シナリオ詳細
夏祭り、風のように
オープニング
●
「姐さん! 大変です!」
慌ただしく扉を開いた男の顔の横すれすれを、ナイフが駆ける。
「うるさい。手が滑って殺しちまったらどうする気だ?
用事があるならちゃんとノックの一つぐらいしろって言ってるだろ?」
「す、すいません! それより、これをみてくだせえ!」
軍服を着込む男は敬礼した後、慌ただしく女にそれを差し出した。
「ったく……商売の方もまだ進めてないってのに」
苛立だった様子を隠さず、男から姐さんと呼ばれた女性は差し出された物をひったくり、さらさらと中を見た。
「……これの持ち主は誰だい?」
「へえ、今回の航海で乗ってきた新人でさァ」
「ちっ……そうかい。おい、今すぐ島に上がるよ。
向こうのお偉いさんにもさっさと話を通しておきな」
舌打ちを最後に、女の声色から苛立ちは消える。
かわりに見えてきたのは――怒り。
「ウチをおちょくるったぁいい度胸だ。きっちり落とし前は付けさせないとな」
黒髪に掻きむしり、紫眼をぎらつかせて女が立ち上がった。
●
スティア(p3x001034)はR.O.Oにログインすると、サマーアバターを着込んで楽しめるクエストを探し続けていた。
探し続けた果て、スティアはセイラーを出て、静寂の青と呼ばれる地域の中、小さな島に訪れていた。
島の沖には一艘の船が停泊し、小型艇の往復も少しばかり見受けられている。
船には武装が施されているのが見えた。
「この町……お祭り中みたい……」
きょろきょろと見渡せば、なるほど、確かにサマフェスを元に作られた小さな港町のお祭りのようだった。
「……さすがに依頼とかなさそうかな?」
そう思いつつ念のためにMAPを見てみれば、『受注可能クエスト』の文字が光っていた。
――夏祭りクエスト!
迫りくる敵から依頼人を守り抜こう。
クエストの達成状況によっては『称号:颯然たる撃滅者』が貰えるかも!?
お客に扮して夏祭りを楽しむべく、サマーアバターに身を包んでクエストを楽しもう!
タップしてみて出てきた文言は、ありふれたものとそうじゃないものが並んでいた。
特に気になるのは、最後の一行。
それこそ、待ちに待っていた文言だった。
「此処みたい……」
マップに表示された依頼人であろうマークの方へ近づけば、そこは物々しい雰囲気の邸宅だった。
大きさを考えると、ここは領主ないしはそれに類するような立場の人物が持ち主だろう。
「何者だ!」
門番らしき人物が槍を横たえ立ちふさがる。
「ええっと……イレギュラーズの者だけど」
「イレギュラーズ? もしや、あの方がおっしゃっておられた者か? ……ならよい、入れ」
そう言って、門番が道を開けた。
●
「イレギュラーズの方、よくおいでくださりました。
いやはや、お早いご到着で……」
小太りの海種が頭を撫でながらそう言う。
「あ、いえ、ごめんなさい。
私は偶然で……あっ、でも何か困ったことがあるなら、話に乗るよ!」
スティアはそれにひとまず断りを入れると、海種は少し驚いた様子を見せた後、ホッとした様子を見せる。
「あんたがイレギュラーズかい? なるほどねえ……腕は聞きそうだ」
そう言ったのは、男の隣で腕を組んでいた女。
見る限り堅気には見えず、衣装は和洋を折衷する物で、額には角が見えた。
「挨拶がまだだったね。アタシは桐東叶夏。沖で船をみたかい?
あれがウチの船でね。商売の一環でこの島に訪れてたんだ」
「初めまして。スティアです」
ぺこりと頭を下げると、ちらりと海種に叶夏が視線を向けて海種の反応を窺う。
「実は今回の航海で乗船させた新しい乗組員がクーデターを起こしてね。
ここの領主――そっちの男を暗殺してこの島の占領を目論んでるらしい」
「私としてもその者達を処罰したいのですが、その……祭りの最中、しかも敵は姿を隠すのが上手いようで……」
「ウチらとしてもけじめは付けてやりたいんだが、ここまで航海してきた相手だ……アタシらは顔が割れてる」
「なるほど……その点、私達なら顔が割れてないはずだね……うん、いいよ! 任せて!」
「ありがとうございます。お礼の報酬に加えまして、ここは1つ、祭りでのお金は私が立て替えましょう」
深々と頭を下げた領主が、そう言っていた。
- 夏祭り、風のように完了
- GM名春野紅葉
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2021年08月14日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
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祭りの喧騒が、穏やかな小島に響いている。
夏の温かな風が、屋台の料理と思しきものの香りを連れてこちらにまで漂ってくるようだった。
このどこか、暗殺者共がいるなど、一見するとは思えない。
「せっかくのお祭りの日に狙わなくても……」
「本当、その通りです! せっかくお姉様との夏祭りだと聞いてまいりましたのに!」
溜め息をついた『天真爛漫』スティア(p3x001034)に応じる『愛屋及烏』しきみ(p3x008719)のテンションは高い。
「楽しい気分がぶち壊されちゃうし、絶対に阻止しようね!」
「ええ、ええ、もちろんです!
それに聞いて下さい、お姉様! このしきみ! 初陣でございます!
お姉様との夏祭りとお聞きして居ても立っても居られず……!」
「そっか、そういえば、しきみちゃんとROOで一緒になるのは初めてだよね」
これで私のお姉さん力も高まること間違いなしだとスティアも鼻が高い。
「ええ、あなたの配偶者となるべくここまで遣って参りました!
頑張りましょうね、お姉様」
恍惚としているしきみに、スティアも頷けば。
「うんうん、パートナーってことだね
一緒に頑張ろうね、しきみちゃん!」
「はい!」
微妙に噛み合ってない気もしなくもない2人は雑踏の方へ消えていく。
「暑いから水着になるのは全然かまわないのだけど……」
そう言う『大型』ジオ(p3x002157)は黒を基調としたセクシーなレースの水着の姿で腕を組み、隣のパートナーに笑む。
「きうりんと一緒だと、冷やしきゅうりの売り子さんみたいねぇ」
「なるほどね、つまり私は出店の商品ってことか!」
ジオの視線の先、『開墾魂!』きうりん(p3x008356)は、本体が頷いた気がする。
サマーアバターを着用しているきうりんは、水桶にさらされるキュウリではなく、植物の方が本体だ。
「完全に理解したよ! 迷惑な暗殺者をさっさと返り討ちにして、祭りを楽しもうよ!」
「そうね、ワタシも早くお酒飲みたいわ。
ワタシが抱えていくわね、多分そっちの方が怪しまれないし」
「ありがとう! こう、根っこで動けはするけどめちゃくちゃ遅いから抱えてくれるなら助かるよ!」
そう言うや、きうりんの本体も水桶の中に入って、ジオに抱えられて雑踏へ。
「ボクの相方はレイティシアちゃんにゃね、よろしくにゃ!」
青色で統一されたおしゃれなビキニに身を包み、猫っぽい目をパシパシと瞬かせる『にゃーん』ネコモ(p3x008783)は日傘を差す女性アバターにウインクする。
「よろしくお願いします」
ネコモに頭を下げ『高潔の騎士』レイティシア・グローリー(p3x008385)には、余裕が見える。
「捜索の方は問題なさそうだけど」
言いつつ、MAPを表示したレイティシアは訝し気に目を細めた。
「どうしたにゃ?」
「何も表示されないんだ」
思わず素が出てしまったのも構わず、思案する。
レイティシアのアクセスファンタズム『探し人is何処?』は人探しにおいては比較的強力な効果を発揮する。
『相手の名前を知っていること』を条件とするという、かなり緩い条件をもって、漠然だがどこにいるのか把握する能力だ。
船長だというNPC、桐東叶夏より彼らの名前は聞いていた。
故に発動条件はクリアしているはずだった――が。
彼女に騙されたか? ――いや、そんなことをする必要はあるまい。
「にゃにゃ? ……もしかして、船長さんが聞いたっていう名前は偽物なのかもしれないにゃ?」
首を傾げたネコモの言葉に、レイティシアは顔を上げた。
「なるほど、犯人グループが最初から考えての犯行なら、搭乗時から嘘の名前でもおかしくないですね」
「地道に怪しい奴を見ていくにゃ!
怪しいと思った相手に声をかけて調べていくから、相手が敵だったらフォローよろしくにゃ!」
ネコモに押されるようにして、2人も雑踏へと入っていた。
会場の中央、櫓の上には人影が4つ。
「ううむ……補正があるなら仕方ないかといえ、
流石に水着で櫓上は少し恥ずかしいですね……これも護衛のためですか」
依頼人を守る用に立つ『妖刀付喪』壱狐(p3x008364)は少しばかり複雑な顔。
「……うちの子(刀)に変なのが寄って来たら斬り捨てなくては」
少々物騒なことをいうものの、その衣装をみればそんな気持ちになるのもおかしくない。
白を基調とした水着に身を包む付喪神部分は庇護欲をそそられる。
「折角だもの、ささっと倒してお祭りを楽しみたいわねぇ」
そう言って『きらめくおねえさん』タント(p3x006204)は浴衣……浴衣なのか妖しい大胆な衣装で微笑んでいる。
宝石のシトリンをモチーフにしたという浴衣には、大胆なシースルー生地が目を引いている。
ちらりと視線を依頼人に向けてみれば、何やらさらさらと短冊のような形状をしたものに記していた。
暗殺者討伐を終わらせれば、後はもうこの現実と見まごう世界で夏祭りを楽しめる。それもただでだ。
●
「たしか目印になるようなタトゥーが刻まれているのでしたよね?」
「うん、そうみたい。だから多分、直ぐに見つかるんじゃないかな」
雑踏を歩くスティアとしきみのペアは、すぐに不審な集団を見つける。
目ざとくそちらをじぃ、と注視したしきみの眼にタトゥーが見えた。
「お姉様! 見つけましたわ!」
しきみの示した方向、4人ほどの集団が見える。
その集団は明らかに何かに警戒しながら真っすぐ突き進んでいた。
その瞬間、スティアは刀を抜いて前へ。
敢えて敵から見えるように注意を引けば、敵の方も直ぐにそれに反応する。
そのまま、注意をそらすように、敵の方へ走り抜けていく。
「誰だ!?」
肉薄してきた双剣使いが切り結ぶのを受け流して、続いて迫る刀使いの連撃も受け流す。
続けるように立ち止まっていた男が懐から拳銃を取り出して引き金を弾いた。
駄目押しと迫るは、徒手空拳の男の一撃。
「この方を誰だと思っているのですか! 私は配偶者ですよ!」
言うやえいっとしきみも双剣使いへ叩きつけたのは、配偶者欄記載アリ。
「まったく! お姉様が! 時間の経過で、私と共に夏祭りに行きたくないとなってしまったらどうするつもりなのですか!?
責任とれますか!とれませんよね!?見て下さいよ、私、配偶者を名乗ってるんですよ!?」
ぐいぐい迫るしきみの迫力に双剣使いが沈みかける。
「お返しだよ!」
瞬間、スティアは風の如き速さで肉薄し、風の如き迫力を伴う太刀筋を以って目の前の双剣使いを斬り結ぶ。
不規則な軌道に加えての流れるような連撃が炸裂し、双剣使いが散りと消えた。
「きゃー、お姉様、SSA素敵ー!」
期待されるようだからと撃ち込んだSSAに、案の定しきみは眼を輝かせていた。
こちらはジオときうりんのペア。
「さーて、怪しい人はどーこーかーなー?」
ジオの方はきょろきょろと周囲を身を見渡していた。
背の高さも生かしての探索だ。
その一方で、きうりんはこう、するする~っと蔓を伸ばして地面の雑草へ植物疎通を試みていた。
「ねぇねぇ、変な奴いなかった? なんかこう、例えば足首とかに羽根付けてる人……ふむふむなるほど」
意味深に頷いて見せる。
「あら? 何か分かったかしら?」
「さっぱりわからないや! 同じ植物なのに!
悪そうな雰囲気の奴がいるって雰囲気は伝わったけど!」
ずっこけそうになりながらも、手……手?をある方向に向ける。
ジオの方もそちらを見れば、何やらそこには4人ほどの人間が集まっている。
大の男が集まって屋台も見ることなくゆっくり歩いている。
よく見れば、うち一人の頬に片翼のタトゥーが見えた。
「合わせるわ」
「おっけー! それじゃあ、よろしく!」
ジオに頷いたきうりんは宙を舞う。
空を飛ぶ水桶に気づいた4人が警戒心を露わにきうりんへ近づいていく。
「なんだぁ?」
1人がきうりんのきゅうりを持ち上げる。
「きゅうりだな……なんでこんなところに?」
「動かないでねー他の人に当てたくないの」
男がきうりんを持ち上げる瞬間、周囲の人々に注意を呼び掛けて引き金を弾いた。
真っすぐに飛来する弾丸がきうりんを摘まんでいた男の身体に穴をあける。
瞳孔をキュゥ、と細めたネコモの眼に、男の胸部に浮かぶタトゥーが映る。
「んだぁ、嬢ちゃん」
真っすぐに中央へ歩いていく男達の前に立ち、ネコモは視線を上げた。
「にゃ」
首を傾げたネコモの後ろ、レイティシアが自らの槍の幻影を射出する。
放たれた槍は幻影故に真っすぐに男を貫いた。
『こんな杜撰な計画が上手く行くと思ってるとしたら、とんだ馬鹿ですね』
幻影の突き立った男達の脳髄を罵倒が揺らす。
「まさか、お前ら領主の手先か!」
構えた男たちの視線がレイティシアへ集中するのを見て、ネコモも動く。
「そうにゃよ。食らえ――昇――猫――拳!」
一瞬のしゃがみこみからアッパーカットを叩きこむと同時、身体のバネを生かして跳び膝蹴りを叩き込む。
往年からの作品を思わせる連撃に脳震盪を起こしたのか、隙が見える。
その様子を見て、ネコモはもう一度拳を叩き込んだ。
「領主を暗殺するのはいいとしてその後はどうするつもりなんだろう? 島を維持するには流石に人数が足りないと思うけど。
もしかして裏に手を引く黒幕でもいるのかな?」
せまりくる敵へとレイティシアはずっと気になっていたことを問うた。
「はっ! あらかたお宝もらったらおさらばよ!」
振り下ろされた日本刀を防ぎながら、彼らの言動をつぶさに観察し、微かな隙を突くようにして槍を薙ぐ。
横なぎの一閃が、迫っていた3人を纏めて撃ち、生命力を奪い取る。
「おおーどうも始まったみたいだねえ」
櫓の上、桐東叶夏が眼下を見れば、各地で喧騒に混じり仲間たちの行動が始まったのが見える。
「こっちにも来たみたいねえ」
タントは視線を巡らせ、山伏風の2人組が迂回しながら突っ込んでくるのを見た。
「残念、そこまでよぉ」
櫓の足元へとりつき、上へと上昇してくる敵の片方を見ながら、緩やかに払うように手を薙いだ。
迸る雷光が、こちらへ突っ込んできた敵の身体を撃ち抜いた。
「邪魔ものめが!」
ぎろりとそいつの眼がタントを射抜く。
「うふふ、隙だらけのおねえさんに見えた? わたくしに死角は無いわよぉ」
たおやかに笑みを浮かべれば、山伏の仕込み杖が迸る。
もう1人の山伏風が跳びこんでくる。
その仕込み杖が領主に走るより前、合わせるように動いた壱狐の太刀が走る。
美しき刃文を浮かべる五行の太刀が火を思わせる彩りを放ち斬り穿てば、連撃に怯んだ山伏がすっ飛んでいく。
落下するよりも前に身を翻して空に漂うそれへ、壱狐は太刀を向けた。
●
戦いは進んでいた。
普段の力量に加え、全体的に体の動きが軽い。
圧倒的多勢の敵を相手に、イレギュラーズは順調に戦いを進めている。
刀使いと徒手の男の攻撃が撃ち込まれる中で、スティアはゴリゴリ減っていく自身のHPを見ていた。
猛攻を受け、いなしながら納刀。
「これで一気に決めてみせるよ!」
抜刀――氷の花弁を舞い散らせる絶刀は美しく会場を彩り、刀使いを斬り降ろす。
「双角星団だか何だか知りませんが、私はお姉様との夏祭りを楽しみたくここまでやってきたのです!
その時間が短くなるではないですか。言語道断です!
極刑です! さっさとくたばりなさい!」
再度の迫力で迫ったしきみが生き残っていた男を鎮めた。
ジオは落ち着いて引き金を弾く。
真っすぐに放たれた弾丸が気雨林を取り囲む1人の心臓をぶち抜いた。
「はい、次。射的も悪くないわね」
一息入れて、視線を次へ。残りの数は2人。順調に撃ち抜けばそう時間はかかるまい。
殴りつけられ、斬りつけられながら、きうりんは生えてきたキュウリの一本を自らの口に放り込む。
「ちょっと! 私売り物なんだけど! キズものにしないでよ!」
見た目だけでいうと自傷行為っぽいが、その効果は絶大だ。
蓄積した疲労感を取り除き、青果は体力を回復させる効果を持っている。
「招かれざる客はお帰り願います、よ!」
五行の刻印が5つ全て輝きを放つ。
構えた壱狐は迫りくる2人目の山伏目掛け、太刀を振り抜いた。
それはいつかは星を越え、神にも届かんとする思いを乗せた全霊の一刀。
大きく切り拓かれた山伏が櫓の下へ落ちていき、電子の海に還った。
最後の1人。山伏へとタントは魔術を行使する。
それは虚構の海に浮かぶ真実の光。
闇夜を切り裂き、標となす流星の如き一条の輝き。
真っすぐに走る流星は退避行動をとる山伏を追いかけ、その身体に二度に渡って衝撃を叩きつける。
「あなた達には背後関係を履いてもらわないといけませんから」
レイティシアは一気に肉薄する。防御行動をとる徒手の男と剣士の懐へ、くるりと裏に返した槍の石突きを叩きつける。
鳩尾を抉る撃ち込みは、強烈な衝撃をもたらすも、不殺を為す刺突。
崩れ落ちた2人はそのまま身動きを取ることが出来ず呻いていた。
同時、ネコモも正面にいる相手へ至近する。
「奢りが待ってるにゃー!」
昇猫拳のアッパーカットが確かに銃を使う男の顎を捕らえ、そのまま同じ位置を飛び膝蹴りの膝が強かに砕く。
某なにかとは別の物とかした連撃を受けた男が宙を跳び、地面へ落ちた。
――――そして
●
クエスト達成タイム5分未満
>>クリア
会場損耗率10%未満
>>クリア
来場者死傷率15%未満
>>クリア
護衛対象HP消耗率10%未満
>>クリア
――Congratulation!!!!
称号解放条件が達成されました!
参加者への称号授与が確定されます!
心行くまで夏祭りを楽しみましょう!
ファンファーレのようなBGMが鳴り響き、ポップしたウインドウに文字が躍った。
●
戦いが終わったのを確認して、スティアとしきみのペアはまずはりんご飴のお店にいた。
「夏祭りといったらりんご飴だよね!」
スティアが握るのは、よくある赤のりんごではなく、緑色のもの。
「この緑の飴がリンゴっぽくなくて好きなんだよね」
パリッと飴を噛み、内側のりんごがしゃくり。
「林檎飴美味しいですね、ふふ。
私こんなに楽しいお祭り人生初です!」
嬉しいのかピコピコ動くしきみのアバターのお耳はスティアのソレを思わせる長耳。
「そういえば、盆踊りもやるらしいよ。
とはいえ、どういう風に踊れば良いのかなー?
ダンスならわかるけどこういうのはあんまり詳しくなくって」
「盆踊り、ですか? ご存じないのであれば豊穣出身、このしきみがお教え致しましょう!」
自信たっぷり、教えることができることに喜びを感じさせるしきみだった。
「せっかくだし、一緒に踊りながら教えてほしいな!」
「よろしいのですか! 分かりました! このしきみ、お姉様が恥を掻かぬようにしっかりとお教え致します!」
「それぞれが一緒に踊るってなんだか新鮮かも……」
「不思議な舞踊ですよね。けど、お姉様が喜んで下さるなら嬉しいです」
眼を輝かせるスティアと、嬉しそうにはにかむしきみは、櫓の周囲を回るように盆踊りを楽しむのだった。
「お酒♪ お酒♪」
見かけた屋台で清酒風味の何かを購入し、鼻歌交じりにジオは海上を歩いていた;
「イカ焼き、海串焼きに焼き鳥……うーん、どれもいい匂いねえ……何かさっぱりしたものもないかしら?」
つまみを各屋台で購入していたジオはラインナップを見て首をかしげる。
ちょうどそこへ聞き覚えのある声がした。
「はいはーい! きうりの一本漬けだよ! 安いよ!」
それは、どこから持ってきたのか屋台を用意して周囲にも負けぬ声で客を呼びかけるきうりんだった。
「あっ、ジオくん!」
「いいかしら?」
「いいよ! 召し上がれ!」
冷水に使ったきゅうりを数本、袋に入れて品物に。
「ありがとー」
鼻歌交じりに、ジオは一息つけそうな場所に足を進めていく。
次に見えてきたのは、タントと叶夏の姿。
「混ぜて頂戴な」
「もちろんよぉー! ほらほら、一仕事終えたんだし叶夏様も一緒に飲みましょ?
過ぎたことはお酒と一緒に飲み込んで忘れちゃいましょう、ね」
「そうだな、せっかくだ。ご相伴にあずかろうか」
「そうそう、一人で飲んだってつまらないもの!
それに、お代は領主様が立て替えてくれるって言うから、今日は飲むわよぉー!
はい、かんぱーい!」
タント、ジオは叶夏も交えて宴会を始める。
一方、壱狐は依頼人から借りてきた浴衣に着替えていた。
「この程度では相手になりませんね」
職人魂全開に屋台の型抜きの1つ、アクエリア島のような形をしたものを完成させた壱狐の鼻は高い。
「うぅむ……すごいな……」
「にゅふふ、お祭り王の座はボクがいただきにゃー!」
唸る店主を横目に、視線を上げればそこにはネコモの姿がある。
片手には綿あめだったであろう割りばしと袋が。もう片方には袋に入っている金魚が。
ばっちり楽しんでいるらしい。
手元には型抜きが1枚。
その絵柄は超々激ムズと記されているものの1つだった。
「ふむふむ……もしや、そちらはヒイズルの黄龍の型!?
面白そうですね、これも一通りやらせてもらいます。いいですよね?」
「えっ? お、おう……しかし、大丈夫かい?」
「ふ、問題ありません!」
職人らしい集中を見せながら、壱狐は黄龍の型を抜き始めた。
「完成にゃ! お次は射的にゃーー」
声を上げるネコモはそのまま立ち上がると、猫のような身軽さで別の屋台に向かって走っていった。
「珍しい本ですね」
日傘を杖代わりにレイティシアはボロボロの本のグラフィックを眺めていた。
古書の類であろうか。他にも何かないかと練り歩くその後ろを、風――ネコモが走り抜けていった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでしたイレギュラーズ
GMコメント
さてこんばんは、春野紅葉です。
こちら、スティア(p3x001034)さんのアフターアクションより発生いたしました。
●オーダー
【1】標的の暗殺阻止
【2】夏祭りを楽しむ
●フィールドデータ
静寂の青に存在する小さな島の1つ、そこにある唯一の町であり港です。
絶賛夏祭り中。様々な屋台が設けられており、お客さんもたくさんいます。
祭りの中止は敵が姿をくらます可能性を考えてされていません。
依頼人は公務の一環として祭りの会場の中央で組まれた櫓の上にいます。
●エネミーデータ
・双角星団
神光(ヒイズル)を出港し、フィールドの付近に停泊する武装商船の商人たちです。
共通して見えるところに片翼のタトゥーを刻んでおり、全員が浴衣を着込んでいます。
一部がクーデターを起こし、小島の占拠を目論んでいます。
フィールド内で観光客に扮して紛れており、依頼人の暗殺を目論んでいる様子。
・双角衆〔軽戦〕×4
双剣を握る忍び風。隠密能力に長けています。
・双角衆〔銃士〕×4
懐に隠せるサイズの小型の銃を保有します。
貫通属性持ちです。
・双角衆〔剣士〕×4
日本刀を携える剣士です。
EXAが高めのアタッカーです。
・双角衆〔拳士〕×4
徒手空拳の者達。
獲物を持たぬ故の奇襲戦法、移戦術、カウンター能力を持ちます。
・双角衆〔山伏〕×4
山伏を思わせる格好をしています。飛行種です。
空を飛びますが3mより高く飛びません。
武器は短槍(仕込み杖)です。
●友軍データ
・『双角衆筆頭』桐東 叶夏
双角衆の頭領、長めの太刀を獲物とする海の女。鬼人種。花実兼備と謳われ、義理人情を尊ぶ女傑です。
連れてきた部下に良からぬ奴らが紛れていたけじめとして、依頼人のすぐ傍で最後の砦とばかりに護衛をしています。
●プレイング及びステータスボーナス
今クエストの参加者が『サマーアバター2021』を着用している場合、プレイング及びステータスにボーナスが発生します。
なお、着用に関してはイラストが納品されているかどうかのみで判断します。
(ステータスシートの防具などがそれに特殊化されてなくても構いません)
ボーナスの付与はありませんが、絶対に着たくない場合はプレイングで明記をお願いします。
●特別報酬
今回のクエストにおいては事前に全員への『称号:颯然たる撃滅者』付与の可能性が事前告知されています。
それがどのような結果において開放されるかは不明ですが、字面を踏まえると速さ等が関係してきそうです。
達成しなくても問題はありません。
●夏祭り
フィールドでは夏祭りが行なわれています。夏祭りにありそうな出店は基本的に存在しています。
『焼きそばの出店で焼きそばを食べる』など、プレイングで指定された出店がある場合、よほどのことのない限り登場します。
夏祭りとしてお楽しみください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
※重要な備考『デスカウント』
R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。
●ROOとは
練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline
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