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シナリオ詳細

再現性東京2010:実験研究所内で輝く光

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 練達の希望ヶ浜を中心とした一地域で起きていた奇妙な事件。
 なんでも、野良飼い問わず、動物が姿を消すといった事案が多発していたのだ。
 広い範囲で起きていたこともあり、個々の事件はさほど大きく取りざたされてはいなかった。まして、ここは混沌ということもあり、行方不明となったりする事柄からは目を背ける者も少なくはなかった。
 しかしながら、主に練達で活動していた旅人男性、閃洞 光はこの状況に疑問を抱いていて。
「こんなに動物達がいなくなっているのに、放ってはおけないよ……!」
 行方不明になった動物達の行方が気になって仕方なかった彼は依頼者の要望もあって動物達の捜索から独自に始めていたのだが……。
 その過程で、光が行き当たったのは練達内にある実験施設。
 希望ヶ浜生体科学研究所……希生研とも略されるこの場所へと動物が運ばれているという情報を得た光は、早速潜入することに。
(……照明が落ちてる? 変だなぁ)
 内部は陽光も入らぬ構造となっているにも関わらず、照明がほとんど付いていない。昼間であっても内部は薄暗い。
 また、どこか感じさせる生臭さ。獣のものであるのは間違いないが、それに混じって感じる鉄臭さが異様に気になる。
 通路を進んでいく光は獣達の不安な声を耳にする。
 犬や猫、ウサギにリス、他にも、馬や牛、豚といった家畜、また、ライオンや虎などの猛獣の息遣いまで聞こえた。
「これ、全部行方不明になった動物達かな……?」
 檻へと閉じ込められた動物達へと近づくと、皆委縮してしまっている印象を抱かせる。猛獣達ですら丸くなっている状況に、光はただならぬ空気を感じていた。
 進む通路の先、光は床や壁へと大量にこびりついていたものに気付く。
「白衣……これ、人だ……!」
 所内の研究員と思われる者の死骸。もはや原型を留めてはおらず、肉塊となり果てていた。ただ、まだ若干の温かみが残っており、死後さほど経っていないことが窺えた。
 光は目を背けながらも、殺気を感じて物陰に隠れる。
 グアアアウウウウ……。
 のしのしと床を揺らして歩いてくるのは、蜘蛛の頭を持つゴリラ。
 それだけではない。別世界においては伝説の生き物とされるコカトリスや、大きく異形化した水棲生物が所内を闊歩している。
 すでに生き残っている所員はいない。ほとんどが人の形を留めていないか、石像とされてしまっていたようだ。
 幸い、他の動物達は檻に入っていたから難を逃れたようだが、それも時間の問題と言える。
「早く、動物達を助けなきゃ……!」
 だが、夜妖となり果てたあの獣達を相手に勝てるとは思えない。
 動物達を救助したいという逸る気持ちを抑えながらも、光は一旦研究所から脱出し、ローレットへと協力を仰ぐことにしたのだった。


 練達、希望ヶ浜へと駆けつけたローレットイレギュラーズ。
 そこに待っていたのは、金髪の少年だった。
「閃洞 光だよ。フラッシュって呼んでね!」
 明るく自己紹介する光は、ローレットに所属する日向 葵 (p3p000366)と元の世界からの知人だという。なんでも、プレイしていたサッカーにおいてチームメイトだったのだという。
 混沌へと召喚された光は現状、練達の希望ヶ浜に軸足を置いてランニングをしたり、ちょっとした事件解決に当たったりと活動している。
「最近、動物の行方不明事件が気になって、調べていたんだけど……」
 小さい頃から動物に囲まれて育った光は動物が大好きで、混沌に来てからは獣種という存在をして目を輝かせ、立派なケモナーとして覚醒したのだとか。
 それはそれとして、光はその調査によって動物がとある研究所に運び込まれたことを知って。
「希望ヶ浜生体科学研究所……希生研では元々、混沌における能力について研究していたそうなんだけど……」
 この世界では、動物ですら異能の力を持つことがある。それが元の世界に戻る為の一助となるかもしれないという考えから設立した組織だったらしい。
 しかしながら、徐々に所員達の研究は迷走していく。
 大きな成果を上げられず資金難に陥り、やがて動物達をさらうようになったのだとか……。
「少し潜入して確認したんだけど、さらわれた動物達を確認したよ。……それに所員達の死体も」
 研究が行きついた先は、魔物の合成。光は3体の獣を確認していた。なお、その情報は分かる範囲で彼はこの場のメンバーへとデータ提供している。
 異能の力を掛け合わせることで、新たな力の覚醒をと願った所員達は、悪性怪異:夜妖<ヨル>となり果てた獣達によって命を奪われることとなってしまう。
 事件が起こってまださほど時間は経っていない。夜妖達が檻の動物達を喰らう前に、討伐してしまいたいところだ。
「動物達の保護もちょっと大変だけれど、どうか力を貸してほしいんだ」
 懇願する光の熱意に思うことのあったイレギュラーズは了承し、まずは突入の為の作戦を立てようと話す。
「良かった。よろしく頼むよ!」
 前向きな返事をもらった光は笑顔を見せ、メンバー達へと握手を交わすのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 リクエストありがとうございます。練達のとある研究施設へと潜入した関係者がとんでもないものを目にしたそうです。
 彼に協力の上、この研究施設へと突入を願います。

●概要
 研究施設の実態の全容解明、並びに囚われた動物達の解放

●敵……悪性怪異:夜妖<ヨル>×3体
〇クモゴリラ
 全長3m程度。頭は蜘蛛で体は隆々と筋肉の発達したゴリラ。両腕に鉄をも切り裂く鋭く長い爪を備えております。
 肉弾戦を得意とする他、糸を吐いて相手の動きを縛り付けてきます。

〇コカトリス
 全長4m程度。
 頭と翼はニワトリ、下半身は蛇、その繋ぎ目にトカゲを思わせる生物が使われた合成獣。研究員が好奇心で合成したものと思われます。
 石化睨みにもう毒ブレス、鋭いくちばしや飛び掛かりといった攻撃を行います。

〇アクアティック
 全長2m程度。水棲生物の体を持つ魔物。
 大きな1対のヒレと尾びれ、大きく発達した顔は鋭い牙を持ち、突き出た角は鋭く、突進して相手を貫くことがあります。
 また、口から水ブレスを吐き出すこともあり、相手の呼吸を奪い、かつ態勢を乱してくるようです。

●NPC……閃洞 光
 日向 葵 (p3p000366)さんの関係者です。
 19歳、旅人の人間男性。かなり小柄で金髪少年といった見た目。
 ニックネームはフラッシュ。元の世界ではサッカーをしていました。
 戦闘においては長剣によるヒットアンドアウェイでの戦法を得意としております。

●状況
 練達のとある実験研究施設内に潜入した光さんの情報提供を元に、その研究施設へと突入することになります。
 内部には多数の動物が捕えられておりますが、夜妖は研究所内を闊歩しているようです。
 それに伴い、所内奥には研究員と思われる者達の遺体、石像などが散見されています。

●再現性東京(アデプト・トーキョー)とは
 練達には、再現性東京(アデプト・トーキョー)と呼ばれる地区がある。
 主に地球、日本地域出身の旅人や、彼らに興味を抱く者たちが作り上げた、練達内に存在する、日本の都市、『東京』を模した特殊地区。
 その内部は複数のエリアに分けられ、例えば古き良き昭和をモチーフとする『1970街』、高度成長とバブルの象徴たる『1980街』、次なる時代への道を模索し続ける『2000街』などが存在している。イレギュラーズは練達首脳からの要請で再現性東京内で起きるトラブル解決を請け負う事になった。

●夜妖<ヨル>
 都市伝説やモンスターの総称。
 科学文明の中に生きる再現性東京の住民達にとって存在してはいけないファンタジー生物。
 関わりたくないものです。
 完全な人型で無い旅人や種族は再現性東京『希望ヶ浜地区』では恐れられる程度に、この地区では『非日常』は許容されません。(ただし、非日常を認めないため変わったファッションだなと思われる程度に済みます)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 再現性東京2010:実験研究所内で輝く光完了
  • GM名なちゅい
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年08月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
※参加確定済み※
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
マヌカ(p3p001541)
闇払い
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

リプレイ


 練達、希望ヶ浜。
 イレギュラーズ一行がやってきたのは、やや不気味な印象を抱かせる研究所……希望ヶ浜生体科学研究所だった。
「希生研……元の世界への帰り道を探していた方達の成れの果て、ですか」
 空色と唐紅色のオッドアイを持つ『花盾』橋場・ステラ(p3p008617)はそれを外観から眺めて呟く。
「ふむ、異能についての研究か……元の世界へ戻りたいという願望、それ自体は責められるものでは無いな」
 フード付きの緑の衣装を纏う『闇払い』マヌカ(p3p001541)は動物を対象とした研究自体は方向性として必要なものだったのだろうと指摘する。
 もっとも、その動物を集める手段は正規の手段ではなかったことは問題だったのだが……。
「可能で有れば、浚われた動物達を家族のもとに帰してあげたいであるな」
 マヌカの意見は皆が思うところ。それは、今回の依頼者である閃洞 光の願いでもある。
「よぉフラッシュ、元気そうで何よりっス」
「久しぶり、キャプテン! 敢えて嬉しいよ」
 半吸血鬼の青年、『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)の挨拶もあり、今回の依頼者である閃洞 光は笑顔を見せる。
 2人は元の世界からの知人とあって、積もる話も多数あったようだが、話は後にする。
「早速ですが、内部の構造など伺ってもよろしいですか?」
 そこで、ステラが光へと尋ねる。
 入り口にあったという館内案内図を元に、メンバー達は奥の研究室や動物達の捕えられていた部屋などを確認。交戦に適した場所などの情報を共有する。
「……しかしまさか、動物攫いの裏で随分と恐ろしい事をしてたもんだ」
 話が一段落したところで、葵は改めて所員たちの所業に呆れを見せる。
「見事に道を踏み外して、マッドサイエンティストまっしぐらだったようですね」
 ステラが言う様に、暴走した所員達によって研究対象だった動物は夜妖となり果てて……。
「ひどい実験を繰り返した結果は所員の全滅。これも因果応報というものでしょうか」
 軍服姿の獣種青年、『挫けぬ軍狼』日車・迅(p3p007500)はまさにこの世の理を表しているようにも感じる。
 内部で野放しになった夜妖達はほぼキメラと化した見た目をしており、野生の本能をむき出しにしている。外に出たら騒ぎどころか事件となること必至だ。
「このまま放っておけば、被害は大きくなるばかり。……ここで始末をつけると致しましょう」
「そうだな。そいつらを片付けねぇと探索どころではない」
 任侠の世界に身を置いていたという『仁義桜紋』亘理 義弘(p3p000398)も夜妖の討伐は最低限必須であり、所員のいなくなった希生研の研究について調査を行う必要もあると持論を語る。
「オレ達できっちり片付けねぇとな」
「うん、よろしく頼むよ」
 迅の言葉に同調する葵と光は、がっしりと握手を交わし合うのである。


 本格的な突入に当たり、葵は仲間と話して施設内を封鎖する為に掃除屋と呼ばれる人を呼び、研究所の入り口の警備を行ってもらう。また、動物を保護する為の人手を確保するのが狙いだ。
 さて、改めて内部へと踏み込み、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は奥から漂う血生臭い空気をすぐに感じ取る。
「動物園……にしては嫌な雰囲気だ。痕跡を見るに、どうやら地獄になってるみたいだな」
 入り口近くでも、すでに廊下の向こうで赤いものが飛び散っているのが目に入る。
 先程、仲間達も話していたが、やることの多い依頼の中で、優先すべきは……。
「……まずは夜妖の討伐から始めよう」
「動物達は檻に居るのであれば、救助よりまずは安全確保からであるな」
 再確認するイズマに、マヌカも同意する。
 すでに、案内図によって動物達の居場所は割れている。後は夜妖を誘き寄せて撃破する形だ。
 ただ、所内の照明は機能していない為、多くのメンバーがスキルやアクセサリーによって暗視の力を働かせる。
 例えば、迅やステラはナイトゲイザーを点眼していたし、イズマは闇の住人スキルによって暗い所内で眼を光らせていた。
 外見から露出する腕や脚から鍛え上げているのが分かる『私の航海誌』ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)も蝙蝠の飴を舐めて視界を確保していて。
「夜妖は3体だったわよね?」
 メンバー達にそう確認をとり、ウィズィは鳥のファミリアー2羽を所内の別方向へと飛ばす。
「出来れば1体ずつ、コカトリスから接敵したいですね」
 ウィズィもそうだが、夜妖で皆が最も危険視しているのが相手を石にするというコカトリス。すでに、あちらこちらで石像となった所員の姿も垣間見える。もっとも、その石像もあちらこちらが崩れており、元には戻せそうにないが……。
 また、索敵には義弘の超聴力も頼りとする。夜妖の足跡、鳴き声。さらにマヌカがテスタメントによって補佐することで、遠くから聞こえる捕まった動物達の鳴き声まで彼は聞き分けていた。
「休憩スペースなら多少広そうだな」
 仲間と確認し合ったスペースに敵を誘き寄せるべく、マヌカが発光によって視界の確保に当たる。
 また、休憩スペースへの移動の間、ステラもハイセンスを働かせる。
 様々な音源や匂いが混じってはいるものの、夜妖がトラップを仕掛けていないかなど、彼女はチェックしてくれる。ちなみに、そうした罠は確認できなかった。
 また、夜妖の居場所を突き止めるのに、彼女は一役買ってくれる。義弘の超聴力に加え、迅がテスタメントによってステラを補佐してくれたことも大きい。
「アクアティックらしき存在を感じませんが、他2体はこちらに向かっていますね」
 幸い、状態を整えて相手を出迎えることができるのは大きい。
 敵の襲撃に備え、気を張る迅は戦闘態勢を維持する。一方、動物達を巻き込まずに済むそうだと安堵する光に葵が笑いかける。
「一人で戦わねぇでローレットに報告したのは、いい判断だったっス」
「あれは危険だって直感で分かったからね」
 苦笑する光は、もう少し力があればとも本音を漏らす。
 そこで、突如石となった壁が砕けた。
 ケエエエエエエッ!!
 壊れた壁の向こうから現れたのは、頭と翼はニワトリ、下半身は蛇、その繋ぎ目にトカゲを思わせる生物が使われたコカトリスだ。
「あれが夜妖か。複数の動物を繋ぎ合わせたのか?」
 もはや何を目指して合成したのか分からぬとしながらもイズマは放置できぬ存在だと直感で判断し、攻撃を開始するのである。


 奇怪な叫び声を上げる夜妖コカトリス。
 猛毒ブレスや鋭い爪やクチバシも脅威だが、そいつの視線は相手を石にするというから恐ろしい。
「コカトリスの石化怖いもんね! まぁ、そんなの会長が居ればなんとでもなるけど!」
 自称旅人、小物っぽさを感じさせる『羽衣教会会長』楊枝 茄子子(p3p008356)だが、回復で仲間をサポートできる。
 それだけに、彼女は後方に位置取り、全力で仲間達をカバーする構えだ。
 イレギュラーズ一行としては、厄介な相手から叩けるのは願った展開。
 しかしながら、突如、新たな巨躯の夜妖が休憩スペースへと躍りこんでくる。
 グアアアアアウウウウ……!
 頭が蜘蛛となったゴリラがドラミングして襲い掛かってくる。
 そのクモゴリラは、ゴリラとしての力を持ちながらも、吐いた糸で相手を捕縛する狡猾さも持ち合わせる夜妖だ。
 だが、ウィズィは構うことなく名乗りを上げて。
「さあ、Step on it!! 私が相手だ!」
 探索に向かわせていたファミリアーを見張りに立たせていたウィズィ。
 すでにクモゴリラの接近も察していた彼女は自らに勝利のルーンを刻み、神々の加護を得てコカトリスと纏めて相手の怒りを買う。
「うわ、クモゴリラ気持ち悪っ!ㅤこっちこないで!!」
 全長3mに顔が蜘蛛という見た目は、さすがに茄子子でなくとも全力で接近を拒否したくなるだろう。しかも、相手は糸を吐いて捕縛し、かぶりつこうとしてくるのだから。
「前衛の人がんばってー!!」
 声援を送る茄子子の呼び掛けもあり、屈強な肉体を持つウィズィが巨体の敵2体を押し留める。
 それもあって、茄子子はゴリラも糸も、コカトリスの糸も全部会長が何とかするよと意気込むのだが。
「会長が石化したら、ステラくん頼んだよ……!」
「ウィズィお姉ちゃん、頑張ってください!」
 ステラもそんな彼女に声援を送りながらも、自身の役割を果たすべくコカトリスへと向かっていく。
 ともあれ、クモゴリラがどんなに暴れようとも、コカトリスに比べれば対処はしやすい。
 それもあって、皆全力でコカトリスに攻撃を行う。
 素早くコカトリスへと切りかかる葵に合わせ、光も長剣を握って斬撃を見舞い、すぐさま距離をとる。
「無理はするなよ」
「分かってる!」
 光も引き際は心得ているようで、葵もある程度安心して戦うことができていた。

 戦いが続く中、マヌカは敵を弱体化すべく光の弾丸を放つ。
「私自身は非力だが、仲間が最大限の力を発揮できるよう支援もできるのだよ」
 とりわけ、コカトリスの動きを制すれば、それだけで前線メンバーが楽になると、マヌカは光を発していく。
 イズマもまた敵の動きを鈍らせようと攻撃を行う。
 近距離戦に挑む仲間もいたことから、イズマは仲間が距離をとったタイミングを見計らい、敵陣へと激しいビートを響かせてその体を内部から揺らがす。
 そういえばと、イズマはクモゴリラもコカトリスも頭部から厄介な攻撃してくるのに気づいて。
(今回の夜妖は頭部から異常攻撃をしてくるんだな)
 持ち前のモンスター知識もあり、イズマは敵の頭部へと黒い大顎を食らいつかせる。
 コカトリスの動きが鈍れば、義弘も詮議の拳を叩き付け、コカトリスを攻め立てる。
 ただ、彼はまだこの場にいないアクアティックの乱入を注意していて。
(水場は水道くらいだが、現れるなら壁か、天井か、それとも……)
 水路と考えた義弘は物音を感じ取り、同じく放っていたネズミの反応もあってステラに気付いて床を見下ろす。
 グガアアアアッ!!
 両ビレと尾ビレが発達した水棲生物アクアティック。
 そいつは早速突進しようとしてきたが、ウィズィがしっかりと抑えて見せる。
「お姉ちゃん!」
 さすがに夜妖3体は負担が大きすぎると判断し、ステラは部屋の中に砂嵐を巻き起こし、夜妖のみ足止めする。
 風に煽られるコカトリスを、迅が頭上へと拳で打ち上げる。
 集中し、渾身の力を籠めた迅の一撃。
 クケエェェェ……。
 奇怪な呻き声を上げたコカトリスは、床へと叩き付けられ、そのままがっくりとうなだれて事切れたのだった。

 グアウウウウ!!
 グアアアア!!
 クモゴリラとアクアティックは今なお暴れ続け、研究所内の休憩スペースはもはや壁も床も、机も椅子も破壊されてくつろげる状況ではなくなっていた。
 ウィズィは敢えて残っていた壁を背にし、2体の攻撃を受け続ける。
 これは、敵……とりわけアクアティックの体当たりを懸念し、吹っ飛ばされて仲間の陣形が乱されないようにと配慮していたのだ。
「会長のご加護だよ! それっ!」
 茄子子はウィズィが倒れぬようにと福音をもたらし続ける。能率を高めた彼女に気力切れは存在しない。彼女は思うままに仲間を癒やし、戦線を支えていた。
 ただ、夜妖が突如思いもしない攻撃を繰り出す可能性すらある。
 ステラはウィズィが持っている間に、弱ってきていたクモゴリラへと痛烈な一撃を叩き込む。
 全身の筋肉が発達するゴリラはタフネスを見せつけていたが、義弘はそいつの体へと掌打を叩き込む。
 次の瞬間、義弘は流し込んだ気によってそいつを体内から破壊する。
 グアオオオオオ!!
 口から血を吐き出し、クモゴリラは大きな音を立ててその身を床に横たえていった。
 残るアクアティックは口から水を飛ばし、あちらこちらへと突っ込んでくる。
 ただ、残りがこいつだけとなれば、イレギュラーズに油断はない。
 淡々とマヌカが光の弾丸を打ち込んで敵の動きを鈍らせ、イズマが相手の頭上から黒い顎を食らいつかせる。
 じたばたと暴れるアクアティックは無茶苦茶に水鉄砲を飛ばして応戦してくるが、迅がまたも敵を打ち上げて拳を抉りこんでいく。
 地面へと落下したアクアティックがじたばたともがく間に、上手く立ち回って敵の接近を避けていた茄子子が葵へと福音をもたらす。
 敵の尾ビレへと斬撃を刻む光が飛びのきながらも全身を輝かす葵へと視線を巡らすと、葵も分かったと言わんばかりに暴れて近づいてくるアクアティック目掛けて加速する。
 スピードを破壊力へと転化し、撃ち込んだ強烈な一撃。
 グアアアアアアアアァァァ……。
 アクアティックはぐるぐると目を回し、舌を垂らして果ててしまったのだった。


 夜妖を全て討伐しても、イレギュラーズの仕事は終わらない。
 葵は光にガイドさせ、動物達の捕まる檻の方へと急ぐ。
「皆さん、助けに来ました」
 迅が動物疎通によって、興奮する動物達を落ち着かせようとする。
 とはいえ、興奮して檻に体当たりなどして自傷していた動物がいたことに茄子子は気づいて。
「治してあげるから大人しくしてね!」
 再現性東京でペットとされている愛玩動物だけでなく、家畜や猛獣とされるような動物もいたが、茄子子は1体ずつ福音をもたらして怪我を塞いでいく。
「もう大丈夫ですよ、邪魔な奴は倒しましたから」
 ウィズィもまた動物疎通で動物達へと語り掛ける。
「すぐにここから出たいでしょうけど、皆をいきなり街に解き放つわけにはいかないんです……」
 併せて調教スキルで動物達をなだめ、彼女は丁寧に状況を説明し、必ず元居た場所へと返すことを約束し、もう少しだけ待つよう頼んでいた。
 先程までの夜妖の殺気が無くなっていたことも大きく、多くの動物はウィズィに従ってくれていたようだ。
 ステラも動物達へと呼び掛けていたが、ある程度動物が落ち着いたところで施設の探索に移る。
「表立って出来る研究ではない筈、隠し研究施設があるかもしれません」
 捜索を始めるステラよりも早く、メンバー達は希望ヶ浜生体科学研究所内を隈なく捜索する。
 すでに義弘が所内の案内図と合わせてマッピングを行っていたが、怪しげな余白部分からステラが地下室を発見し、そこには培養液に入れられた動物や研究資料が書類、データとして残されていた。
 イズマがそれらに目を通そうとするが、さすがに分量が多い。
 マヌカもできる範囲で資料を漁っていたが、目に見える成果がなかったというのが印象的だ。
「新たな力を得る為……か」
「能力分析を行う間に、それを試してみたくなったようだな」
 マヌカ、イズマは所員達が様々な力に興味を示し、それを自分達にも転化できる方法も探っていたことを察する。
「ともかく、こいつはローレットに預けるとしよう」
 もはや、希生研の研究を継ぐ者はいない。義弘は目につく資料を集めて持ち出しの為に纏め始める。
「……合成した生物は大抵、機能が歪んで短命になるし、生殖もできずその代で終わる」
 所員達に、生命の理解も、覚悟も足りなかった結果だろうかとイズマはこの惨状について考察する。
「……人間がこんなことをして、悪かったな」
 檻のある部屋へと戻ったイズマは、動物達にそう謝罪せずにいられない。
 すでに、動物達の相手をしていた迅や茄子子らがカギを開き、動物達を解放していて。
「会長戦闘とかより、こういうののほうが得意だからね!」
 茄子子はこれからしばらくかかる飼い主探しに意欲を見せる。
 義弘は猛獣について懸念していたが、それらはさすがに檻ごと運ぶことにしていたようだ。
 作業を進め、ある程度資料や動物達の運び出しが一段落したところで、葵が一息つく。
「……流石に、ああいう系はフラッシュの中では無しなんだな」
 葵が徐に告げたのは、夜妖となった存在のこと。
 少し考えた光はこう話す。
「ちょっと、傷がうずいたんだ」
 先程、直感で分かったと告げた葵。
 その古傷は飼い犬に引っ掛かれたものだったのだが、望まぬ体とされた夜妖達の怒りを光は感じたのだという。
「やっぱり、世の中にはやったらいけないことってあるんだよ」
「……そうか」
 自らの考えを告げる光に、思わず赤くなった左目を手で覆う葵。
 望まぬ体とされた夜妖らの怒り。
 葵はそれを肌で感じながらも、その研究所を後にしていくのだった。

成否

成功

MVP

橋場・ステラ(p3p008617)
夜を裂く星

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは探索と戦闘の両パートで活躍を見せた貴方へ。
 今回はリクエスト、並びにご参加、ありがとうございました!

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