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シナリオ詳細

【黄昏幻影奇譚】渦人形編

完了

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●渦人形
 古い民家。というよりは廃墟となり、今はもうボロボロになってしまった家。
 それが山奥にポツンと建っていたが、そんな場所にやってきた一人の若い男。
「くそっ、いくら罰ゲームだからってなんでこんなところに……」
 悪態をつく男。
 なんの罰ゲームかはともかく、この廃墟は『いわく』付きゆえにやってきていた。
 その『いわく』がなんなのかは男は知らなかったが、何も出てくる筈がないと男はたかをくくっていた。
 だが。
「ーー!?」
 異質な空気。冷たく重く、そして嫌な気配を間違いなく男は感じ取っていた。
 形容しがたく得体のしれない何か。
 そんなはずがない。いるはずがないのだ。
 ふと視線が部屋の片隅に泊まる。
 朽ちかけた箪笥。その上にひとつだけと置かれたおかっぱ頭で笑顔の古びた人形。
 顔は人形特有の真っ白な肌で目や口は穴のような暗い空洞。
 いかにも、なそれ。そして男の直感がこの人形は危険だと知らせる!
「ホホホ……ホホホ……ホホホ……」
 抑揚のない機械的な笑い声。長く伸ばされた首は、男の体に巻き付き
「ゲラゲラゲラ!」
 けたたましく嗤いながら無表情のまま涙をボロボロと流すそれ。
 その後。その廃墟は見るも無残な男の死体が一つだけ残され、人形はどこかへ消え去っていた。

●書斎
「やあ、イレギュラーズの諸君。よく来てくれたね」
 出迎えたのは境界案内人のミヤコ。ライブノベル『黄昏幻影奇譚』が用意されているのを見る限り、また怪異絡みか。
「今回と討伐対象は『渦人形』」
 聞けばこの人形は作られてから400年ぐらいは経過しているらしい。
 それが何らかの呪物の類であり、永きにわたり力を蓄え、人に仇なす存在として暗躍してきた。
「だが、そもそもなぜそんなものが作られたのか、いまいちわからないんだ」
 このままでは渦人形の力が強すぎる為にいかにイレギュラーズとはいえ、手こずるだろう。ならば、どうするか。
「実をいうとね。製作者が住んでいたとされる家を見つけたんだ」
ーーだけど、間が悪く渦人形が戻ってきたみたいでね。申し訳ないけど調べられなかったんだ。
 だが、うまくやれば相手を弱体化させる手段が家の中で見つかるかもしれない。
「このままでは新たに犠牲者が出てしまう」
ーーそうなる前に、どうか諸君の手でこの人形を討伐してほしい。
 そう言ってイレギュラーズを送り出すミヤコだった。

NMコメント

●黄昏幻影奇譚
怪異が蔓延る世界です。

●目標
渦人形の討伐

●渦人形
古びた和人形。
普段は自身を作った人形師が住んでいた廃墟にいます。
この廃墟を調べればこの人形を作った経緯と弱体化の手段が見つかります。

●弱体化について
イレギュラーズの使うスキルに対し、耐性を持っております。
が、弱体化させる事により耐性を無効化できます。

●技
けたたましい嗤い声
その嗤い声で敵全体の動きを封じ、ダメージを追わせます。

長い首
その長い首を利用し敵を攻撃したり巻き付いたりします。

流れる涙
無表情のまま流れる涙は見たものを狂気に陥れます。

  • 【黄昏幻影奇譚】渦人形編完了
  • NM名アルク
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年08月14日 22時05分
  • 参加人数2/4人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 2 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(2人)

ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚
ウルファ=ハウラ(p3p009914)
砂礫の風狼

リプレイ

●風の精霊と『怪異』
 呪い。それは神仏やその他超常的な存在の威力を借り、災いや、病気などを起こす術。
 その呪いの力を身に宿した人形『渦人形』。
「呪い渦巻く人形か……」
ーー全く人間というものはどこの世界でも呪物作りがうまいのう?
 それは感嘆か、あるいは呆れか。
 ため息交じりの『砂礫の風狼』ウルファ=ハウラ(p3p009914)。
 人間とはいつの時代も、どこへ行っても暴走してしまう事が残念ながらよくある。
 今回の渦人形が何の為に作られたのかは不明だが、ろくでもない代物であるのは疑いようがない。
「人らしく礎を成すのも素晴らしい、そう思わないか、貴様」
 『希望ヶ浜学園美術部顧問』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)。人間の風貌をした何か。全身が黒く、常に『嗤い』を浮かべたそれだけが赤い。オラボナを知らぬ者が見れば間違いなく『怪異』と称されるだろう。
 怪異とは、人の生活に紛れ、溶け込み、恐怖を食らう存在。ならば人間のそれに擬態するのもまた道理である。それが人間以外の存在であったとしても。
「化け物が人間の演技をするのは簡単だ」
ーーそんな事も解せないのかと呵々大笑。
 ああ、ならば。この身を持ってしてそれをわからせてやろうではないか。

●廃墟
 渦人形の製作者の住まいであったとされる廃墟。工房も兼ねていたのだろうボロボロになったその家からは、異様な圧力を感じる。が、渦人形はいないようだ。ミヤコからはあの人形が戻ってきた、との情報があった為に警戒はしていたが都合が良い。
「基本的な事から成すのが良好だろう。目と耳と鼻と脳を酷使し、怪しげな場所その他を探索して往こう。最も、私には目も耳も鼻も脳も無いのだがな! Nyahahahaha!!!」
 オルボナの奇妙な嗤い声と共にその3mという高身長を活かし、高い所などを探していく。
 天井や隙間、床などなど……。
 ああ、相手は人形の類だったか。ならばその人形を作るために使った道具があれば調べてみるのも良いだろう。壊し方も自ずとわかるはずだ。
「弱体化させねば耐性があるとは……なかなかの産物じゃ」
ーー一応、呪いとしては制御するつもりであったのかのぅ?
 ウルファもオラボナと同じく探索をする。
 同行者もなかなか得体のしれないの旅人(ウオーカー)のうえ、渦人形もいつ戻って来るかもわからない、なかなか気のおけない状況である。
 人形弱体化方法を探す一行。
 人形に限った話ではないが設計図は存在する。それが特にこういった呪物など特殊なものは資料が残っているはずだ。
「さっさと調べて実践するぞ」
ーー長く残った呪いなど、呪われた者さえ生きておらんただの災害じゃ。

 隠し本棚。
 見つけたのは日記らしきものと渦人形に関する資料。
 ものがもの故、人目につかない場所に隠していたのだろう。
 その中身は。

〇月〇日
今日は喜ばしい日だ。
なぜなら待ちに待った子供が生まれる日だ。
名前はもう決めてある。
一渦。
ああ、君に出会うのが楽しみだ。

 何の事はない、普通の日常を記したそれ。
 やれ、子供がこんな事をした、とか。やれ、病気になった、とか。
 その中で妻が死んだ事により悲しみに暮れる男の様子が窺い知れるが、子供のおかげで立ち直れたようだ。
 だが、その日常が大きく変化する事になる。

〇月〇日
一渦が魔女だと?ばかばかしい。村の連中は何を言ってるんだ。
一渦はどこにでもいる普通の、そして自慢の娘だ。
間違ってもそんなものではない!

 日記には通常の手段ではありえない殺され方した死体が複数出たらしい。
 しかもその犯人が一渦だという。
 そして村の人間の怒りが爆発し激しく父娘を糾弾、娘を処刑されてしまう。
 父は暴行にさらされ、娘の亡骸と共に村外に捨てられてしまう。
 その父は激しい怒りと憎悪と共に傷で痛む体で娘の体を抱え、今イレギュラーズがいる廃墟にやってきたようだ。

「……」
 しばしの沈黙。 
「なんともまあ、随分な事件じゃの」
 ため息の一つもつきたくはなるが
「いつの時代においても人間とはどこまでも恐ろしくも愛おしくもなるだろうさ。それよりも」
 日記と資料の中身に再び目を通す。
 
 資料は呪術や魔術に関するものだらけだ。日記にはそれらは既にここにあった、と記されている。
 人間か或いは怪異がそういう類のものを研究していたか。
 要約。
 人間の魂を器物に移し、それを操る外法。更にそれは人の魂と負の感情を取り込む事で半永久的に動き続ける。
 だがそれは人間の持つ感情、とりわけ負の感情を動力とする為にいずれは制御が効かなくなり暴走する代物だ。特に力を取り込みすぎた場合、その許容量から溢れ出すのが加速し余計にタチが悪くなる。
 怒り、哀しみ、憎しみ、恐怖……。
 『それ』を知っていたのかは不明だが元々人形師であった男は人形を作り、その器に娘の魂を移し替えた。
 その人形は正気を失った男の手により操られ、村人を殺害して回り。その村人の魂と感情を取り込み力を増したらしい。
 その男は暴走した人形により恐らく殺害されたはずだ。
 呪いの類は往々にして人の手に負えなくなる事がよくある。負の感情とは一種の呪いである。それに憑りつかれればそれを解くのは困難を極める。そしてそれはどんどん強力になり強烈に、苛烈に渦巻く。
 そう、それはまるで渦人形のように。
 だが、その人形はひとつだけ弱点を孕んでいた。
 つまり、渦人形を『恐れない事』。
 負の感情は鮮度がある。それは時間が経てば色褪せてしまう。
 最初こそ娘の魂と男の感情で動いてはいたが、それもいつまでも人形を動かせるものではない。
 魂も感情も劣化する。新たにそれを取り込まない限り、朽ち果てるしかない。
 しかもよりによって恐れを抱かない者と対峙した場合。
 その力は逆に減衰する。

「ホホホ……ホホホ……ホホホ……」

●渦人形
「ホホホ……ホホホ……ホホホ……」

 資料に気を取られていたせいで渦人形の接近に気付かなかったイレギュラーズ。
 普通の人間ならばこの怪異に恐怖するだろう。そう、普通の人間ならば。
「さて――貴様が此度の『呪い』か。随分と愛おしい姿だが如何だ、私と一緒に『芸術性』を語るのは?」
ーーああ、失礼。伽藍洞では言辞を垂らすのも難しいか!
 動力源としての魂。そして感情。それ以外は何もない。ただただ怪異に成り下がった者がそこにいるだけだ。だが、オラボナとしてはこの渦人形を知る事も目的の一つだ。
「人形……異世界には付喪神という、物が意思を持つケースがあるそうじゃな」
 物には魂が宿るという。
 長い年月を経た道具などに神や精霊などが宿ったものを付喪神という。
 渦人形は人為的に作られたものとはいえ、似たようなものではあろう。
 渦人形を見てふと思い出すウルファだがーーオラボナもだがーー二人に『恐れ』の感情は一切ない。
 怒りも哀しみも憎しみもなく。ただ、退治する。
 渦人形を見て普通なら恐怖するだろう。
 だが、彼らは恐怖しない。なぜなら彼らはイレギュラーズ。こんな事は日常茶飯事なのだから。

「ホホホ……ホホホホホホホホ!」
 けたたましい嗤い声。
 この世のものとは思えないそれは、耳を思わず塞がずにはいられない。
 そして首をまっすぐウルファの方へと伸ばす渦人形。
 ボロボロと空虚な双眸から流される涙。にんまりと開いた口から洩れる嗤い声と共に。
 ウルファの顔が苦悶のそれに染められるが耐える。
 資料によれば弱体化はしている筈だ。
 それでも中々にきついものがある。
「元がただ笑顔の人形として……呪いを混ぜられ意思を持ったなら、その涙も無理もないか」
 ヘビーサーブルズ。
 嗤いたくもないのに嗤い。泣きたくもないのに泣く。狂気としか見えないそれ。
 自分ではどうしようもないのだろう。ならば自分達が終わらせてやるしかない。
「どうした、貴様の『呪い』はこんなものか」
 嘲りと共に放たれる蹴戦。
 ヒット。その瞬間、オラボナは気付く。いや、ウルファも恐らく気付いているだろう。
 この人形の身体が脆い事に。
 弱体化している事もあるだろう。だがそれ以前に。
 長い年月を経過しているだろうその身体がいかに力を取り込もうとも。
 その身体の劣化に耐えられなかったのだ。
 それを魂や感情を取り込む事によって得た力で無理矢理繫ぎとめていたに過ぎない。
 それを渦人形もわかっていたのだろうか。破壊されまいと既に伸ばされていた首を大きく振るい、薙ぎ払おうとする渦人形。
 悠々とかわす二人。
 走り出すウルファ。
 渦人形の頭をがっしりと掴む帯電する手。
「ご苦労じゃったな、安らかに逝け」
 チェインライトニング。
 強烈な雷撃による電流は渦人形の頭部から首を伝い、胴体へと流れる。
 物が焼け焦げる臭い。丸焦げになり炭と化した頭部をそのまま握り潰したウルファだった。

「怪異とは『ひと』に向かうものだ。如何様に生み出されたのか、頁に刻んで称えよう」
ーーこの同一奇譚(からだ)は異化貌にも取り込むのだよ。
 無数の物語群。不在照明により力を失った代物。それに新たに記される頁。迎え入れられる渦人形。その結末がどのように記されるか幸か不幸かどちらであるかはーーそれはどうでもよい事だろう。
「……本当に得体の知れない奴じゃのう」
 一歩引いたところからの物言いをするウルファだが、兎にも角にも事は終わったのだ。これでこの渦人形による時間はきっともう起きないだろう。
 帰路へ着く二人であった。

成否

成功

状態異常

なし

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