シナリオ詳細
もふもふグラビティ~~!
オープニング
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ソレは深緑――否、R.O.O世界における翡翠の国に突如として現れた。
木々を遥かに超え、むしろなぎ倒さんとするばかりの勢いをもってして。
その影は天より降り注ぐ陽光を遮り大きな影すら生み出さん――それは――
「きゅー」
――とても可愛らしいウサギの形をしていた。
「むぅ、アレはフォレスト・ドワーフ!!」
「知ってるんですか隊長!?」
「うむ。フォレスト・ドワーフは迷宮森林に生息するウサギの一種でな……大変可愛らしいその外見から人気が高く、愛好家も非常に多いぐらいだ――まぁ本来は一般的なウサギと変わらないぐらいの大きさで、あんなにデカくはないのだが」
同時。そのウサギ達の様子をまじまじと見据えているのは迷宮森林警備隊の一隊だ。
フォレスト・ドワーフ。それは今先程隊長格の人物が説明したように『本来ならば』可愛がられているウサギの一種である……が。今彼らの目の前にいるそのウサギ達の大きさは尋常ならざる領域に到達していた。なにせ人間どころか木々すら軽く超えているのだから。
可愛らしい外見はそのままだが、これだけデカいとまずい。
歩くだけで下手をすれば木々をなぎ倒す程だ。万一にもこれが街などの方へ向かえばどうなる事か……彼らが可愛がられている理由はあくまでも愛玩動物であるからだという事は重大な要素である。
――いきなりどうして彼らがこのようなサイズになったか原因は分からない。
が、とにかくせめて彼らが街に向かわないように気を引かねば……!
「よし行くぞ皆の衆! フォレスト・ドワーフは人懐っこい習性をもつ種族だ……
彼らの目の前に出れば注意を引くことも容易い筈!
とにかく西へ! 西の方にすこし開けた空間があった筈だ、そこへ誘導するぞ!」
「了解です隊長――って、うわいつの間にか彼らが近くに、ぐああああ!」
「ああ! ジョーン!!」
故に迷宮森林警備隊が動き出そうとした――矢先。
超巨大ウサギが先に警備隊を視認してしまった。
大好きな『人達』だと彼らが認識してしまえば、遊んで欲しい欲求が全開に。
――突撃。それは彼らからすればじゃれる様な程度の感覚であったのだ、が。
「わああああああ!! た、隊長助けてください! 毛に包まれて身動きが……
ああ~~~もっふもふで動けない~~~!!」
「バカものー! もふもふを堪能していて誘導が果たせるか!! 早く脱出して誘導に戻るんだ――いやていうか割と本気で早く脱出しろ! でないと下手をすると押しつぶされ……!」
超巨大質量がぶつかって来れば必ずしも可愛いだけとはならない。
激しい衝撃が意識を刈り取らんとするだろう。
彼らの愛くるしい毛の感触が別の意味で意識を刈り取ってきたりもするかもしれない。
そして万一下敷きになってしまえば――押し潰されてしまうのが道理だ。
「しかし隊長!! こんなもふもふ、もう一度味わえる機会があるかと思うと……
クソ、だめだ! 俺もあのもふもふに包まれてきます!! うおおお翡翠万歳!!」
「バカー! お前ら警備隊としての職務を……くそ、ずるいぞお前達! 私も混ぜろ!!」
それでも不思議と抗えぬ魅力があるのか次々と犠牲になっていく警備隊……
大好きな人間に遊んでもらえてご満悦のフォレスト・ドワーフ達――
ああしかし、彼らの思考は『もっともっと』と欲が深くなっていくのであった……
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「たすけてー! 助けてほしいですぞ――!!
超巨大ウサギがこっちに向かってきてるんですぞ――!!」
慌てた様子で助けを求めるのは愛の妖精などとのたまうザントマンだ。現実の世界では滅びのアーク側の存在として多くに悪意を振りまいた奴めもR.O.Oの世界では只の、翡翠に出現する妖精の一つにしか過ぎない存在。
まぁザントマンの事はともあれ――奴が貴方達に持ち込んできた話は件のウサギに関する事であった。
超巨大なウサギとして何故か突然出現したフォレスト・ドワーフ。
迷宮森林警備隊を(もふもふで)粉砕し、少しずつ街の方へ向かってきているのだとか。彼らの巨大な身体が街へと入ればどれ程の被害が出るか分かったものではない。流石に笑い話にもならないだろう、と。
「ですので皆さんにお願いしたいのです! 奴らを西の方へ誘導を……! 西に少し向かうと、木々のない開けた原っぱの様な場所があるのです! そこまで誘導出来ればこっちに向かってくることは無いと思われるので、よろしくお願いしたいですぞ!」
「うーん、しかしソレって……こう言ってはなんだけど命を奪うとかは無しな訳?」
「どうにも彼ら自体に悪意はないようなので……フォレスト・ドワーフには愛好家も多いですからな。命を奪う様な事になれば色んな所から抗議が来るかもしれないので……」
だからこそあくまでして欲しいのは『誘導』だけなのだ、と。
西の方へ誘導を果たせば彼らが存分に遊んでも問題ないスペースのある場所がある。そこで彼らを保護し、なぜ巨大になってしまったのか調査もゆっくり行うのだそうだ――まぁ突然巨大になった理由は恐らくR.O.O世界に蔓延している『バグ』の所為だろうが。
ともあれこれもR.O.O側に発生したクエストの様なモノであれば、R.O.Oの調査を依頼で頼まれているイレギュラーズの出番でもある。
フォレスト・ドワーフ――可愛らしいウサギの外見とモフモフで魅了してくる難敵――!
「あっ。警備隊はもふもふに魅了されて壊滅してるみたいですぞ。
まさかとは思いますが皆さんはもふもふに負けたりしないですぞ?
…………しないですぞ?」
ザントマンがこっち見てくる。
もふもふの魔力に抗えるかどうかは、さてとりあえず見てからかな……!
- もふもふグラビティ~~!完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年08月30日 23時57分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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きゅー! きゅー!
眼前。少し離れた所からでも目立つ大きさのウサギ達がいた。
見ているだけならやっぱり可愛らしい――が。
「こんなにでっかい兎は初めてだよなー。用意した白菜が小さく見えるぜ。
うーん、もっと持ってきた方が良かったか?」
「もふもふもすごいのです。アマトはしっぽくらいしか、もふもふしてないうさぎなのですが、あんなにもふもふしたら楽しいでしょうね。もふもふ」
しかし今からアレをどうにかせねばならぬのだと『絶対妹黙示録』ルージュ(p3x009532)と『うさぎははねる』アマト(p3x009185)は見据えている。ルージュはウサギ達を引き寄せる為の大きめの白菜を竹籠に入れて、アマトも同様に大量の野菜を用意するものだ――
とにかく広場まで誘導する為。あのウサギ達のサイズからすれば、ルージュの言う通りコレでも小さいかもしれないが……
「しかしとにかく現状用意できるモノでやるしかないだろうな――
急がなければあのもふもふ達が街へと辿り着いてしまう」
『エーレン・キリエのアバター』霧江詠蓮(p3x009844)の言う通り動かねばならぬのであればやむなし、だ。
巨大なるもふもふよ。普段であればそのもふもふに己はやられていたかもしれない……
「だが、今の俺は菩薩の様な平常心でこの任務に挑むことが出来るぞ……」
何故ならば偶然練達のうさカフェに入り浸ってふかふかもふもふに埋もれてきてたからッ――! あのもふもふ達はそれはもうもふもふで、もふもふしてて、もふもふのもふもふだった……店員の視線がなんか滅茶苦茶痛かった気がするが、しかし半年もふもふエネルギーを注入できた以上なんの後悔もない――ないったらないッ!
――ま、まぁとにかく行動開始である!
小さく飛び跳ねるウサギさの前へ往くアマト達。
その手に抱かれしは先程用意した野菜の数々だ――
「うさぎさん、こっち、こっちです。
おいしいおやつもありますよ~さぁ、一緒に遊びましょう~!」
故にアマトが手を振ってアピール。うさぎぴょんぴょん、跳ねてぴょんぴょん。
同じくウサギたるアマトの跳ね方は彼らにとっても馴染み深い跳躍である為か――自然と彼らの目が向くものだ。さすればおみみぴこぴこ動かして進行方向へと彼らを誘おう。
それに彼女はおやつも出せるのだ。ふふふ……まぁあのサイズの者が願う大きさのおやつが出てくるか定かではないが……しかし、いずれにせようまくついてきてくれるといいなと心の底から願いながら――
「おおーいうさぎたち、おやつが欲しくはないか! 俺たちと遊んでくれたらおやつがあるぞ! そうだこっちだこっち、いい子だな……うわちょっと待て一歩一歩が凄い歩幅だ!! 待て待て早い早い早い!」
同様に霧江詠蓮もウサギら相手に立ち回る――
木の幹を蹴り、なるべく目立つようにと。見事な体捌きと共に行動を開始……と思っていればいきなり緊急事態。
なんとウサギ達がめっちゃ容易く誘導された代わりに突進してきた! 巨大なる身である彼らの一歩は大きく、凄まじい勢いで霧江詠蓮達との距離を詰めてくる――! きゅ~♪
「わわ、やべーなこれ! だけど、野菜だけ用意して終わりって訳じゃないぜー!」
あわや踏みつぶされんとするアマトと霧江詠蓮――が。
そこに介入したのがルージュである――彼女の放つ愛の力が皆を包むのだ。
重要なのはその対象。包んだ先は味方だけではない。
ウサギ達も、だ。さすれば己が干渉を受けた事にウサギ達は気付いて。
「きゅ~♪」
「はっはっは。よしよし、これは痛みを与える様なヤツじゃないもんな。
多分もふもふが撫でられたぐらいに感じたんじゃねーかな?
という訳でそーら野菜だぞー! あ、近、うわ」
ルージュに懐くウサギ達。無事陽動には成功したと思った瞬間、眼前にあったのは――視界を埋め尽くさんぐらいのもふもふの塊であったとか。
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『――どんなに可愛くったって、兎のもふもふなんかには負けねーぜ!!』
第一陣出発前。親指をグッと立てて凄い良い笑顔を見せていたルージュがもふもふに揉まれている――! くぅ。覚悟を決めた者ですら飲み込むほどのもふもふだと言うのか、あのもふもふは……! 脱出するんだルージュ! あ、何を毛皮に包まれて極楽の表情をしてるんだ! 駄目だぞ負けたら! ルージュ、ルージュ――!!
「なんてウサギだ……やれやれ、でも野菜でなんとか誘導できそうなのは幸いかな……」
「それにしても、依頼内容はとても良いのですが依頼人が不適切、では?
R.O.O世界の住人とは、分かっていますけれど……」
誘導第一陣組が壊滅しそうな状況。しかし元より一発で誘導成功、終了! などと楽観していなかったイレギュラーズ達は第二陣を用意していた――それが『囲 飛呂のアバター』ヒロ(p3x010030)と『魔法人形使い』ハルツフィーネ(p3x001701)の二人である。
しかし依頼人の愛の妖精(ザントマン)を思い浮かべる度に、ハルツフィーネは心のどこかが、なんか、こう……引っかかってしまう。まぁ依頼内容はカワイイからいいか。
とにかくウサギをもふ……ではなく、翡翠の人たちだけあんなのを占有してずる……でもなく
「…………ええと。とにかく、いい感じにうさぎさんを、あれしてあれしましょう」
欲望駄々洩れ! ともあれB班たる二人はウサギ達が再び街の方を向いたりする前に誘導を引き継ぐものだ――元々少し離れた所に待機して後ろからこっそりと付いてきていた次第。いざ介入するとなればそれはスムーズだった。
特に神聖なるクマさんの加護ありしハルツフィーネの俊敏性は尋常ではなく。
すぐに戯れるウサギさんたちの目の前に辿り着けば――
「うさぎさん、ええと、こちらですよ。キャベツはどうですか?
一玉だけでなく、あっちの広場にはもっと、ありますよ?
さぁクマさんと一緒にいきましょう」
「ニンジンにキャベツまるまる持って来たぜ。ほら、御代わりもあるぞ」
巨大なもふもふ達に戯れ……違う。巨大なもふもふ達へと野菜投擲。
彼らの口に入る様に――巨大な身であれば口元も高い所にあるものだが、ヒロは空を蹴りて天を翔る様に移動すればさほど問題ではなく。ハルツフィーネも同様に天使の翼を宿すクマさんに運んでもらって飛翔する――空を飛ぶクマってなんだろう……!
「きゅーきゅー!」
「ああ、可愛い……やはり野菜が、好物なのでしょうね。勢いよく食べています」
同時。ハルツフィーネはもふもふが動く様に心が穏やかに……なりすぎて気が緩む前に頭を振って更なる行動を。クマさんの爪を顕現させ――彼らをぺしぺしとするのだ。
これで気を引くなり飛ばすことが出来ればと――
ああしかし必死に野菜を求めてもりもり食べる様。なんていう可愛らしさなのか……
「……神よ、感謝します。
このような子達の前に行ける機会を到来させて頂きました事に……」
「ははは――だけど流石に至近だとシャレにならないな。
うっかり俺らごと喰われそうだぜ……!」
思わず天に感謝するハルツフィーネ。だが同時、誘導していたヒロが気付く――ウサギ達が見る見るうちに距離を詰めてきている事に。『その手に持ってるお野菜ちょうだーい! ちょうだーい!』とばかりに目を輝かせて大ジャンプ。
――通常のウサギであれば手渡しも十分可能なれど。
こんな巨大ウサギが手元にある野菜を食そうなどとしたら――
「うわ、しまった逃げきれな……あっ、もふも……いや重ッ!!
あ、あー! まずいまずいまずい! これ逃げれるか、行けるか!!?」
ヒロごと呑み込んでしまうか、或いはジャンプした際に踏みつぶしてしまうものだ。
下手すればその重さだけで全ての体力を持っていかれない勢い――でももふもふ気持ちいい――いやまずいって! 動かないと死ぬって!! あ、あ、あ――っ!!
「ふふ――なるほど。流石あの可愛らしさに気が緩んでしまうのは仕方ない事ね」
が! イレギュラーズ達は万が一に備えて第三陣まで控えているのだ――!
その内の一人が『きらめくおねえさん』タント(p3x006204)である。遠くからみてもふわふわで柔らかそうで暖かそうで……駄目です脳裏からウサギを離して! 脳がもふもふに屈してしまう!
「はっ! いけない、今想像しただけで屈しそうに……
でも負けないっ、わたくしには秘策があるんだから!
さぁ行くわよ――ねこ! いぬ! もにょす!」
頬を叩いて気合を入れ。もふもふの誘惑に抗うべくの対応策が――こちら!
ウサギにも負けず劣らず可愛いペット+ぬいぐるみで可愛さ耐性を付けるのだ――!
この子は誰にも人気! やっぱり猫が一番だよ、ニャー!
主人への忠誠なら誰にも負けない! やっぱり犬が一番だよ、ワンッ!
そしてもにょす! やっぱりR.O.Oならもにょすが一番…………もにょす?
「……何だかこの子だけはよく分からないけれど、ペットったらペットよぉ!
わたくしにはこの子達がいるからウサギには負けないわぁ!
ねー! 浮気はしないわよ私はー! アイタタ、引っ掻かないで!」
「ひゅー! あっちもタントの腕の中も、もふもふ天国じゃねぇかー!! ここは夢かー!? ……ある意味マジで夢っちゃ夢だが、まぁ細けぇ事はいいか!!」
タントの腕の中で引っ掻く様子を見せる猫と、喉をやたら舐めてくる犬と頭の上に伸びてくるもにょす。そして彼方にはもふもふの化身たるウサギ――正に極楽は此処にあったのだと『回し車大好き』ハーヴェイ(p3x006562)はテンションマックスである。ここに回し車があったなら燃え尽きる程に回していた所だろう……
「対策は出来る限りの事はした……あとはモフとモフのぶつかり合いよ……
負けねぇぜ! めろめろにされちまう前に――原っぱまで競争だ!
俺もモフモフ! お前もモフモフ! さあ共に戯れようぞ!」
代わりに魂が燃え上がる。
負けられぬ戦いが此処にあるのだとハーヴェイは往くものだ――!
A班は態勢立て直し中であり、B班は体力が限界寸前段階。ここでC班である己らが繋ぐのだと――! やっぱりウサギ達に敵対心がないからか、ここまで幸いにして誘導自体は上手く行っているのだ。
あともう少し。C班が上手く時を稼げればまたA班も復帰するだろうから。
「さぁ、おいで! 広場までもう少しだよ――あっ、進行ルートをズレようとしてる!」
瞬間。ルートを逸れようとしている子がいるのに気づいたのは『アルコ空団“路を聴く者”』アズハ(p3x009471)だ。彼の耳に捉えられしは、蝶々でもいて気が他に向いてしまったのだろうか――別方向へ歩こうとしているウサギ! なんでそんな小さいのに気づくの!
「マジかー! 俺この子なんとかするので手一杯だぜー! ほら、あっちだぜあっち!」
「くぅ――やむを得ないね。なんとかしてみよう!」
もふもふウサギの頭の上に登って『あっち行って、あっち』とぺちぺち叩いて誘導を繰り返しているハーヴェイの手は空いていない。タントも別のウサギに追いかけられていてギリギリ距離が遠い――故に『痛かったらゴメンね』とアズハ前置きして。
放つ一撃はウサギの注意をこちらへと。
「きゅ~♪」
「うわ、わ、と!」
さすれば方向転換。アズハの方へと突進を仕掛けてくるものだ。
幸いというべきなのか、もふもふの圧倒的な体毛によって攻撃による傷はほとんどない――ルージュが行ったように恐らく撫でられた程度にしか感じていないのではなかろうか。故にウサギは無邪気に突っ込んできて。
「ふふ、こうして一か所にまた集まってくれれば――こっちのものよねぇ!」
そうして二度距離を離す事はしまいとタントが煌めかせる。
それは己より発されし光。それが各所に召喚・浮遊させる手鏡により乱反射。
――これにより己に注意を向けさせるのだ。
数多の煌めきがウサギ達の目を向けさせ、そして一定の範囲であれば届かせるも容易――その上で鈴の音も鳴らせば『耳』においても彼らの注意を向ける事に成功するものだ。
「いいぞー! このまま広場までGOだぜGO!!
頼むぜマイフレンド。信じてるぜマイフレンド! 揺らすなよマイフレンド!
マイフレンド――!! 落とすなよ――!!?」
「きゅ~♪」
さすれば仕上げのラストスパートだとハーヴェイはウサギに前進の指示を出すものだ――遊んでもらってると勘違いしているのかめっちゃ跳ねてハーヴェイの体が吹っ飛びそうだ。
しかし何はともあれもうすぐ広場。
あそこまで行くことが出来れば依頼は達成である――故に。
「もうすこしです! もふもふに、負けないように、頑張りましょう!
わーわわわ! だめです! もうちょっとだから、もふもふに負けては、いけません!」
「いえ、勘違いしないでください――私はすぐにでも抜け出したいのですが、何分動けないもので。困りましたね。これはもういっそのこと諦めてもふもふに屈服するしかないのではないでしょうか」
復帰し始めているイレギュラーズ達も総力でウサギの誘導だ!
……けど追いつかれて以降、ハルツフィーネはもふもふに身も心も捕まってしまっている。違うんです。これは、毛が絡まって、いやホント動けないだけで……でもアマトが必死に励ましてくるし味方の視線が痛いからそろそろ立ち上がろうか……
「くぅ、しかしあのもふもふは本当に脅威だ……どうにか出来ないものか……!」
「うらー! そんな時の事前対策、俺をモフれ――!! うらうらうら――!」
同様にヒロももふもふの魅力に必死に抗っていた――ッ! しかし見れば見る程近づけば近づく程に、もふもふに負けたい欲求が湧き出てくるッ! 故に身を呈すのがハーヴェイだ。
炎なんて気にするんじゃないぜー! 気合でモフるんだぜオラー!
「……いや燃えてるけどモフれるのかコレ。大丈夫なのかコレ、あ。柔らかい……」
「え、本当に? ちょっと練達うさカフェとの比較を……」
さすればもふもふにとうの昔から負けてた霧江詠蓮も加わって、あーハーヴェイもめっちゃモフられてる~!
「うう。駄目だ、眼で見ちゃだめだ! くそ、あと少し、あと少しなんだから――!」
「そうなんだぜ! こんなもふもふ気合で耐え……あ、ダメだぜ後は任せたぜっ!!」
「ルージュさ――ん!!」
なんだかそんなこんなしてたらルージュを始めとして半分ぐらい壊滅し始めているイレギュラーズ陣営だが、しかしアズハは未だ耐えていた! 全滅しては誰がウサギ達を誘導するというのだ――! 本音を言うと今すぐにでも屈したいけれど、あと少し辛抱――!
目で見ない・触らない・仲間はなんとか救助する。
走って誘導して野菜投げて引き寄せて撫でて屈して負けて表情至福。
そんなループを繰り返せど、ようやく、ようやく本当に広場に辿り着いて!
「うふふ、捕まえられるものなら捕まえてごらんなさぁい! あっ――」
そして大きく手を広げて迎え入れる様にタントがウサギ達へと向け、ば。
構ってくれる大好きなタントお姉さんに――ウサギが大ジャンプ!
さすれば大きな影がタントの上空を覆った直後、凄いのが落下してきて衝撃波が発生した。
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『クエストクリア!』の文字がどこかに表示された気がするイレギュラーズ。
――だがそんなことはどうでも良かった。そんな事よりもふもふだ!!
「ああ……これだよなぁこれこれ……これが至福の一時ってやつだよ……」
ついに移動を気にしなくて良くなったはヒロはウサギの背中で安らかになっていた。
リアルのもふもふも素晴らしいが、R.O.Oのもふもふも素晴らしい――
そう感じているのは彼だけでない様だ。
「さ。おやつを改めてあげようかね――よーし腹一杯になったら遊ぶか。
どうする? 追いかけっこ……はさっきまでしたから別のがいいよな」
「そうだぜ後は時間まで遊ぶぜー! 行くぜマイフレンド!」
「きゅ~♪」
霧江詠蓮とハーヴェイもまた、辿り着いた原っぱでウサギ達と戯れて。
「うさぎさん、うさぎさん。ぎゅってして良いですか? ぎゅー。
はわ……アマトも、これがずっとしたかったのです……!」
「一度やってみたかったのよね――空からのダイビングもふーん! え、猫とか……? それはそれ、これはこれよぉ!」
「ああ……これは、一生ここに……住めるのでは……?」
更にアマトがウサギの足元で思いっきり抱擁し、タントは空より舞うように彼らの背中へと――さすればタント着陸地点の近くではハルツフィーネが再び毛に囚われて極楽に包まれていた。
陽光降り注ぎ、そしてウサギ自身の温かな体温もあれば実に心地の良い温度であるのだ。
やがてウサギ達も眠くなってきたのか、うとうと瞼を閉じ始めて……
「きゅー……」
「ああ……お前たちも眠くなっちゃったんだぜ……?
それじゃ皆で……お昼寝タイムだぜ……もふもふ……これには抗え……な……」
さすれば敗北を認めたルージュが毛皮をお布団代わりに。
――成程。これは迷宮森林警備隊も壊滅してしまう訳である。
その意味をじっくりとその身で味わうものだ――
さすればイレギュラーズ達の帰路は、夕方頃になってしまったとか……
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
きゅ~! きゅきゅきゅ~♪
お疲れさまでしたイレギュラーズ! ウサギ達は最終的に皆さんと名残惜しそうにしながら別れたようです……
また彼らとはどこかで会える事を願って。MVPは仲間を励ましぴょんぴょん頑張った貴方へ。
ありがとうございました!
GMコメント
ウサギはかわいい! 以下詳細です!
●依頼達成条件
超巨大ウサギ『フォレスト・ドワーフ』を西の広場に誘導する事。
また、ウサギを殺害しない事。
●フィールド
R.O.O世界における『翡翠』の国にある迷宮森林です。
時刻は昼。周囲は木々に囲まれています――その一角に後述するフォレスト・ドワーフ達がいますので、接触し、どうにか気を引いて少し離れた西の方にある広場に誘導してください。彼らが近くの街に到達してしまうと恐らく大惨事になります!
周囲には特に他に魔物の類の気配は無いようですので、横やりなどを心配する必要はないでしょう。
●フォレスト・ドワーフ×3体
一言で言うと『超巨大なウサギ』です。全部で三体います。
本来であれば翡翠に生息する一般的なウサギのサイズと変わらない筈なのですが……どういう訳か彼らは最早木々を遥かに超えるサイズを有しており、ひたすら巨大になっています。これだけデカいと最早可愛いだけとは言えません。
人懐っこい性質はそのままに、だからこそ人を見かけるとじゃれてほしくて突撃してきたりします。が! これだけ巨大なサイズが突撃してくればそれだけである程度以上の威力があります! 圧し潰される・踏みつぶされる可能性もゼロではありません。
あと、全身の体毛は柔らかいらしく、ふわふわもこもこな様子が伺えます。
…………なんだかとっても触りたくなるような不思議な魅力があるかもしれません。
でもダメですよ? 触ってたらその内、絡みつかれて動けなくなっちゃうかもしれないですからね? ダメですよ? もふもふの魅力に負けるなんてそんなうわー!
あっ。超巨大なのでちょっとやそっとの攻撃を受けてもビクともしないでしょう。気を引くための手段として、攻撃とかしてみてもいいかもしれません。よほど本気の攻撃を重ねない限り彼らはあまり痛みも感じないと思います。
●備考
本シナリオでは死亡しても近くの街にサクラメントがあり、移動に多少時間がかかるかもしれませんが、復帰は比較的容易です。
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
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