シナリオ詳細
おっきいタコ!!
オープニング
⚫︎夜に鳴り響く警笛
夏が近くなり、観光客が訪れるのに適した潮の香りが風に流れて来る。
夜でこれなのだ。天気も良く朝になれば更に香りは体を抜けて透き通るような物になる。
夜の港町を散歩していた、名も無き無頼漢の男はひっそりとそんなことを思いながら桟橋を歩いていた。波の音も静かなもので危険は無いのが分かっていた。
しかし、どうだろう。暫く夜の海原を眺めていたその時、彼の視界の端で波が揺らめくのを感じた。
「……ディープシーの奴らか?」
稀に夜遊びしている海種の若者に遭遇することはある。男は髭面の顔を桟橋から下へ覗かせた、だが何も見えない。あるのは浅瀬に生えている海藻が揺らめいているだけである。
まるでその動きは手招きする手のようで──────
「う、うわあ!?」
──────否、それらは指無き手である。水面に波紋が広がるより早く、突如顔を覗かせた男より高く伸び上がった『それ』は容赦なく男の上に叩き付けられた。
大の男を易々と覆う巨大な触腕。男が足掻いても振りほどけず逃げられないのは、触腕全体に生えた男の腕と同サイズのヌメる触手が絡みついて来るからか。
程なくして上がった断末魔の悲鳴に近くにいた警備兵が駆け寄って来る。
鳴り響く警笛と共に、招かれざる客は新たな獲物を狙って怪腕を振るうのだった。
⚫︎お報せなのです
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がもっきゅもっきゅとサラダボウルに入っている物を口に運んでいる。
「もぐもぐ……依頼が届いたのです! 今回もまた海洋で首都近海警備のお手伝いなのです。
あーんっ、もぐ……ここ最近は大変ですけどお願いしますなのです!」
ユリーカは一度サラダボウルをテーブルに置くと、ポーチカバンの中から数枚の写真と資料を取り出した。
「依頼の説明をしますね? 依頼主はソルベ・ジェラート・コンテュールさん、いつもの夏に向けた依頼を皆さんにとの事ですね、
最近、海洋王国首都にある港で短期間の内に行方不明者が出ているのです。
調査の結果は深海から上がってきてしまった海藻型軟体海獣『メカワコタ』という生物が一連の犯人だと判明、
体長およそ20m。体表面は海藻類に擬態した無数の触手が覆っており、8本の本体である触腕はいわゆるタコと同じ機能を有した吸盤があるようなのです」
ユリーカはサラダボウルの中からフォークに刺さった物を見せて笑顔で告げる。
「このメカワコタはこのように浅瀬では食用としても獲られていて、味はなめらかちゅるんのコリコリなのです! 無事に撃破出来たら食べられるかもしれないですよ?」
- おっきいタコ!!完了
- GM名ちくわブレード(休止中)
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年06月28日 21時25分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
⚫︎ウォーターフロントエキシビジョン
潮風は乙女の髪を撫で、そして漢の度胸を高めてくれる。
そして夏の夜風は心なしか一粒のロマンスを胸に生むだろう。それはさておき彼等イレギュラーズの眼前には港側から一筋のライトが当てられた所だった。
桟橋から十数メートル離れた海面に、こんもりとした『小山』が浮いていたのである。
否、桟橋にいる者達から見ればそれは海藻や流木の山ではないと直ぐに分かる。その海面から出ている部位は明らかに蠢いていたのだから。
「なんでしょうね、これ。タコなのかワカメなのかメカなのかまるではっきりしないのですが……ともかくさくっと退治……ええとこれ本当に退治でいいんですか? 漁とかそういうのじゃないですよね?」
『狐狸霧中』最上・C・狐耶(p3p004837)は耳を忙しなく動かしながら港の監視塔からライトを動かしている警備隊の方へ視線を向ける。ちなみに回答は『OK』というジェスチャーであった。
「タコというか奇妙な生き物だね。ふふ、でも大きいのはそれだけ食べ甲斐が合って良いのかな? 食材としての成長ご苦労さま、なんてね」
「えー……アレ食えんの……? オイラ、タコとか海関連は疎いんだよなぁ。あんなヌルヌルしてそーなの食おうって思ったヤツがスゲーよ」
ザパァン、と海面を打つ音が聴こえて来たのは触腕を振り下ろしたからか。恐らく浅瀬を泳ぐ魚を捕食しているのだろう。そんな姿を目の当たりにして『ノベルギャザラー』ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)と『尋常一様』恋歌 鼎(p3p000741)が苦笑いを浮かべた。
今回彼女達イレギュラーズは夜になると現れる海藻型軟体海獣『メカワコタ』の討伐に来ている。
その名が示す通り、触腕含め体表に海藻に擬態した触手が生えたタコであり。この巨大生物はとてつもない化け物に見えるが、これで通常種は一般的に食されている人気の海鮮食材なのである。
その用途は様々であるが、近年人気を博しているのは海洋首都リッツパークで知られるオーシャン・ジェラートのシーソルトミルクアイスであろう。
イレギュラーズの要望が多かった事もあり依頼を終えた暁には警備隊がジェラートと料理を振る舞ってくれる約束がされている。
「そろそろ暑い時期ですからね、アイスの味、興味があります」
「タコ。……変な形の生き物だ。しかし……そうか、美味しい……美味いのか……そうか……程々に破壊してやる。程々に、そう……程々に」
やはり美味と聞けば例え化け物でも目の色を変える事もある。というわけで『其の力は誰が為に』冬葵 D 悠凪(p3p000885)と『生誕の刻天使』リジア(p3p002864)は互いに久々の同じ依頼という事もあってやる気充分に構えていた。
件のメカワコタは波と共に揺られているからかそれほど速度は感じないが、いよいよその巨体が海面に透けて見えて来る距離まで近づいて来たのだ。
やはり人間を狙っているとしか思えない動きに、ジョゼが「つか、行方不明になったヤツって、アイツに食われたとか……?」と思い至って戦慄する。こんな化け物に引き摺り込まれて喰われるとは恐ろしすぎる。
だが。
ここまで近づけば充分である。港の警備隊は桟橋のメカワコタからライトを離して、沖の方へ点滅させた。
それは、合図だった。
「うーん、うちも海洋出身やけど……え、こんな化物タコおんの? 混沌怖い」
ライトの合図と共に風が強く頬を撫で始めた『海洋の魔道騎士』美面・水城(p3p002313)は、遠目に見た異形の軟体生物に鳥肌を立てた。
そんな彼女が立っているのは桟橋でも陸地でもなく、現在は猛スピードで発進している小型船である。
「安全運転はポイしよう! 全速前進だー!」
「ふっふっふ、見よー! これが私の小型船! 乗る奴ぁ歯ぁしばれぇー! シエラ船長は直進しかできないぞ☆」
『魔法騎士』セララ(p3p000273)と『輝きのシリウス・グリーン』シエラ バレスティ(p3p000604)が高らかに叫び、アクセル全開で小型船を直進させる。もう止まる気配がない爆走船は知らない人が見れば完全にアクシデント映像であるが、そうではないのだ。
目的がアイスを食べる事しかない彼女だが今からジェラート店に突っ込むわけではない。
そう、これから小型船をメカワコタに突撃させる計画だったのである。一気に加速した船は既に数秒でその巨体に衝突する距離にまで近付き、三人は触手蠢く巨体へ飛び移る用意を始めていた。
「じゃ、景気良く牽制やね!」
風に煽られた髪を掻き分けて、水城が魔力を集中。風を切り裂いて魔力の砲弾がメカワコタに放たれた。
桟橋へ伸ばそうとしていた触腕が塔のように天へ突き上がり、まるで一斉に逆立つかの様に体表の触手が激しく振り乱され、雨の様に海水が桟橋側の仲間達に降り注ぐ。
そして次の瞬間……!
「この世の平和とアイスを守るため! 魔法騎士セララ、華麗に参上! 悪いタコさんはお仕置きだよ!」
「私は聖剣騎士団のシエラ! シーソルトミルクアイスを食す者!」
操縦をダイナミックに放棄したシエラとセララ、水城が小型船から身を躍らせ、先の牽制で触手が吹き飛んでニュルニュルの体表の上に着地したのだった。
さぁ、直後に火柱上げて爆発する小型船と大きく揺らぐメカワコタ。果たしてイレギュラーズ達はこれに勝てるのか───!!
●猛攻の海藻型軟体海獣
夜の港に轟き渡る衝撃、爆発音。桟橋沿いに停泊していた小型船が波に煽られて大きく揺れる。
シエラ達の船は駆け抜ける矢の如く見事に突き刺さり、紅蓮の炎と共に多くの触手を二本の触腕ごと吹き飛ばす事に成功していたのだった。
「ふふ、不運だね? そうやって大きくなった事自体が不運かも知れないけどね。まぁ、食べて供養はするよ?」
「あー……あんまり近寄りたくねぇなー、見た目が気持ち悪ィ……あぁわかってるよ、きちんと仕留めるさ」
桟橋に三本の触腕を乗せたまま動かず、まるで気絶でもしたか死んだかのようにすら見える状態のタコ。残った触手が暴れている辺り生きているのだろう。
ならばと打ち上げられた触腕から心臓部目指して駆け寄ろうとすれば、鼎とジョゼに触手が群がりまるで心臓部へ行く事ができない。
「触腕が動かない……今がチャンスでしょうか!」
足元に余波で海水が濁流の如く流れ込んで来る中、どうにか踏ん張りながら悠凪が打ち上げられた触腕に近付いて触手を斬り払う。
「……どうにか気合で耐えてやりました。ところで突撃した三人は何をしてるんです?」
桟橋を滑る波に運悪く転倒したらしき狐耶が後から駆け付けながら、鼎に首を傾げる。
少なくとも天辺にはいないようだが……
「うん、セララ君達も中心部に向かってるみたいだよ? ただ恐ろしいね。どうやら『手が足りない』みたいだ」
不意に触手に手足を掴まれて体勢を崩しかけるが、直ぐに切り払って鼎が片目を閉じた。彼女は予め自身の【ファミリアー】を呼び出して小鳥を頭上に飛ばす事で状況の俯瞰観察をしていたのである。
未だ炎が渦巻いている反対側では水城を先頭に、シエラとセララが周囲から襲って来る触手を迎撃して一歩ずつ進んでいたのだ。
「なら……ここから破壊するまで……!」
悠凪の背中を追いかけるようにして移動していたリジアが足を止める。その背から青白い光の翼を広げ、独特な紋様を展開しながらコバルトブルーの瞳を輝かせた。
その眼が捉えるのはメカワコタの巨体を流れる『線』が集まり、綻びが結集した核。
「視えた……歪み、弾け飛べ────ッ!」
──────ギィンッッ!!
リジアの視界に映る景色が突如歪み、反動で元に戻る様に爆ぜ、青白い結晶が舞い散る。
「やったか……?」
「それ、やった本人が言っちゃダメなやつ!!」
音は派手だが、彼女の眼に綻びが映らなくなると思わず口元に手を当てて不安げに首を傾げてしまう。
そんなリジアにツッコんだジョゼが、漸く触手を刈り終えて触腕に飛び乗る。
「うーん。中央の触手がかなり一掃されたみたいだけど、核には届いてないみたいだね」
ファミリアーで上空から確認した鼎が告げた状況に、リジアが「むぅ」と呻く。
そうこうしている背後で何気に狐耶が最後の触手を潰し終え、触腕に飛び乗った。と……その時。
「……あれ」
「んー? どうした狐耶」
「あっ……」
「あー。もしかして」
一同が思わず同時に顔を見上げた時、海水が滴る音と共に無音で二十メートル近い触腕が持ち上がっているのが見えた。
「させません……!」
咄嗟に悠凪が触腕に掌を叩き付け、直接魔力を流し込む。その行為によって意識的にメカワコタの巨体が揺れ動き、触腕の向きが変わった。
その様子を見ていたジョゼが叫ぶ。
「それはそれでオイラ達が吹っ飛ばされ、あぁーーー!!?」
「ちょっ、まっ」
凄まじい水飛沫が跳ね飛んだかと思えば次の瞬間に極太の触腕がジョゼと狐耶の二人を薙ぎ払い、ノックバックの一言では済まないくらい桟橋の上を滑った。
顔の横でビチビチ跳ねてる触手を忌々しそうに狐耶はぶん投げてタコに無言の抗議の意を示す。
「ごめんなさいお二人とも! でも、こうしないと……!」
どうやら完全にメカワコタの意識が復活したらしく、十数秒で取り除いた触手達が体表から再び生えて来て襲いかかって来る。悠凪が触手から上手く捕まらないように斬り払いながら動き回り、仲間に向かいそうになった触腕を再び挑発しては飛び退き、防いでいく。
しかしそれが功を為したのは間違いない。
「悠凪君、次にまた振り下ろしが来そうだよ」
「はい、ありがとうございます!」
「こっちもバフかけておきますね」
「はい!」
攻撃を引き付ける内に仲間の体勢も整い、相手の動きに注意を払えるようになったのならば動きも向上する。
次第に仲間が集まってきて触手をそれぞれが取り除いていける様になった時、いよいよその先が見えて来た。連携が上手く回りながら振り回された触腕も今度は躱した一同は、その後に続いた声で最後の攻防に出る。
───「みんなー! そっちは無事ーっ?」
セララの声である。
「セララか? 向こうは大丈夫かこれ」
「さっきの振り回しで押されて水城君が落ちたけど、また進んでる。もう見上げたら私達からも見えるよ」
「あ! 見えました、元気そうですね」
「……うむ、ということはもうトドメが刺せるのか?」
───「こっち、実は人数が足りないんだけどもう一人来れるーっ?」
「マジか」
のんびり話している様に見えるが、実際は割と奇跡的に触腕の振り回しを全員で避ける事三回。悠凪がまさかの触腕に海中へ引き摺り込まれて捕食されかける事二回。暴れるメカワコタに近付いては斬るを繰り返して遂に触腕の一本を狐耶が蹴り潰す事に成功して今に至る。
猛攻を潜り抜けながら、セララの助勢を求める声にどうするか思案していた折。再び悠凪がリジアを見た。
その表情は何やら企んでいる様子。彼女は鼎と狐耶に援護を頼み、タコを背にリジアへ向き直った。
「……飛べと。いや、待て。そこから距離を詰める? 小舟があるから大丈夫? ……やれというならやるが……後の保証はしろ、しなかったら………はあ……」
途中から諦めた彼女は、とうとう助走をつけて悠凪のサポートによって一気に跳んで背中の翼を広げる。距離を詰めたのと同時にようやく見えた反対側の状況。セララ達もリジアの姿を見た瞬間に行動に出た。
「押し切ろう! これが聖剣の一撃だよ! すーぱーセララ斬りっ!!」
「了解セララ隊長!
食に狂いし獣の咆哮と共に葬り去る 飢えの一撃を受けよ────【狼牙月光斬】!!」
「っしゃ! さあ、これでも喰らいぃ! うちの全力全開やっ!!」
セララの聖剣が輝き、シエラと水城が隣り合わせにその刃を振り上げる。
一瞬にして巨体を覆う触手が千切れ飛び、蹴散らされ、剣閃と猛き獣の轟撃によって淡く紫紺に輝く心臓結晶が露出した。
「ここで仕留める……! ……程々にな」
二対の光翼を蒼白の煌めきと共に散らして広げ、リジアの眼が純粋な魔力の放出を光線の形で撃ち放った。
寸前に悲しくもグルメの文字が頭をよぎったが気のせいである。
そして、彼女達の全力攻撃は見事心臓結晶を甲高い音と共に破砕。破壊し、間欠泉の様に黒い液体がドバアアァと噴き上がったのだった。
●実ッッ食ッ!!!
遂に海藻型軟体海獣『メカワコタ』の心臓結晶を破壊したイレギュラーズ。
物凄いタコスミに真っ黒になった彼等はその後、触手こそ再生しなくなったものの未だ暴れまくるタコを片っ端から切り刻むという延長戦に入ったが、捕食の心配がなくなった彼等に倒せない道理はない。
何気に二時間後までその作業を続けた彼等も遂にはそれを果たした。
「あぁー……疲れた。オイラもう当分タコ斬りたくねえ、ぶよぶよの感触が手に残った……」
「ふふ、お疲れ様だよ」
「港のシャワーをお借りできるみたいなので流してきます」
「あ、うちも一緒していい?」
「ボクも流したいなぁ……ぐてぇ」
「セララ団長も行くなら私も行く行く!」
そして軽く休むこと既に時刻は回り夜が明けて昼近く。
一行は疲労にぐったりしながらも港の施設で思い思いに依頼達成の余韻に浸っていた。
「ローレットの皆様、お食事の用意ができましたので準備ができましたらどうぞこちらへ」
と、そんな彼等の前に現れたのは港の貿易支援団体の職員。どうやら今回の依頼における謝礼を込めてイレギュラーズに『メカワコタ』をふんだんに(20m級)使った料理を振る舞ってくれるらしかった。
「食事もタコって何だかなぁ、って思ってたけど腹減ったしオイラもいただこうかな」
「お掃除一通りお手伝いしてきました。あ、お食事だってリジア。行きましょう?」
一人、二人。タコスミで黒く汚れていた体を綺麗にして来た者も戻って来るとそれぞれ食堂へ案内された。
食堂で待っていたのは黒髪を後ろで一つ結びにした大柄な美丈夫のコックと、テーブルに所狭しと並んだ数々の新鮮な(タコ)海鮮料理とデザートである。
「どうぞ、好きな所に掛けてくれ。メカワコタの使えそうな部位を君たちの分だけ使った。これは港からの代表としての礼だ、ぜひ食べて行ってくれ」
「おー……え、これ食べれるん? おっきい魚は味悪いって聞くけど……タコには関係ないんかなぁ。あ、はい、遠慮なくいただきます」
恐る恐る席に座った水城が近くに置かれた小皿で自分の所に取り分けて行く。
彼女は揚げタコ焼きを取り分けて試しに一口……
「……美味しいなぁ……♪」
外サク、中トロ、パサッとせず潮の香りが口の中で広がるジューシィなタコ。かかっているのはタコとオリーブ油にニンニク胡椒を混ぜた海鮮ソース。しつこくない持ち味の塩味とちょっぴりスパイスな後味が食欲をそそるのである。
水城が頬に手を当てて満足そうにパクンと食べたその姿に、他の仲間達も同じく席について食べ始める。
「アイスも食べるしタコヤキも食べる。どっちもやるのがイレギュラーズ! 美味しい! コックさん、後でこのタコ焼きのレシピ教えてほしいな。青のりとソースも合うから、良かったら食べて食べて!」
セララはテーブルの中央に置かれたアイスボックスから『オーシャン・ジェラート』のシーソルトミルクアイスをカップに取り、水城の食べたタコ焼きを幾つか取ってパクリ。
うんうん、と頷きながら後で自前のタコ焼き器で作ってあげようと思うのだった。
「ユーリカはふつーに食ってたけど、ホントに旨いんかね。……って思ってたけど意外とこりっこりと歯応えあって旨いじゃん。つか、メカワコタってさ……名前、逆さまじゃね?? たーこーわーかーめってさ」
ジョゼはユリーカが食べていた物と似たサラダにフォークを伸ばし、ごま油と潮の香り漂うドレッシングのかけられた柔らかいレタスの様な野菜とタコの切り身を口へ運ぶ。
ただコリコリしているだけではない。噛めば噛むほどに柔らかく舌に崩れ行くそれは上等な生肉のそれに近い。
「さて、何故そんな名なのかは昔の『ドクター・タナカ』という名付けた奴に聞くしかないな」
コックが肩を竦める。
「ふふ、食べたこと無いからワクワクするね。未知との遭遇みたいな……うん、美味しいね、素材がいいのもあるけど、料理した人の腕もあるかな?」
「動物性の部分が多いものがいいです、エネルギーです。わかめは頭部が寂しい人にでも差し上げてくれればいいのです」
鼎と狐耶もそれぞれメカワコタの唐揚げや、『クチバシ』なるこりこりとろっとした大きな丸焼きにかぶりついている。
「ほらリジア、美味しいですよ? 一緒にどうです?」
「そうだな……その、美味いのか? それは。……うむ……食べる。というか冬葵はなぜ私の世話を、まあいい……」
「んんん! タコ焼き美味しい、アイスも! 身も心も溶けるぅぅう!」
悠凪、リジア、シエラの三人は並々と盛ったジェラートに笑みをこぼす。
口どけのなめらかさは筆舌に難し。程よい塩味に続くミルクの甘さは疲労に効く、まさに甘露。
他にもあるタコのステーキやお茶漬け、干物、スープといった物にも彼等は舌鼓を打ちながら、まんぞくするまで良いタコ料理を味わったのであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
ご満足されたでしょうか?
お疲れ様でしたイレギュラーズの皆様。
メカワコタを倒す事よりもその後の食事が気になるイレギュラーズの皆様にコック、セグァールさんが作って下さりました。
巨大タコとの戦闘は激闘でしたから癒しは必要です。
それではまたのご参加をお待ちしております。
GMコメント
ちくわブレードと申します、皆様よろしくお願いします。
以下情報
●依頼成功条件
メカワコタの討伐
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●敵エネミー詳細
『メカワコタ』
海藻型軟体海獣の名が示す通り、ワカメの如く増殖する性質を持ったタコ。
本来ならば海上まで浮上する事の無い、深海に棲む超大型の個体が何らかの因子によって出て来てしまったようです。
その体長は推定20m、体高6m、8本の触腕を持ち、全体にワカメ触手の生えたタコ。動きは鈍いですが、体表面に生える無数の海藻型触手のせいで非常にタフです。
大きさもさることながら、通常なら海中の微生物を捉える海藻型の細かな触手が人間の腕ほどにまで巨大化しているため、適当に振り回した触腕に触れるだけでもダメージを負う危険性があります。
また、近付きすぎて触腕に捕まってしまい、大怪我を負った報告もされています。
港の警備隊が交戦を重ねた事で対策は判明しましたが、決定打を与えられないのが現在の状況です。被害が他の場所へ広がる前に次の出現時にこれを撃破してください。
主な行動:『ふりまわし(物近範・ノックバック)』『ふりおろし(物中単・1T硬直)』『捕食(物至単・中威力低確率【麻痺】)』
弱点:15mの触腕中央部に存在する結晶型心臓。二人以上で『全力攻撃』すれば破壊できそうです。
『海藻型触手』
本来は微生物を捉える為の物。しかし巨大化したことで成人男性の腕ほどある触手に。
ヌメヌメしていますが熱や衝撃に弱く、脆いので攻撃を加えればすぐに除去できます……が、即座に(1Tかけて)修復してしまうため厄介です。
●ロケーション
港の桟橋か、桟橋側と挟み撃ちする形で小型船上から迎え撃ちます。(リプレイ開始位置)
『桟橋』
鋼鉄製の桟橋が崩れる心配はありませんが、戦闘中は足元まで海水が流れて来る可能性があります。
足元に気をつけて想定される限りの状況に対応してください。
広さは港側から奥にかけて約90m。桟橋の幅は30m(PC全員並べます)
今回はサーカスの事情を聞いている近隣の港業者が協力を申し出ているため、一般に手に入る程度の物や協力に応じてくれます。
●味
おいしい。
海鮮としても優秀な食材である上、体表面に生えた海藻型の触手からは豊富なミネラルと塩分が摂れる為、
成分抽出によって作られるシーソルトミルクアイスがとても美味。GMも美味しいと絶賛。
塩辛にした際の口どけなめらかなクリーミーな舌触りと、のど越しはエールに合うこと間違いなしである。
巨大ダコを倒そう! ということでイレギュラーズの皆様よろしくお願いします。
Tweet