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シナリオ詳細

巨大ザメとかとっととやっつけて泳ごうぜ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 夏といえば、解放感溢れる海。
 海洋にも暑い季節が訪れ、海水浴やサーフィン、セーリングなどを行う人々の姿があちらこちらに見受けられる。
 現状、海洋の沖は静寂の青と呼ばれるようになり、海洋の飛行種や海種だけでなく、他の地域から人間種や獣種、重量感ある鉄騎種までもば海を楽しもうとやってきている。
「きゃはははっ!」
「そーれ、そっちいったぞ!」
 波打ち際のカップルが楽しそうに走り、少し目を移せばビーチバレーする少年少女達の姿が。
 そんな人々を迎える為か、商魂逞しい地元の人々が海の家を開いており、軽食、麺類、かき氷などの氷菓を振舞っている。
 砂浜を訪れた者達はこの夏の一時を心から楽しんでいた……はずだったが。
 突如、沖から突き出すようにして現れる大きな上ビレ。それは徐々に砂浜の方へと近づいてくる。
 不気味なサウンドエフェクトが聞こえてきそうな状況の中、海で遊んでいた者達が我先にと砂浜へと上がっていく。
「な、なんだ、あれは!!」
 1人が叫ぶ間に、そいつは海中を勢いよく進んでその姿を現す。
 見た目はサメ……ではあるのだが、その尾が異様に長く、全身に微弱な電気を纏っていた。
 その名は、エレクティールシャーク。
 電気ウナギの特性を併せ持つ巨大ザメだ。
 シャアアアアアアアアアアアッ!!
 とぐろを巻き、いななく様は新たな近海の主に君臨せんと言わんばかりに主張する。
「「うわああああああっ!!」」
「「キャアアアアアアアアアアッ!!」」
 折角の憩いの時間が一転。命を奪われる恐怖に慄きながら、人々は陸へと上がって逃げ出すのである。


 アクエリア島の浜辺にて。
「ったく、海王種ってのは、どんだけ残ってるんだい」
 依頼を受諾したイレギュラーズ達を前に、オリヴィア・ミラン(p3n000011)は嘆息して海へと視線を移す。
 先日はあんなに人で賑わっていた砂浜は現在閑散としてしており、そのすぐ傍の海ではエレクティールシャークがのびのびと泳いでいた。
「だいたい、あのデカさじゃまともに海水に浸かれないだろうに」
 まったくもって迷惑な生き物だとオリヴィアもあきれ顔だ。
 ともあれ、地元民の依頼もあり、あれを討伐したいところ。イレギュラーズが討伐に来たとあって、後方には海水浴をしたいという者達がすでにスタンバイまでしている状況である。
「エレクティールシャーク……電気を操る鰻の特性も併せ持つ巨大サメだね」
 サメは強靭なあごでの噛みつきに注目されるが、そいつは長い尾で獲物を捕らえて電撃を与え、確実に相手を弱らせてから食らいつく狡猾さも持つ。
 それもあって、人々は急いで退避したのだが、被害者がいなかったことは不幸中の幸いと言えただろう。
「まあ、海での戦いで相手が海王種っつっても、アンタらなら今さらだろう?」
 経験が浅く、絶望の海での戦い経験のない者も増えつつあるが、それ以上の強敵と渡り合う者も少なくない。油断せずに当たれば手元の情報でどうにかできるだろうとオリヴィアは語る。
「ま、その鰻鮫の肉、調理してみるのもいいんじゃないかい?」
 彼女は海の家で酒を飲みながら、ツマミが来るのを待つそうだ。
 世界によっては、この時期に鰻を食べる風習もあるのだという。
 サメがメインなのがちょっと違うのはさておき。食肉確保の為、そして後の海水浴などお楽しみの為、イレギュラーズは巨大ザメの討伐へと取り掛かり始めるのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 夏なんだから、思いっきり遊ばなければ損! 砂浜で心行くままにはしゃぎましょう!

●目的
 巨大ザメの討伐、砂浜で遊ぶ!
 半分くらいは事後の遊びパートと想定していますが、ノーマル依頼相当の判定は行います。ご留意くださいませ。

●敵……巨大ザメ×1体
○エレクティールシャーク
 全長7mほど。鰻鮫とも略される狂王種。
 サメの一種ですが、ウナギを思わせる長い体躯が特徴です。オリヴィアも指摘していますが、近海だと体の上部が水面から出ている状態となります。
 強靭な牙による食らいつきはもちろん強力ですが、いつの間にか伸ばした尻尾を絡めつけ、電撃を与えて獲物を捕食します。
 また、電撃は衝撃波と共に遠方にまで撃ち出せるようですので、注意が必要です。

●状況
 アクエリア島近海に現れる巨大ザメ討伐です。
 いきなり戦闘描写からスタートして、後半の遊びパートの枠を増やそうと考えていますので、意気込みとかは戦闘中に敵へとぶつけちゃってください。
 船を使っての討伐もできますが、希望がなければ、そのまま砂浜近くで迎え撃つ形です。小型船であれば、沖側から攻め立てる作戦も取れますので柔軟に作戦を立ててください。
 事後は砂浜で遊んだり、海水浴に興じたりできます。
 先程の巨大ザメを使って少し遅めの土用の丑の日を楽しむのもいいでしょう。癖はありますが、しっかりと臭みを取れば美味しく頂けます。オリヴィアがツマミを待っているので、良ければ持っていってあげてくださいね。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 巨大ザメとかとっととやっつけて泳ごうぜ!完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年08月06日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
浅木 礼久(p3p002524)
海賊淑女に愛をこめて
城火 綾花(p3p007140)
Joker
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
ブライアン・ブレイズ(p3p009563)
鬼火憑き

リプレイ


 夏真っ盛りの海洋の浜辺。
 依頼を受けてやってきたイレギュラーズ一行の目に、それはすぐ留まった。
「でっかいうなぎだなあ。いや、鮫か」
「サメなのかうなぎなのか、よくわからんが……」
 黒縁眼鏡を着用した赤い瞳の『若木』秋宮・史之(p3p002233)はその生物が如何なる種族なのかと首を傾げ、巨躯の白熊の獣種男性、『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)も判断しかねるといった表情でそれを見つめていた。
「へー、鮫と鰻が混じったっぽい狂王種なんてのもいるのね」
 普段は幻想カジノでバニーガールをしている『Joker』城火 綾花(p3p007140)は、一体何が原因でそういうのが産まれてくるのやらと興味を抱きつつ討伐対象を再度注視して。
「にしても、デカいわねアレ! 若干、気持ち悪い!」
 近海で存在感を示すそれ……エレクティールシャークは、身体の上半身が鮫を思わせ、尾ビレに向かってウナギを思わせるフォルムとなっている。
 その生物に対する印象は人それぞれだが、綾花でなくとも嫌悪感を抱く者も少なくはないだろう。
「また、ウナギですの……」
 そんな生物に対して、ゼラチン質の尾を持つ『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)は違った観点で憤りを見せる。
「細長いのは、アナゴだって、おなじですのに、どうして、穴子鮫ではなくて、鰻鮫ですの!?」
 マアナゴの海種であるノリアにとって、これはゆゆしき事態だと体を震わせる。
「ここは、鰻鮫を倒して、アナゴの力、見せてやりますの……!」
 海の生態系に疑問を投げかける彼女は並々ならぬ闘志を燃やしていた。
「……何はともあれ、人を脅かす存在なら、放ってはおけないわ」
 仲間が抱く種族のプライドはさておき、実害が出ている状況で放置はできないと、綾花が語気を強める。
「向こうにその気が無くとも、フォールドしてもらおうかしら……え、アレ食べれるの?」
 綾花が確認すると、海の家で酒を口にするオリヴィアがツマミ待ってると手を振る。
「あれはツマミになるのだろうか」
 こちらも黒縁眼鏡だが、眠たげな黒い眼で海を眺めていた『海賊淑女に愛をこめて』浅木 礼久(p3p002524)が討伐対象に眉を顰める。
「だが、オリヴィアが楽しみにしているなら……」
 しかし、彼がオリヴィアに向けたその瞳に、すぐ光が差す。
 事後は彼女と酒を酌み交わすこともできそうだ。仕事もプライベートも共にこなせるいい機会だと礼久は考える。
「やれやれ……」
 一方、『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)はこれ見よがしに嘆息する。
 イレギュラーズの登場を注視する海水浴目当ての人々やオリヴィアに対して、こちらの苦労も知らずに気楽なモンだと縁は呆れていたのだ。
「それにしても、鰻鮫とはなぁ」
 食材となるなら、魚市に出せば珍重されるだろうと縁は考える。もっとも、彼は魚介の類が食べられない為、関係のない話とのことだが。
「まぁ、食えるなら何でもいいな。とっとと終わらせて海水浴といこうじゃないか」
「うんまあどっちでもいいね、倒して狩ってとっとと遊ぼう」
 一方で、食す気満々の様子のエイヴァンに、史之が同意して。
「そのために障害は排除するよ!」
「ハッハー! サメ殴りの始まりだぜッ!」
 史之に次いで、筋肉質な体つきをした金髪グラサン男、『鬼火憑き』ブライアン・ブレイズ(p3p009563)が豪快に叫んで砂浜へと突入していくのである。


 改めて、イレギュラーズは砂浜から、近海に留まる巨大な生物を注視する。
 ここは我が縄張りと言わんばかりにエレクティールシャークは鎮座し、動く様子はない。
「さて……あれだけでかいと、海の中からでも攻撃は当てやすそうだが……」
 海は狂王種の根城。わざわざ相手に有利な条件で戦う理由も義理もないと、縁は陸におびき寄せてさくっと討伐することを提案する。
「先ずは奴さんを陸上に上げてやらんとな」
 エイヴァンが用意した小型船を使うべく、隣の砂浜へと一度移動する中、ブライアンが海の中へと飛び込む。
「あれだけのデカブツだが、皆で囲んでボコせばラクショーだろ?」
 素早く間合いを詰めていくブライアン。水辺とあって思う様に動けぬ彼だが、現状での自らの運の良さを実感していて。
(何せ、この依頼に挑むメンツの引きが悪くねえからな)
 ブライアンが横目で見たのはまず、囮役となるノリア。
 彼女は鰻鮫の目の前を挑発するように、隙を見せながら泳ぐ。
 そして、巨躯の鰻鮫を避け、大きく迂回して沖の方へと進む史之と色黒な酒場の男装店長『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)。
 そのモカやブライアンに対し、綾花は支援の為に2人を同時に範囲内へと収められるよう移動していた。
 その間に、沖の方からエイヴァンが小型船で敵の退路を塞ぎ、戦闘準備も整う。
「補助役がいて、囮役がいて、サメを砂浜までぶち上げられるヤツまでいる。完璧じゃん」
 これじゃあ負ける方が難しいとブライアンは頬を緩め、先制のジャブを見舞おうと妖刀で切りかかっていく。
「……?」
 痛みを感じたのか、鰻鮫が周囲を見回そうとしたところで、ノリアがこれ見よがしに相手の視線に合わせて泳いでみせる。
「さあ、ここに……おいしそうな、つるんとしたゼラチン質のしっぽが、ありますの!」
 自らを餌として見せつけ、ノリアは浅瀬の方へと泳ぐ。
「これを、食べたいとおもったら……わたしを、おいかけてみると、いいですの」
「……!!」
 ノリアを目線で追う鰻鮫はギザギザの刃をしゃきんしゃきんと開閉し、彼女を捕食しようと長い身体をゆっくりと動かす。
 その度に水飛沫が爆ぜ、大きな波が立つ。波に紛れるよう鰻鮫へと沖側から顔を出す史之。ほぼ同時に、モカも構えをとっていた。
 攻撃直前のタイミングを見計らい、綾花が幸運の女神の微笑みを仲間へと向けた。
 それによって力を得たモカは敵の巨体へと掌打を打ち込み、史之も全身全霊で大喝を吐き出す。
「!?!?!?」
 連続して強い衝撃を浴びた鰻鮫は大きく砂浜の方へと吹っ飛ぶ。
 戦況を見守るメンバーも状況を見て戦線へと加わる。
 敵が浅瀬に打ち上げられるまではと待機している礼久。
 潮が引いたタイミングであればより有利に戦えた可能性もあるが、現状は干潮において五分といったところ。
 完全に砂浜へと打ち上げるには、同様の攻撃がまだ数度必要と礼久は見ていた。
 皆が陸へと鰻鮫を押し上げる中、浜辺からは縁が敵の真下から吹き上がる水柱の如き波濤を浴びせかける。
 そうして、敵をビビらせて動きを止める間に、仲間へと攻撃を進めてもらおうというのが縁の考えだ。
 やがて縁の思惑通り、鰻鮫の巨体は浅瀬まで打ち上げられて。
「これで戦いを有利に進められるでしょう」
 ノリアが仲間達へと呼び掛けると、徐々に沖側から距離を詰めてきていたエイヴァンが小型船から降りて応戦を開始し、毒手で敵を殴りつけてその体を致死毒に侵す。
 囮役のノリアが今度はタンク役としての準備を進める中、綾花はホワイトグローブを纏わせた両手で殴り掛かる。
「にしても、ほんっとこの世界はサメの種類多いわね!」
 善の右と悪の左手。悪態をつく綾花は交互に繰り出し、確実にダメージを与えていく。
 大いなる海の力を纏ったノリアも敵の食らいつきや電撃に耐えながら、水の棘を突き出して反撃する。
「……皆様も、よろしくお願いしますの!」
 仲間達へと呼び掛けるノリアはこの鰻鮫を討伐することで、アナゴのすごさを証明できるはずだと疑わない。
 実際、声援を送ってくれる人々の視線を受けながら戦うメンバー達。
「雷はお前さんだけの専売特許じゃねぇってことを教えてやらねぇとな」
 接敵した縁は集中し、頭上へと呼び起こした雷雲から雷を落とす。
 それを闘気に纏わせた縁は陽光によって煌めく鱗の上から鰻鮫を殴りつける。
 相手の発する電撃は神経にまで作用するようだが、縁は耐えられない程ではない。むしろ、牙による喰らいつきなど、一撃必殺レベルの強力な攻撃が非常に危険だ。
 早期撃破せねば、どれだけの被害が出るかわからない。それを懸念し、縁は攻撃を加速させる。
 赤の熱狂によってアタッカーの強化を行う礼久。その礼久から一定の距離を取りつつ、砂浜へと上がった史之が攻撃を行う。
 相手の長い尾ビレが仲間へと絡めば、彼は最優先で対処に動いて。
「敵の思い通りになんてさせてやんない」
 史之は仲間が感電させられる前に大喝を吐き出して敵を大きく吹き飛ばし、態勢を乱していた。
 礼久はその間も回復に当たっていたのだが、不意に鰻鮫が変わった動きをしてメンバー達へと襲い掛かる。
 シャアアアアアアッ!
 砂の上に雷撃を伴って走らせる衝撃波。それにモカやブライアンが巻き込まれてしまう。
 海側から残像を伴う速さで我流の格闘術を叩き込んでいたモカだったが、これには苦い顔をして体を硬直させる。
 そんな彼女へと大きく口を開く鰻鮫。鋭い牙がモカの体力を瞬く間に削り切ってしまう。
 シャアアアアアッ!!
 長い体躯で今度はブライアンへと迫る敵。
 ブライアンはカウンターの構えを取ったまま妖刀で敵の体を捌こうとする。
 鰻鮫の体深くへと斬撃が刻み込まれるが、敵はその痛みを堪えてブライアンの体へと噛みつく。
 強靭な体のブライアンですらもやすやすと意識を奪わんとする鰻鮫の顎。
 ブライアンもモカもパンドラを使って意識を保ってはいたが、体力は削れたままで次なる一撃は耐えられそうにない。
 すぐさまノリアが相手の気を引きに回り、礼久が傷の深い2人を手当てする。
 モンスター知識を生かし、礼久は相手が電気を連発できぬことと効果的なダメージを与えられるのがヒレや目だと直感で判断するが、さすがに仲間の手当てに手一杯で攻撃に出るのが難しい。
 そして、回復役が他メンバーの手当てに回ったことで、ノリアの体力も厳しくなる。
 敵の攻撃を引き付けていた彼女は海の力で反撃し続けていたが、鰻鮫の強力な攻撃に顔を顰める。
 ノリアの疲弊を察し、タンク役を交代するエイヴァン。
 それまでは自らの防御の堅さを攻撃に転じて鰻鮫に叩きこんでいたが、タンク役へとスイッチすれば、相手の注意を引きつつ防御を固める。
 気を抜けば、いや、気を抜かずとも敵の牙は守りをやすやすと越えてエイヴァンの体に鋭く食い込んできた。
 彼は内気と外気の双方から自らを癒やして耐えようとするが……。
 シャアアアアッ!!
 手負いの獣はは恐ろしいまでの生への執着心を見せつけ、エイヴァンの体力をもぎ取っていく。
 パンドラの力に縋ってこの場は踏ん張る彼の抑えもあり、メンバーの攻撃は続く。
 史之が縁と共に鰻鮫の体に痺れを与える。礼久が指摘した弱点もあり、史之は顔面やヒレへと重点的に切りかかっていたのだ。
「ふふん、自分がビリビリさせられるのはどんな感じかな? エレクティールシャーク君」
 慢心こそしないが、勝利を疑わぬ史之。
 弱った鰻鮫が電撃を衝撃波と共に放出しようとするが、史之の雷撃を伴う一撃の方が速い。
 シャアアァァ……
 胸ビレごと切り裂かれた鰻鮫は血飛沫を上げ、目から光を失って砂浜へと倒れたのだった。


 ワアアアアアアァァァァァァアアア!!!
 鰻鮫……エレクティールシャークを討伐し、歓喜に沸く砂浜。
 イレギュラーズも疲労が重なってくたくたにはなっていたが、もう一踏ん張りと奮起する。
「やっぱりデカいわね……」
 獲物を直接見上げ、綾花はその大きさを改めて実感していた。
 メンバーは早速、その鰻鮫の調理を始める。
「少しは手伝えって?」
 エイヴァンなどは準備ができるまで海に浸かって涼もうとしていたが、仲間に促される形で鰻鮫の巨体や調理器具などを運搬する。
 主としてモカが調理に当たる。彼女は出張店舗船ステラビアンカII号のキッチンでサメの臭みを取り、それぞれの料理に合わせて肉を焼き、あるいは煮込んでいく。
「うなぎみたいな鮫だから、やっぱりうなぎみたいな味がするんだろうね」
 史之もその肉を一部預かり、下処理していた。何が作っていたかは後のお楽しみだ。
 礼久もまた解体した肉を手にし、海の肉へと向かう。
 彼はできるだけ美味しいツマミを提供しようと、肉を海の家の人々に託して作成を求める。
(鰻なら……そういえば、元の世界では蒲焼きのシーズンだったっけなぁ)
 果たして、その味は鰻か、はたまた鮫か。
 試食させてもらった限りでは、ヒレはかなりコリコリしており、揚げ物ならツマミにできそうだ。また、身は鰻に近い味で蒲焼きにするようだ。
 なお、最近では豊穣の民も海洋に訪れており、蒲焼きの文化も入ってるとのこと。取捨選択して提供できるのは2種族が混在する海洋の柔軟な考えあってのことだろう。
 なお、縁は調理の光景を見学していて。
「うちの店――潮騒の店主が見たら、新メニューを思いつきそうなんでな」
 本人は個人的な事情もあって食事は辞退していたが、余った肉を放置する位ならと縁は持ち帰ることにしていた。
 調理が進む間、メンバーはのんびり過ごす。
 ブライアンはビーチの真ん中にパラソルを立て、できた日陰へと優雅に寝転ぶ。思った以上に人が出入りして景観を独り占めとはいかなかったが、早々に鰻鮫がなくなって普通の海水浴場として楽しめそうだ。
「奴さんのツマミは楽しみだな!」
 お腹もすかせるメンバー達だが、エイヴァンは運搬作業だけ手伝った後は海に浸かってダラダラしていて。
「慣れてるとは言っても、暑いものは暑いんだよ」
 とは本人の談。調理も上手い人にお任せと彼はそのまままったりとしていた。

 しばらくして、浜辺に折り畳みテーブルや椅子、日よけのパラソルを出したモカがオリヴィアを含めたメンバーへと提供したのは、鰻鮫の蒲焼きに白焼き、サメ肉入りの煮込みスープ。
「やっぱり、うなぎ料理はこれがいちばんだよね」
 また、史之もひつまぶしに肝吸いを添えて皆に振舞う。
「さーて、どんな味がするのやら」
 問題はその味。恐る恐る口にする綾花だが、思った以上に美味だったらしく食が進み始める。
「……名前に、『ウナギ』がついている魚を食べるのは、ちょっぴり、抵抗を、感じますの」
 ウナギはアナゴの宿命のライバルと豪語するノリアだが、親近感は抱いていてウナギの名を冠する魚を食するのを躊躇っていた。
 それでも、実際はサメなのだからと意を決して口へと運んだ彼女は微妙な反応を見せて。
「……抵抗感のせいで、味が、よくわかりませんけれど……たぶん、おいしいのでしょう……」
 しかしながら、アナゴの方が美味しい、いや、美味しくなくて構わないと複雑な海種心を見せていた。
「なかなか行けるじゃないか」
 オリヴィアもそれらの料理を絶賛する。合わせ、調理がひと段落したモカも一緒になって酒を口にしていた。
「皆、お疲れだ」
 ブライアンも途中でこっそりと加わり、酒を片手にヤジを飛ばしつつもお酌などしてくれる。
「あっ、いやちょ待っ、お酒はまだ飲んだことないので遠慮します!」
 ただ、20歳の綾花はまだ飲酒に抵抗があるらしく、きっぱりと断っていた。

 その綾花は今年のsummerコンテスト用にと用意した黒いビキニを着用し、足がつくくらいの深さで海に浸かる。
「冷たくて綺麗で気持ちいいわねー。あ、小魚の群れっ」
 わざわざ浅いところまで泳いできたその魚軍はお礼を言う様に綾花へとヒレを動かして沖へと戻っていく。
「いやー、これだけで頑張って退治した甲斐があるわー」
 近場では、モカがメンバーや海水浴客と共にビーチバレーなどして遊ぶ。忙しい日々の生活もあって、彼女は心行くまで楽しんでいたようだ。
 史之は先程の流れのまま、ギフトで出したビールを飲みながらくつろいでいて。
「ツマミがどんなものか、気になるな」
 ただ、他人の恋路を邪魔したくないと、史之は少しツマミの内容を確認し、同じものを海の家のスタッフに頼んでいたようだ。
 そして、礼久はオリヴィアと共に酒を口にする。
 一緒に酒を飲む機会もあり、少しはアルコールに強くなったと感じる礼久だが、彼女の飲むペースは速い。
(酔い潰れないようにだけ気を付けないと)
「ありがとな。酒に合うよ」
 ビールやラム酒を食べつつ、唐揚げやジャーキーとなったサメ肉を美味しそうに突く。
 そんな彼女につられ、飲む早さが加速しないようにと気がける礼久。
 とはいえ、折角の彼女との一時は楽しく、思わずグラスを空けるペースが早まってしまうのだった。

成否

成功

MVP

寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結

状態異常

モカ・ビアンキーニ(p3p007999)[重傷]
Pantera Nera
ブライアン・ブレイズ(p3p009563)[重傷]
鬼火憑き

あとがき

 リプレイ公開です。
 MVPは敵を陸へと打ち上げ、とどめを刺した貴方へ。
 ご参加いただき、ありがとうございました。

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