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シナリオ詳細

信仰揺らがす女夢魔

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ネクストにおいて、正義という国は元となった混沌の天義同様、宗教国家として知られる。
 正義においては、国王やその取り巻き、聖騎士団らの存在もあって、国内の問題はほぼ解決しており、国家として非常に安定性を感じさせる。国民も神を崇め、平穏な日々を過ごす。

 しかしながら、そんな正義においても、昨今では他国同様の異変が確認されている。
 国内に現れる数々の魔物。物取りを生業とする盗賊達。そして、ネクストの枷から外れた存在、バグNPC。
 今回はとある村に現れたそんなバグNPCが引き起こす事件が明るみとなる。
「うふふ、ふふふふ……」
 プライと呼ばれる小さな村の中央に位置する聖堂。
 そこは正義とは思えぬ異様な雰囲気に満ちていた。
 御堂内はあちらこちらが破壊され、村の若者達は神に祈りを捧げるどころか、惰眠をむさぼり、内部にいる魔物にすり寄り、頬すら赤らめている。
 もはや、彼らの心の中に信仰など、一切なくなってしまったようだ。
「アハッ、たのしー!」
「本当、召喚に応じて良かったわぁ」
 聖堂内には、植物と一体化したような女性の魔物、アルラウネ。そして、鳥と一体化したような女性の魔物、ハーピーが歌声を響かせ、さらに若者達を狂わせる。
 そして、それらの魔物を操るのは、悪魔の翼を持つ布地少な目の衣装を纏う女性。彼女は聖堂の壇上に跨り、多数の若者達に取り囲まれていた。
「さあ、くだらない信仰など捨て去って、本能をさらけ出すのよ」
 妖艶に嗤う女性、アンビュリーの傍には、男女問わずその身を捧げて彼女の愛を賜ろうとしている。
 欲望のままに振舞う若者の姿に、アンビュリーはうっとりとしながら酔いしれていた。
 それを聖堂の外から、身震いしつつ見つめていて。
「ひ、ひえええっ……」
 ある老婆は必死になって祈りの言葉を紡ぎ、救いを求める。
 中年男性は小さく首を振り、おぞましい光景だと顔を背けてしまう。
 長く神を崇め、敬う彼らからすれば、欲望を全て解放しようとする若者の姿は見るに堪えないものなのだろう。
 そんな村の年長者達に気付くアンビュリーは手招きして見せて。
「おいでなさい。あなた達も……、勇者、いや、外の世界から来たイレギュラーズ達も……」
 くすりと微笑み、アンビュリーは自分を囲む若者1人1人を愛でるのだった。


 『Rapid Origin Online』……略称『R.O.O』。
 無辜なる混沌をベースとしたこの仮想空間で、何かが起こっているのは間違いない。
 それを探る為、イレギュラーズもアバターを得て仮想空間ネクストへとダイブしているのだが……。
「へえ、不思議な感覚だね」
 『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)は自分に近しいアバターを設定し、ログインした上で自身の状態を確認する。
 こちらの世界でどんなに傷つこうとも、元の自分には一切傷はない。それがオリヴィアにとっては違和感があったようだ。
「ともかく、依頼の話だ。天義……こちらでは正義か。そこで起こった事件を解決してほしい」
 依頼者は現地であるプライという村の住民達。
 村の聖堂に巣食う魔物が若者達を惑わして自らの下僕と化して侍らせているのだという。
 首謀者はアンビュリーと呼ばれる女性。
 どうやら人外となり果てた彼女は2体の魔物を呼び寄せ、若者達に対する魅了の度合いを強めているのだとか。
「色々と思うことがあるが、こいつを許しては置けないよ。何せ、相手はバグNPCなんだからさ」
 ネクストの外の世界を認知する彼らは若者達を捕えて離さない。
 そのことからも、若者の中にR.O.Oのテストプレイヤーが紛れている可能性は高い。
 いち早く、アンビュリーと2体の魔物を討伐して、若者達を解放したい。
「アンタ達はアイツらに惑わされない様、注意するんだよ」
 オリヴィアはそう告げてアバターの背中を一人ずつ軽く叩き、現地へと送り出すのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 『Rapid Origin Online』のシナリオをお届けします。

●目的
 バグNPC、アンビュリーの討伐。
 なお、報酬として何かを得られるかは不明。

●敵×3体
 いずれも大きさは一般人間女性と同サイズです。

○バグNPC:夢魔アンビュリー
 人間種と思われますが、何らかの要因でバグNPCと化した際、異能の力を得たようです。額には角、背中に翼を生やし、露出高めの衣装で男女問わず魅了しようとします。
 戦闘においても色仕掛けで相手を惑わし、思考を奪う他、相手を眠らせたり、体力を奪おうとしたりしてきます。

○アルラウネ
 マンドレイクの亜種とも言われる女性型の魔物です。大きな紅い花の中央から人型の上半身が生えている見た目をしています。
 咆哮を上げて相手の動きを止める他、胞子を振りまいて相手に幻覚を見せ、伸ばす根からは相手の毒素を与えます。
 また、胞子や根を使って仲間に癒しを与える一面も持ちます。

○ハーピー
 女性の上半身に鳥の翼と下半身が合わさった魔物です。
 歌声を響かせ、自分達の強化、あるいは敵の思考を奪おうとする他、竜巻やつむじ風を使った攻撃を得意とします。

○村人×20人
 村に住む若い男女。正義に住む一般人であり、戦闘能力はありません。
 アンビュリーや魔物達に魅了され、聖堂内で倒れていたかと思いきや、起き上がって戦いの邪魔をして来ることがあります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●ROOとは
 練達三塔主の『Project:IDEA』の産物で練達ネットワーク上に構築された疑似世界をR.O.O(Rapid Origin Online)と呼びます。
 練達の悲願を達成する為、混沌世界の『法則』を研究すべく作られた仮想環境ではありますが、原因不明のエラーにより暴走。情報の自己増殖が発生し、まるでゲームのような世界を構築しています。
 R.O.O内の作りは混沌の現実に似ていますが、旅人たちの世界の風景や人物、既に亡き人物が存在する等、世界のルールを部分的に外れた事象も観測されるようです。
 練達三塔主より依頼を受けたローレット・イレギュラーズはこの疑似世界で活動するためログイン装置を介してこの世界に介入。
 自分専用の『アバター』を作って活動し、閉じ込められた人々の救出や『ゲームクリア』を目指します。
特設ページ:https://rev1.reversion.jp/page/RapidOriginOnline

※重要な備考
 R.O.Oシナリオにおいては『死亡』判定が容易に行われます。
『死亡』した場合もキャラクターはロストせず、アバターのステータスシートに『デスカウント』が追加される形となります。
 現時点においてアバターではないキャラクターに影響はありません。

 それでは、よろしくお願いします。

  • 信仰揺らがす女夢魔完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2021年06月30日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ハルツフィーネ(p3x001701)
闘神
天魔殿ノロウ(p3x002087)
無法
レニー(p3x005709)
ブッ壊し屋
壱狐(p3x008364)
神刀付喪
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影
指差・ヨシカ(p3x009033)
プリンセスセレナーデ
コーダ(p3x009240)
狐の尾
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録

リプレイ


 ネクストの正義へと降り立つイレギュラーズのアバター……勇者達。
 プライと呼ばれる村へとやってきた一行は、聖堂の中から聞こえる笑い声を聞いて。
「おいでなさい……」
 村の人々が集まるその聖堂の入り口で、中にいた夢魔アンビュリーが手招きする。
 聖堂内部で村の若者ばかりを侍らせていた彼女は、取り巻きのアルラウネ、ハーピーと共に呼び寄せようとする。
「さあ、あなた達も……」
 夢魔が呼ぶのは村人だけでない。アバターであるメンバーの存在も把握していたようで。
「そう言われたからには、おれが来たぜ!!」
 開口一番、入り口の村人を押しのけて内部へと突入したのは、ボーイッシュな少女『絶対妹黙示録』ルージュ(p3x009532)だ。
 そのルージュに続き、勇者達が続々と聖堂内へと入ってくる。
「堕落を誘う夢魔か、ありきたりではあるが正義でとは。全く信仰を敵に回す奴らだ」
 巫女服姿の『妖刀付喪』壱狐(p3x008364)はこの地に似つかわしくない敵に睨みを利かせる。
(仮想現実内とはいえ、神聖な教会内で何をやっているのやら……)
 大きなテディベアを抱えた『魔法人形使い』ハルツフィーネ(p3x001701)はあきれた様子で前方を注視する。
「おいおい、いくらゲーム内だからって良いのかい? 僕、未成年だぜ?」
 『プリンセスセレナーデ』指差・ヨシカ(p3x009033)は目の前で行われる女モンスター達の倒錯ダンスを代わる代わる見つめる。
 さほど刺激の強い姿をしているわけではない……そう言い聞かせていたヨシカだったが、たまらなくなったらしく。
「ごめん、なじみさん。僕、ダメかも」
 どうやら、中身である彼は悲しいけど男の子だと実感したらしい。
 ところで、若者は男性ばかりでなく、女性までも夢魔は魅了していて。
「女の魔物と聞いたが、男女お構いなしかよ……」
 引き締まった体つきをした『ブッ壊し屋』レニー(p3x005709)はリアルならこの手の誘惑を跳ねのける能力はあるものの、この女性のアバターだと厳しいかと悩む。
「うん? 魅了されているのは男女問わずとはいえ、若者ばかりのようだけれど……単に好みの問題なのかな?」
 すぐ後ろにいたミステリアスなアバター、『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)は若者よりおっさんの方が良くないかと首を傾げていたのはさておき。
「ゲームだからこそなのか、ゲームでもなのかは分からないが。どこにでもいるもんだな」
 スーツ姿の『狐の尾』コーダ(p3x009240)は悪意があって魅了するだけ無自覚よりマシな相手と感じていた様子。
「……いや、俺は関係ないぞ」
 仲間や村人の視線を集めていた彼は背にある悪魔の羽は飾りだと、即座に否定していた。
 そんな勇者達のやり取りを見ていた夢魔はくすりと笑って。
「虜にしてあげるわ。勇者……いや、外の世界のイレギュラーズ」
「悪いなねーちゃん達。ねーちゃん達の得意技は、おれには効かねーぜ」
 しかし、ルージュはそれをきっぱりと断ってみせる。
 正直、彼女は夢魔達が何を楽しみとしてこうした行いをしているかも理解に苦しんでいたのだが、『外の世界』を認識しているのはかなりまずいと判断していたのだ。
(というか、こいつは性別関係なしのようだが)
 壱狐は内心、自分のようにプレイヤーは男でアバターが女、かつ本体と内部データは無機物で無性と面倒な状況だと考えつつ。
「……いやしかし気まずいな、さっさと倒してしまうとしよう」
「同性もお構い無しとは、また面倒くさい夢魔ですね。早いところ叩き出してやりましょう」
 レニーに同意し、ハルツフィーネが武器として使うハンドベルを手にし、それまで持っていたテディベアをアクセスファンタズムの力で操り始める。
「お前達。骨の髄まで私達のものにしてやりなさい」
 頷くアルラウネとハーピー。
「カミサマに祈る余裕なんざ持ち合わせちゃいねーが……」
 それらの姿の奥に神像を見た華奢な少年、『無法』天魔殿ノロウ(p3x002087)は鼻を鳴らす。
「金の為なら働いてやるよ。なんせ金にゃあ現世利益があるからな!」
 短剣を取り出したノロウは笑みを浮かべて仲間と共に敵に向かっていくのである。


 敵は夢魔アンビュリーを始め、アルラウネ、ハーピーといずれも女性型のモンスターである。しかも、夢魔はバグNPCとなり果てていた。
「うふふ……」
「今日もご安全に、作業始め」
 妖艶に笑う夢魔の姿にヨシカはアバターが女の子でよかったと何とか自我を保ち、気を引き締める。
「バグった側もある意味被害者なのだろうけれど……」 
 刹那躊躇するイズルだが、相手は村人らも従えており、油断できない。
 思考を奪ったり眠らせたりといったスキルは防げないかもと、イズルも懸念を示す。
「さて、俺と遊ぼうか。魅了出来るもんならやってみろ」
 まずは、コーダが夢魔の前へと飛び出す。
 高抵抗となるよう準備してきたコーダはタンク役となり、この場を持たせる算段でいる。
 できるだけ村人から引き離すよう後ろに下がるコーダをアンビュリーも追い、色仕掛けで彼を魅了しようとしていた。
 後は時間を稼ぐのみ。コーダはバトルスカーフで相手の肌を掠め、怒りを買っていた。
 村人は倒れている者の他、勇者達へと縋りついて来る。
(これはこれで、敵の攻撃手段)
 うっとりとした表情の若者らは、一緒に楽しもうとか邪魔しないでとまとわりつく。
 すでに夢魔達に心まで支配されていた若者の対処にと、ルージュは魅剣デフォーミティを抜く。
「最強は愛の力なんだぜ! ……ルージュアタック!」
 叫ぶ彼女は刀身から眩い光を放つ。
 すると、半数近くの若者が我に返って。
「お、俺は……」
「いやだ、私ったら……!」
 戸惑う彼らに、ルージュはにーちゃん、ねーちゃん達と呼びかけて。
「悪いんだけど急いで避難してくれよな、というか無理そうなら担いでいくぜ!!」
 ルージュは足を引きずってでも、聖堂から彼らを追い出そうとする。
 まだ我に戻っていない者もおり、ルージュは彼らも正気に戻そうと奔走する。
「アハッ!」
「たっぷり歌声を聞かせてあげるわぁ」
 しかしながら、小さく笑うアルラウネと早速歌声を響かせるハーピーがそれをさせじと回り込もうとしてくる。
 邪魔をしてくるのが敵なら倒すのみ。ノロウはそう疑わない。
「テストプレイヤーだったら復活するし、NPCだったら躊躇う理由もねェし。ゲームだし?」
 そんな割り切りを見せるノロウだが、用意していたのは単体スキルばかり。
 まずは宙を飛ぶハーピーを倒すべく、ノロウはガンを飛ばす。
「いいわぁ、私の歌を聴くのよぉ」
 聖堂にこだまするほどの声量で心地よい響きを口ずさむハーピー。
 それを耳にすれば、耐性のない一般人ならたちまち魅了してしまうことだろう。
「ハーピーの歌声か……」 
 歌い始めたところで、イズルは敵の喉を狙う。
 巻き起こる爆発は確かにハーピーの声を潰したかに思えたが、すぐさまアルラウネが根を伸ばして癒やしてしまう。
「アハッ、させないよ」
 癒やしをもたらすこの妖樹の存在も面倒なところ。
 しかしながら、勇者達の攻撃対象はハーピーへと集中して。
「クマさんは紳士的ですが……悪い女性にはきちんとお仕置きを、します。硬派なので」
 ハルツフィーネもまた敵を空中には逃がさないと、威嚇のポーズをとらせたテディベアに咆哮させた。
 放たれた衝撃波はハーピーの全身へと浴びせかかり、その羽をも散らす。
「アアァッ!」
 落下してきたハーピーが上半身を露わにしたような女性の姿とあって、ヨシカは視線を泳がせる。
「なんでこう、人の女性型の魔物ってあられもない姿ばかりなのかしらね……っ!」
 これが男のアバターだったら、さらにやばかったかもしれないと考えつつ、ヨシカは敵にアンカーを打ち込んで戻ってくる勢いと共に切りかかる。
「男も女も貞淑に身持ち固く守ってた連中に、背徳行為を働かせる訳にはいかねぇな!」
 幼少期、修道院育ちだったというレニーの中身。
 それもあって、敬虔なはずの若者を惑わす怪物を放置できぬと、レニーは歌声を響かせようとするハーピーから距離をとったまま、戦いの余波で壊れた壁の破片を蹴り飛ばす。
 蹴る瞬間に雷撃を込めた一撃は狙い違わずハーピーへと飛び、その体を痺れさせる。
「キャアアアアアアッ!」
「信仰とは人々の心の拠り所、無理やり引きずりこむような真似を許す訳には行きません!」
 そこで、精神統一していた壱狐が突貫してくる。
「搦め手が得意だというのなら、その前に速攻を仕掛けさせて頂きます、お覚悟を!」
 自身の名の付く神刀を抜いた壱狐は、陰陽五行の術式を纏わせる。
 その一閃を受けてうな垂れる敵へ、さらにハルツフィーネがテディベアを向かわせて伸ばした魔法の爪を薙ぎ払う。
「アアアアアアアアアアアアアッ!!」
 一際甲高い声で叫ぶハーピー。満足に風を操れぬまま、そいつは聖堂の床へと崩れ落ちていったのだった。


 次なる勇者達の優先討伐対象はアルラウネ。
「アルラウネって何かの素材になるのかな?」
 イズルは違った意味でアルラウネに興味を抱くが、あられもない姿の敵にもっと着込んでいたなら興味が……などとしばらく逡巡する。
 しかし、すぐに真顔になったイズルは残る村人のケアをと立ち回り始めていた。
「……確実にお色気系だよな……くっ、このアバターになると女性の誘惑通じやすくなるなんざ、バグってやがるぜ」
 女性の姿となるレニーだが、その思考は中身で維持しているはず鳴れど、なぜか引っ張られる感があって。
「アハッ、あなたには何が見えるかな」
 ふわりと飛ばす胞子を吸ってしまえば、幻覚が見えてしまうから恐ろしい。
 ただ、レニーはその場ではなんとか自我を保つが、村人達はそうもいかず、わらわらと彼女へと近づいて。
「すごく……いい気分だ」
「ふふ、遊びましょ」
 若者男女がうっとりとした表情で近づいてくる。
「レディはもちろん、男共も乱暴にはできねぇが……」
 不埒な行いをしようものなら、風を纏わせた武器で気絶させる心づもりのレニーだが、無力な女性相手だとさすがに躊躇ってしまう。
「いくら私の見目が可愛いからって、お触りはNGよ!」
 ヨシカはアンカーシュートでアルラウネを攻撃することで移動し、その場から脱出していた。
 ハルツフィーネもアルラウネの方を向こうとするが、この場に残る若者達がまたも足止めしてくる。
「…………っ」
 この場はできるだけルージュに任せたいところ。
 再び愛の力を振りまき、全力で癒やしに当たるルージュは急ぎで残る村人を正気に戻す。
 彼女は多くの手数を費やせるようアバターを調整しており、幾度も癒しをもたらして全ての村人を正気に戻す。
 ある程度、動きやすくなれば、メンバーも心置きなくアルラウネを狙うことができる。
「なんでこう、人の女性型の魔物ってあられもない姿ばかりなのかしらね……っ!」
 とか言いつつも、ヨシカはアルラウネの至近からパンチを繰り出し、その容姿をマジマジと見つめていて。
「べ、別に近付いてマジマジとグラフィックを見ようとか思ってないぜ?
ないってば!」
 仲間の視線を感じたヨシカが思いっきり弁解している様に、アルラウネは楽しそうに微笑んで根を伸ばす。
 それに掠っただけで、体内に毒素を注入されてしまう。
「アアアアアアーーー!」
 さらに、アルラウネは強烈な咆哮を上げる。
 重ねて、アンビュリーがふうっと吐息を行うと、周囲に眠りのガスが発生する。
 全ての村人を脱出に成功していたルージュだったが、村人をかばう形となってアルラウネの根を受けてしまっていた。
 重ねての連続攻撃に態勢を整える暇もなく、ルージュはこの場から消え去てしまう。
 もう一人の回復役であるイズルは戦う仲間の支援回復に注力する。異常攻撃を重ねられると、満足に動けぬメンバーが出てしまうからだ。
 眠りかけたノロウも仲間のおかげで覚醒し、突撃するアルラウネへと連撃を叩き込んでその命を掠め取っていく。
「危なくなっても、殴ってる方が安全っつーね」
 一方、コーダもこれ以上はさせぬと、アンビュリーを叩く。
「邪魔をするなよ。大人しく待ってたら後で可愛がってやるさ」
「よほど、私に愛でられたいようね」
 どうやって屈服させてやろう。目の前の夢魔はそんな表情を彼に向けていた。
 その間、勇者達の攻撃が加速したことで、アルラウネが追い込まれていて。
「私は私の信仰を貫き徹します、皆さんのためにも刃の糧と散らせます!」
 壱狐は握る刀は飛んでくる胞子ごと、アルラウネの体を大きく切り裂く。
「アハッ……、そんな、はずは……」
 信じられないと首を振った妖樹はぐったりとしなだれ、完全に動かなくなったのだった。


 残るは夢魔アンビュリー。
 取り巻きを倒した仲間達が合流してきて、コーダは勝ちを確信して。
「善も悪も興味はないが、これも仕事なんでね」
「ふうん、さすがこの世界に飛び込んできた向こう見ずな勇者達ね」
 煽るコーダにもさほど動揺を見せないアンビュリーは、魔力を籠めた指先でそっと彼に触れて体力を奪い取る。
 バグNPCとなったことで、彼女は夢魔としての力を強化していたようだ。
 しかし、勢いは勇者一行が勝るとヨシカは疑わずに飛び込むが、妙な色気に思考が乱されて。
「アンビュリーお姉さま……♡」
 はっきりとそう口にして、ヨシカはぶんぶんと首を横に振る。
「いやいや違う違う! 危ない! 今魅了されてた!? 変な世界の扉開くところだった!」
 思わずうろたえるヨシカの姿をじっと見つめていたレニーもハッと我に返り、直接的に誘惑してくる夢魔が厄介だと再認識して。
「こちとらレディ相手にナンパやキザに決めても、一線は越えねえのが信条なんだ。ゲーム世界で色々と奪われてたまるかよっ!」
「ふふっ、貴女もしてほしいの?」
 じっと見ていると、夢魔が美しく見えてくるからその力は恐ろしい。
「……つーか、オレが外注したアバターより美しいってあんの?」
 ただ、そこでノロウが力強くその夢魔の柔肌を切り裂く。
「色仕掛けなんて所詮見た目だろー? 金かかってるこの身体より上とか、ないだろ」
「言うわね。アバターのくせに……」
 夢魔はノロウを含めたメンバーへ、眠りの吐息を吹き付けてくる夢魔。
 ただ、そこに駆け付けてきたルージュは戦線を支えるべく愛の力をメンバーへと振りまく。
 一度倒れたルージュだったが、村にあったサクラメントから一直線に聖堂へと向かってきていたのだ。
「なんですって?」
 驚く敵へと攻撃を畳みかける勇者達。
 アンビュリーも応戦してこちらの体力を奪ってくることもあり、メンバー達の体力はみるみるうちに削られていく。
「あまり無理はしないようにね」
 イズルは体力の減った仲間が攻撃のきっかけをつかむタイミングを待っていることも把握し、それを踏まえて光を輝かせる。
 ハルツフィーネも仲間の力を借り、一気に片付けようとテディベアを向かわせて。
「もっと節度ある服装で出直してきて下さい。シスター服とまでは言いませんけれど」
 大きく素肌を晒すその姿は目のやり場に困る。教会で惑わされたら恥だと、ハルツフィーネはテディベアに猛然と敵の体を引っ掻かせる
 追撃にと、復讐の一撃を待っていたのは壱狐だ。
「この姿がただの飾りじゃない事を見せて差し上げます!」
 コーダやレニーも強力な一撃をと叩き付けていたが、壱狐は相手の放つ魅惑の魔力と合わせ、夢魔の体を切り裂く。
 ただ、夢魔も血にまみれながら意地を見せ、壱狐の体力を奪いつくす。
 敵が安堵したのも束の間のこと、聖堂の天井に魔方陣を描いたヨシカが巨大な杭を召喚して。
「プリンセスパイルハンマー! 敵は死ぬ」
「あ、あああああっ!!」
 杭に貫かれた夢魔アンビュリーはその体に刹那モザイクがかかった後、その姿をかき消していったのだった。


 勇者一行は無事全てのモンスターを倒し、全ての村人を救い出す。
「あの手の悪魔は敬虔な人の思考もねじ曲げるものです。あまり気にしないでください。……と、クマさんも言っています」
 少し刺激的な体験だった若者もいたはずと、ハルツフィーネは再びテディベアを抱いてから村人達へと呼びかける。
 中に紛れていたアバターとなるテストプレイヤーの男性も確認し、今回は事なきを得たようだ。
「まぁ、なんとか頑張って欲しいよな」
 ルージュがそこで言っていたのは、この後の若者達のこと。
 特に男の子らが白い目を向けられることも懸念していたようだ。
 実際、しばらく女の子らから距離をとられていたようだったそうだが、そんな中、今度は誰にも渡さないと告白した男女もいたというのは別の話である。

成否

成功

MVP

ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録

状態異常

壱狐(p3x008364)[死亡]
神刀付喪
ルージュ(p3x009532)[死亡]
絶対妹黙示録

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは夢魔に魅了されていた若者達を助け出した貴女へ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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