の依頼について説明しようか」
 絢曰く、年々店が増加しているから色んな人に楽しんでもらいたいのだという。たくさんの屋台があるからこそ、一部に集中していては折角参加してもらえたのに、勿体ない、とのことだ。
「それにね、一度参加したらこの楽しさを知らずに帰るなんてもったいないと思うんだよね……!」
 と、瞳を煌めかせて。ひょろっとしていて頼りない見かけによらず、お祭り大好きミーハー男なのだ。せっかくなら友人たる君達にも楽しんでほしいのだ、とちらしをくばって。
「えーっと、こんなところかな……あれ、その手紙如何したの?」
 あなたが絢の仕業ではないのかと問えば、絢は顔を青くして首を横に振った。
「おれ、手紙は書いてない……」
 若干背筋が震えたような気がしたが、それはそれとしておいておこう。
「と、ともかく! 夏祭りに来てみて。絶対に、損はさせないから!」
 ニッと笑った絢の表情は、美しい向日葵のようだった。

NMコメント

 来年こそはチョコバナナが食べたい。染です。
 お祭りの屋台って、特別な感じがしませんか?

●目的
 夏祭りを楽しむ!

 差出人不明の招待状を受け取ったあなた。
 絢からの誘いもありましたから、どうせなら参加してしまいましょう。

●夏祭り
 妖怪も人も楽しみにしている夏の風物詩。
 大規模な祭りが三日程続くのだとか。
 盆踊りがあったり、一発芸をするステージがあったり、様々です。

●店
 あると思ったら何でもあります。それがライブノベルです。
 中には見知った顔もあるようです。

 ・白猫が営むわたあめ屋    https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/4355
 ・付喪神が営むお面屋     https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/5686
 ・雪女雪男夫婦のかき氷屋   https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/6366
 ・狐面の男のヨーヨー屋    https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/5573

 などがあるようです。
 絢も本業の飴屋を営んでいるようですので、気が向いたら寄ってあげてくださいね。

●お出かけできるスポット
 喧騒から離れたくなったら、のんびりと向かってみてもいいかもしれませんね。

・川
 廻青の山を流れる清流。日が差し込まないため、蛍が飛び交っています。

・海
 美しい海です。透き通った水からは、魚が泳いでいるのが見えるでしょう。

・森
 飴の森。きらきら陽光は落ちる中を散策してみるのもいいかもしれません。

・店
 付喪神が営む店や、絢が営む飴屋など、様々な店があります。食事処もありますから、店に入ってしまうのもいいですね。

●世界観
 和風世界『濃々淡々』。

 色彩やかで、四季折々の自然や街並みの美しい世界。
 また、ヒトと妖の住まう和の世界でもあります。
 軍隊がこの世界の統制を行っており、悪しきものは退治したり、困りごとを解決するのもその軍隊のようです。
 中心にそびえる大きな桜の木がシンボルであり神様的存在です。
(大まかには、明治時代の日本を想定した世界となっています)

●絢(けん)
 華奢な男。飴屋の主人であり、濃々淡々生まれの境界案内人です。
 手押しの屋台を引いて飴を売り、日銭を稼いでいます。
 屋台には飴細工やら瓶詰めの丸い飴やらがあります。
 彼の正体は化け猫。温厚で聞き上手です。

 飴屋として屋台を出店中。同行願いがあれば、休憩ついでにやってきてくれるかもしれません。


 以上となります。
 皆様の夏祭りのご様子を聞かせていただくのを楽しみにしております。

  • <濃々淡々>夏祭響宴完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年08月28日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを

リプレイ


「ふむ、雰囲気はカムイグラの祭りに近いのかな。こういう東方の催しは滅多に行かないから新鮮さが違うね」
『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は待ち人たる夫を待つ。紅の提灯が『紅獣』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)を照らす。
「出店に浴衣。うん、とても見慣れた懐かしい光景だなぁ。
 強いて過去の記憶と違いを上げるなら、今は奥さんと一緒ってことかな」
「さて適当に出歩くのも嫌いじゃないけど。今回はどうしようかルナール先生?」
 夫婦、揃って祭の夜へ。ルナールが差し出した腕に、ルーキスはその手を絡ませる。
「やっぱりルナは浴衣が良くお似合いですこと」
「……うん? そんなに俺を褒めちぎっても何にも出ないんだがなー」
 困ったように苦笑する。褒められるのは嫌いじゃない。くすぐったいのだけれど。
「うーむ溢れるイケメンオーラ」
「それにしても、ルーキスの浴衣は初めて見るが、何着ても似合うよな」
 流石うちの奥さんは美人、と頭を撫でれば、満足げに微笑んでおとなしく撫でられるルーキスの姿。奇麗な白髪が祭の灯りに照らされて、薄ら赤く染まる。微笑みを向けるその表情は自分だけが見ていればいいから、組んだ腕が解けぬように握る。華奢な指がそれに寄り添った。
 さて、と進みだして。祭りの喧騒の中に、二人の影は溶けていく。
「あ、これは食べたい」
 と、ルナールが立ち止まったのはかき氷屋。色々な味があるようだ。
「いいねえ。何味にしようかな。私はいちごにしてみようか」
「じゃあ俺はブルーハワイだ」
 言わずとも解る。互いの瞳の色だ。あー、と大きく口を開けたルナールの口の中に、ルーキスはいちご味の氷を入れる。
「うん、絶品絶品」
「私にもちょうだいよ。ほら、あー」
「はいはい、あーん」
 美味しいものも二人で共有すればさらに美味しい。それを知っているから、祭は楽しい。
 かき氷を食べつくした二人は、ゆったりと歩き進めて。連なった出店の中にある飴屋に手を引いていった。
「ルーキス、これ美味いんだぞ」
「ふむ?」
「りんご飴。ルーキスは初めてか?」
「かもね。ルナが出したものなら食べてみますとも」
 ついでに涼んでいこうか、なんてどちらからともなく決めて川へと向かう。ぼんやりと蛍が灯りを点滅させる。口の中に広がるりんごの果汁と、飴の甘さ。瞬き、ルーキスがそのまま食べ進めれば、ルナールは満足げに微笑んで。
 川で足も冷やしたことだし戻ろうかと話して。のんびり歩いていく。が、少しおきに立ち止まるルーキス。ルナールは首を傾げてルナールを見つめた。
「夏ぐらいしか出番のない履物でも流石にしんどい……ちょっとは慣れたと思ったんだけどー」
 鼻緒に擦れた親指と人差し指の間。皮が剥けて、しっかり鼻緒ずれを起こした足をやれやれーと眺めるルーキス。
「うーんこうなると動き回るのはキツ………」
「…俺が抱えて歩けば解決だな?」
 小さく首を傾げたルナールにストップと制止をかけるルーキス。
「こらそこ、俺が抱えればいいとか言わない」
「はいはい、拒否権などない」
 無理やり姫抱きにされたルーキスはじたばたと暴れる。が、離す気もないのだと察すればおとなしく従うほかない。喧騒に戻れば見麗しい夫婦の仲睦まじい様子に人々の微笑みが浮かぶ。
「流石に大勢の目がある中でそれは恥ずかし、わあ強制執行」
「俺がそれなりに背が高いから、自動的にルーキスの目線が高くなるから逆に面白いだろ?」
「うぅんこれはこれでやたら目立つ」
 が、悪くはない。
 普段見えない世界が見えるのだから、嫌な気はしないというもの。
「重かったら素直に言うように、おにーさんも休憩は大事だぞ」
「うちの美人な奥さんを自慢して歩けるので俺的には何の問題もなし」
 珍しく満足げなルナールに、ルーキスは笑みを浮かべながらやれやれと肩を竦めた。
 二人の祭はまだまだ、終わりそうにない。


(こっちの世界のお祭り、色んな意味で居心地ええわぁ…にしても、誰からの招待状やったんやろ)
 手紙を月に透かして見る。が、何も見えそうにない。『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)は懐に手紙をしまって。
「…んまぁ、そないなことは置いといて、時間の許す限り遊びましょ」
 からころ、下駄鳴らし。真っ先に向かったものは。
「あれ、蜻蛉? いらっしゃい。何か買っていく?」
 よいしょと立ち上がった絢に手を振った蜻蛉は、笑みを浮かべて絢を呼んだ
「お休み時間のとこ申し訳ないんやけど、ちょっと付き合うてくれるやろか絢くん」
「あー……ちょっと待ってね、おれ今日財布が……」
「お駄賃は、屋台の美味しいもので手を打つから」
「よし、いこうか」
 即決する絢。勿論多少の小銭はあるようだけれど、甘えられるものは甘えてしまおうなんて笑って。
「そやねぇ…行く先は、て…あれ、どこかで見たお面やと思たら、あの時のお兄さんやない」
「ほんとだ。ヨーヨー屋……みたいだね」
「ほな、ご挨拶ついでにお邪魔してみましょ」
「うん。すみません」
「はいはい、ちょっと待ってね。……よし、どうぞ」
「こないだは、おおきに。二人分、お願いします」
 ひらひらと手を振った狐面の男。差し出された釣り針を握れば、二人は頷いて。
「青に橙に黄色…どのお色がええやろか?」
「おれは、うーん……橙にしようかな」
「ほしたら、うちはこの赤にしよ」
「それにしても、ヨーヨーは初めてだ。コツなんかはあるのかい?」
「コツ? こうやって……もつとこを出来るだけ短く…あら、残念もう一回」
「……あ、ほんとだ。取れたよ……あれ、蜻蛉?」
「うちも今取れましたよって。今日は調子悪かったんかもしれんね」
「ふふ、そっか? ……と、そろそろ休憩が終わりだ」
「そやね。ほな、そろそろ戻ろうか」
 連なる黒猫の影ふたつ。並び立てば、微笑ましい友人の貌。
 屋台についた二人。蜻蛉は列に並ぶ。絢は首を傾げながらも、蜻蛉が前に来るのを待った。緩やかに時が流れる。きらきらとした飴細工を眺めながら、蜻蛉は祭の様子を見、目を優しい三日月の形にゆがめた。
「久しぶりに……出逢うた時みたいに、飴をひとつこしらえてくれへん?」
「うん? いいよ。どんなものにしようか」
「せやねぇ、このお祭りと今の絢くんの心境と合わせたんが見てみたい。
 それからあともひとつは、今のうちの印象で作って貰えたら嬉しいわ」
「うん、わかった。少し待っていてくれ」
 飴を切り、飴を練り。
 そんな様子を微笑んで見守る蜻蛉。
 出来上がったのは、リボンが絡んだ綺麗な三日月。白い月と赤いリボンが飴として象られている。
「優しい心をもつきみだからね。月のように優しくて、儚い……そんな感じ」
 出来上がった飴を嬉しそうに受け取った蜻蛉は、立ち上がり尻尾を揺らす。
「お仕事の邪魔やし、そろそろお暇しますよって。付き合うてくれてありがとう、楽しかった」
「こちらこそ。ありがとう、蜻蛉。またね」
 手をひらり。きみとの再会の日を、待ち続ける。


「お祭り!」
 きらきら、光が、煌めいて。
(ひとも、あやかしも、楽しそうな雰囲気)
「わたくしも、とても、とても、楽しみになってきました! さあ、どこへ行きましょうか!」
 お面をつけて、ふわふわのわたあめを食べて。
 甘く溶けていく食感を、楽しみながらお祭りの中を歩く『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)。
 揃いの青い浴衣が目に入る。
(この前は『彼』と、りんご飴を食べたなあ)
 口の中に広がるリンゴ味。みるみる顔が赤くなる。つい買ってしまったけれど、あの日とは違う味がする。
 わたあめとりんご飴を抱えながら足を進めれば、視界に入るのは手持ち花火を楽しむ小さな子。
 『あの日』のことを思い出して、みるみる赤くなる顔を冷ますためにふるふる首を横に振って。
(いけない、いけない。ちゃんと、この想いは隠しておかなくては。わたくしのためにも、彼のためにも)
 ぱん、と頬を叩く。しっかりしなくては。
(またかき氷を食べに、いきましょう! この前食べたかき氷も、美味しかった、ですもの!)
 銀司とお雪は手を振って、少し多めにかき氷を伸せてくれた。急ぎすぎず、でも溶けないうちに食べて。
 狐面の男が笑みを浮かべながら釣り針をくれた。ヨーヨーを釣るのは少し難しかった。
 金魚すくいもあった。あまりうまくすくうことはできなかった。
(この世界でも、顔見知りが増えて。わたくしの世界が広がっている)
 くすぐったいような、嬉しいような。鼻の奥がつんとする。
(もっと、もっと、色んな事も人も知りたい)
 下駄が鳴る。視界にうつる世界は、もう見知らぬ世界などではなかった。

「そういえば、三日三晩続くそうですけれど花火は、いつ上がるのかしら?」
(最後か…それとも、気が向いた時、とか?)
 空を眺めるが、舞うのは桜の花弁だけ。
(絢様なら知っているかも)
 ぼんやりと歩くうちに、食べ物はなくなってしまった。ふらふらと歩いていけば、絢の屋台もすぐに見つかって。
「飴屋様、飴をひとつくださいな」
「あれ、ネーヴェ?」
「ふふ、今日はお仕事をしている絢様に、会いに来ました
 でも、もし、休憩のタイミングがあれば。一緒にお祭りを、回りませんか?
 まだまだ、沢山の屋台があるみたい、だから。絢様も知らないお店、あるかもしれない、ですよ!」
「うん、いいよ。じゃあそこで少し待っていて?」
 穏和に微笑んだ絢は頷いて。
 祭はまだまだ、終わりそうにない。

成否

成功

状態異常

なし

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