PandoraPartyProject

シナリオ詳細

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 こんな世界、俺は知らない。


 走り続けることが唯一の生存ルートでせうか。否、駆ければ駆ける程に命の導火線はじりりじりりと焦がれ燃えて消え尽きいく許りでありました。はぁはぁと私の呼吸が荒くなるばかりで其れに伴って焦りも滲むのです。
 嗚呼、このまま私は此処で朽ちていくのだと。名も知れぬ怪物に殺されて死んでしまうのだと思いました。
 此れを読んでいるあなたは不運なことに『其れ』の連鎖に巻き込まれた不運で幸運な被害者なのでせう。
 命懸けのゲヱム。
 逃げて生き延びるか、殺されるか。神様は微笑まず己が天秤にかけるのは究極の二択と云うのです。
 武器を握ることだって出来たんじゃあないかとお考えかと思いますが、此の世界では生憎武器は通用しないのでせう、侍として刀を長年握って来た私の愛刀は真っ二つ。下卑た笑みを浮かべた『其れ』(後から思えばあれは怪物であったのでせう)は其の巨体を用いて私の左腕を砕いてしまつたのです。
 痛みこそあれど本能が逃げることを選びました。其れで正しいと気が付いたのは後です。痛む腕を止血して固定して『あれ』から逃げ延びることを選びました。夜を迎え朝が来て日が昇り、其れを繰り返す度に腹が減り用だって足したくなるというものです。私は其れ迄人の営みの中に居たのですから。
 けれども其れではいけないのです。そうしてしまうことで『あれ』に居場所を伝えてしまうのですから。生き残るために残された一日。朝と夜は宛てにならず、暗がりに息を潜めたとて『あれ』の視界は常に明るい。
 逃げ、生き延びよ。
 でなければ、死ね。


「ようこそ。鬼ごっこは得意かな」
 カストルは淡々と述べる。曰く、鬼ごっこの特異不得意でこの依頼の達成度が変わってくるのだとか。笑顔は消えていた。其れがふさわしいとカストルは考えているようだった。
「一日逃げ延びれば勝ち。そんな鬼ごっこの依頼だよ」

「ただし、命懸け」

「君達なら大丈夫さ。だって、可能性(パンドラ)があるだろう?」
 それに、境界世界なら死んだってまやかしだしね、とつけたして。カストルは、意地悪く笑った。
「だから、君達は大丈夫だよ。絶対に生きて帰って来られる」
 カストルは手を差しのべた。やや低い位置から差し出されたその掌は、やけに偽物のように見えた。

NMコメント

 一文字シリーズ三作目、逃走の逃。
 生き延びてください。もしくは、死んでください。
 どうも、染です。

●目標
 一日生き延びる

 文字だけ見ればめちゃくちゃサバイバルっぽいですね。

●エネミー
 ・黒くて大きな何か
 ※倒すことは出来ません。逃げてください!
 巨大、怪力の怪物です。移動速度は遅いですが、殺害対象を発見したときの執念が凄まじいです。
 撒くのは簡単ですが、鼻が非常に効くため発見された場合一度に長距離を逃げる必要があります。 

 ・黒くてぬめぬめした何か
 ※倒すことは出来ません。逃げてください!
 素早く湿り気のある怪物です。非常に耳が良いため、半径10m以内で物音がすれば素早くやってくるでしょう。
 絞め殺してきますが核となる部分を掴むことが出来れば、遠くへ投げて逃げることが出来ます。そのまま逃げ切りましょう。

 ・黒くて小さい何か
 ※殺せますが復活します。無意味です。逃げてください!
 小さくて数の多い蠅のような怪物です。目がいいので追尾してきます。
 殺せますがまた復活しますので、構っているだけ無駄です。
 虫取り網のようなものがあると良いでしょう。

●世界観
 現代東京風、高層ビルの並んだ世界です。
 どこかに真っ白な扉があります。それを見つければ逃走成功です。

●その他
 敵に殺されるか、逃げ切るか。プレイングに書いておいてくださいね。

●サンプルプレイング
 ……っ、あれが怪物? 見た目も怖いけど、なんつーか……怖いな。
 見つからねえように逃げねえと……あ、っ、くそっ、見つかった!

 それでは、皆様お帰りをお待ちしております。

  • 完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年08月02日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

咲々宮 幻介(p3p001387)
刀身不屈
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
眞田(p3p008414)
輝く赤き星
エーミール・アーベントロート(p3p009344)
夕焼けに立つヒト

リプレイ


(はっ、逃げ切るだけでいいのか? そんなもん、俺にとっちゃ朝飯前もいい所だぜ)
『傷跡を分かつ』咲々宮 幻介(p3p001387)は余裕しゃくしゃくな笑みを浮かべた。曰く、その俊敏さは一級品。
 だから、ちょっとくらい遊んでやる。そんなつもりだった。夜闇、美しいガラス張りのビル。反射して映った黒のバケモノを見るまでは。
(うげ、なんだあの見るからにヤッベェの!?
 くそ、カストルからの説明を聞いてる時に居眠りなんかしてんじゃなかった……しっかり聞いとくべきだったぜ)
 物陰より覗いていた幻介の匂いを感じ取り、恐怖だけを与える叫び声をあげながら、物凄い勢いで幻介の元へと突進してくる。
「デケェのはまぁ、見るからに鈍臭ぇから楽勝だろう……って、待て待て待て!」
 巨体は、聳え立つビルをものともせずに進み続ける。ミシ、ミシとビルが軋むなんて。
(なんだあの馬鹿力は……うおおおおお破片が、破片がァ!?)
 駆ける。駆けねば、死ぬ。降り注ぐ硝子の雨を振り払いながら、幻介は遠くへと走り去った。

「はー、はー……」
 膝が笑っている。理解できないものと対峙したが故の症状(はんのう)。嗚呼、恐ろしい。
(……そんで、あの何かネチョっとしてんのは……うっ、どこぞの服だけ溶かすスライムとか思い出すぜ……そんなもんよりよっぽど質が悪そうだな……っ、近付いてる!?)
 嗚呼もう、と呟くよりも先に足が進んだ。逃げなければ、死ぬからだ。
 あの粘体なら、高ぇ所に逃げても壁沿いに登ってきそうだから意味は無さそうだ。
 そもそも、あのデケェのが建物をぶっ壊せる程のパワーなら高い所は逆に危険か?
 思考する。姉の教え。考え続けろ。生き残るために。
(で、あとは……何か虫みてぇに小さいのが鬱陶しいな、何とかチビチビと斬り払う事は出来るが……キリが無ぇ、くそったれがよ!)
 払えど、切れど、潰せど、耳障りな羽音が幻介の集中力を奪い続ける。無視して走り続けることしかできない。羽音が消えるその先まで。
 全力で。幻介のもつ限界のスピードで、夜のネオンをかきわけて走り続ける。
 刹那。
(なんだあれは……扉!?)
 黒い世界には不釣り合いな、真っ白な扉が具現する。
 後ろからはあの巨体と粘液が迫る。
「くっそ……どうにでもなりやがれってんだ!!」
 扉を、刀をねじ込んで押し開く。
 その先に待っていたのは。
「? ああ、お帰り。君が一番のりさ」
「……ったく!」
 カストルが待つ、境界図書館だった。


(高い、あれは……建物? ライブノベルの世界は、とても、とても、不思議な場所。それに…不思議な、生物)
 カストルより聞いた話を反芻しながら、『うさぎのながみみ』ネーヴェ(p3p007199)は歩みを進める。
「痛いのも、苦しいのも、嫌ですから…逃げ切らなければ、いけません、ね」
 真っ暗な世界にぽつり、残されたネーヴェは、這い寄る黒を遠ざけ続けた。

(兎は逃げ回るもの。どこまでも、どこまでも、逃げましょう。
 大切なのは、逃げ道がいくつもあること。そして極力、見つかる隙をなくすこと)
 何かに見つかってしまうまでは、じっと隠れて耐え凌ぐ。そうすれば物音を立てることも、見つかる危険をおかすこともないからだ。
 意味の解らない粘液が、ねちょねちょと音をさせながらネーヴェの隠れる路地裏の前を往復している。
(ドキドキします…ああ、早く終わって欲しいのに。こういう時に限って、時間は長く感じてしまうから、)
 はぁ。
 溜息の音。それらは目の前の粘液が、路地裏へと兎を追い込むための手段となる。
(!? こんな音ですら、だめなの!?)
 風下へ。風下へ。反射するものを横目で見る。嗚呼、だめだ、まだ『来て』いる!
 追っ手の姿が見えなくなっても油断はできない。だから、走り続ける。華奢な身体が悲鳴をあげても、死ぬという体験は不必要なものに思う。
(早鐘を打つ心臓が、痛いくらいで。休んでしまいたいと、思うけれど、そううまくはいかないでしょう……だって)
 こんな世界で散り散りになった仲間が、そう簡単に現れてくれるとは、思えないからだ。
(ああもう、虫も、ぬめぬめ、したものも……気持ち悪い、です! 次から次へと、もうっ!)
 嘲るような羽音が耳元で鳴って。邪魔だと、ネーヴェがくるり、舞う。花吹雪は、虫を確実に引き裂いて、僅かな隙を生む。
 粘液が迫る。首を絞めようと、ネーヴェに降り注ぐ。
(っ、ああ、だめっ、でも、わたくしは!)
 生きる。
 その確かな意志は、ネーヴェに黒の海から核を手繰り寄せさせる。掴んだ核を、握りつぶせば。それは、其処からいなくなった。
 ひゅうひゅう、と喉が鳴って、奥で血の味がする。
(それでも、それでも!わたくしは、生きることを諦めない。あの人を探さなくては、いけないから)
 どこかで扉が開く音がした――行かなくては。
(痛いのも、苦しいのも嫌だけれど、わたくしは諦めたくない――生きたいの!)


『Re'drum'er』眞田(p3p008414)の口笛がひゅう、となる。
(もちろん逃げ切るとも! つーか死んでも平気ってお気楽だな…ありがたいことだけど。ゲームって感じ増すし?)
 さぁさ、生存ゲームを始めよう。履きならしたスニーカーの紐をチェック。上々。
(まあ、だとしても。あんな暗黒物質に追いかけられる鬼ごっことか嫌すぎるんだけど!
 俺は何時だって負ける気も死ぬ気もない! あんなのに捕まるもんか!)
 命は握られる側ではなく、握る側でいるほうが、ずっと楽しいから。

 とにかく全力で移動をモットーに、眞田は走っていた。
 ひたすら逃げる、撒く、振り切る、隠れる。これらを駆使して。
 故に眞田は大したダメージもなく、追手を撒き好機を待つことができていた。
「動かないことにはここから出られないんだから、カシコく行かなきゃダメだろ?」
 羽音が纏わりつく。後ろに倒れつつ――逃走。其処に倒れたのは眞田ではなく、眞田の幻影だ。
 見事に罠にハマってくれる姿には安堵するが油断はできない。同じ手が通用する個体ではないからだ。
(――ほら、また来たよ)
 粘液がぽたぽたと、闇から沸いて。ばぁ、と現れたものの。気配を消失させていたそこに眞田の心音(ビート)はなく。また眞田を狩りに、粘液は消える。
(パニック映画っての?そんな感じだよな…目の前を明らかにヤバいやつが通り過ぎてく感じ…こっち見るなよ頼むから…)

 敵さえいなければ、眞田は熱心に扉を探し続けていた。見つけるのは得意だから、捕まりさえしなければこの勝負は勝てる、そう踏んで。
「しかし…ハァ、なんて嫌な役だ…。鬼ごっこは好きだけど、そりゃ人間相手の話じゃん」
 百歩譲って怪異と鬼ごっこをするなら捕まえる方がいい。こんなゲーム、最悪だ。

 黒は味方なら安心するけど、敵だと怖くて嫌だ。
 最も透明から遠い色。負の気を感じる、でも正体は不明な。そんな色だ。

(――あれを見ると思い出すんだ。俺は人生をかけた鬼ごっこを、隠れ鬼をしたことがあった。その時の感情も黒。その後の、何もかもも……そういえば、俺はそのゲームに勝ったっけ。だから今日もきっと、)
 青い花、血走った眼、それから、鬼ごっこ。命懸けで、美しくて、楽しくて。
 あれ。
 なんだっけ。
 まぁ、いっか。
 ぼんやりとした眞田の目に映るは、白い扉。
「――あった、あれが出口!」
 ゲーム終了のサインへ飛び込んで――みーつけた。


(逃げろ、ということでずっと逃げ続けているんですが……死ぬってどういうことなのでしょうね?)
『夕焼けに立つヒト』エーミール・アーベントロート(p3p009344)はふむ、と頷き。
(決して命を軽々しく見ているわけではないのですが……混沌世界にやってくるまで、私は死ぬことを知らなかったので……少々興味が出てしまって。
 他の皆さんの考える死と、私の考える死って……違いが大きいのかもしれませんね?)
 他の三人とは別の場所に転移、ワープさせられてしまった。ならば仕方ない、ソロプレイといくしかない。
(あっ、でも軽率に死んだりはしませんよ、私は!)
 曰く――ここで死んだら、なんか兄弟達から――特に兄と弟その1から――この問題とは無関係な罵詈雑言飛んでくる気がする。
 スタンスは基本逃げる。だが、足がそこまで早いわけではない。平々凡々、中の上であればなおヨシ。普通なのだ。

「あ」
 追いつかれた。
 巨体が食らわんと、その口らしきものを開けて、エーミールを追いかけてくる。
 が。それに構っている暇があったら、逃げるが先。非効率的なのはよろしくない。体力だって限りがあるのだから。
「虫は放置しておくのが良いのでしょうがねえ」
 踏みつぶす。地面や壁に足を向けて、ぐりぐり。羽音が喧しくて気が散るのだ、天罰だと思って諦めてくれればよい。
(それでそうそう。それでも、もし、死んでしまったら?)
 ビルの屋上から眺める。徘徊している敵は未だ気付く気配はない。
(まあ……初めての死を味わった、という感じですかねぇ。
 死ぬ時は死ぬという、運命に従っただけのこと、という感じです)
 嗚呼ほら、目の前に粘液が迫って来た。
(他者の死に対しては敏感ですが、自分の死に対する感情がとても希薄なのですよ、私は)
 ▼死ぬ?
 ▼死なない?

 ――ああ、嗚呼!

成否

成功

状態異常

なし

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