PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<明鏡のホーネスト>嘘から這い出る誠

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


ㅤこの村にはひとつの言い伝えがある。

ㅤ曰く、『子供だけで村の外に出ると、炎の怪異に襲われる』と。

「これは、人さらいに子供を攫われていった若い母親の亡霊のお話だ」

ㅤ村の広場。
ㅤ子供たちに言い聞かせるように語り出したのは、しわがれた老人だった。名をダイラと言う。

「女は自分の子供を探してさまよううちに野垂れ死に、亡霊となった」

「だが、その女の亡霊は死んでもなお自分の息子を探し続け……夜な夜な一人で歩く子供を見つけては自分の子供だと思って攫って行ってしまう」

「そして、子供が自分の息子でないと解ると、そいつを食っちまうんだ」

ㅤぐぁっと手を広げ、脅すように囁くと、その顔の恐ろしさもあってか子供達は酷く怯え出す。

「ま、勝手に村から出なけりゃ問題ねぇよ。食われたくないんだったら、父さん母さんの言うことをよく聞くんだな」

ㅤふん、と鼻を鳴らし、そうしめくくったダイラ。子供達が一斉にコクコクと首を縦に振る。

ㅤふと、後ろから声がかかった。

「──嘘ね」

ㅤその場の者が、声の主の元へと一斉に向く。
ㅤ果たして、そこには齢11程の少女が立っていた。

「ネメシア……!?ㅤお前、ネメシアなのか!?ㅤどうしてここに……聖街に行ったはずだろう!?」
「ずっと、ずっと嘘だと思ってた」

ㅤダイラの驚きに返答することも無く、ネメシアは極めて冷静に、ダイラの話を嘘だと断定する。

「いや、嘘だって分かってた。その話は嘘」
「……嘘じゃねぇ。俺はこの目で見たんだよ」

ㅤ炎に包まれた怪異を、この目で。
ㅤそう呟いたダイラの目には、自身の過去の光景がありありと映り込んでいた。

「……それは本当ね。でもお話は嘘」

ㅤまるでどれが本当でどれが嘘なのかが分かっているかのように、ネメシアは的確に答えを返す。

「嘘はいけないの」

ㅤ──だから、私が嘘じゃなくしてあげるの。

ㅤネメシアがそっと眼を閉じ、ゆっくりとまぶたを開く。
ㅤその目は赤く染められており、それはどこか嘘を連想させた。

ㅤ──空が燃え上がる。


「見ればわかる通り、窮地だ」

ㅤやっと山を抜けたところなのにね、とグラスが愚痴る。
ㅤ空を見上げれば、炎に包まれた巨大な女が、まるで何かを探すように辺りを見回している。
ㅤ蜘蛛の子を散らすように逃げ回る子供たちを、周囲の大人が必死に担ぎあげる。

「狙いは子供だ。どうやらネメシアは、迷信を元にした怪異を生み出したらしい」

ㅤ何がどうなっているのかさっぱりだよ、とため息を吐くグラスだったが、それはイレギュラーズも同様だった。

ㅤそもそも、ネメシアは聖女候補としてこの村を出て、聖街にて教育を受けていたはずだ。
ㅤそしてその後、イレギュラーズによって誘拐された彼女は、少なくともここに戻ってくることは無いはずだった。

ㅤイレギュラーズから誘拐犯に明け渡された後、どうにか抜け出して故郷の村に辿りたとしても、あのような怪異を生み出すのは、如何に聖女候補とて不可能だ。

ㅤそれに、彼女の意図していることも分からない。イレギュラーズへの復讐か、誰かに操られているのか、そのどちらでもないのか。

「なんにせよ、まずはあれをどうにかしなきゃ話にならない。期待してるよ、イレギュラーズ」

ㅤ避難誘導とかはこっちでやっとくから、とグラスがさっさと村へと歩き出した。

NMコメント

>「もし私達が紡ぐ迷信が語り継がれる物になるなら、いつかそれがきっかけで私みたいな精霊種が生まれるかもしれませんね」
ㅤ──『<明鏡のホーネスト>風説からなる伝説』より

生まれました。七草です。

ここまで色々と関わってきたネメシアですが、今回は敵です。
まずは彼女の生み出した怪異をなんとかしてください。

よくわかんない人はとりあえずあのおっきい的(炎の怪異)にいい感じの攻撃をバンバンぶち当ててください!!

子供たちを守る感じでもいいです!!

●依頼達成条件
『炎の怪異』の討伐

●ロケーション
村の広場です。周囲には逃げ惑う子供たちが多数います。彼らを庇いつつ戦闘を行ってもらいます。
誰も庇わなかったとしても問題はありませんが、その場合に子供たちがどうなるかは分かりません。
村には十数人の子供がいます。グラスが大人たちを扇動して避難誘導を行っていますが、完全に逃げおおせるためには時間が必要です。

●エネミー
・『炎の怪異』
高さ5m程の、炎に包まれた女です。村人のような服を着ています。
攻撃力と命中がアホみたいに高いですが、回避、防技、抵抗などの数値はあまり高くありません。
でかいのでHPはかなり多いです。ようはでっかい的です。
子供を優先して狙う傾向にあります。

・ネメシア
この村出身の聖女候補です。イレギュラーズとは少なからず交流があります。
『炎の怪異』に守られるように立っています。
自分から仕掛けることはありませんが、攻撃されれば対応します。
聖女候補として学んだ魔法と、いくつかの道具を使うほか、嘘を真実にする能力を持ちます。

関連依頼
・聖別の輸送
・聖街クラリネット
・聖女候補誘拐事件
・サンプルSS『明鏡のホーネスト』

●NPC
・ダイラ
幼い頃に炎の怪異をその目で見た生き証人です。炎の怪異は本当でしたが、その時に語られた話は(本人には知りえない事ですが)嘘でした。
ちなみにその嘘を吐いたのはイレギュラーズです。

関連依頼
・<明鏡のホーネスト>風説からなる伝説

●サンプルプレイング
……???
よく分かんねぇけどあの赤いのをぶっ飛ばせばいいんだな!ㅤ任せろ!
炎には水だぜ!!ㅤウォーターバスター!!ㅤうおおおおおお消えろおおおおおお!!!
ちょっと消えた!ㅤここで必殺のパンチだぜ!!!ㅤどりゃあああああ!!!!


以上、皆さんの参加をお待ちしております。

  • <明鏡のホーネスト>嘘から這い出る誠完了
  • NM名七草大葉
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年11月18日 21時30分
  • 章数1章
  • 総採用数5人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール

ㅤ村の広場。

ㅤ情炎に身を焦がす『炎の怪異』は絶えずその双眸を蠢かせ、しきりに村の子供に視線を走らせていた。

「わたしの……わたしの子はどこォ」

ㅤそんな『炎の怪異』を、見上げる女が居た。

「──アナタを倒せばいいんでしょ?」

ㅤシンプルでいいじゃない、と嘯くその女は、『ハイテンションガール』郷田 京(p3p009529)だ。

「オッケーオッケー、京ちゃん理解した!
どーも手加減無用の相手みたいじゃない、京ちゃんアナタ嫌いだなー!」

ㅤ『炎の怪異』へとそう言い放ち、京がビッと指を刺す。

「子供があんなに泣いてるじゃない、蹴り飛ばすには十分なリユーでしょ?」

ㅤ先手必勝。先の先。
ㅤそれを実現するには、剣では足りない。魔では遅すぎる。であるならば、やはりこれであろう。

ㅤ地を踏みしめる事にギアが上がる。
ㅤまるで世界を掴み、自らのものにするかのように、一歩毎に速度を増していく。

「一撃突貫で決めてあげるから、しかと見てなさい、デカ女?」

ㅤそして、その双脚は何時しか地を解き放たれ、彼女は宙を踏みしめた。

「コイツがアタシの……プラウドキックだぁぁッ!!」

ㅤ──炎の巨人が揺れた。

ㅤただの、ただ一つの飛び蹴りで。

ㅤ信じられない出来事に、村人や子供たちの視線が一瞬京の元へと集う。

「あらやだ、視線集めちゃった? いやー、美しいって罪だなー、あっはっはー!
どーよアタシ? とっても良い脚してるでしょ?」

成否

成功


第1章 第2節

わんこ(p3p008288)
雷と焔の猛犬
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
優しい白子猫

ㅤ『炎の怪異』が落ちてくる。

ㅤ落下地点には逃げ惑う子供たちが。避難が間に合わない。間に合わない。

ㅤ鋭い衝撃音と共に炎の怪異が背中を強く打ち付ける。下敷きとなった子供たちは──

「──大丈夫?」

ㅤ1人たりとも居なかった。『淡き白糖のシュネーバル』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)は炎の怪異目掛けて氷の鎖を飛ばし、その落下地点を僅かにずらしたのだ。

「……ここは僕に任せて、逃げて」

ㅤ子供たちを白い光で包み込み、治療を行うと、祝音は炎の怪異へ向き直る。

「君の子供は……僕だよ。ここだよ」
「わたしの、わたしの子供ォ!!」

ㅤ直ぐに体制を整え、祝音に飛びかからんとする炎の怪異。しかし、そこに祝音の姿は無く、眼前にはただ毒の滴る刃の煌めくブーツがあるのみだった。

ㅤその一撃をもろに受け、のたうつ炎の怪異。
ㅤ翻って着地したのは、『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)だ。

「わんこ、と申しマス。こんな惨劇、嘘から出た誠にさせてたまるかっての!!」
「わたしの邪魔をしないでェ!」

ㅤ炎の躍動。炎の怪異の右手より放たれたその正確無比な火球は、必中の意を持ってわんこへと襲いかかる。

「正面突破すれば、当たらねぇデス!!」

ㅤ外さないなら、向き合えばいい。
ㅤわんこは、炎の怪異と火球を射線に入れ、指に込めた力を解き放つ。

ㅤ火花が散り、後に残ったのは、少し黒焦げたわんこと、右手の五指を失った炎の怪異のみだった。



ㅤわんこが戦闘から一次離脱し、祝音が回復を施す。そんな折に、ネメシアは現れた。

「貴女が聖女サマ、デスカ?」
「違う。私はネメシア。もう聖女にはなれない」

ㅤネメシアは、なんということもなくそう答える。

「……ネメシア」
「なに?」
「貴女との関わりはここまで無かったデスシ、そっちにはそっちの事情や言い分があるのデショウ。だから偉そうに説教はしたくないし、しちゃいけないんデショウ」

ㅤそれでも、例えそうだったとしても、わんこは言っておきたかった。

「……だがなぁ。今貴女がやろうとしてることは、唯の虐殺だぜ?」
「嘘を本当にして人を殺す…そんな本当、嘘よりひどいよ」

ㅤその言葉に、祝音が続ける。

「人を惨く殺す『本当』は、人を危険から遠ざける『嘘』より価値があるの?」
「……そうね」

ㅤネメシアが、口を開く。

「人を殺すことは悪いこと。それは本当」
「だったらどうして……」
「──でも、嘘はもっと悪いことだから」

ㅤネメシアは淡々と、自分にとっての本当を語る。

「いついかなる時でも、窮地の状況でも、家族のためでも恋人のためでも、嘘はいけないことなの」

ㅤその目はこちらを向いていない。

「……そう、なんだ」

ㅤ祝音は理解する。ネメシアは話の通じる相手では無かったと。

ㅤ──なら、君は残酷な本当(きみのわがまま)にまみれて一人で死んで。
ㅤ──何も本当(わがまま)の犠牲にしないで。

「……僕、怒ってるから」
「そう。嘘じゃないのね」

成否

成功


第1章 第3節

ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
ヴァルハラより帰還す

ㅤイレギュラーズの猛攻は続く。体制を崩し、猛毒によって弱った炎の怪異に様々な攻撃が殺到する。

ㅤそんな中、一人子供の救出に向かう者が居た。

「おらガキ共。んなちんたら動いてたら食われんぞ。おい、口閉じてろ。舌噛んでもしらねぇから……なっ!!」
「わっ!?」

ㅤそこら一帯の子供を手早く担ぎあげ、離れるのは『月夜に吠える』ルナ・ファ・ディール(p3p009526)だ。

ㅤ怖い仕事は遠慮する。要は適材適所だ。
ㅤ打たれ弱い自分が攻撃に参加する必要はない。彼が戦場にもたらすのは、自慢の足を使った『戦いやすい場』の創出であった。

ㅤ常人を軽く超えたその走りは、子供たちにとって希望の光に映った。

「おら、こっちこい。特別だ。背中に載せてやる」

ㅤ恐怖によって固まり動けない自分達に差し伸べられる救いの手。それはあるいは炎の怪異に立ち向かう者よりも、鮮明に子供たちの記憶に残ることであろう。

ㅤふと、そんな彼の元に炎の怪異が迫る。
ㅤ怪異が子供を狙うのであれば、当然子供を救おうとする彼は真っ先に始末されるべき存在だ。

「チッ、ガキ共!ㅤしっかり掴まってろよ!」

ㅤ邪魔するものがあればぶち抜く。それが例え巨大な炎の足でも。

ㅤ──彗星が空を切った。

ㅤ風圧によって炎を寄せ付けず、どころか、圧倒的な運搬技術によって子供に一切の被害を齎さない繊細さは、彼の気遣いを感じさせるのに充分だった。

ㅤあとに残ったのは、足に大穴を開けた炎の怪異。

成否

成功


第1章 第4節

リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王

ㅤ──あー、大体察した。めんどくさいやつねぇ、色々と。

ㅤ雨宮 利香(p3p001254)がボロボロになった炎の怪異、そしてその奥の少女──ネメシアを見据える。
ㅤ世界が利香に恋をした。口付けひとつで炎の怪異の身体を縛り付け、離させない。

「あらあら、所詮嘘を固められた奴は魂も嘘かしら。それじゃあその炎だって所詮は……嘘っぱちよね!」

ㅤそんな炎じゃ、私を焦がすことはできない。

ㅤ利香は『本物の炎』を展開する。それは自らの瘴気と混ざり合い、業火となりて炎の怪異を焼く。

ㅤ逃れる術は、ない。



「経緯はよくわかんないけどさ。嘘や本当に善悪はないわ。嘘で人生塗り固めてるような私には尚更よ」

ㅤ利香が、ネメシアに語りかける。それは諭すようでもあり、あるいは有無を言わせない凄みがある。

「大事なのは中身、それに対して私は刃をアンタに向けるだけ。自分の罪は払いなさい、坊や……」
「これは、罪じゃない。だって、私は嘘をつかないもの」

ㅤ嘘をつくこと以上に悪いことなんてない。そんな瞳を向けるネメシアに、かける言葉など最初から無かったのかもしれない。

ㅤだとて、たとえ洗脳されてたとしても構わない。この惨劇を生み出したものに、躊躇いなど必要ない。

ㅤ──雷が、三度鳴る。

「……痛い」

ㅤ──それはネメシアにとって十分過ぎるものだった。

「まだ、私は」

ㅤネメシアは、ただの少女だった。

ㅤだからこそ。
ㅤだからこそ、その終わりは呆気ない。

成否

成功


第1章 第5節

ㅤ──ネメシアが、倒れる。

ㅤあっけなく、何も無く。感動も、憎悪もなく。ただ、倒れ伏す。

ㅤそれに合わせて、業火に身を焼いていた炎の怪異も消えていった。

ㅤまるで、これまでの全てが嘘であったかのように、ネメシアは何も知らぬ少女であるかのように息を引き取る。
ㅤあるいは、それは幸せな事だったのかもしれない。

ㅤだが、物語と言う奴は、そう上手くはいかない。

「──まだ、終わらせちゃダメだろう。それじゃあ面白くない」

ㅤふと、どこからか、声が聞こえる。
ㅤそして、それに応じるかのように、ネメシアの懐が光り出す。

ㅤそれは、銀に輝く1枚の符だった。
ㅤかつてネメシアを誘拐したイレギュラーズの一人から受け取った、式神使役の符。

ㅤその効果が、今発揮される。

ㅤネメシアが起き上がる。そして、自身の胸に手をかざす。すると、胸を裂く三つの傷が消えてなくなる。
ㅤそれはネメシアには使えないはずの聖女の秘奥『蘇生の儀』であった。

「……なんで」

ㅤすっと目を開いたネメシアは、困惑を隠せずにいる。

「違う。これは違う。今の私は嘘。嘘なの」

ㅤネメシアは嘘が嫌いだった。どうしても、許せなかった。

「誰か、誰か私を殺して!」

ㅤそれは自分とて例外ではない。

PAGETOPPAGEBOTTOM