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シナリオ詳細

夏だ! 鉄帝だ! 牛とバトルだ! 焼肉だ!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●説明ッ!
 ○○殺し、と言う格闘家のステータスがある。例えばクマ殺し。トラ殺し。人間よりはるかに巨体、狂暴、強靭な動物を、己の力のみで撃退することで、自身の力を誇るのである!
 そしてこんにち、牛殺し、と言うステータスもあるッ! 牛などと侮るなかれ、のんびりしたように見える牛であるが、しかし凶暴化した牛は当然のことながら、人などは平気で踏みつぶし殺すほどの頑強な生物であるッッッ!!
 ここに、一匹の牛がいるッ! 否、ただの牛ではないッ! カイザータウロスと名付けられたこの牛は、まさに牛の中の皇帝と言われるほどに凶悪な性質を誇っているッ!
 全身これ筋肉の塊とばかりに肥大化したそれは、外から見ても恐るべき質量と存在感を以って見る者を圧倒するッ! もちろん、それはこけおどしではないッ! これは鉄帝国立カイザータウロス調教センターの調査報告によるものであるが、一般的な鉄帝式鉄製家屋程度の壁ならその頭突きで粉砕しッ! 一般的な鉄帝発掘2トントラック程度なら引きずり回して投げ飛ばすッッッ!
 そう、まさに牛の中の皇帝ッッッ! 故に、このカイザータウロスと戦い、己の武を示す催しも、ラド・バウでは執り行われているッッ! 闘技場の中に放たれたカイザータウロスと、一対一で戦うのであるッッッ! 多くのラド・バウ闘士達が血の海に沈み、或いは牛を血の海に沈めてきたッッッ!
 もうお分かりであろう! 鉄帝において牛殺しとは、つまりこのカイザータウロスを倒したものに送られる勇者の称号ッッッ! 真に強き者にしか与えられぬ尊称であるッッ! そして、牛殺しの英雄には、このカイザータウロスの肉が与えられるッ! カイザータウロスの肉は、食用肉としてもまさに最高級品ッッッ! まさに皇帝の名にふさわしい味と食感を誇り、赤身を噛めば、肉のうまみと肉汁が迸りッ! わずかな脂身は、そのジューシィさを存分に盛り上げるッ! 内臓の類もまた、皇帝の名のごとく噛み応えとうまみを持つッッ! モツだけにッッッ!! ちなみに皮は良い皮装備になるので捨てる所がない。
 とにもかくにも、鉄帝人にとっては憧れの敵なのである。焼肉食べたい……。

●VSカイザータウロス軍団
「焼き肉を食べましょう!」
 と、ローレットの出張所でイレギュラーズ達に言うのは、『星翡翠』ラーシア・フェリル(p3n000012)である。その手には『クラッジス・グルメガイド』(クラッジスとは長距離馬車の会社で、各国を旅するという性質から、各国のグルメ店を紹介するグルメガイドを出している)を抱えている。自由気ままな渡り鳥であるラーシアである。この手の観光ガイドには興味があるのだろう。
「実はですね、この時期、鉄帝でカイザータウロスバトル……あ、その名の通り、カイザータウロスと戦う催しなのですけれど、それの参加権がラド・バウ闘士の方以外にも、一般開放されているんです。
 見事カイザータウロスを討伐することが出来れば、賞金と、カイザータウロスのお肉が手に入るんですよ」
 えへへ、とラーシアが笑う。そしてグルメガイドのページを開くや、カイザータウロスについて記載されたページを指さした。曰く、極上。曰く、この世の至宝。色々と美辞麗句が並べ立てられているが、つまり、すごく美味しいらしい。
「リヴァイアサンとも戦ってやっつけたイレギュラーズの皆さんです! きっとカイザータウロスだって簡単にやっつけられちゃいます!」
 リヴァイアサンとの闘いは、様々な要因の重なった結果の勝利ではあったが、しかしイレギュラーズ達がそれを成し遂げたのは事実だ。そのような化け物やらに比べたらカイザータウロスは確かに可愛いものだろうが、しかし簡単にやっつけられる、と言うようなものでもないだろう。
 イレギュラーズ達は苦笑するが、ラーシアの瞳は信頼にきらきらと輝いている。
「それで、是非私もカイザータウロスのお肉を食べてみたいなぁ、って。
 どうですか? 実は、鉄帝の避暑地のキャンプ場を予約してあるんです!
 お肉を手に入れて、バーベキューなんて!」
 ラーシアはノリノリである。イレギュラーズ達が、依頼を受諾して、敵を倒し、お肉を手に入れる……そう信じて疑っていない。
 とはいえ……美味しいという肉の味にも興味があるし、その食事前の運動の相手には、ちょうどいいかもしれない。言い方を俗に言えば、ちょっと運動すれば高級焼き肉をタダで食べ放題な訳である。
 と言うわけで、イレギュラーズ達も、話に乗った、と返答した。ラーシアはにこにこと笑うと、
「では、早速皆さんの分のエントリーを済ませてきますね!
 あ、バーベキューの差し入れは何でもお待ちしてますよ。
 それでは!」
 と、鼻歌交じりでローレットの出張所を後にするのであった。

GMコメント

 焼肉食べよう!!!!!!!!!!!!

●成功条件
 カイザータウロスをばちこんしてバーベキューだ!!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 ラーシアから持ち込まれた、一つの依頼。
 それは、鉄帝で行われているカイザータウロスバトルという、凶暴な牛の様な怪物と戦うというイベントのお知らせでした。
 勝者には賞金と、カイザータウロスのお肉が贈呈されるといいます。このカイザータウロスのお肉は非常においしく、極上においしく、めっちゃくちゃおいしいです。美味しいです。ラーシアも食べたくてうずうずしています。
 と言うわけで、皆さんはこのカイザータウロスバトルに参加して、お肉と賞金をゲット、ラーシアが予約したキャンプ場でバーベキューしましょう!!!!
 カイザータウロスバトルの開始はお昼。会場はラド・バウ闘技場で、戦闘ペナルティなどは一切発生しません。
 バーベキューの開始は夕方から。夕食にバーベキューです。肉を焼きましょう。差し入れもお待ちしています。


●エネミーデータ
 カイザータウロス ×3
  カイザータウロスと呼ばれる、牛型の怪物です。とりわけこの3匹は獰猛、かつ凶暴で知られ、何人ものラド・バウ闘士を返り討ちにしてきました。運動している分肉が締まっていておいしいと思います。
  とはいえ、普通にイレギュラーズと戦えるだけの技量はあります。前座ではありますが、真面目に対処するのがいいでしょう。
  三体とも、『飛』を持つ攻撃などを行ってきます。また、強烈な一撃は『防無』を持ち、皆さんに痛恨の一撃を与えるでしょう。
  全体的にHPは高め。EXFも高めです。ただファンブルの値も高いので、割と変な所で攻撃を外す傾向にあります。
  なお、三体とも以下のスキルを持ちます。

  食材適正:極上
   めっちゃおいしい。

●同行NPC
 『星翡翠』ラーシア・フェリル(p3n000012)
  戦闘には参加しませんが、バーベキューの準備はしてくれます。
  ご要望があれば、一緒にお話などしてくれるでしょう。お肉を食べながら。


 以上となります。
 それでは、皆様のご参加とプレイングをお待ちしております。

  • 夏だ! 鉄帝だ! 牛とバトルだ! 焼肉だ!完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年08月06日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
津久見・弥恵(p3p005208)
薔薇の舞踏
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ
日車・迅(p3p007500)
疾風迅狼
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
暁 無黒(p3p009772)
No.696
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
シュロット(p3p009930)
青眼の灰狼

サポートNPC一覧(1人)

ラーシア・フェリル(p3n000012)
星翡翠

リプレイ

●戦え! 美味しい焼肉のために!
「レディース、エン、ジェントルメン! やってきましたカイザータウロスバトル!
 今回の参戦者はそう、皆もよく知ってる奴らだ!
 多くの国でその活躍を記し、今も現在進行形で世界をすくっている勇者!
 そう、ローレット・イレギュラーズ!」
 軽快なMCが声を張り上げるのへ、観客たちの歓声が巻き起こる。ここは鉄帝、ラド・バウの闘技場。
「HAHAHA、やっぱりオーディエンスが居るのは良いな、盛り上がりが違うぜ!」
 『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)が力強く片手をあげて見せると、観客たちは盛り上がる様に歓声をあげる。
「こういう肩の力を抜いて挑めるイベントは久しぶりだな。張り切るぞ」
 『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)が言った。元々いた世界では、こう言ったイベントを盛り上げるような仕事も多くこなしていたというエーレンだ。
「……俺の知っているイベントより、だいぶギャラリーは多いが」
 苦笑して緊張をほぐすようにしつつ、辺りを見回す。確かにギャラリーは多い。それほどに、皆の活躍が楽しみにされているという事だろう。
「ふふ、戦い! 焼肉! 私好みの依頼があるじゃないか! さすが鉄帝だな!」
 うんうん、と嬉しそうに頷く『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)。その登場に、観客席からも黄色い声が上がる。
「レイリーだ! 噂の『ヴァイスドラッヘ』だよ! 鉄帝でも活躍しているのをよく聞くよ!」
「ふふ、知られているというのもくすぐったいものだ」
 観客席からの言葉に、レイリーがしかし、誇らしげに微笑う。日頃の活躍の名声は、確かに浸透している様だ。
「それでは! 今日の強敵の出現だ! もちろん、何が出てくるかはみんな知ってるよな!
 そう、カイザータウロスだ!」
 MCが声を張り上げるのへ、観客たちからも声が上がる。果たして蒸気車に引かれてやってきた檻の中には、凶悪に周囲を睨みつける、巨大な牛のような怪物がいた。その全長は、人間の大きさなどははるかに超越している。肥大化した筋肉、その前脚だけで、人間などは殴り殺せるであろう程のもの。
「あれがカイザータウロスですね」
 『挫けぬ軍狼』日車・迅(p3p007500)が笑ってみせた。
「喰い甲斐がありそうです……敵としても、肉としてもね」
 凶悪な怪物を目の前にして、イレギュラーズ達の士気は衰えるどころかあがっている。当然だ。この後にご褒美が待っているのだ。そんな気配を察してか、カイザータウロスが轟! いななきをあげた! 空気を震わせるような声が、イレギュラーズ達の肌を叩く!
「ひええ、中々迫力あるっすね!」
 『No.696』暁 無黒(p3p009772)が耳などを抑えつつ、しかし不敵に笑う。
「でも、この後の楽しい焼肉のため! ぼっこぼこにやっつけさせてもらうっすよ!」
「うん! おっきな牛さんは、ちょっとかわいそうかもですけれど、みんなと焼肉、きっとおいしいですから、たのしみなのです」
 『はらぺこフレンズ』ニル(p3p009185)がそう言う。ニルには味覚的な意味での「おいしい」は理解できないというが、しかし皆と食べるご飯は、きっと「おいしい」にちがいないのだから、ニルの心をすごくワクワクとさせていた。
「せっかくのバトルです。観客の皆様もいらっしゃるのですから、私達の戦い、存分に魅せて差し上げましょう。
 ラーシア様も、楽しみに見ていてくださるでしょうし」
 そう言って観客席に視線をやれば、確かにラーシアの姿があった。此方の視線に気づいたかどうかはわからないが、応援するように一生懸命手を振っている。焼肉も楽しみだが、皆の活躍も楽しみにしている様だ。
「しかし、闘技場で牛とバトル、か。この間のスイカの怨みの魔物化した依頼よりかは理解できるけど……鉄帝って言うのは面白い国だな」
 『青眼の灰狼』シュロット(p3p009930)が嘆息する。その横にはプレーティがいて、腕を組んでカイザータウロスを見つめている。
「別に心配してるわけじゃないけど、一応気をつけなさいよ! あんたを誘ったの私なんだから、なんかあったら気分が悪いわ」
 つっけんどんにいうプレーティだが、分かるものが見れば本気の心配の色が乗っているのが分かっただろう。シュロットはそれに気づいたか否か、苦笑してから、
「わかってる。それにしてもプレーティ、お前が紹介する依頼ってこんなのばかりだな?」
「それじゃ私が変な仕事ばっかりしてるみたいじゃないっ!?」
「HAHAHA! 仲がいいのは結構だけど、そろそろ時間みたいだぜ!」
 貴道の言葉通り、気づけば会場は静まり返っていた。いよいよ、カイザータウロスの檻がひらかれる。その緊張感に。
「さて、事前の作戦通りいこう。わたしが敵を抑える。貴道殿は皆を指揮して、おいしく下ごしらえしてくれ」
 レイリーの言葉に、貴道は頷いた。
「いよいよですね! 必ず勝利を勝ち取り、その後の焼肉も勝ち取りましょう!」
 迅に、仲間達は不敵に笑った頷いた。果たしてMCによる前説も終わり、いよいよカイザータウロスの解放の時は訪れた。
 激しく鐘が打ち鳴らされ、同時に居りが一気に解放される。慌てて逃げ出す蒸気車をしり目に、三頭のカイザータウロスは激しいいななきをあげる!
 さぁ、焼肉をかけ戦い、その始まりの時だ!

●食前の運動!
 轟! 響くいななきが、イレギュラーズ達の肌を叩く! 此方から見れば食材だが、しかし相手は何人ものラド・バウ闘士を仕留めた怪物だ! 油断はできない!
「私はレイリー=シュタイン! 猛きタウロス達よ私の夕食となってもらおう!」
 燦然と輝く槍を掲げ、レイリーは叫ぶ! 翻るマントは、さながら闘牛士のそれのように、タウロスたちの視線を引き付ける。轟、いななきをあげながら、タウロスがレイリーへと突撃! 激しいタックルを、レイリーは盾を掲げて受け止めた! ず、と足に衝撃が走り、踏みしめたそれが地を削りレイリーの身体を押す!
「大した力だが……! このヴァイスドラッヘを取るには至らない!」
 レイリーは不敵に笑うと、タウロスを盾で殴りつける。顔面を殴りつけられたタウロスが怒りに吠えるのへ、高速で動いた無黒、そして迅が一気に接敵する!
「脚には自信があるっすよ! 迅さん! こっちは回復支援にうつるっす! 迅さんは攻撃願いますっすよ!」
「了解です! さぁて、おいしく下ごしらえしてあげましょうか!」
 二人は頷き合うと、さらに加速。人外の怪物であるタウロスですら追いつけないであろうその反応速度はまさに一級品。
 迅は一気にタウロスへ接近するとそのまま拳を振り上げたアッパー! タウロスを上空へと打ち上げた! 観客たちが歓声をあげる!
「良いぜ、肉は良く叩いてなじませなきゃな!」
 貴道の言葉に、迅は頷いた。
「承知……です!」
 上空に打ち上げたタウロスを追うように、迅は跳ぶ。タウロスよりもさらに高くへ。そのまま、落下の速度を乗せた鋭いかかと落としをタウラスへ見舞う! ぶもう、と悲鳴を上げて、タウロスは地にたたきつけられた! 衝撃に大地が揺れる! タウロスは衝撃に身体を激しく地の目され、そのまま倒れて動かなくなった。
「ナイスっすよ、迅さん! ニルさん、手分けして皆を回復っすよ!」
 無黒の言葉に、ニルは頷く。
「まかせてください、ニルも頑張るのです!」
 無黒とニル、二人の放った天の祝福と福音、二つの聖なる輝きがレイリーへと降り注ぎ、身体に走った痛みを和らげ、活力を取り戻させる。一方、のこったタウロス二匹の放ったタックルが、レイリーを激しく吹き飛ばす!
「くっ……!」
 吹き飛ばされたレイリーが数メートル後退して着地、
「すまない! 再度引き付けるまで援護を!」
「承知した。鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。この技の冴え、存分に見てもらおうか」
 名乗りをあげつつ、エーレンは軽やかに戦場を駆ける。タウロスの背後に接するや、一気に刀を抜刀! ふりぬかれた刃が、タウロスの後ろ脚の腱を切り裂いた! ぶもう、とタウロスが悲鳴をあげる。痛みにずどん、と残る後ろ足を踏み込む。途端、蹴り上げられた後ろ脚がエーレンを狙う。
「遅い……!」
 エーレンはしかし冷静に後方へと跳躍。紙一重の位置で振るわれる、丸太のような足がエーレンの眼前を擦過した。その繊細な動きに、観客席から大きな歓声が上がる!
「すまない!」
 レイリーの言葉に、
「支えてもらっているんだ、こんな時こそ俺たちが支えずにどうする」
 エーレンは静かに頷いた。
「その通りです。レイリー様、残る一匹はこちらが」
 弥恵が優雅に一礼、腰布をひらりと震わせると、一匹のタウロスが興奮したように鼻息を鳴らす。
「此度はマタドールの真似事でも致しましょうか。優雅に、可憐に……踊りましょう?」
 そう言った途端、弥恵目がけてタウロスが走る! 巨大な質量が弥恵へと迫るのへ、弥恵は冷静に跳躍。飛び越える形でタウロスの突撃を回避! タウロスの背中側から、踊る様にその優雅な手を振るえば、魅惑の魔力がタウロスをからめとり、その力を強かにそぎ落とす! タウロスの後ろ側に着地した弥恵が優雅に一礼すると、観客たちに歓声が上がる。一方、弥恵の攻撃を受けたタウロスは幻惑されながらもその身体を振るい、反撃に転ずる。ぶもう、と一鳴き、駆けだすタウロスは、弥恵が振るう腰布を、雄牛の角で貫いた。目測が甘く弥恵に直撃させることはかなわなかったが、びり、っと激しい音と共に、腰布が破れさる。
「……! もう、乱暴ですね!」
「弥恵さん、怪我してるなら回復します!」
 ニルの叫びと共に、天の祝福が弥恵へと降り注ぐ。流石に腰布が治ることはなかったが、減らされた体力が身体に満ちていくのを、弥恵は感じていた。
「ありがとうございます、ニル様。引き続き援護をお願いします!」
「はい! 任せてください!」
 にっこりと笑うニルに、弥恵は微笑みかけた。一方、走り回るタウロスに接敵する、プレーティとシュロット。
「噂にたがわず、厄介な奴なのね……! シュロット、あんたがメインなんだから、頑張りなさいよ!」
 文句とも応援ともつかぬ声をあげるプレーティに、シュロットは苦笑する。
「やれやれ……でも、焼肉のためだ!」
 シュロットは矢を番え、弦を引く。
「僕が撃つ……プレーティ、君はその後に攻撃!」
「まかせなさい!」
 同時、シュロットが矢を放った。その矢は走り回るタウロスに突き刺さり、激痛にタウロスが身をよじる! その刹那、くるりと空中で回転したプレーティが、鋭い跳び蹴りをタウロスにたたきつける! ず、と沈み込むような脚が、タウロスを刺し、プレーティは叫んだ!
「シュロット!」
「了解!」
 トドメとばかりに放たれた矢が、タウロスの脳天を貫く。タウロスは白目をむいて地に倒れ伏した。プレーティが、シュロットの隣に着地すると、にっこり笑う。
「ふふ。なんていうか、私達、やっぱり相性良いって言うか」
 その言葉を遮って、僅かに目をそらしながら、シュロットは言った。
「いや、その……その格好でぴょんぴょん飛び回って足で攻撃するとさ。色々と、見えるよ……」
 そう言った刹那、プレーティの顔が朱に染まり、思いっきり目を見開いた。プレーティはパクパクと口を開くと、
「最ッ低ッッッッ!」
 と、思いっきりシュロットのすねを蹴り上げる。プレーティは不機嫌そうに顔を背けると駆けていく。痛みにうずくまるシュロットに、無黒はゆっくりと近寄ると、
「……痛そうっすね。多分重傷っすよ。回復、いるっす?」
 と尋ねたので、シュロットは、
「お願い……」
 と呟くのだった。
 さて、残るタウロスは一頭。貴道と迅、二人の拳が飛び交う中、
「よし、もう少しだ! 止めを頼む!」
 攻撃を受け止めていたレイリーが、タウロスの勢いが落ちていたことを察し、叫ぶ。
「オーケイだ、レイリー! 迅、ワン、ツーで決めようぜ!」
 貴道の言葉に、
「了解です!」
 迅が頷く。果たして二人は一気に接敵すると、まずは迅から攻撃にうつった。ぐ、と右こぶしを握り、タウロスの顔面、その左側から、右ストレートを叩き込む!
「1ッ!」
 迅の拳が、タウロスの顔面を激しく揺らした。激痛が、タウロスの頭を駆け巡る。迅の必勝の拳に、観客席から歓声が上がる!
「ツーだッ!」
 続いて飛び込んだ貴道の拳、アッパーカットがタウロスのあごを強かに打ち据えた! まるで吹き飛ぶような勢いで、タウロスの顔を、上へと衝撃が駆け抜ける! タウロスは悲鳴をあげることも出来ず、貴道の拳の衝撃を、その脳で全て受け止めてしまった。途端、耐えきれなくなった意識はブラックアウトし、タウロスはその巨体を地へと横倒しにした。
「ヒューウ、ノックアウト勝ちだな」
 不敵に笑う貴道。途端、戦闘の終了を告げる鐘が鳴った。
「見事だーっ! 新たな牛殺しの勇者が誕生したぞ! 流石ローレット! 流石イレギュラーズだ!」
 MCがはじけるように口上を述べるのへ、観客たちが最大級の称賛と歓声の言葉をあげる! 観客席には、喜ぶラーシアの姿もあった。
 果たして、勇者たちはこの時、見事三体のカイザータウロスを討伐したのである――!

●焼肉だ!
「では、僭越ながら。乾杯の音頭を取らせてもらおう」
 と、レイリーがラガービール、『ドラッヘンブロイ』のなみなみと注がれたグラスを片手に、言った。鉄帝の避暑地、そのキャンプ場。蒸気で中身を冷やす保存庫には、大量の牛肉――もちろん、カイザータウロスのものだ――が詰め込まれていて、それは焼かれるのを今か今かと待っている。イレギュラーズ達は、大きな網を囲むように座っていて、網の下では炭火が熱気をあげている。
「皆、お疲れ様。多くは言わない。大いに飲み、食べ、語らおうじゃないか!」
 レイリーはグラスを高々と掲げる。他のメンバーも、酒であったりジュースであったりしたけれど、同じようにグラスを掲げて。
「かんぱーい!」
『かんぱーい!』
 と、グラスを打ち鳴らす。次々とグラスが空になって、戦いの疲れを癒してくれる。
「よぉし、じゃあ焼きますよ! お任せください!」
 迅がさっそく、切り分けられ多肉や、差し入れのトウモロコシ、玉ねぎやピーマンなどの野菜を並べていく。ちなみに、牛を捌いたのは貴道だ。流石はサブクラスコック、実に手際が良かったことを記しておく。ついでに言うと、包丁を使わずに手刀で捌いたのだから豪胆である。
「ん~、実に香ばしい香りだ! 牛と言えばやはり独特のにおいがするものだが、それもアクセント程度に抑えてある……」
 貴道が、塩とつけダレを用意しながら言う。小皿にのせられたたれや塩が、さらに食欲をそそる。
「おっと、もう食べごろだぜ! 外はしっかり、中心がレア……この塩梅さ!」
 貴道の言う通りに、イレギュラーズ達はそれぞれ肉を取り上げた。塩で、或いはたれで。味付けをしてから、ゆっくりと口に運ぶ……途端! 口の中に広がるのは味の洪水!
「す、すごいっすね! 歯ごたえは残しつつも、でもほどけるように溶けていく……肉の臭みもなく、でもしっかりと主張する野生のうまさ!」
 無黒が思わず目を見開いた。
「ふむ……! 確かに牛は食べたことはあるが、そのどれとも違う滋味だ……やはりこれには、白米が必須……!」
 と、エーレンは、かまどから鍋を取り出して持ってくると、皆の前で開いてみた。そこには、真っ白な粒のたつ御飯がなみなみと炊かれている!
「さあ、肉には炊きたての白米がなければ始まらない」
 まったくである。エーレンは皆に白米をよそい、配った。果たして肉と白米とあればもはや向かうところ敵なしである。
「差し入れに、野菜や飲み物なんかも買ってきた。さ、どんどん食べよう!」
 シュロットの言葉に、頷くまでもなく皆が食事をとり始める。香ばしい肉の焼ける臭いと、甘みを持つ沢山の野菜たち。エーレンの持ってきた白米や、レイリーの用意したビールなどがあれば、それの消費などは瞬く間、だ。
「みんな、「おいしそう」にたべてます!」
 ニルもにこにこと笑いながら、食事を口にする。
「とってもおいしいですね……! 皆さんをお誘いしてよかったぁ……」
 ほくほくとした笑顔で、ラーシアが笑う。隣にいた弥恵がお酒を手渡しつつ、声をかける。
「ふふ、お誘いいただいてとても感謝していますよ、ラーシア様。
 そう言えば、夏も本番です。水着などは今年はご用意されたのですか?」
「いえ、実は今年はまだ……素敵な水着が欲しかったのですけれど……」
 ラーシアが苦笑するのへ、弥恵も笑う。だが、少しばかり酔いが回ったのかもしれない、弥恵はわずかに体勢を崩した。
「きゃ……っ!」
 間の悪い事にラーシアがそれに巻き込まれ、近くにあった酒瓶もろとも、地面に転んでしまう。弥恵も弥恵で、その上に転んでしまって、二人お酒まみれで、抱き着くように地面に倒れ込んでしまった。
「も、申し訳ありません! ラーシア様! お召し物が……。
 か、替えの服を用意します!
 え、ええと、ダンス用に持ってきていたバニースーツと水着、どちらがよろしいですか!?」
「え、ええっ!? その二択なんですか!? いや、それよりも、ま、まずは立ち上がりましょう……あ、やだ、変な所触っちゃだめですー!」
 と、わちゃわちゃしたりしたが、楽しいハプニングである。(ちなみに、バニースーツの方が布面積が広かったので、ラーシアはバニースーツを着たらしい)。
「……しかし、流石我らイレギュラーズ、牛三頭分も瞬く間に消えていきますね」
 肉を焼き焼きしつつ、迅が苦笑する。イレギュラーズ達のペースは衰えることなく、保存庫の肉も、野菜も、お酒も、消えていくばかりだ。
「ま、これだけ美味いと、箸も止まらないな! おっと、それはミーの育てていた肉だぜ!」
 ぎゃあぎゃあと騒ぎつつも、楽しく食べる。
「おっと、これはもう少しで焼きすぎになってしまうな。胃袋に余裕があるやつはいるか? ……と、聞くまでもなかったな」
 尋ねる前に消えていく肉に、エーレンも苦笑した。
「プレーティ、機嫌を直してくれないか……?」
「ふんっ、変な所のぞく変態と、話なんかしないわよ!」
 シュロットはプレーティの隣で機嫌を取りつつ、食事を楽しんでいる。
「ばーべきゅー、たのしいです! みんなでたべるの、とても「おいしい」ですね!」
 ニルが屈託のない笑顔で笑うのへ、無黒も笑った。
「そうっすね! とても「おいしい」、っす!」
「そうだな、皆が楽しめるのが、一番だよ。
 と言うわけで、みんな楽しんでるー!? 私は楽しんでるよー!」
 レイリーが酒のグラスを掲げながら、そう言った。
 仲間達は笑いながら、同意の声をあげる。
 それから夜がすっかり深まるまで、皆は大いに笑い、語らい、ひと時の休息を楽しんだ。
 今この瞬間は、確かに、最高に楽しい時間が、イレギュラーズ達の心も体も癒してくれていた。

成否

成功

MVP

郷田 貴道(p3p000401)
竜拳

状態異常

シュロット(p3p009930)[重傷]
青眼の灰狼

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様、牛殺しの称号と共に、楽しい思い出を手に入れられたものと思います。

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