シナリオ詳細
嵐のあとに
オープニング
●簡単なお仕事
とある貴族の男が、隣の町へ行くまでの護衛を募集しているという話を聞きつけ、ローレットへとやってきたイレギュラーズ。しかし……。
「へへっ、残念だったなイレギュラーズ! 依頼を受けようとしていたようだが、この依頼は俺が引き受けちまったぜ!」
あなたたちの前に、誇らしげに仁王立ちする男がいた。
この男はキータという名で、なにかとあなたたちをライバル視している。それこそあなたたちが受けそうだとどこからか聞けば多少無理をする依頼でも、大食い大会の出場でも、なんでも横からかっさらっていこうとし、ことごとく痛い目に遭っている。
が、懲りないらしい。
そんな男だ。
いったいどうして彼があなたたちをライバル視するのかは謎だ。
もともと、貴族の依頼と言っても、かなりケチな貴族のようで、たいして実入りの良い仕事ではなかった。ローレットの男は苦笑し、あなたたちには別の依頼を任せた。その依頼は難なく成功した。
それが、2日ほど前のことだ。
●続、簡単なお仕事
キータに依頼を横取りされたか、はたまた紳士的に譲ってやったかしたのが2日前。
そしてその日は、大変な嵐の日であった。
今日のローレットには、屋根の修理をして欲しいだとか、そんな依頼も多かった。
「さいきん、幻想辺境の村で家畜の失踪が相次いでいるのです! 今回は、それを解決してほしいとの依頼なのです!」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は、びしっと羽を羽ばたかせた。
「なんと今回、『情報精度はA』なのです! 良い響きです! といっても、まあ、そう難しくはない依頼だと思うのですが……」
ユーリカ曰く、沼地から這い出してきて、村を荒らしまわっている野生のリザードマンがいるということだ。目撃証言もある。
「で、急にどうしてトカゲが出てきたかというとですね……それについても調べているのです! どうにも沼の奥の大きな蛇が、嵐で起きだして暴れているようなのです! ふっふーん、情報精度Aは、並大抵のものではないのです! 隠された真実など、ボクの前にはひとたまりもありません!」
最近の様子だと、ここで妨害されるのがいつものことだ。ユーリカは一呼吸置いたが、とくに邪魔は入らなかった。
「そういえば、あのうるさい男を2日ほど見ないです! ……なんか今日は久しぶりに静かなのです!」
- 嵐のあとに完了
- GM名布川
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年07月05日 21時35分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●任務開始!
「さて、今回の仕事は、ホージェ村の家畜失踪事件の解決だ」
『任侠』亘理 義弘(p3p000398)は仲間たちの顔をぐるりと見まわす。
「今回の依頼は、家畜を見つけることですね。うむ、家畜泥棒が家畜を攫っていってるということでしょうかね」
『魔導神官戦士』ダルタニア(p3p001301) は、注意深く依頼書を眺める。
「こういう場合は、喰われている可能性もあると考えておくほうがいいですね」
「なんとか被害を食い止めたいね」
『魔法少女』アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)は真剣な表情だ。
「……今回は、あの変な男は出てこないな。まぁ。どうでもいいか」
『信風の』ラデリ・マグノリア(p3p001706) は、帽子を深くかぶりなおした。
(嵐の前の静けさかもな。……考えすぎか)
ルフト=Y=アルゼンタム(p3p004511) は整った眉をわずかに上げた。
「キータは特異運命座標にでもなりたかったのか?」
『銀閃の騎士』リゲル=アークライト(p3p000442) は首をかしげる。
「ふむ。対抗意識を持っていたのかもしれませんね」
「ライバルか……鎬を削りお互いが成長できそうな良い関係だ」
キータをライバルと呼ぶには、実力的な面でいささか疑問を抱いたが、この場にはいない人物のことだ。ダルタニアは思うだけに留めておく。
「やるべき事は分かっちゃいるが、それ以外にも一悶着ありそうだ。まあ、色々と覚悟決めていこうぜ」
「おー! 修行にお金稼ぎ、今日も忙しー!」
『輝きのシリウス・グリーン』シエラ バレスティ(p3p000604)は、一番にギルドを飛び出していった。
●ここはホージェの村です
「ここがホージェ村……」
シエラは感慨深げに言ってみたが、どうやら普通の村である。
『慈愛の恩恵』ポテト チップ(p3p000294) は村人ににこやかに挨拶をする。見慣れぬほど美しい顔立ちだが、衣服が汚れるのにも構わずあぜ道を進む様子を見て、素朴な村人たちは親近感を覚えたようだ。
「あぁ、すいません、ローレットの者ですが」
作物の間からひょっこりと顔を覗かせたダルタニアが、姿勢正しく村人に話しかける。
「村の平和を守るために赴きました。お話を伺えますか?」
リゲルはぴしりと敬礼をする。
「私たちは精霊たちから話を聞いてくる」
「ああ、またあとで」
ポテトとラデリは、それぞれ別々に農家の周辺へと向かう。
「じゃあ、俺たちは懸念事項でも潰すかな」
「おっ、いいねいいね」
義弘とシエラはキータについての調査だ。
「俺たちは、リザードマンについて話を聞こう」
ルフトの考えの先を察して、リゲルは頷いた。話を聞き終えたら、一時的にでも村人に避難してもらった方が良いだろう。
「それと、蛇についてもですね」
ダルタニアが付け加える。
ラデリは道の端に咲いた、しおれかけた小さな花に手を添えた。精霊たちの語らいを、ラデリは聞くことができる。
「リザードマンや大蛇、それからキータのことを教えて貰えないか?」
ポテトに返事をするように、小さな村の土の精が、あいまいに襲撃者の姿を語る。
「やはり、リザードマンか……」
「沼の様子も気になるな」
農家を回っていた一行は、礼儀正しさと人当たりの良さも相まって歓迎され、最終的には村長宅に招かれることとなった。
「で、できれば、沼地の事を聞きたいところですが」
ダルタニアンがずいと身を乗り出す。
「地図などがあれば、助かる」
ルフトの言葉に村長は言葉尻を濁す。
見せたくないわけではないが、本当にどこへやったのか分からないらしい。
「ふむ。少々よろしいですか」
ダルタニアは木箱にしまい込まれた書類の概要を見通すと、あっというまに見当をつけてしまった。
「こちら、いただいてもよろしいでしょうか」
あまりの手際の良さに、村長をはじめ村人たちはあっけにとられた。イレギュラーズというものは、日常的な場面でさえ、こうも常人離れしているものかと。
ルフトは、ちらりと空模様をみた。道がすら、自然会話で植物から聞いたところによると……前の目撃は、この時間帯に行われたようなのだ。
ルフトは、村人たちに念のための避難を促す。
「しかし、我々も今日の分の仕事がありまして……」
「すぐに終わります」
リゲルが丁寧に畳みかけると、思いのほか村人はあっさりと了承した。
「何かあっても守る。安心してくれ」
ルフトが請け負うと、村人たちはほっとした表情を浮かべた。
●宿屋の応酬
「ぶきやぼうぐはそうびしないといみがないぞ」
「シエラか」
キータのことを探る義弘は、村唯一の道具屋でシエラと合流する。
「すっかりこの村になじんでるな」
「でしょでしょ」
キータの前の依頼主が宿屋にいると聞いて、二人は宿屋の前へとやってきた。
何やら争っている声が聞こえてくる。
「ん? あれは前のキータ君の依頼主達……何を慌ててるんだろ」
シエラはそっと宿の扉の陰に寄る。
「こう言う時は聞き耳立てて盗み聞きぃ♪」
話を聞いていると……なるほど、護衛依頼中、何かトラブルがあったようだ。
「ふむー、何かあったみたいだね、もっと詳しく聞きたいな」
「だな」
二人は視線を見かわして、頷きあった。
宿の扉が勢いよく蹴飛ばされ、乱暴に開けられる。
「おいコラぁ、今聞き捨てならねぇ話をしてたようだが、詳しく話して貰おうじゃねぇか!」
ドスの聞いた声が響き渡った。鋭い『眼光』を飛ばす男は、明らかにそちらの筋の男に見える。
「ひっ、ひいい」
「うちの組のが1人連絡つかなくてなぁ。……隠し立てすんならこっちも考えねぇと、なぁ?」
「くくく組ですかあ!? そ、そう仰せられましても」
何も知らないとしらばっくれる二人。
と、そこへ悠々と登場するのがシエラである。
「いやいや~、貴族のお客様は大変ごひいきにさせて頂いております」
またもや一変した空気に、男たちは顔を見合わせる。
「もし正確なお話しを聞かせて頂ければ、護衛だった者に何かあったとしても本人の不注意だった、ということに私達がローレットとして責任を持って報告致しますから!」
「ほ、本当ですか?」
男は恐る恐る義弘の表情を仰ぎ見る。 義弘はあえて黙った。言外に、言わなければ何をするか分からない、という意思を込めて。
(戦いだけじゃねぇ、ここでも気張らねえとな)
それに、おそらくは人の命がかかっているのだ。
二人は観念して、依頼について話し始めた。
分かったのは、依頼の最中、キータが沼地で行方不明になっているということだ。
「あの、本当に大丈夫でしょうか?」
「必ず助け出します、彼も悪運強いですし」
シエラは思いのほかはっきりと言った。嘘はない。義弘もまた頷いた。
「事情は分かった。邪魔したな」
義弘は威風堂々と去っていく。
●襲撃者
なにやら、外が騒がしい。
いち早く気が付いたのは外で調査をしていたラデリとポテトだ。
豚に乗ったリザードマンが二匹。
予想はしていたし、幸いにも、現れたリザードマンは手ごわい相手ではない。
ポテトのマジックフラワーが、昼の空に鮮やかな火花を打ち上げる。
宿屋組と、村長の家で話を聞いていたものたちは同時に外の喧騒に気が付いた。
(皆が集まる前に仕留めるのも、アリか)
火花に気をとられたリザードマンの一体を、ラデリは魔力放出で思い切り地面にたたき落とした。
「あ、アリス、これ宜しく」
ポテトは現れたアリスにロープを投げ渡した。アリスはしっかりとキャッチする。もう一方の端は、ラデリが掴む。
二人は、両端を持ちそれぞれ反対側へ。
「逃がすものか!」
方向を変えて逃げようとした一匹を、リゲルが妨害する。
もう一匹はちらりと別方向を伺ったが、そちらにはシエラがいる。 淡く光る緑色の強固なオーラを纏ったシエラは、どうにも突破できそうにない。
「……ふっ」
ルフトの嘲笑による名乗り向上が、リザードマンの闘志に火をつけたようだ。
行き場を失った一体は、ルフトへと向かって突進してくる。ルフトは難なくそれをかわすと、衝術で一体を吹き飛ばす。
すなわち、仕掛けた罠の方向に。
ロープの頑丈さを確かめていたラデリが、絶妙なタイミングで縄を引く。ピンと張り詰めたロープは、見事にリザードマンを転ばせた。
「おっし、確保だ!」
義弘がよろめいた豚を取り戻す。もう一匹をシエラが別の方向で捕まえた。
あとは、一方的な戦いだった。
アリスのマギシュートが、身動きの取れなくなったリザードマンを討ち取った。
あらかじめ村人を避難させていたのが功を奏し、けが人はない。
「慣れない役目は疲れるな……」
「よく頑張ったな!」
リゲルに労わられ、ポテトは少しばかり嬉しそうな表情を覗かせる。
「有難う。リゲルもお疲れ様だ」
「……そういえば、雨で沼地の大蛇が暴れているだのと、情報屋が言っていたか」
ラデリはつぶやき、眼を細めた。
「……宿の話が気になったが、まさかな」
「ともすれば、ここからが本番かも知れませんね」
ダルタニアンが沼を見やった。
「さて、今回、勝手ではありますが、脅威は取り除いたほうがいいと思いますし」
「……キータさん、無事だと良いんだけれど」
アリスが心配そうな表情を浮かべる。
「みすみす死なせるつもりはない」
ルフトは静かに言い切った。
様子を見に来た村人に、ルフトが丁寧に汚れ落とすための風呂や水の用意を頼む。
「場所も場所だし女性も居る。汚れを落とす用意をして貰えると嬉しい」
「では、やはり沼へ向かわれるのですね」
●沼へと向かう
道中の道がすらを先導するのはルフトだ。
「お前達は嘘を知らない。よろしくな」
嵐で新たにできた地図にはないぬかるみを、豊富な冒険の経験と自然が教えてくれる。深緑の出身であるルフトにとって、自然は好ましいものだ。
たくましく芽吹いた植物が、点々と咲き誇っている。
ポテトとラデリは、行方不明のキータの情報を植物と精霊に尋ね歩く。
ルフトは途中で見かけた果実と薬草を、そっと鞄にしまい込む。いくばくか村人たちへの手土産になるだろう。
しばらく進んだところで、開けた沼地に出る。
バシャバシャと何か水の音がした。
「この大きさですと、もしものことがありますね」
ダルタニアンは注意深くレイピアを握りなおした。
アリスの人助けセンターに、わずかに反応があった。
「つまり、生きてるってことだね!」
「ああ、間違いないな」
ルフトのギフトが、空を銀色に染め上げる。銀空秘める瞳(SilverCielEye)だ。右の瞳に空を写し取ったような、輝く円が現れる。
助けられない相手は、炎をあげて燃えて見えるのだ。
沼地にも、その周辺にも、まだ、その気配はない。
「しぶといな」
「そうでなくっちゃね」
義弘とシエラが嬉しそうに笑う。
センサーの反応は、どうやら……沼の中央にあるようなのだ。
●VS、大蛇
「まずは、何とかしたほうがいいですかね」
ダルタニアが水面を注意深く観察している。
相手もまた、こちらの出方を伺っている。
本格的な戦闘へと移行する前に、ポテトがブレッシングウィスパーをリゲルへと向ける。 足場は悪い。だが、空を飛べば問題はない。
シエラがゆっくりと低空飛行をし、沼へと近づく。波打つ水面から、巨大な蛇が飛び出してくる。
「来るぞ!」
リゲルがシエラの間に割り込み、攻撃を受け止める。紅焔剣のあげる火花とこすれ合い、蛇は炎上する。のたうつと、すぐに火は消えた。
「……胴の不自然な膨らみは、まさかなぁ」
「みんな! 顔パンで宜しく!」
事態を察したリゲルは、咄嗟に攻撃の向きを変えて頭を狙う。危うい姿勢になったリゲルを、義弘が引き戻し自身も前線へと躍り出る。
「アリス!」
ポテトが、今度はアリスへとブレッシングウィスパーを付与する。
「まかせて」
アリスは距離を維持しながら、ゲンティウスを振るう。色のない沼地の中に、魔法少女の衣装の花が咲き誇る。
狙いを定めたマギシュートが蛇に衝突する。
「中にキータさんがいるなら手早く済ませよう」
ルフトが、さらに射撃で蛇の行動を阻害する。蛇は水に潜るのを諦めた。
「この辺りにキータがいると思われますので、そこを避けて胴体を斬る形にしたほうがいいと思います」
ダルタニアはレイピアで蛇の腹部を指し示す。仲間には十分に余裕がある。自身は遠術を発動する。
蛇の注意は、沼を軽やかに飛び回るシエラへと向いていた。
シエラは名乗り向上をあげ、己の闘志を奮い立たせる。
大蛇の攻撃を受けてもなおシエラは引かなかった。存在障壁が相手の牙の勢いを僅かに殺す。傷ついた皮膚を、リジェネレーションが即座に癒やしていく。
蛇の側頭部を、義弘の容赦のないクラッシュホーンが捕らえた。
倒れ伏しそうになる蛇を、ポテトのフロストチェインがからめとる。
続けて治しきれなかったシエラの傷を、ルフトが癒す。
勢いで暴れる蛇に対して、義弘が再びクラッシュホーンを食らわせた。
アリスは巨体に巻き込まれぬよう後方に下がって距離をとり、再び杖を振るう。
耐えかね、蛇が潜水した。
だが、最初ほどの勢いはない。リゲルが覚悟を決め、じりじりと誘い出すように沼地に足を踏み入れる。
意図を察して、ラデリはリゲルにハイ・ヒールを唱えた。
蛇が再び浮上する。
リゲルは蛇の口へと飛び込んだ。頭を庇い、牙を避けて転がり込む。巨体にぶつかられたダルタニアとアリスが膝をつく。
ダルタニアはかろうじて致命傷を避けた。魔法少女は信念を胸に、再び立ち上がる。
ほっとしつつ、ダルタニアは素早くアリスにライトヒールをかける。
ポテトは一瞬気をとられたが、リゲルであれば、無事に出てくると信じていた。
「この悪食め、人生最大の食あたりに苦しめ!」
丸ごと呑み込もうとしたが、盾がつっかえて上手く呑み込めない。蛇はのたうち回り、身体を沼のあちこちに打ち付ける。
リゲルはナイフをえぐるように蛇へと刺す。
「硬い鱗で覆われていたとしても、内臓は鍛えられないだろう? これ以上仲間を呑ませもしない!」
手を伸ばした先には、キータがいる。
「君の力はそんなものか? 俺達イレギュラーズは、コイツを倒して名を上げる」
応えるように、わずかに男の手が動いた。まだ、生きている。手に力がこもる。
「武器が無ければ殴れ、引っ搔け! どちらが先に倒せるか、勝負しようじゃないか!」
なんとか吐き戻そうとするが、リゲルのデュスピリオドが、蛇に食らい付いて離さなかった。
蛇がのけぞり、頭を振り上げる。
そのチャンスを、外で待ち受ける仲間たちが逃すはずはなかった。
キータが身じろぐ。リゲルはかろうじてキータの足を掴む。
耐えかねた蛇が、何かを吐き出す。二つの人影が飛び出してくる。
「……何だ、お前か」
ラデリはそっけなく言うと、ぐったりとした人影にハイ・ヒールを飛ばす。たしかな力量に裏打ちされた光が、弱々しく息するキータを癒した。
逃した獲物に食らい付こうとする蛇に、シエラが名乗り向上をあげて己を奮い立たせ、勇敢に立ち向かってゆく。
枯れかけた声は、血意変換によって再び声量を増す。
アリスが、マギシュートで蛇の牙をそらす。
「とどめだ!」
義弘の拳が、蛇の巨体を思い切り吹き飛ばした。
蛇は、もう二度と起き上がることはなかった。
●アフター・アドベンチャー
「二人とも大丈夫か? 溶けたりしていないか?」
ポテトはタオルを取り出し、リゲルの顔を拭いてやる。返事の代わりに、リゲルは柔らかい微笑みを見せた。
キータのほうも、回復のおかげでどうやら息はあるようだ。
「良かった、無事だな」
「これのどこが無事なんだ」
「それだけ軽口たたけりゃ大丈夫そうだな」
「ふむ。ともすればこっちよりも元気そうです。問題なさそうですね」
義弘とダルタニアンは、回復を受けたキータよりもケガを負っているかもしれない。ルフトがライトヒールを浴びせ、アリスもまた二人にハイ・ヒールをかける。
「キータ君! これからは無茶しちゃダメなんだからね!」
シエラがびしりという。
「さすがに懲りたぜ…」
「あのね、キータさん。依頼を受けるのは構わないんだ」
アリスはしゃがみ、キータと目線を合わせる。
「でも、一人じゃ駄目だよ。一人じゃ危ない事でも皆となら乗り越えられる。だから私達はいつも皆と依頼を引き受けてるんだ」
キータはかつて、人とつるむのはかっこ悪いと思っていたが、連携して戦う彼らを見ていると、そうは思えなくなっていた。
「キータさん、どうか忘れないで覚えていてね」
「……」
「俺もライバル募集中なんだ。一緒に蛇退治の旅に出ないかい?」
「ま、またこんなのと戦うのか!?」
こんな目に遭うのはこりごりだが、ライバルは悪くない。今は実力不足だとしても、いずれは。
「それじゃあ、リザードマンと大蛇を倒したこと、村に報告しに行こうか」
「ああ、汚れを落とさせてもらおう」
ポテトとルフトの言葉に、全員が立ち上がる。
「とりあえず、未来のライバルに肩を貸そう」
リゲルに寄りかかり、キータがようやく立ち上がる。担いでやってもよかったが、なんとなく意地を張って自分で歩きたいように見えたので。
キータは散々だった、と思いながらも、なぜか磨かれた鎧に反射する夕日がまぶしくて仕方がなかった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
沼地の冒険、お疲れ様でした!
キータも家畜も、無事救出されました。
村で泥を落とし、つかの間の休息を経たイレギュラーズのみなさんは、再び戦いに戻っていくことでしょう……。
ありがとうございました。
またいずれご一緒出来たら幸いです!
GMコメント
●目標:家畜の失踪事件を解決せよ!
標的はリザードマンと、沼地の奥に潜む大沼蛇を討伐することです。
●場所
ホージェ村……幻想の辺境、小さな湿地に存在するのどかな村。
最近、家畜の失踪が相次いでいる。
ホージェ村から外に出るには湿地を通るか、街道を迂回する必要がある。湿地の道も、多少道は悪いが、雨の日でなければそう問題はないのだとか。
ホージェ村には、小さな村としての設備がいくつかある。
●目撃証言など
・入口の農民
「おお、今日は客が多いなあ」
・農家
「ああ! 頼んでたイレギュラーズの人だべか!」
嵐で柵が壊れた拍子に、飼っていた豚が逃げ出してしまった。そこへリザードマンがやってきて、いくらかさらってしまったのだという。
「ほら、ちょうどあんなやつ……」
・宿屋
宿には何やら慌てた様子の貴族と付き人がいる。おや、彼らは2日前にキータが請け負った、護衛依頼の対象者だ。
もしも会話を盗み聞くなら、以下のような会話が聞ける。
「だから嵐の日に無理に帰ってこなくても良かったのに!」
「うるさい! 私の時間は1分1秒が貴重なんだ! お前が何とかしておけ!」
彼らは「街道を使って問題なく戻ってきた」としらばっくれるが、もしも上手く情報を聞きだせれば、
・帰り道、沼地に近い道を使ったが、蛇に襲われて落ちのびたが、護衛(キータ)がしばらく帰ってこない
という話を聞ける。
・村長宅
沼地や、沼地の蛇についての情報が聞ける。といっても、守り神とかそういうわけではなく、「いつの間にか棲みついちまった」とのこと。
雨の日は蛇の機嫌が悪いので、あまり近寄らないほうが良いと言われる。
●リザードマン兄弟
しばらく目撃証言を聞きこんでいると、豚を乗りこなす二匹のリザードマンが現れる。人語は介さず、奇声をあげるのみ。
片方が攻撃を受けるなり、時間が経つと、二匹は沼地へと逃げていく。豚を取り返すと感謝される。
●沼地
リザードマン兄弟を追いかけていく、もしくは沼地を深く分け入っていくと、リザードマン兄弟が攻撃しようとしたところで、沼から這い出した蛇がリザードマンを一飲みにする。
(この時点でリザードマンが倒されていれば、蛇は登場時にイレギュラーズを狙う)。
冬眠から季節違いに目覚め、機嫌の悪い大蛇である。
攻撃を浴びせると沼地に潜り、また攻撃を仕掛けてくる。
……なにやら、すでに何か呑み込んでいるような気配がするが……?
大沼蛇
沼地に潜む巨大な(体長10mほどの)蛇。
牙はあるが、毒は持っていないようで、巨体でのたうち回り、無差別に攻撃する。攻撃は沼の水の中に潜って回避しようとする。
地形:沼地
非常に歩きにくく、足をとられる。沼地で大沼蛇に接近して戦うものは、回避値と反応値にマイナスの補正を受ける。なお、蛇はこの影響を受けないが、逆に地上ではマイナスの補正を受ける。
●キータ
案の定、大沼蛇に飲み込まれている。生きている可能性はある。
キータの救出は任務ではないが、イレギュラーズの行動次第。
(補足:ライバル視の理由は、特に決まっていないので、お好きに解釈してください。)
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