PandoraPartyProject

シナリオ詳細

恥じらう花の見る夢は

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 1日目、とある街角。
 女性に声をかけ、食事に誘う。慣れた様子でナンパ行為をする、フワワリ通りの花屋の息子が目撃された。
 同時刻、フワワリ通り。客の女性を食事に誘う花屋の息子が目撃された。
 その日の夜、しきりに首を傾げながら家路につく花屋の息子が目撃された。

 2日目、とある街角。
 女性に声をかけ、食事に誘う。慣れた様子でナンパ行為をする、フワワリ通りの花屋の息子が目撃された。
 同時刻、別の商店街。
 薬屋前で女性に声をかけ、食事に誘う。手慣れたナンパ行為をする、フワワリ通りの花屋の息子が目撃された。
 同時刻、フワワリ通り。客の女性を食事に誘う花屋の息子が目撃された。
 その日の夜、花屋の息子が3人の女性に追いかけられるのを何人もの人が目撃した。

 3日目、とある街角。
 女性に声をかけ、食事に誘う。慣れた様子でナンパ行為をする、フワワリ通りの花屋の息子が目撃された。
 同時刻、薬屋の前。
 薬屋前で女性に声をかけ、食事に誘う。手慣れたナンパ行為をする、フワワリ通りの花屋の息子が目撃された。
 同時刻、離れた酒場。
 女性に声をかけ、食事に誘う。慣れたようにナンパ行為をする、フワワリ通りの花屋の息子が目撃された。
 同時刻、フワワリ通り。客の女性を食事に誘う花屋の息子が目撃された。
 そしてその日の夜、大慌てでローレットへ走っていくずたぼろの花屋の息子が目撃された。

 さて、どういう事だろうか?


「た、助けてくれ!」
 ローレットに駆け込んで、フワワリ通りの花屋の息子は言った。
「身に覚えのないトリプルブッキングが…違う、四人の場合は何て言ったらいいんだ……え、ええと、兎に角変なんだ! 僕があちこちにいるみたいなんだ! 確かに花屋で女性を口説いた! 口説いたよ! 食事に誘ってOKを貰った! でもそれだけだ! なのに僕は別の商店街で同じ時間に別の女性を口説いて、さらに別の薬屋の傍でも別の女性を口説いて両方からOKを貰ったみたいなんだ! こんなことが三日も続いて、しかも女性の数が増えてるんだ! え!? そもそもナンパするなって!? それは無理! とにかくどうにかしてくれ! このままじゃ頬がいくらあっても足りない!」
 そう縋る花屋の息子の両頬には、まあ見事な紅葉が二枚咲いていた。

「え? 共通点? そうだな……そういえば彼女たちはみんな、僕の花屋で花を買っていったぞ。最近入荷したやつで……今日は確か、三人に売れたな。小料理屋のおかみと、病院の看護婦。それからすぐそばにある大きな家の門番だ。こいつは男だけど」

GMコメント

こんにちは、奇古譚です。
非戦闘シナリオになります。

●成功条件
 花屋の息子の分裂(?)を止めて下さい。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。


 花屋の息子がいうには、女性の共通点は「最近入荷した花を売った」事です。
 買っちゃった三人の元へ行き、分身を止めましょう。
 さらに花を処分させるなり何なり、解決法を探してくださると花屋の息子が喜びます。
 「自然会話」や「自然知識」、「植物疎通」スキルがあると原因解明に有利に働きます。
 説得系のスキルも、買っちゃった三人の説得で生きるでしょう。

●花屋の息子
 顔は良い。顔は良いし仕事もやるが、女癖がちょっと悪い。
 でも一度に三人も四人も誘うアホな事はやらない、と本人は主張している。
 花屋でナンパしていたのが本物で、あとは偽物。
 戦闘能力はなし。


 アドリブが多くなる傾向にあります。
 NGの方は明記して頂ければ、プレイング通りに描写します。
 では、いってらっしゃい。

  • 恥じらう花の見る夢は完了
  • GM名奇古譚
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年07月01日 21時05分
  • 参加人数6/6人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

レンジー(p3p000130)
帽子の中に夢が詰まってる
デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
不遜の魔王
狗尾草 み猫(p3p001077)
暖かな腕
ラデリ・マグノリア(p3p001706)
再び描き出す物語
セレスタイト・シェリルクーン(p3p003642)
万物読みし繙く英知

リプレイ

●門番はお怒り
「いやあ~、本当に幻想ってところは不思議なことばかりだね!」
「そうですにゃあ。でも……こういう“不思議なこと”はちゃんと解決せんとねえ」
 不思議な花の依頼を受けた六人は、花屋の息子が花を売った、という点に目を付けた。今日購入した三者から花を回収し、後に集まって検分するという事になり、『大賢者』レンジー(p3p000130)と『御猫街に彷徨ふ』狗尾草 み猫(p3p001077)の二人は門番を担当。目的地へ歩く。
「両手に花が両頬に紅葉。ふふ、羨ましい限りやね」
「あれねー。痛そうだったよね」
 女性でそれだけの腕力と言うのもなかなか興味深いなあ。と、レンジーは好奇心旺盛に呟く。果たして全力で殴って、あんな綺麗な紅葉が出来るものなのだろうか。
「み猫が殴ったら、あの猫の足跡みたいな形になるの?」
「まあ。そんな事あらへん、ちゃあんと紅葉になります……けど、そんな事になる前にさよならしてるにゃあ」
「ああ、そういう感じする。軽い男には引っかからないよ! ってオーラを感じるよ!」
「ありがとさん。さて、あの人かにゃあ?」
 トークに花を咲かせる二人の視界に、大きな門が見えて来る。……先に気付いたのはみ猫だった。すぐにレンジーも気付く。門番の様子がおかしい。遠くからみて判るほど、ピリピリしているのだ。
「こんにちはぁ」
「……ん、なんだ? お嬢様のご友人か?」
 これは慎重に接する必要がある、と、み猫がそっと声をかけた。門番は至って冷静を装っているようだが、声色に不機嫌が滲んでいる。
「ううん、お嬢様やのうてね。お兄さんが買ったお花……」
「花!? いま花と言ったか!」
 いきなりはやめてほしいわあ、とみ猫は耳を塞ぎたくなる。怒りを露わにした門番を見て、二人は内心溜息を吐いた。これは間違いなく、既に一悶着あった後のようだ。
「既に何かあったみたいだね……」
「何かあったも何も!! お嬢様に差し上げようと持って行ったら、突然お嬢様の部屋に男が――ああ間違いない、あれは花屋のバカ息子だ! 奴が現れたんだよ! そしてお嬢様を無礼にも食事に誘いやがって、お嬢様は悲鳴を上げるし、俺は疑われるしで、もう散々だ! で? その花がなんだって!?」
「あらまあ。ごめんにゃあ、お兄さん。お兄さんが買ったお花ね、実は悪い子らしゅうて。その後お花はどうしたん?」
 怒鳴り散らして息を切らす門番に、するりと水を流し込むようにみ猫が相槌を打つ。敢えて花屋の息子のフォローはせず、さりげなく花が悪いという方向へ話の流れをいざなう。
 門番はその物静かなたたずまいにどきりとせずにはいられない。彼女の柔らかな口調とスキルの合わせ技ではあるのだが、よく見ると可愛いな……などと心中でつぶやいていた。
「花はお嬢様に差し上げられなかったからな。入り口の小屋に飾ってあるが……」
「よかった! 彼女のいう通り、あの花は普通の花じゃないみたいなんだ。実はわたし達はローレットのお使いでね。花を引き取って調べたいんだけど、いいかな?」
「ローレット? そうか……」
 門番は何処か納得がいったように呟き、考えている。見知らぬ少女二人を相手に怒鳴り散らしたばつの悪さもあるのだろう。その表情は柔和なものに戻っていた。
「確かに、あの花屋の息子は部屋を出て行ったあと消えてしまったんだ。君たちに怒ってしまってすまない、花を持ってくるよ――その代わりといっては何なんだが」
「何かにゃあ?」
「そいつに会うんだろ? 活きのいい綺麗な花を代わりに寄越せって言ってくれ」
「まあ。可愛いお願いやね」
「それくらいならきっとやってくれるね! きっちり花屋のお兄さんに伝えておくよ!」
「ああ。じゃあ、少し待っていてくれ」
 そういって、門番は門をくぐって横合いにある小屋に入っていった。よっしゃ、と二人は頷き合う。既に事は起こってしまったようだが、なんとかフォローは出来たようだ。
「可愛いお人やねえ。きっとお嬢様に渡し直すんやね」
「ねえねえ、それってつまり、そういう事なのかな?」
「そうやないの? うふふ」
 女子らしく、花を受け取るまで門番の心情について推測しあう二人。
 門番から無事に花を受け取ると、予定通りレンジーの家へ移動。彼女の自然知識と資料検索により――
「ええっ。こ、この花って……!」
「あらあ」


●おかみははにかみ
「たのもー、なのじゃ!」
「あら、いらっしゃいませ」
 一方、小料理屋。『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)と『信風の』ラデリ・マグノリア(p3p001706)が扉を開けた。彼らはこの店に寄る前に花屋で問題の花を検分し、粗方の予想を付けている。ラデリの知識によると花はカタリソウといって、危機に瀕すると幻影を作り出す不思議な植物なのだが――
(……判らない事も多いな)
 はしゃぐデイジーと裏腹に、思案を続けるラデリ。おかみと話しやすいよう、カウンターに腰かける。
「妾は小腹が空いたゆえ、さっぱりしたものが食べたいのじゃ!」
「あら。じゃあ酸っぱいのは大丈夫? 海鮮をビネガーであえたものならすぐに出来るけど」
「こ、子ども扱いするでない! 酸っぱいの全然大丈夫じゃもん!! それを頂くぞ!」
「……10歳くらいじゃなかったか?」
「じゅうにさい!!! 間違えるでない!」
 子ども扱いされたくないお年頃のデイジー。ラデリの僅か二歳の間違いにさえ過敏に反応し、ぺちぺちとカウンターを叩く。
 しかしそれが悲劇を呼ぶこともあるんだよね。おかみが出したいわゆる酢の物は――
「……たこ」
「たこだな」
「これが食べると美味しいのよ? 最近の売れ筋なの」
「……デイジー……」
「わ、妾、大丈夫じゃもん……平気じゃもん……」
 労わるようなラデリの視線を振り払い、酢の物を口に運ぶデイジー。だが、彼女は泣いていた……心の中で泣いていた……

「っと、そういえばおかみよ。最近変わった事はなかったかの?」
 何とも言えない食事の時間、目的を思い出したデイジーがおかみに問う。情報収集と説得は彼女の役割だ。
「変わった事? そうねえ……良い事ならあったけれど」
 おかみは照れくさそうに頬に手を当て、カウンターの端へ視線を移す。つられて二人が見ると、そこには紛れもないカタリソウが一輪、小ぶりな花瓶に飾られている。
「さっきね、花屋さんの息子さんが来られて。よかったら今夜、お食事でもどうですかって誘われたの。うふふ、こんなおばさんにねえ」
「さっき! さっきとはどれくらいじゃ?」
「あら? すれ違わなかったかしら…あなた方が入ってくるちょっと前に此処を出て行ったのだけれど」
「いや、俺たちは見ていないな…」
 やはり幻影か。ラデリは思案する。カタリソウは一輪になると危機を感じて幻影を見せる植物。買われて危機を感じたのかもしれないが――相手を威嚇するでもなく、恐れさせるのでもなく、なぜ食事に誘うのだろうか。
 ラデリが不可解に思うのにはさらに理由があった。彼が花屋で植物疎通を用いた際、花からは幸福だという思いしか伝わってこなかったのだ。同じ花の仲間と引き離されて、怯えている? しかしどうして、そこで花屋の息子が出て来るのだろうか?
「……デリ、ラデリー! おーい!」
「っと、すまない。話は何処まで進んだ?」
「…わたしに声をかけて下さった息子さんの事は、粗方……」
 妾、ちゃんと説明できたよ!と胸を張るデイジーとは反対に、おかみはどういう説明を聞いたのか、落ち込んでしまっている様子だ。
「なんて説明したんだ?」
「やつはナンパの好きなナンパ男じゃと説明したのじゃ!」
「……いや、そもそも花屋の息子ではない可能性がある」
「え?」
「え! なんじゃそれ! 妾聞いておらぬ!」
「すまない、考えていたら説明しそびれてしまった。……あの花は、幻を見せる変わった花でな。俺たちは此処に来る途中に花屋の息子を見なかったし、すれ違ってもいない。そうだな、デイジー」
「うむ! 妾もあの顔は見なかったぞ!」
「ああ。そういう事だ、おかみ。あなたの元に現れた花屋の息子は幻である可能性が高い」
「え、その、それは……こんなおばさんを誘って遊んだよりは、よっぽど良いけれど……」
 普通の綺麗な花に見えるのにねえ、とおかみが花瓶を持ってくる。確かに一見普通の花に見える。だから植物は恐ろしいのだ、とラデリは思う。
「……わたしは夫に先立たれて、この十数年ずっと店をやってきたわ。夫が残してくれた店だから、潰れないように必死になって……疲れていたのかしら。夫を忘れて若い男にふらっとするなんてね」
「そう卑下するでない! あやつは元々酷い男なのじゃ。それに、おかみは今でも十分美しいぞ? そのうち本物が来て、今度こそ本当に食事にさそうかもしれぬ!」
「あらあら。そうなったら大変ですわ。……今度は、夫を忘れないようにしなければなりませんね」
「うむ! その一途さ、妾は素晴らしいと思うぞ! という訳で、花は貰って行ってよいかの?」
「勿論です。お客様に何かあったらいけないし、お持ちくださいな」
「……」
 おかみがいつの間にかデイジーに敬語を使っているのは、彼女の信仰蒐集の力だろうか。人の事は言えないが、スキルってやつは恐ろしいな……と思うラデリであった。


●看護婦は戸惑う
 さて、信仰蒐集を持つ者はもう一人いる。『Eraboonehotep』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)だ。彼――便宜上、彼と呼称する――は『万物読みし繙く英知』セレスタイト・シェリルクーン(p3p003642)と共に、病院の看護婦を説得する役割を請け負っている。が、セレスタイトは主に回収した花の分析役。朗々とした語り手のオラボナと分析に長けた学者肌のセレスタイトは、ほかの二組よりそれぞれに特化した印象だ。
 その二人はというと――

「花屋で植物を購入するのは至極当然。されど問題は息子の分裂。紅葉模様が増殖した、酷く滑稽な姿に在れ。奴の赦し難い行動には口を挟まぬ。だが! 同時刻に違う場所で口説くとは可笑しい」
「は、はあ」
「つまりですねぇ、最近花屋の息子さんが増えるという不思議がありまして、あなたの所にも来るかもしれないんですよねぇ」
「はあ…あの、あなたが持ってる花……」
「あ、はい。同じものを購入してみましたぁ」
 オラボナの語り口に圧倒される看護婦に、セレスタイトが率直すぎるほどの助けを入れる。圧倒されつつも聴き入らずにいられないのは、彼の巨躯ゆえだけではないだろう。
 セレスタイトは片手に簡易包装された花を持っている。カタリソウ――看護婦が購入したものと同じもの。花屋の息子の分身には出会わなかったが、何かの助けになるかと購入したのだ。
「その言葉は然り。我等『物語』はこの喜劇『物語』に終焉を記すべく思考思案を重ねている。さらに重ねるなら、我等『物語』は交渉人だ。対価には花を、代価には喜劇『物語』が相応しい。貴様には知る権利があるのだ。喜劇『物語』の結末を。我等『人間』に託し待ち望め。……然しところで、貴様は花屋の息子をその目に捉えたか?」
「え? え、あの、見てませんけど…」
 ふむ。
 と言いたげに、オラボナが一瞬沈黙する。確かに看護婦の手の中には花があるが、セレスタイトと同じ簡易包装がされていた。どうやら看護婦はまだ幻影を見ていないようだ。
「然り。然り。されど終幕まで語って魅せよう、この喜劇『物語』を! ――其の花を我等『物語』に差し出す気はないか」
「必要なのでしたら、お渡ししますが……何か曰くでもあるんですか?」
「それをこれから調べるのです。あ、オラボナさん、住所教わらないとお話を聞かせられないですよ」
「左様であった。なれば、貴様が最も長く在る場所を教え給え」
 至極平和に看護婦から勤務場所を教えて貰い、事の顛末を話して聞かせようと約束するオラボナであった。

「事前に防げたみたいで、良かったですね」
「息子が現れていれば喜劇『物語』に磨きがかかったのだが、定めの運びに口を出すは無粋。して貴様よ、花は我等『物語』の知る処にない愉快な性質を持つと察するが?」
「ええ。品種名は判りませんし、他の誰かが調べてくれているでしょうがぁ……私は私で、面白い事が判りましたよぉ」


●結
「さて諸君、喜劇『物語』も終盤である! 何を見、何を知ったのか、滔々と語り聞かせ給え!」
「では妾たちからいこうかの! ラデリ、語るがよい!」
 レンジーの家。六人が一堂に会し、それぞれ回収した花と情報を手に分析を始める。一番乗りじゃ!と手を挙げたのはデイジー・ラデリ班。
「注目されるのは得意じゃないが、まあ。……この花はカタリソウという。大抵は群生していて、一輪だけになる――摘まれたりすると、護身のために幻影を見せるという代物だ。花屋では幸福が感じられたが、おかみのところから持って帰ったこれは寂しい思いを抱いているようだな」
 淡々と、しかし要点をかい摘んだラデリの説明に、レンジーもこくりと頷いて同意を示す。
「うん、わたしも図鑑で調べて、同じところに行き付いたよ。本来は恐ろしい幻影を放つらしいんだけど、何故か今回は花屋の息子さんなんだよね。で、この花、育ってから長くないうちに枯れてしまうんだって。だから多分知らないまま…」
「種から育てたんとちゃうかにゃあ。この花は珍しい部類に入るよって、普通の花やと思て育てはったんやろね」
「確かに、見た感じはとっても可愛いのじゃ! 何もない花だったら妾も目を付けたかもしれぬ!」
 レンジーの言葉を継いだみ猫、そしてうんうんと頷くデイジー。その様子をオラボナはじっと聞いている。勿論、看護婦に顛末を聞かせる為である。モノクルを片手で上げながら、しかし、とラデリが続けた。
「何故花屋の息子なのかが判らないな。彼は特に強くも恐ろしくもない。その上、出会った者たちを全員食事に誘った……この行動の意味が測りかねる」
「それはですねぇ。お花を頂いて、改めてお話したのですがぁ…やっぱり寂しいって気持ちが続いていましたぁ」
 セレスタイトが言う。机の上に置かれた花を束ねれば、小さな花束が出来る。
「こうして束ねても寂しいままなんですよぉ。つまりぃ…お花さん、花屋さんから離れたくなかったんじゃないかと思うんですねぇ」
「離れたくなかった…」
 首をかしげるラデリたちに、レンジーが言う。少し緊張した面持ちで。
「うん。これはわたしとみ猫で出した勝手な結論なんだけど――このカタリソウたちは、花屋の息子さんに恋をしてたんじゃないかなって」
「恋?」
「私もそう思いますぅ。だから、映し出した幻影はぁ、もう一度花屋の息子さんに会う…寧ろ、自分がそうされたいという願いだったんじゃないでしょうかぁ?」

 沈黙。
 沈黙。
 ――呵々大笑。

 その主はオラボナだった。さもおかしいと巨躯を揺らしながら、その表情は「嗤い」ではなく「笑い」だ。
「よもや! 花が人に恋をする、伝承『物語』を目前にするとは露も知らず! 之は可笑しい! 笑わずに居られようか!」
「おお、オラボナはなんかツボったようじゃの」
「うちもそう考えとったんよ。お花は寧ろ、息子はんに食事に誘って欲しかったんじゃないやろかて。お店におってもほら、評判いうのは入ってくるからねぇ」
「恋をしていた花が、寂しさで息子の幻影を――筋は通っているように見えるが……」
「証明するのは簡単だよ。つまり、花屋の息子さんにお花をあわせてあげれば良い」
「そうですねぇ。此処で話し合うより、試した方が良いと思いますぅ。花屋なら分身が出ても大丈夫そうですしぃ」
「――そうだな。ものは試し、か」
「うむ! では行こうかの!」

 そうして一同が花屋に着くと、花ははっきり「嬉しい」と囁き始めた。息子に合わせれば覿面だ。「恥ずかしい」とまで言う始末。
 一方の花屋の息子は、両頬に紅葉を咲かせたまま困惑したように一同の話を聞き、頷いた。
「この花が原因だったんですか。……そっかぁ」
「何か思うところでもあるの?」
「いや……この花は僕が勝手に種を仕入れて、一人で育てたものなんだ。たまには花屋らしいところを見せたくて……それがまさか、幻影を見せる花だったなんて。いやぁ、まだまだ僕も未熟だな」
 ひりつく頬を押さえながら言う息子に、一同は笑い合った。何がおかしいのだろう、と息子は不思議そうにする。
「これは、解決法は一つしかあらへんね」
「そうじゃな! その花は鑑賞用にして、しっかり最後まで世話するのじゃ! 誰にも売らずにの!」
「そうだな。今の彼らからは危機感のようなものは感じられない。どうせなら花を育てる練習だと思えばいいんじゃないか?」
「……そう、ですか。そうですね。何はともあれ、最後まで面倒を見てやらないと」
「あ、じゃあこのお花、お返ししますねぇ」
「ああそうだ! 門番さんからの伝言なんだけど――」
「分裂は解決したな? では貴様よ、花をくれ給え。我等『物語』は花を渡した者に此度の喜劇『物語』を語って聞かせる義務が在る」
 そうしてわいわいと花を見て回る一同。セレスタイトから息子の手に返されたカタリソウの花は、オラボナに花の説明をする息子にか、その賑やかな様子にか、とても嬉しそうに揺れていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様でした。
それぞれ個性的な方ばかりで、ついつい会話を多めにしてしまいました。
プレイングも楽しく読ませて頂きました。
皆さんだからこそ辿り着けた結末、という感じが致します。
ご参加ありがとうございました!

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