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シナリオ詳細

【日夜探偵事務所】スーパーウルトラキングビッグわんわんお

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●とにかくデカイ。すごく大きい。

 これはとある町の、とある開けた山道。時刻は夜も深く、通常であれば誰も登山などしない時刻。さあさあと、静かに雨の降るその中で。
その光景を見た探偵、日夜歩は絶句した。

「これは……どういうことだ……?」

彼が今居るのは、青々とした包丁葉っぱ等が湿り気のある夜風に吹かれ、揺れ動く、とある山道の脇にある、緑豊かな林の中。
彼の視線は、その中のたった一箇所に釘付けにされていた。

 それは、草原のド真ん中に鎮座する、岩と見紛うほどの存在感・重量感を持った、白く巨大な塊。
しかし、それはただの岩などではない。その証拠に、周囲の草と同様に風に吹かれたその表面が、僅かに波打っており。しかも、その身体は僅かながらに、膨らんだり、縮んだりと、動きが見られる。
そう、あの岩は生きているのだ。

それに気づいた時、日夜の足はもと来た道を引き返そうとしていた。
その背中には、冷や汗すら流れている。

……だめだ、あれは自分一人では手に余る。下手な『怪異』より質が悪い……!

逸る足が、小石を蹴飛ばし。それが不幸にも、巨大な何かに当たる。

「しまった……僕としたことが……!」

その時、森に眠る『何か』は、ゆっくり、その身を起こし。
日夜の姿を見つけるなり、ハッハッと息を荒げ、その目をキラリ光らせる。
そして、土を踏み鳴らし、男に迫っていくーーーー!!



そこから、時を少々飛ばそう。

「……と言う事が、あってだね」
「あはは、だから歩っち、毛玉塗れで帰ってきたんだ〜」

げんなりした様子の日夜を、金髪の女性……ロザリーがせせら笑う。そんな彼女に一瞬冷たい視線を送るが、すぐに大きな溜息をついた。

「でも、日夜さんが怪異に対応できないなんて……そんなに恐ろしいやつなんですか、それって」
「ああ……恐ろしいとも……だって奴らの体力は無尽蔵、どこまで逃げても追いかけてくるんだ。通報を受けて確かめに行ったまでは良かったが、あんなものとても僕一人では手に負えないよ」
「……その怪異、なんていう名前なんです?」

息を呑み、そう問いかける星宮少年。その真っ直ぐな眼差しに、彼も覚悟を決めたらしく。静かに口を開いた。

「そうだな、星宮君。後学のために、君にも伝えておくべきだろう。……あの時、あの山で、執拗な程にこの僕を追い立てた怪異。その名はーーーー」


●わんわんと遊ぼう

ーーその正体は『すねこすり』……っていう怪異らしいんだけどね?

すねこすり?
首を傾げてそう聞き返した誰かに、マチネが続けて話した。

「うん、雨の降る夜に現れる、犬の姿をした怪異。もし、それのいる近くを通りがかっちゃったら……」

 ごくり、息を呑み、ここに集まった一同は話の続きを求めた。
その真剣な視線に、マチネは真摯な表情で頷き、更に言葉を紡いだ。

ーーすごく、すりすりされちゃうの。こっちが動けなくなるくらい、その身体を擦り付けて。満足したら、帰っていくんですって。

「本当に、それだけの怪異なの。だから実害は別に無いんだけど……日夜さんの見立てだと、最近は人に充分に構ってもらえなかったみたいな感じだから、その分……寂しさのあまり、むくむくと膨らんじゃってるんですって」

だから、そのすねこすりが満足するまで、存分に体を張って付き合ってやって欲しい。そうすれば、そいつも満足して帰っていくことだろう……と言うのが、今回の依頼だ。

「それじゃあ皆、この日は雨も降ったりしてるらしいから……どうか、足元とかも気をつけてね」

境界案内人は、そう言って静かに、貴方達を送り出すだろう……。

NMコメント

どうも、なななななです。
大きいもふもふに埋もれたい、そう思っていたらこんなんできました。
以下、詳細になります。

●ジアース

 今回皆様が赴く世界の名前です。要するに神秘、怪異、化物、魔術が存在する現代日本……と思っていただければ結構です。

しかし、それらの存在は公には知られておらず……何も知らない人間は、それらに貪られ、弄ばれ、真相も分からぬままに命を落とす事も珍しくありません。
それらを扱い、対処するのが【日夜探偵事務所】の裏の顔でもあります。

●目的
『すねこすりが満足するまで遊ぶこと』。

・真っ白くってふわふわででっかいわんこの怪異です。
見た目は短足気味の真っ白い柴犬(ただしデカい)イメージです。
本来はその名のとおり、人間のスネ程までのサイズ感だったと思われますが、構って欲しさが積もるあまりむくむくと毛玉が膨らみ、今やすねこすりに留まらぬ勢いで、相対した人間の全身にすりすりしてきます。

身体をスリスリさせるのは勿論、一般的な犬が好む物をこのすねこすりも好むようです。ジャーキーもフリスビーも嬉しいお年頃。しかも人懐っこい性格をしています。あとはわかるな?

尚、シナリオ中は雨が降っていますが、どうやらこのすねこすりは濡れるのが嫌いらしく、基本的に雨を避けて森の中などに潜んでいるようです。


●NPC

星宮 太一(ホシミヤ タイチ)

・日夜探偵事務所に通う少年です。年齢は小学校高学年程。目上の人を必ず『さん』付で呼ぶ等、礼儀正しい子供でもあります。
怪異の好む香りを常に放ってしまう特殊体質持ちですが、ローザの『御守』のお陰で、日常生活に支障はありません。
いつか怪異に勇敢に立ち向かえるようになりたい……とは思いつつも、焦る事なく、最近は地道に日夜の指導を仰いでいるようです。
日夜の使いとして、皆様を『すねこすり』の元まで案内してくれますが……実は、太一自身もちょっと触りたくってソワソワしているようです。

日夜 歩(ヒヨリ アユム)

・星宮少年の通う、日夜探偵事務所の所長です。今回の依頼人でもあります。太一の特殊体質に最初に気づいたのも彼でした。生真面目で身なりの良い青年で、男女問わず、他人を『君』付で呼びます。
実はその正体は吸血鬼ですが、特殊な手段で平素は吸血衝動を抑制しているようです。

数多くの怪異を見てきた彼ですが、すねこすりには敵わなかったようで、今回イレギュラーズに助けを求めてきました。またもっふるタックルをされては堪らないという理由で、現場には同行しません。

「仕方ないだろう。凶暴なやつならば反撃もできるし、大人しく座っている犬なら別にいいが……ああやってグイグイ来るタイプは、こう、どう接していいのか分からないんだよ」

ロザリー・カンナヅキ(ローザ)

・怪異に精通しており、それに対する防衛術も心得ている占い師です。特殊体質の星宮少年が普段平和に暮らせているのも、彼女謹製の『御守』の力があるからです。
誰彼構わず『ちゃん』付したり、あだ名をつけたりと、良く言えばフレンドリー、悪く言えば馴れ馴れしい人物です。
恐らく今回の件で日夜を裏でずっと弄り倒してます。

以上になります。

それではどうぞ、存分にもふもふしてきてくださいませ。

  • 【日夜探偵事務所】スーパーウルトラキングビッグわんわんお完了
  • NM名ななななな
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2021年07月03日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)
優穏の聲
レニー・エメディア・オルタニア(p3p008202)
半百獣のやんちゃ姫
トキノエ(p3p009181)
恨み辛みも肴にかえて
ノット・イコール(p3p009887)
想いの届人

リプレイ

●雨の夜の、不思議な出会い

 さあさあ、さらさら、静かで優しい雨の夜。足場と視界の悪さにも関わらず、この山を登っていく者達がいた。

その顔ぶれは、『天穹を翔ける銀狼』ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)、『半百獣のやんちゃ姫』レニー・エメディア・オルタニア(p3p008202)、『特異運命座標』トキノエ(p3p009181)、『特異運命座標』ノット・イコール(p3p009887)、そして。

「……まさか、歩さんにも苦手なものがあったなんて」

そう言いながらも、太一は懐中電灯を手に山道を先導する。
件の『すねこすり』が出たという現場は、もうすぐの筈だが……?

「すねこすりってのは雨に濡れるのが嫌で潜んでるんだよな?」
「うん、だから大きな木の陰とか、そういう所に潜んでると思うんだけど……」

目を細めて遠くを見るトキノエ、ファミリアーと共に周囲を警戒するノットは、きょろきょろと辺りを見渡す。すると、そこでがさり、湿った草の揺れる音がした。

「あっ、そこじゃない!?」

その正体を確かめにレニーが近づけば、夜闇にもよく目立つ、真っ白ボディが顔を出す。
少しだけ湿った、ふかふかもっふりボディ。円な黒い瞳。ヘッヘッと息を弾ませる赤い舌。身体に対して、少し短く見えるあんよ。
そう、これこそが。

「おお、噂通りスーパーでウルトラでキングでビッグなわんわんおじゃないか!」
「えっ……でっか……」

事前の情報があったとはいえ、想像以上のサイズ感。ゲオルグは目を輝かせ、トキノエは目を見開いた。

にんげん。いっぱい。あそんでくれる?

まるでそう訴えかけてくるかの如く首を傾げて、すねこすりはこちらを見つめてくる。
勿論、我々はそのために来たのだ。けれど、その前に。

「うん、遊ぼっ。でもここだときみも濡れちゃうから、まずは場所を変えない?」

ここに来る道中で、ノットのファミリアーが見つけた洞窟。レニーはその方角を指差した。



 移動した洞窟は、大人の男性を含むイレギュラーズや、大きいすねこすりが入っても尚、十分すぎる広さを誇っており、雨を凌ぐにも遊ぶにも不足はないだろう。 
太一が持ち込んだ懐中電灯を地面に幾つも置いたなら、視界もこれで大丈夫。
ゲオルグのタオルで濡れた毛を乾かし、存分にもふもふボディを発揮し始めたすねこすりは、既に準備万端だ。こちらも覚悟はできている。
 
 立ちはだかるゲオルグ。並び立つジークに、独自の布陣を敷いたにゃんたま達。
今回の相手は、特に危険のない怪異。ならば、彼らもまた、すねこすりに立ち向かう資格は充分にある。

「……互いに相手を認識した時、それが始まりの合図なのだ」

その言葉を皮切りに、わんこがもっふるタックルを仕掛けてくる!

もっふぁあ……と、白い毛に顔をうずめ、その匂いまでも楽しむゲオルグ。
その頭に乗り、まるでわんこの一部となったかのようにぴとっとくっつくジーク。
その背や脇腹に引っ付いて、ミャアミャアニャアニャア甘えるにゃんたま達。
わんこも、おいでとくるゲオルグにどんどんその身体を擦り付けて、思いっきり甘えてくる。
まるで、全身を包み込むかのように、真っ白ボディをグイグイ押し付けてくるのだ。

今回の怪異は、構ってもらいたさの余り、すっかり毛玉が膨らんでしまったという。
すねこすりが寂しい思いをしていることを思うと手放しで喜べることでもないが……今はこの機会を大事にしたい。
 
私はふわもこアニマルをもふもふしたい。すねこすりは人に構われたい。
これぞまさに、ウィン・ウィンの関係というやつだ!

その毛並みを撫でれば、真新しいぬいぐるみよりもふかふかで柔らかな手触りで。ぎゅうっと抱き締めれば、下手な抱き枕よりもずうっと安らぐ。

もふもふをとにかく愛する彼が、こんなに愛くるしい存在を愛でないという選択肢が彼にあろうか。否、ない。
このまま気の済むまで、もふもふを、スリスリを堪能する彼らなのであった。
 


「おいポチ公……ぶっ!」

 トキノエに呼ばれたすねこすりは「はい!!!」とばかりにシュバッと彼の前へ馳せ参じて突っ込む。勢い余って彼をもふもふに埋めてしまったが、『はふぁへろ、いぬっほろ!』と言う言葉を聞くと、クゥンと言いながら少し距離をとった。

「ったく、気が早ぇんだよお前はよぉ。ほれ、とってこい」

彼が放り投げたのは、山中で見つけた手頃な枝。
的確なコントロールで投げられたそれは大きく長く弧を描いて飛び、それを追いかけるわんこの姿はどんどん小さくなっていく。

事前情報によれば、あのすねこすりとかいう怪異は、大きいわんこと考えても相違ないらしく、そして犬は『とってこい』が好きだと相場が決まっている。
俺が投げる。あいつがひたすら取ってくる。そして戻ってくる。それをまた投げる。

勿論ご褒美に撫でもふするが、何と楽な仕事だろう。今宵は良い酒が飲みそうだ!

……ん、なんだか、向こうから、真っ白い塊が迫ってきて……?

「キャンッ!!」
「フゴッ!!!」

トキノエの姿は、たちまち白に埋もれ見えなくなる。

「あれ、どこに行ったの?」という風にきょろきょろ周りを見るわんこに、ギブギブギブとばかりにぽふぽふその身体を叩く。

「ワンッ!」
「見っけ、じゃねぇんだよぉ!!!」

すねこすりはまだまだ乗り気、トキノエも体力の限りそれに付き合う。
なるほど、確かにこいつのもふもふボディは至高の手触りだ。だが……。

「どれだけ付き合ったら満足するんだこいつ……!?」

ぜえはあ荒い息のトキノエに対し、わんこはまだまだ構ってモードだ。

「よしよし、良い子だね。今度はボクと遊ぼうか。太一くんもおいで。悪い子じゃないから噛みはしないよ」
「えっ、いいんですか!?」

 タイミングを見計らって、今度はノットが、その背を、太一が胸元をぽふぽふ撫でる。
既に周辺は散策済み、さしたる危険はない事も確認済み。先程からずっとうずうずしていた太一が接近しても、何ら問題はないという判断だ。
わんこはクゥンと甘えた声で彼女に向き直ると、その名の通り身体を擦り付けてくる。

「そうだよね。怪異は存在しないってなってる世界だから、寂しかったよね」 

そう、この世界では通常、彼らのような存在は『有り得ない』と切り捨てられ、普通の人間には見向きもされない。故に、誰にも構われず、愛されず、すねこすりの身体はむくむくと膨れ上がってしまったという。
しかし、異様に身体が大きいという一点さえ除けば、その仕草も愛嬌も、人懐っこい犬そのもので。昔買っていたペットを思い出してしまう。

さて、撫で撫でギュウもいいけれど、この子はまだまだ遊び足りない、それならば。

「さ、ボクとかけっこしよっか。よーいドン!」

駆け出したノットを、わんこが即座に追いかける。容姿はまるで仔犬のようでもあるが、図体が大きい分一歩一歩もとてつもなく大きく。思いの外距離が詰まっている。

「くっ、シャドウイグジスタンス!」
「おーい! こっち、こっちにもいるよー!」

太一のフォローもあってすぐには捕まらないが、人間とのサイズ差もあってか、もはやかけっこよりも追いかけっ子、否、闘牛の様相を呈していた。

それからややあって。

「ハァ、ハァ……さすがわんこ……無尽蔵の体力でしたね……」
「いや、うん……なんかだいぶ喜んでくれたっぽいから、別に良いけど……交代……」

ノットと太一とすねこすり、2対1のかけっこはこれにて終了。
わんこの方も、地面に伏せて小休止モードだ。

 そこにすかさずレニーが近づき、その側に腰掛けた。
キュウンと鳴き身体を寄せるすねこすり。そんな彼を撫でる手は、今までの人間の手とは違い、柔らかな肉球が付いた手で。
ぺたんと大地に伏せた顔、それでも上目遣いにこちらを見る潤んだ瞳。そこからすねこすりの心情を慮るのは、そう難しい事ではない。

「いつもなら恥ずかしいけど……君相手なら、大丈夫だよ。満足するまで側にいるからね」

何故なら、自分は半分人だけど、半分は動物だから。
少なくともこの世界に住む殆どの住人よりは、彼に近い存在。互いにリラックスして、その身を寄せ合う。

「……それにしても『すねこすり』ってひどい名前! もっと素敵な名前がいいと思うなあ。綺麗な白い毛並みなんだ……無難なところでシロ、とか」

この言葉に、瞳を輝かせ、尻尾をパタリと動かして、わんこはレニーと目を合わせる。

「じゃあ、シロ。キミのこと知りたいなー、なんて。あっ、アタイは『レニー』って言うんだ」
「キューン……」

それからも、一人と一匹の対話が、静かに続いた。

●雨はやがて止むもので

 やがて、フシュウウウウ、という音を立てて、大きな大きなシロの身体は、元のサイズ……大人の脛の中腹程度に戻っていく。
愛され、満たされ、彼の中で膨らんでいた寂しさが、すっかり消えてなくなったのだ。

 すっかり小さな身体になったシロは、ゲオルグに、トキノエに、ノットに、太一に、レニーに。順番にすっかり小さくなったその身体をこしこし擦り付けて。

ワンと一声鳴いたなら、洞窟の外へと、元気に飛び出していった。
外の雨は、いつの間にか止んでいて。

真っ白の体は、森の緑に溶けるように、すっかり見えなくなっていった。

「シロ! 元気でね!」
「また、遊ぼうねー!」
「……ったく、アイツ、毛をつけるだけつけていきやがってよ」
「と言いながら、キミはまだまだもふもふし足りないんじゃないか? ジークも居るが」
「いいっての!」
「あはは……事務所に戻ったらコロコロ、貸してもらいましょうね」

そんな風に、彼らも笑い合いながら。
怪異の去った、平和な山を降りていくのだった。

成否

成功

状態異常

なし

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